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ぐったりとベッドに沈んだ水輝を見つめ、真也はため息をついた。既に立城の気配は吸い尽くしている。水輝も望むものを手に入れ、今は死んだように眠っている最中だ。
もう、おかえり。立城の声を思い出す。真也は深々と息をついてベッドから立ち上がった。帰れと言われるのは心外だ。それに言われたところでどこに帰ると言うのだ。真也は苛立ち任せに椅子を蹴倒した。派手な音を立てて椅子がテーブルとぶつかる。
力は身体の中で膨れ上がっている。真也は暗い部屋の中で目を細めた。意識を懲らすと地上にある立城の気配が読める。低く笑って真也は気配の方を向いた。立城はゆっくりと、だが確実に真也に近づいている。
ほら、やっぱりお前も会いたいんだろ? 真也はそう呟いて気配を意識で追った。自然と意識が糸のように伸び、立城の気配まで一直線に駆けて行く。たどり着いた意識は立城の気配に絡まり、直接に真也に感触を伝えてくる。真也はぞくりとする身体を自分の腕で抱きしめ、意識を懸命に辿った。
ゆらりと身体を起こして真也はその部屋から出た。廊下に出ると明るい光に包まれる。真也は無言で歩き出した。とにかく早く会いたい。直に目で立城を見たい。そして一刻も早く腕に抱きしめたい。真也は高鳴る胸を押さえて廊下を歩いた。時折、意識に捉えた立城がよろける。その度に真也は薄く笑って深く息を吸い込んだ。意識の糸を伝って気配が流れ込んでくる。
一気に引っ張っちまおうかな。そう思ってから真也は自分の考えを否定した。頭を振って浮かんだ考えを追い払う。立城が自分の足で来るからこそ意味があるのだ。そうでなければ互いに会いたいのだという思いは確認できない。真也はくすくすと笑ってゆっくりと廊下を歩いた。
帰れっつってたの、やっぱ嘘なんじゃん。糸を伝って流れてくる立城の思惟を読んで真也は嬉しそうに呟いた。心の底から真也を求めて立城はこちらに向かっている。そのことが手に取るように真也には判った。暗い道を一歩ずつ、確実に立城は進んでいる。
途中、ちなりとすれ違う。だが真也はそのことに気付かないほど、立城の気配を探ることに没頭していた。ちなりが驚いたように目を見張って真也の背中を見送る。その唇が羅木くんじゃない、と呟いていたことにすら真也は気付けずにいた。
他人のことなどどうでもいい。立城に会いたいという思いだけが今の真也を支えていた。地上に続くドアを開けて外に出る。真也は空にかかった月を見止めて足を止めた。
丸い月が天頂に近づいている。
そろそろたたみに入っているので色々速いです。