※この作品はR-18です。

魂の座 一部 凍えた魂   作:伊駒辰葉

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ここから十一章です。
この話はこの章でラストです。

エロシーンはありません。


十一章
再度の目覚めを


 暗い闇の中に赤い光が灯る。優一郎の研究室のカプセルの中でそれは静かに目を開いた。身体に絡み付いている液体に眉を寄せて頭を振ろうとする。が、思った通りに身体が動かない。何度か試していくうちに辛うじて瞬きは出来るようになる。それは数度ほど瞬きをしてからゆっくりと頭を上げた。

 

 酷い夢を見ていた気がする。生きたままで身体を裂かれたような思いがしたことだけは憶えている。それは腕に顔を伏せてじっと考えた。周囲を覆う液体は温かく、うっかりすると眠りこんでしまいそうなほどに心地いい。それは自然と目を閉じた。慣れてくると身体の感覚がつかめるようになってくる。ここは腕、ここは足、ここは胴。首や頭、そしてそれは試しに手を動かしてみた。

 

 細い指先が透明なケースに触れる。その瞬間、それは目を見張った。何かの流れがはっきりと見える。炎の揺らめきのように揺らぎながら青い光がゆっくりとケースに流れているのだ。

 

 これは、一体なんだ? 心の中でそう呟いてそれは両手をケースにあてた。青い光がケースを通り抜けて自分の身体に吸い込まれる。

 

 火藍(からん)。目を閉じていたそれの心の中にその名前が浮かぶ。青い光を目を閉じて受け入れると身体の中が熱くなる。火藍というのが自分を示す名前なのだとそれは理解した。心の中で何度かその名前を繰り返してみる。

 

 目を開く。火藍はゆらりと身体を動かして腕を引き戻した。右手を握ってこぶしを作る。次の瞬間、火藍の入っていたケースは粉々に砕け散った。満たされていた液体が音をたてて床に散る。火藍は破片を飛び越えて床に降り立った。

 

 深く息を吸う。意識すると肺の中に留まっていた液体が一気に消滅した。そのことを確認してから火藍は歩き出した。だがすぐに立ち止まる。冷たい床の感触が気持ち悪い。火藍は無造作に宙に手を伸ばした。意識を集中して服をイメージする。

 

「つっ!」

 

 激痛が身体を走る。火藍は舌打ちをして腕で身体を抱きしめた。どうやらまだ身体が力についてきていないらしい。

 

 仕方なく火藍はその部屋の中を探った。着られるような服を探す。一着だけ見つけたそれは男物の制服だった。自分の身体と服を見比べ、火藍はしばし考え込んだ。よくは判らないが、どうもこの身体にこの服が似合わない気がする。だが他に着られそうなものはない。火藍は仕方なくその制服を身につけた。余った袖と裾を折り返すとどうにか格好がつく。

 

 随分と可愛らしい依代に納まってしまったものだ。火藍は情けない気分でそう呟いた。試しに鏡に自分の姿を映してみる。勝気な面持ちをしてはいるが、火藍の姿はどこから見ても少女のそれだった。赤い小さな唇に触れ、火藍は深々とため息をついた。

 

 自分が龍神だということは判る。そしてこの身体がかりそめの器だということも理解できる。だが、今まで自分がどこで何をしていたのかがどうしても思い出せない。火藍は考えながら無意味に部屋の中をうろついた。

 

 目の端に青い光がひっかかる。火藍は顔をしかめて足を止めた。光の流れてくる方向を見る。どうやらそれは壁をすり抜けてこちらにたどり着いているらしい。火藍は息をついてその部屋から飛ぼうとした。が、まだ力に器がついてこない。仕方なく火藍はその部屋から歩いて出た。

 

 まずは光の正体を探らなければ。火藍は心の中で呟いて廊下を進んだ。途中、何度か妙な声に足止めをされたが気にしなかった。エレベーターの手前で降りてきた金属製の檻を強引に殴って壊す。どうやら自分がいる場所があまり普通ではないことは理解できた。

 

 エレベーターは開かない。火藍はため息をついてエレベーターの扉に直接手をかけた。息を吸って止める。一気に力をかけて火藍は無理やりに扉を開いた。壊れた扉の片方が千切れて廊下に落ちる。もう片方は開いた穴へと落下した。

 

 薄暗い縦穴が空いている。火藍は黙々と縦穴に入った。緊急用のはしごを軽々と上る。少し行ったところで今度は分厚い金属の板にぶち当たる。どうやらこれがエレベーターの本体らしい。火藍は片手と片足ではしごにぶら下がり、右腕を大きく振った。一度の衝撃で金属が大きくへこむ。二、三度ほど殴りつけて火藍はエレベーターに穴を作った。ぎりぎりだが、一人くらいなら何とか通れそうだ。

 

 穴にぶら下がってよじ登る。エレベーターの中は薄暗い。火藍は目を細めてエレベーターの扉に手をかけた。強引に扉を開く。すると一気に視界が明るくなった。

 

 ふと、誰かと目が合う。火藍は反射的に床を蹴った。驚いた顔をする少女に一気に迫る。




そろそろ壊れますw
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