※この作品はR-18です。

魂の座 一部 凍えた魂   作:伊駒辰葉

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火藍が容赦なく暴れます。
エロシーンはありません。

壊れます!

注意!!
一部、グロと思われるかも知れないシーンがあります。



破壊と本能 2

 あなたは誰。保美はそう訊ねようとした。が、少女と目が合った次の瞬間、保美の身体は宙を舞った。廊下の天井に激しく機体がぶつかり、その後に床に叩き付けられる。

 

「あなた……は……だれ」

 

 音声に雑音が混ざっている。保美はのろのろと身体を起こして少女を見た。少女は静かな眼差しで保美を見下ろしている。

 

「わたしの名は火藍だ」

 

 そう言うなり、火藍は床を蹴った。保美に一気に迫る。保美は機体を襲った衝撃に声を上げようとした。が、それより早く火藍のこぶしが機体の中心を貫く。機体内にエラー音がこだまする。それを聞きながら保美はうっとりと目を閉じた。

 

 手足が千切れていくのが判る。保美は火藍に腕と足を引き千切られた。機体にかかる負荷が一気にストレス値に変換される。壊されている痛みが快感になり、それが余計に保美の機体を欲情させた。断続的な声を上げながら保美は無意識に腰をひくつかせた。

 

「情報を貰うぞ」

 

 そう告げたかと思うと、火藍は保美の頭を片手でつかんだ。反対の手が保美の胸を貫く。保美は唇から涎を垂らして声を上げた。ここまで壊されたのは生まれて始めてだ。しかもこんなに壊れているのに自分はまだ感じることが出来る。与えられた快楽と痛みが保美を一気に絶頂へと導いた。

 

 ふと、痛みが消える。保美は壊れたまま、床に投げ出された。視界がぐらりと揺れて自分が倒れたことが理解できる。保美は絶頂の余韻に浸りながら、保美は自由になる視線を動かした。

 

 火藍は静かな眼差しを廊下に向けている。保美は火藍の視線を追ってようやくその存在に気付いた。廊下の向こうにカレンが立っている。

 

「てめえ! 仁科に何しやがる!」

 

 そう叫んでカレンは床を蹴った。一直線に火藍に迫っていく。その背後で動いたのは要だ。もみ合う二人を警戒しながら要が保美に寄ってくる。

 

「仁科さんっ! 気を確かに!」

 

 必死な面持ちで要が声をかける。だが保美はうっとりと目を潤ませていた。要が慌てたように千切れた手足を集めようとする。保美はそっと制止の声をかけた。

 

「にげて……くだ、さい。ここ、は、きけ、ん……です」

 

 要は生身だ。自分たちのように壊れたら修理すればいい訳ではない。要が幾ら格闘戦に自信があると言っても、火藍と名乗るあの少女と戦えばきっと無事ではいられないだろう。

 

 頭だけを残して死ぬのならいいが、火藍のあの容赦のないやり方では頭すら潰されるかも知れない。そうなれば要をヒューマノイド化するのは無理だ。

 

「わたくしに逃げろと!?」

 

 憤ったように告げつつも要はカレンたちを怯えた目で見ている。カレンがこぶしを繰り出す。が、火藍があっさりそれを避けて逆に裏拳を放つ。顔面を強打されたカレンが壁に激突する。そんな戦い方を見ていた要の顔からは血の気が引いていた。

 

「ぶ……ちょう、に……れ、んらく……を」

 

 雑音が入りすぎて保美の言葉は殆ど判別できない。が、要はその中から何とか音声を拾ったのだろう。困惑した面持ちで保美を見つめる。部長と保美が言った相手が優一郎のことかと確認される。保美は力なく笑って頷いた。

 

「わかったわ。わたくしが居ても、足手まといになるだけでしょうし」

 

 心底悔しそうな顔をしつつ要はそう吐き捨てた。だが理性では納得しているのだろう。嫌がる素振りはない。お願いします、という意味を込めて保美はもう一度だけ頷いた。少し動かすたびに機体は激しい悲鳴を上げている。

 

「大丈夫よね? 直せるわよね?」

 

 不安そうに訊ねる要に保美は出来るだけの笑みを向けた。それが答えだと理解したのだろう。要が立ち上がる。戦う二人を横目に見つめ、要は廊下を駆け出した。火藍が要に腕を伸ばしかける。だがその手はカレンの足刀に阻まれた。カレンも要を逃がさなければならないことに気付いているのだ。

 

「カレンさん! 後は頼みましたわ!!」

 

 そう叫んで要が脱兎のごとく駆けて行く。だがカレンは返事をする暇がなかった。次々に繰り出される火藍の攻撃を止めるのが精一杯というところだ。

 

 きっとカレンもかなわないでしょうね。保美は冷静にそう判断した。カレンは今のところは攻撃を何とか止めてはいる。だが火藍がまるで試すように一撃一撃を放っているのが判る。何故なら攻撃のスピードが少しずつ上がっているからだ。

 

 止めそこなった膝がカレンの背中を強打する。カレンは声もなく吹き飛ばされた。衝撃に壁に亀裂が走る。

 

「な、めやがって……。てめえは絶対に許さない!」

 

 よろけながらカレンが立ち上がる。保美は微かに目を細めた。次いでしっかりと瞼を閉じる。音だけでカレンが何をしているのか、保美には理解できた。カレンは乱暴に服を引き裂き、腹を露にする。機体内に格納された銃火器を取り出し、素早く火藍に向ける。そこまでにかかる時間はほんの一瞬だ。プログラムされた動きに迷いはないし、何よりカレンの反射速度はヒューマノイドの中でも群を抜いている。

 

 音を頼りに保美は頭の中でカレンの動きをシミュレートした。次いで瞼の向こうが一気に明るくなる。目くらましの照明弾が炸裂したのだ。

 

 激しい音が立て続けに響く。保美の頭の中で出来上がったカレンの動きは悉く火藍に阻まれている。ぶつかり合う音の源はカレンが攻撃を止められた際に生じた衝撃音だ。そうしている間にゆっくりと光量が落ちていく。保美はどうにか目を開けられる頃になってから瞼を静かに上げた。




機械は壊れても……ですので、容赦ありません。
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