エロシーンありです。
多輝はうろたえて優一郎から顔を背けた。
「べっ、別に緊張なんてしてないさ。屋敷に行くだけだし」
トンネルの壁には派手なペンキで落書きがされている。描かれているのは漫画のキャラクターだったり、アルファベッドだったりと、さまざまだ。多輝の目は意味もなく数々の落書きの上を行ったり来たりした。だがその中に刺激的な単語を発見して思わず悲鳴を上げかける。いつの時代にもそういう落書きはなくならないのだろうか。SEXという単語に目を奪われたまま、多輝は見知らぬ落書きの主に憤りを感じていた。
「ならいいんだけど……」
優一郎の心配そうな声が耳に入る。多輝は焦りの余り、勢いよく顔を戻した。だがそこで硬直する。いつの間にか優一郎が傍に近づいてきていたのだ。
「あ、う、うわ!」
うろたえ過ぎて多輝は優一郎から飛びのいてしまった。他意はない。だが優一郎の目にはそう映らなかったのだろう。心配そうな面持ちが今度は訝りのそれに変わる。
「もしかして、どこか調子悪いの?」
機体を作った本人だからこそのせりふだったのだろう。考えてみれば当り前の疑問だ。そう、優一郎が訊きたくなる程度には多輝の行動は不審だった。だが多輝はそのことには全く気付かず、慌てて優一郎の問いかけを否定した。しかも全力でだ。
「ち、違う! そんなことある筈ないだろう!? 調子悪いなんて、そんなことないってば!」
言葉に力を込めて吐き出した多輝を、優一郎はしばらく唖然とした様子で伺っていた。肩で息を吐きながら多輝は優一郎にちらりと視線だけ返す。だがどう見ても優一郎が納得しているとは思えない。首を傾げて怪訝そうに多輝を見つめている。もしかしたら余計に疑われたかも。多輝は遅まきながら自分の取り乱しように気付いた。
だが取り乱しもする。多輝は機体の反応にどうすることも出来ず困っている最中だった。優一郎の行動にいちいち反応する機体……。それをうっとうしいと感じたことはないが、実際に優一郎に対面している時は困ることも多い。何しろ多輝の意志を完全に無視して勝手に欲情するのだ。しかもどこでもそれが起こるため、今までの多輝は対応できずに慌てることも多かった。
多輝は力なく壁に身体を預けた。目を手で覆って深い息をつく。
「やっぱりチェックしたほうが良さそうだね」
優一郎の声がトンネルに響いた。一瞬、反応が遅れる。多輝が慌てて手を下ろした時には既に優一郎が動いていた。多輝の目の前に迫り、手を伸ばす。おもむろに壁に肩を押さえつけられて多輝は焦った声を上げた。
「おっ、おい、ちょっと待て! 別に大丈夫だって言っただろ!?」
だが優一郎は動きを止めない。今までも多輝がどんなに抵抗しようとしても、優一郎が行動を止めたことはないのだ。それは判りきっていたが、多輝は懸命に優一郎の手を解こうと試みた。
指先が優一郎の手に触れる。途端に電撃でも走ったかのように多輝の機体を激しい何かが貫いた。一瞬、意識がどこかに飛んでしまう。ため息混じりの声を上げた多輝は、そのまま優一郎の手首を握り締めた。
「い、やだってば」
だが言葉とは裏腹に機体は敏感に反応している。さっきまでは辛うじて保っていた平静状態が突如として快楽を導き出すものへと切り替わる。多輝の股間には生暖かなものが生まれていた。
「想像以上にストレス値が上がってるみたいだね。ごめん、僕のセッティングミスのせいかもしれない」
心底、申し訳なさそうな顔で優一郎が告げる。だがその表情を多輝は見ていなかった。声の響きだけでもきちんと聞き取っていれば優一郎の状態は判断出来ただろう。だが、この時の多輝はもう優一郎の状態に気を遣っていられなかった。首を振って言葉だけを否定する。
「だか、ら……平気、だから! や、やだってば! こんなとこで!」
多輝のジャケットの内側に優一郎の手は伸びていた。慣れた手つきでセーターをめくり、次いでその下にある下着のホックを探り当てる。多輝は声を殺して優一郎の手の動きに耐えた。
「大人しくして。とりあえず乳首の勃起状態をチェックするだけだから」
そう言いながら優一郎は下着の下、多輝の肌へと指を滑らせた。壁に押し付けられた格好で、多輝は声もなく仰け反った。喉から熱い息が漏れる。ここは往来だ。人が来たら、という不安感が逆に多輝の快楽を煽る。
だが多輝の感じている快楽とは正反対に、優一郎の手の動きは実に静かだった。半球を描く多輝の乳房の形を確かめるように、ゆっくりと指が滑る。優一郎の指の腹がやがて多輝の乳首を探り当てる。その瞬間、多輝は掠れた声を上げた。
「あっ、駄目だってば……っ!」
「勃起レベル4か……」
嫌がる多輝を押さえつけたまま、優一郎は指の腹で乳首を弄んでいた。こみ上げてくる切なさに耐えかね、多輝の目にはうっすらと涙が浮かぶ。それを見計らったように優一郎は突然、多輝から手を離した。急に刺激が消えたことで余計に身体が焦れてくる。多輝は息を殺して優一郎を見つめた。
ヒューマノイドはエロがなくては動作を続けられないという設定なので、仕方ないですね!(棒