今回の話はエロとバトルが多目です。
身体がだるい。多輝は薄く目を開けて疲れたため息をついた。チェックと称されてはいたが、はっきり言っていいなぶり者にされた気分だ。多輝はふて腐れた顔を枕に強く押し付けた。
窓からは嫌に明るい月の光が差し込んでいる。多輝はふと喉の渇きを覚えてベッドを降りた。冷蔵庫を開けるとミネラルウォータが入っていた。一本取り出して封を切る。数口ほど飲んでから多輝は目を上げた。
変な感じがする。多輝は眉をしかめて周囲を見回した。床に胡座をかいて座る多輝を白い月光が照らしている。周辺を見ても特に変わったことはない。多輝は肩を竦めて再びベッドに入ろうとした。
違和感が一層強くなる。多輝はベッドの縁にかけていた足を下ろし、無言で視線をずらした。この部屋ではない。壁の向こう、少し離れた場所に異変が起こっている。人にはあり得ない力を行使し、多輝は屋敷内を探った。厳しい眼差しをしたまま意識を集中する。
不意に多輝の感覚を何かが弾いた。多輝は俯けかけていた顔を上げ、鋭い視線でそちらを見た。ミネラルウォータの瓶を持ったまま歩き出す。伸ばした感覚の触手を辿り、多輝は足音を殺して廊下に出た。
感覚を弾いたのは正体不明の力だった。今まで感じたことのない奇妙な力がとある場所から発されている。その部屋は立城の執務室だ。過去にこの屋敷を訪れた時の記憶を頼りに多輝は黙々とその執務室を目指した。
やがて扉に辿り着く。多輝は目を細めてしばらく室内の様子に聞き耳を立てた。だが特に物音はしない。だが間違いなく奇妙な力はこの部屋から流れてきている。多輝はため息をついて目の前の扉をノックしようとした。だが扉に手が触れる寸前に思い止まる。ここは立城の私室とも呼べる執務室だ。もし本当にこの部屋から力が流れているなら立城に何らかの異変があったと見るべきだ。多輝は自分の考えに頷き、そっとドアノブに手を伸ばした。
薄く扉を開ける。多輝は暗い室内を目だけで探った。扉の隙間から様子を伺っていた多輝は、ある一点を見つめて目を見張った。白い何かが揺れている。そして多輝の耳に微かに音が聞こえてきた。人の息遣いだ。そして多輝が感じた力は間違いなくその白く揺れるものがある付近から流れてきている。
多輝は懸命に目を凝らして次に絶句した。白く揺れていたものは白衣だ。多輝は目を見張ったままその場に釘付けになった。白衣を揺らして由梨佳が犯されている。由梨佳には既に意識がないのだろう。揺すられて身体は動いてはいるが、全く反応していない。そして由梨佳の腰をつかんで揺すっているのはあろうことか立城だった。
嘘、だろ……?
多輝は心の中で力なくそう呟いた。由梨佳は優一郎と絵美佳の母親だ。そんな由梨佳と立城は交わっている。多輝は力なくその場にへたり込んだ。あまりのショックに身動き出来ない。早くここから立ち去りたいと思うのに、どうしても足が動かない。
だが心に受けたショックとは裏腹に、多輝の機体は如実に反応した。他人の性行為を覗き見しているという事実が欲望をそそる。多輝は自分でも気付かないうちに息を殺して食い入るように二人を見つめていた。
不意に立城が動きを止める。ゆっくりと腰を引き、手を離す。すると支えを失った由梨佳の身体は床に崩れ落ちてしまった。それを見下ろしていた立城が急にくすくすと笑い出す。多輝は機体を自分の腕で抱きしめて事の成り行きを見守っていた。
「そんなところで覗いていないで入っておいで」
急に視界が開ける。多輝の目の前にあった扉が勢いよく開いたのだ。驚きに力を抜いてしまった多輝の手から、ミネラルウォータの瓶が転がり落ちる。多輝は慌ててその場から駆け出そうとした。だがどうしても身体が動かない。そこで初めて気付く。何かが多輝の身体を拘束している。多輝は驚きに息を飲んで足元を見た。いつの間にか床から蔦が生えている。
「おいで」
立城が手招きをする。多輝の意志を無視して身体が動き始める。手足に絡みついた蔦が勝手に多輝の身体を動かしたのだ。多輝は焦って蔦を引き千切ろうとした。だが思うように手足が動かない。
立城は全裸に近い格好をしていた。申し訳程度に一枚だけシャツを羽織っている。床に打ち捨てられたズボンを見下ろし、多輝は歯軋りした。一体、何が起こっているのだろう。
「てめえ……。どういうつもりだ!?」
さっきまで由梨佳を犯していた余韻からか、立城のペニスは勃起しきっている。それを隠そうともせず、立城は笑って首を傾げた。そのままゆらりと腕を伸ばす。多輝は自分に伸びてきた手を避けようと、懸命に身体をよじった。だが蔦は頑として外れない。
「多輝を犯そうと思っているだけだよ」
さらりと告げて立城は多輝のセーターをつかんだ。驚く多輝を余所に立城が腕を振る。柔らかなセーターはあっという間に破れてしまった。
「てめえ! さては酔っ払っていやがるな!? いいかげん、正気に戻れ!」
違和感はまだ消えてはいない。多輝が感じた異質な力は立城から漂っていた。それまで感じたことのない残虐性に富んだ力……。多輝はその力に晒されているという恐怖を押し隠して必死で叫んだ。
「そうだよ。僕は酔っているんだ」
事もなげに肯定し、立城は多輝のセーターをつかみなおした。剥き出しになった多輝の肌に唇を這わせる。多輝はその感触に思わず小さな悲鳴を上げた。先ほどまで由梨佳に弄られていた感触がまだ機体には残っている。多輝の意志とは裏腹にその機体はあっけなく欲情していく。
「綺麗な身体だね。本当に生き写しだよ」
多輝は声を殺して顔を背けた。立城が言わんとしている意味は理解できない。だが、今の立城がいつもとは違うということだけは判る。きっと酔っているからだ。多輝は黙って目を逸らしていた。
唇で白い肌を辿っていく。立城の緩慢な愛撫に次第に多輝も平静ではいられなくなった。立城の唇が剥き出しになった乳房に辿り着く。
「そんなに気持ちいい? 僕は優一郎くんではないのに」
そう告げて立城は静かに乳房を両手に包んだ。指先でしこった乳首を撫でながら膨らみを揉む。立城の愛撫に耐えかね、多輝は声を上げた。
「なに、あっ、やめっ……あっ!」
甘い快感が身体を駆け抜ける。多輝は熱い息と共に声を上げ、首を仰け反らせた。伸びた白い首筋に立城が唇を落とす。
不意に多輝の背後で空気が揺れる。多輝は慌てて後ろを振り返った。床から巨木が生えている。多輝はその木に押し付けられるようにして立城の愛撫を受けた。立城の愛撫は執拗に多輝を攻める。
因果応報。