(エロシーンはありません)
「要さんったら。無邪気ですこと」
「まあ……無邪気っていうか……いや、まあ栄子さんの親ばかは前からだけど」
冷静な順の指摘にも栄子は楽しそうに笑っているだけだ。要するに栄子は親ばかであるという自覚がしっかりあるのだ。それだからこそ指摘しても全く動じない。やれやれ、と肩を竦めて順はソファに戻った。出された紅茶のカップを取る。
いつだったか今の順と同じように紅茶を寄越せといつも言っていた男がいた。懐かしさに目を細め、順はカップを唇にあてた。猫舌だとか言ってたっけ。当時の事を思い出して順は小さく笑った。何ですの、と栄子が訊ねる。順は笑って目だけを上げた。
「うちの屋敷に紅茶好きのやつが泊まったことがあってね」
「まあ、順さんのお屋敷に?」
他愛のない話だ。そう前置きして順は数ヶ月前の話を栄子に聞かせた。
数ヶ月前のことだった。一体のヒューマノイドを巡って木村の屋敷に刺客が送り込まれた。その男の名は水輝。だが水輝は本来の強さを殆ど発揮することが出来ず、逆に順に捕らえられてしまった。
龍神と呼ばれる種である水輝が易々と順に捕まってしまったのには理由がある。順は元々、人ではない。人と龍神との合成体なのだ。人工的に二種を混ぜられた結果、順は龍神にはなれず、かと言って人としても生きられない体となった。龍神たちの持つ命の輝きを狙う、ハンターと呼ばれる存在になったのだ。ハンターであった順はその力を使って水輝を拘束した。
「まあ……順さんに勝負を挑んで負けたということかしら?」
何て無謀な。栄子は目でそう語っていた。だが順は軽く笑ってその言葉を流した。水輝が無謀なのではない。本来、ハンターがどんなに逆立ちしても決して龍神にはかなわない。龍神の輝き……宝珠と呼ばれる宝玉をハンターが狩るにはあらゆる条件が整わなければならないのだ。しかも水輝は龍神の中でも八大と呼ばれる力ある存在だ。少々、ハンターが束になったところでかなう相手ではない。だが順はその説明を栄子にはしなかった。人に説明したところで無意味だったこともあるが、出来れば栄子にそんな裏事情を聞かせたくなかったのだ。
順は屋敷に水輝を閉じ込めた。そして思う存分に水輝を蹂躙したのだ。その話に差し掛かったところで栄子の目が妙な輝きを帯びる。
「水輝ちゃんの身体ってば面白かったよ。男と女の性器が両方ついていてね。どっちもで悦ばせてあげたんだ」
「それはそれは……」
栄子は口許に手を当て、ほほ、と笑った。だがその目に宿る光を順は見逃さなかった。栄子は水輝の話を聞いて嫉妬しているのだ。順は自分の仕掛けが正しく動いていることを見て取り、小さく笑ってみせた。
水輝は順の意図したままに激しい快楽に溺れた。そして採集されたのが水輝の精液だ。それは今でも木村の保管庫にしまってある。いずれ時がくれば使うことがあるだろう。そして今、生物研究所では水輝の精液の分析が行われている。日々、順の屋敷には解析データが送られてくるのだ。
「そんな時だったかなあ。突然、水輝ちゃんが意識を取り戻しちゃってね」
苦笑しつつ順は続けた。次第に栄子は合鎚すら打たなくなっている。だが順は構わず続けた。栄子がゆらりと立ち上がり、静かに場所を移動する。順は隣に座った栄子を横目で眺めながら小さく笑った。
水輝が正気を取り戻した後、順は失っていた片目を取り戻した。水輝が強引に埋め込んだ力の欠片は今でも順の目として機能している。だが、順にとってそれは爆弾を抱えているようなものだ。いつ、水輝の力が弾けるか判らない。そうなれば今度は目が潰れるだけでは済まないだろう。その話をすると、栄子が痛ましさに顔を歪めた。
「実際、今の水輝ちゃんがどういう状況に置かれているのかを知る術がなくてね。オレも困ってるとこなんだ」
だがそう言いつつ順は心の底で笑っていた。困った顔をしてみせた順に栄子が頷いている。順はそっと手を伸ばして栄子の髪に触れた。ここ最近で艶を取り戻した黒髪をゆっくりと指ですく。
水輝は今、その質を二分されようとしている。だからこそ、順の目に嵌った力が強くなっているのだ。順は否応なくその力を外に放出しなければならなくなった。だがそれも順にとっては好都合でしかなかった。水輝の動向が自然と判るのに加え、その力を一部でも使うことが出来る。そうでなければ今回の計画は実行出来なかったからだ。
取り戻すついでに事が成せれば、オレ的にはラッキーだしねぇ。順は心の底でそう呟いて栄子をそっと抱き寄せた。
「調べて、くれるよね?」
耳元に囁きながら順は栄子のうなじをなぞった。細い首筋に指で線を描く。耳たぶを柔らかく噛むと栄子が身体を震わせた。既に術中にある栄子は順の言葉に声もなく頷く。
「こっちも絵美佳ちゃんの了承は取ったよ。要ちゃんも思う存分に暴れてくれるといいなあ」
赤い口紅の引かれた唇にそっと触れる。すると栄子は慌てたように首を振った。弱々しく抵抗する栄子を順は強く抱きしめた。
この話の大半はエロで成り立ってます!