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狩る者と狩られる者は常に対立する。それが食物連鎖というものだ。そして頂点に立つ者には天敵はいない。少なくとも頂点に立つものには命を積極的に狩る、という目に見える存在はないのだ。
食物連鎖は一般的にピラミッド型に築かれている。つまり、狩る者の方が少なく狩られる者の方が多い。それはだが逆に言えば狩られる者たちは様々な意味で進化した子孫を残せるという可能性が高いとも言える。何故なら狩られる分だけ多くの子孫を残すからだ。
そして通常、狩る者と狩られる者とでは力の差がある。弱肉強食という訳だ。数の問題はいいとしても、ハンターと龍神ではこの力のバランスが悪すぎるのだ。
ハンターと龍神の関係は最初から実に奇妙だった。狩られる者である龍神の側が圧倒的に力で勝っていたのだ。これではハンターは最初から滅びろと言われているようなものだ。しかも数で勝っているならともかく、それすら龍神にはかなわない。では何のために世界はハンターを生み出したのだろう。
龍神の数を調整するにはハンターは余りにも非力すぎた。それ故、当時、討伐命令を下された龍神たちはハンターたちを絶やしてしまえばいいと考えたのだ。だからこそあの悲劇は起こった。ハンターの可能性のある者全て、つまりその疑いのある者は根こそぎ殺されたのだ。
人の輪廻に決してかかわってはいけない。無用に人に手をかけてはいけない。この取り決めは龍神が生まれてからこの時まで守られてきた。だがその禁忌を龍神たちはある意味では破ってしまったのだ。
龍神たちの多くは自分たちの存在の意味を考えない。世界が望み、世界が願った故に我がある、と考える。だからこそ自分に疑いを持ったりすることはない。決められた通りに働き、天寿を全うするその時まで世界の意志に従おうとする。
だが龍神には犯さざるべき禁忌というものが存在する。これは厳密に言うと龍主である天輝が決めたものではない。天輝が生まれるより以前から決められていたことだ。誰が、と訊かれれば答えられる者はないだろう。世界に一番最初に生まれた紫翠ですら、その答えは持ち得なかったかも知れない。
では、誰が決めたのか。禁忌と指定した存在は誰なのか。だが龍神たちはまずそれを疑わない。例えばここで立城が龍神の誰かに同じ問いかけをしたとしても、恐らく答えは決まっている。
天が決めたのだ、と。全ては世界の意志なのだと答えるだろう。
それが不服だと言ったら世界はどうするのかな。木龍の頂点に位置する立城はそう考えた。そもそもハンターの存在からして奇妙な点が多すぎる。そしてその疑問点を遡っていけば、当然のように龍神の禁忌の存在にぶち当たるのだ。
バランスの悪い弱肉強食の関係性と、誰が定めたのかも判らない禁忌の存在。唐突に世に現れた誓約者たち、そしてその悲惨な末路。考えればきりがない。だが他の龍神たちは何故かそのことを疑問にすら感じていないのだ。
一つずつ疑問点を解決しようと試みた立城は、悉くそれを邪魔された。何故か狙ったように計画は常に狂わされ、結局ははっきりした答えを得ることも出来ないまま終わることが多かった。
天が望み、世界が願った末に生まれたハンターたちの存在意義は何だろう。結局、ハンターたちは一度は滅ぼされてしまったのに、また新しく生まれている。それが人の手による命だとしても、存在に変わりはない。順もそんな中の一人だった。
そもそもの発端は恐らく龍神たちが無関係な人間に手をかけたことにある。そして次々にゆがみは重なり、あり得ない事象が引き起こされる。龍神と龍神の間に子供が生まれてしまったのだ。そして彼らは地上に下ろされた。特殊な能力を持つ誓約者として。
黒妖牙の反乱に伴って起こった大戦。あり得なかったはずの金龍神の死。挙げればまだ歪みはそこここにある。
そして龍神たちの命を奪うハンターたちの存在。彼らは龍神の命を屠るという目的とはまた別に、はっきりとした疑問を持っている。ハンターたちは己の存在理由を疑問に感じているのだ。そこが龍神と決定的に違う。
ある意味では龍神たちは盲目的に世界の意志を信じている。それは力が龍神そのものであり、それ故に世界にばら撒かれたあらゆる力に反応する故に起こる現象ともいえる。龍神たちは力を過信し、己に疑問すら抱かない挙句、世界の意志を少しでも理解しようとする。そして……世界の理、成り立ち、意志を理解した気になる。だからこそ世界を信じ続けられるのだ。
生まれる筈のなかった夜叉が生まれたのも、恐らくはハンターを一度根絶やしにしてしまったからだ。何故なら、世界の意志がハンターを生んだのなら、龍神たちはそれを根絶やしにする必要はなかったのだ。まして、ハンターの疑いが少しでもあるからと、罪のない人々に手をかける必要などどこにもない。
人々の感情は、抑制力が欠けているために垂れ流しにされている。龍神たちに無残に殺された者たちが何も思わず死んでいった筈がない。そこには大なり小なりの感情が芽生えた筈だ。それも決して明るいものではなく、どちらかといえば闇に近い感情が。龍神たちは力で全てを測るが故に、それらの感情に無防備に晒され、少しずつ、だが確実に歪みを器の中に取り込んでしまったのだ。
一度、死に絶えた筈のハンターが再び世に現れた時、その増え方はそれまでとは大きく異なり爆発的な勢いだった。数にすればささやかなものだとしても、加速度的にハンターは増えている。こうしている今もなお、どこかでハンターは生まれているのだ。
説明長いのですみません……。