※この作品はR-18です。

魂の座 一部 凍えた魂   作:伊駒辰葉

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壊れた様子の描写が足りない気が……すみません。
エロシーンはないです。


崩壊した吉良瀬邸 1

 屋敷にたどり着いた優一郎は息を飲んだ。立城の屋敷の門が開きっ放しになっていたのだ。コンピュータ制御されている筈の門が開いたままになっていたことも異常だが、敷地に入った優一郎はもっと異常な光景を見た。

 

 あれだけ咲き誇っていたばらが無残になぎ倒されている。それもちょっと踏み外して転んだというレベルの倒され方ではない。残っているばらを数える方がよほど早いだろう。優一郎は愕然としつつ、辛うじて倒れたばらの間に見える小道を歩いた。

 

 いつもなら灯るのだろう、小道の脇に点々とたてられた外灯もあちこちに捻じ曲がっている。優一郎は訝りながらゆっくりと進んだ。立城のメールから予想できることはただ一つだ。恐らく、立城の身に何らかの異変があったに違いない。だが立城はその異変をあらかじめ予測していたと考えられる。そうでなければあのメールの文章は説明できない。どうしても立城が無意味に仮定の話ばかりを羅列するとは思えないのだ。

 

 優一郎は静かに小道を曲がった。重なったばらの残骸を越えたところで妙なものが目に入る。眉をひそめて足を止め、優一郎は目を凝らした。

 

 外灯が一本だけぽつんと光っている。淡い橙色の光に照らされて一本の木が幹の半ばで折れていた。優一郎は息を飲んで周囲を見た。屋敷の陰になっていて先ほどまで見えなかった景色が否応なしに目に飛び込んでくる。

 

 無残に千切れた白く大きなパラソルが転がっている。きっと元はテーブルだったのだろう。折れた木の幹の下に白い残骸がある。二脚の椅子は塀に当たったのか、へしゃげた形で落ちている。一体、何が通ったらこんな風になるのだろう。恐らく、台風クラスの災害でなければお目にかかれないのではないか。優一郎はしばし呆然とその場に佇んだ。

 

 不意に何かが視界の中で動く。優一郎は慌ててそちらに目をやった。転がったテーブルの残骸の傍で何かが微かに動いた。驚愕を拭い去り、優一郎は動いたものに駆け寄った。近づいて絶句する。そこには人の形をしたものが倒れていた。だが間違いなく人ではない。それは青い液体を血のように流しながら微かに呻いていたのだ。

 

 優一郎は自分を落ち着かせてそれを助け起こそうとした。だが木の幹に身体が挟まっているらしく、起こすことはおろか、動かすことすら出来そうにない。逸る気持ちを堪え、優一郎は手ごろな棒が落ちていないか探した。だが付近にそれらしいものはない。折れたパラソルの軸があるにはあったが、とても幹を退けられそうにはない。真っ二つに折れた木の幹の太さは優一郎の腕で一抱え以上のサイズがあるのだ。

 

 困惑しつつ優一郎はそれのところに戻った。いつの間にか意識を取り戻していたらしい。それは近づく優一郎を生きている片目で見つめ、小さく息をついた。

 

「……わたくしは……大丈夫、です。それより……多輝様を」

 

 苦しそうに告げるそれに優一郎は懸命に声をかけた。どうやらそれの名前は蒼と言うらしい。しかも蒼は水輝の使い魔だと名乗った。それを聞いた優一郎は黙って頷いた。とりあえず、龍神の使い魔であるなら蒼は大丈夫なのだろう。

 

「多輝はどこに?」

 

 蒼を気遣いながら優一郎は訊ねた。蒼がゆらりと腕を上げかける。だがその腕は途中で力なく地面に落ちた。蒼が息をついて目を閉じる。優一郎は慌てて蒼を呼んだ。どうやら単純に力が入らなかっただけのようだ。ゆるゆると瞼を上げた蒼を見て優一郎はほっと息をついた。

 

「多輝様、は……お屋敷の……入り口に」

「わかりました……」

 

 静かに答えて優一郎は屈めていた腰を上げた。蒼がお気をつけて、と告げる。優一郎は無言で声に頷いて小道を急いで進んだ。元は玄関だった筈の場所には大きな穴が穿たれている。優一郎は迷うことなくその穴をくぐった。

 

 嵐のような破壊ぶりは庭だけに留まらなかったようだ。玄関の穴に始まって屋敷に入った辺りも凄まじく荒れていた。敷き詰められていたじゅうたんは千切れて飛び、床材が露出している。階段と手すりは途中で切断されていた。壁にかかっていた絵は一つ残らず吹き飛んでいる。床に転がった幾つもの破片は花瓶のものだろうか。優一郎は眉間にしわを寄せてゆっくりと歩いた。靴の下で破片が床に擦れて嫌な音をたてる。

 

 真っ白なリボンが真っ先に目に留まる。優一郎はそれを見止めるなり駆け出した。青いワンピースはざっくりと切れている。優一郎は震える声で呼びながら倒れた多輝の身体を起こしかけた。

 

 驚愕に震えて優一郎は手を止めた。抱え起こそうとした多輝の胸にこぶし大の穴が空いている。

 

「あ……れ。あんた……来て、くれたんだ?」

 

 苦しそうに息をつきながら喋る多輝の声には雑音が混ざっている。内部機関が大破しているためだ。




まだ多輝の記憶は戻ってません。
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