気配をたぐり寄せるように指を握り締める。伸ばした意識の糸に絡まれたまま、それはゆっくりとだが真也に近づいていた。月明かりの下、真也は薄く嗤いながら手に握った意識の糸を引いた。
空気の冷たさすら感じなくなる。真也は身体を引きずるように歩く立城の姿を意識でだけ捉えていた。柔らかな面立ちに苦しむような表情を浮かべ、立城はよろけながら校門にたどり着いている。真也ははやる心を抑え、グランドの中心に一人で立っていた。
意識の糸を両手につかみ、強く引く。すると捉えられた立城がよろけてその場に膝をついた。あ、と真也は小さく声を上げて思わず糸から手を離した。立城はすぐに立ち上がってまた歩き出している。真也は頭を強く振って地面に落ちた糸を拾い上げた。
今度はお前が迎えにきてくれるよな。そう呟いた真也の顔には冷ややかな笑みが浮かんでいる。だが真也自身、自分が笑っていることを自覚してはいなかった。立城以外のものは何も要らない。狂気にも近い思いだけが真也を支えていた。
校門をくぐり、立城が歩いてくる。真也は糸を手繰るのを止めて目を凝らした。やがてグランドの隅に小さな点のように人影が見えてくる。
「立城!」
真也は我慢できずに駆け出した。それと同時に意識の糸がかき消える。頼りない足取りの立城の元へ、真也は一直線に駆けて行った。近づいて行くにつれて立城の姿がはっきり見えてくる。叫ぶようにして名を呼ぶと、立城が足を止めて顔を上げる。真也は腕を伸ばして立城を抱きしめた。
両腕に立城を抱きしめ、真也は安堵の息をついた。ずっと待ち望んでいたものがようやく手に入った。充足感がいっぱいに心を満たしていく。
「真也」
掠れた声で立城が呼ぶ。強く締めすぎてしまったかも知れない。真也は慌てて腕の力を緩めた。腕の中で立城が身じろぎする。ほっとしたように息をついた立城を見つめ、真也は小さく笑った。顔を見合わせて改めて互いに笑う。
懐かしい思いが胸に蘇る。共に過ごした日々は短かったが、とても幸せだった。出来ることならずっとそのままいられたらと望んだ。けれどそれは叶わない夢でしかなかった。
けれど今、こうしてまた会うことが出来た。もう、二度と離れない。真也は立城の肩に額を乗せ、そう囁いた。立城がゆっくりと真也の背中に手を回す。
「うん……」
耳元に聞こえた微かな返事に真也は心の底からの笑みを浮かべた。
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1,000字を切ったので蛇足ですがあれこれと。
この章でこの話は終わりです。
でも続きがけっこう長くて……この話は『魂の座』の1/4です……(汗)
長すぎるのは承知しているので、お付き合いくださる方も大変なのでは、と思ってます。
今後もよろしくお願いします。
真也も実はなかなかのくせ者なので……。