※この作品はR-18です。

魂の座 一部 凍えた魂   作:伊駒辰葉

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説明ぽいのが続きます。
エロシーンはありません。


龍神とハンターと世界 2

 だからこそ、関わりあいたくなかった。立城はそう胸の中で呟いた。だからこそ、順に会う訳にはいかないと思ったのだ。それまで決して表には出したことのない疑問が溢れてしまいそうだったから。

 

 ハンターたちは自分たちがどうして存在しているのかを必死で考える。考えずにはいられないのだ。その狂気にも似た飢餓感のために。思い悩み、苦しみ、けれど仲間たちの多くが同じ思いをしているという奇妙な安堵感を得る。だからこそハンターたちは自ら死を選ばずに済む。少なくともたった一人で苦しんでいる訳ではないのだから、とささやかな希望を胸に狩りを続けるのだ。

 

 狂信的に世界を思い、己の力を過信し続ける龍神と、今日生きる糧を得るために懸命に生き続けているハンターたち。立城はその両者を比べた時、どちらが真剣に生きているだろうと考えてしまうのだ。決して、これまでの龍神たちが考えなかったことを考えてしまうが故に、立城はハンターたちとは隔絶した生き方をしてきた。ある時期まで。

 

 禁忌を取り決めたのは天だと龍神は言う。それならば大人しくハンターに狩られろというのが世界の意志ではないのか。絶対に口には出せない考えがどうしても頭に浮かぶ。だからこそ立城は試したのだ。

 

 大きく分割された力を合わせた時、世界はどうするのだろう。立城はまず、そこから確かめようとした。世界がその意志で力を分けたとするなら、わざと一つにしようとしたらどうなるのか。だから立城はわざわざ翠を地上に招き、戦いを強いた。両者の力がぶつかった際の世界の反応を確かめようとしたのだ。

 

 結果的には一度分かれた力が一つに戻ることはなかった。まるでそのことを読まれていたかのように、一つにするにはピースが足りなかったのだ。

 

 そのピースを握っていたのが、死んだ筈の真也だった。たった欠片ほどのものだったが、真也は木龍の力を持ったままで死んでしまったのだ。そしてその魂は冥界にも行けず、かといって地上に戻ることも出来ないまま、袋小路に嵌ってしまった。それを救い出してくれた翠には感謝しようと心から思う。が、その方法は決して立城が感謝できるものではなかった。

 

 翠は死に損なった真也の魂を凍らせて固めてしまったのだ。輪廻に戻すこともなく、ただ時空の狭間で生き長らえさせる。そうなったことが判っても、立城には手を出すことが出来なかった。翠は伊達に時空を司る龍神なのではない。翠がその気になれば、誰にも介入できない空間を作り上げることなど造作もない。それが翠の属性なのだ。

 

 力を一つにすることは出来ない。時間を遡り、紫翠に邂逅したが、それでも疑問は解けない。結局、立城の計画は中途で放り出されることになった。もっとも、立城にも何も得るものがなかった訳ではない。天輝が滅したことにより、水輝が本来の力を取り戻したのだ。

 

 その頃からだ。ハンターたちが集団で龍神を襲うようになった。が、今度は討伐命令を下す天輝はいない。断罪の主はある意味では天輝よりも世界の意志に忠実である故に、ハンターたちを狩ろうとはしなかった。

 

 戸惑う龍神たちとは対照的に、ハンターたちは狡猾に罠を張るようになった。そこに誰かの入れ知恵がなかったとは言わない。が、ハンターたちは懸命に生きる術を手に入れようとしていたのだ。弱いから群れる。食べたいからみんなで狩る。みんなで狩ったのだから、糧はみんなで分ける。決して満たされることはないが、これなら死ぬことはない。

 

 主を失った龍神たちはそこで焦り始めた。それまで天輝の言うままに動いてさえいれば良かったのに、ここで初めて現実に直面させられることになったのだ。

 

 力のない龍神たちは次々にハンターたちに狩られていった。順という、生きる術の一つを手に入れたハンターたちに対するほどの力がなかったのだ。順の率いるハンターたちは次々に龍宝珠を狩っていく。

 

 世界を信じ、世界の意志を読み、見てはならないものを見てしまったために、龍神たちはとうとうハンターに抗する術すら見失ってしまった。

 

 わたしたちは世界に選ばれた存在だったのに。どこかで死に行く龍神が漏らした声を思い出し、立城は微かに笑った。違う。龍神は選ばれていた訳ではない。最初から世界は誰も選んでなどいないのだ。もし、声の主が生きていたら、傍に飛んでいってそう告げただろう。だが、悔しそうに漏らした声の主は立城が気付いた時には既に絶命していた。

 

 この星は青い。それは水が星の大半を占めているからだ。そこで龍神たちは気付かなければならなかったのだ。水輝の存在の意味に。

 

「……ちょっとお。不穏なこと考えつつ、それ、垂れ流しにしないでくんないかなあ、もう」

 

 どこか苦しそうに告げて順が頭をかきむしる。立城はふわりと笑って首を傾げてみせた。だが決して声は出さない。

 

「いや、あのさ。わざとオレに聞かせてるってのは判るけど、もちょっと……その、オブラートに包んでみたりとかさ。そゆ表現、出来ない?」

 

 言葉を柔らかくしたところで、事実は事実だ。何も変わらない。立城がそう考えたところで順が深々とため息をつく。立城があえて順に向かって思惟を流しているのとは逆に、順の感情は器の中でぴったりと閉じている。だがそれでも立城は意識をわざと順に向けるのをやめなかった。

 

 死ぬはずのなかった金龍神が死んだ時、龍神たちはその魂を解放するべきだったのだ。そうすれば少なくともあれほどまでにハンターたちは増えなかった。何故ならハンターたちは世界の歪みそのものだからだ。




あくまでも立城視点の話なので、確定情報という訳では……。
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