「無理するからだよ。ビデオ観ながら、悶々としてたんだろ?」
多輝はそう言いながら由梨佳にそっと口づけした。性的に満たされていないということが、由梨佳の機体に負担をかけているのだ。多輝はそう判断していた。そしてその判断はあながち間違ってはいなかった。
「無理じゃないわ……よくあることだもの……」
由梨佳は多輝の口づけを受けた後、ぽつりとそう呟いた。どうして、と多輝が問う前に由梨佳が悲しそうに顔を背ける。多輝はそんな由梨佳に深く口づけた。どういう理由からかは判らない。だが由梨佳は満足に快楽を与えられていないのだ。由梨佳を抱きたい、という盲目的な思いと共に、多輝の心の中に別の思いが芽生える。
「先生はおれじゃ嫌か?」
静かに問い掛ける。多輝は由梨佳の目をしっかりと見つめていた。由梨佳の目に一瞬、戸惑いの光が揺れる。だがすぐに由梨佳は口許に苦笑を刻んだ。
「あなた、口調だけじゃなくて、なんだか本当に男の子みたいね」
「そう、かな。でも、本当に先生とやりたいって思ったんだ」
由梨佳の返答が曖昧に濁したものだということに多輝も気付いていた。多輝を教育する、という名目である以上、由梨佳が自分から多輝を受け入れるという訳にはいかないのだろう。少なくとも多輝はそう感じた。だが由梨佳はすぐにこう付け足した。
「あなたみたいな子。わたしは嫌いじゃないわ」
「判った」
由梨佳の微かな笑みが泣いているように見える。多輝は言葉少なに答え、由梨佳の胸元に唇を落とした。きっと男性器がついていたら今ごろは勃起しているだろう。そう思いながら由梨佳のブラウスに手をかける。剥き出しになった白い肌に幾つものキスマークをつけてからブラジャーのホックを外す。多輝は心の望むままに動いていた。
「やめて! きっと……」
弱々しい声で由梨佳が呟く。多輝は黙ってブラジャーをたくし上げた。興奮に勃った乳首を柔らかく吸う。由梨佳が嫌がっていた理由はすぐに多輝にも判った。由梨佳の乳首は人のそれとは違い、機械的な硬さがある。恐らく、内部にばねが仕掛けられているのだ。
「がっかりした? わたしの身体は、あなたほど精巧には作られていないの」
だって試作品だもの。小声でそう付け足した由梨佳に多輝は首を横に振った。指先で優しく乳首をつまむ。それから多輝は由梨佳に軽くキスをした。触れるだけのキスを何度か繰り返す。
「おれは先生がちゃんと気持ちいいかが心配だよ。おれ、こんな風に女の人の身体、触ったことないから」
「だいじょうぶよ。感度だけはいいもの。ほら、勃起レベルがあがるわよ」
そう由梨佳が告げると同時に乳首が指先で硬さを増す。多輝はうん、と頷いて由梨佳の胸に顔を埋めた。舌先で肌をなぞって乳首へと移動する。多輝は思うままに由梨佳の乳首を吸った。
「んっ!」
「でも、おれ、下手じゃない? 大丈夫?」
不安に思っていたことを口に出す。小さく呻いた由梨佳は苦笑して多輝の頭に手を乗せた。女らしい柔らかな手が多輝の頭を撫ぜる。
「気持ちいいわよ。もう乳首の勃起レベルが最大になるわ、今度はもっとはっきりわかるわよ」
多輝の指の下で乳首が硬さを増す。由梨佳の表情に悲しみのそれを見止め、多輝は訝りに眉を寄せた。さっきから由梨佳はなにを気にしているのだろう。多輝は由梨佳を指で弄りつつ、そのことを訊ねた。
「だって、おもちゃみたいでしょ?」
悲しそうな顔をしたまま由梨佳が小さく呟く。多輝はなんだ、と笑って首を振った。そんなことを思ったことはない、と告げる。そして多輝は続けた。
「だってちょっと形が違うだけだろ? 人間だって色々いんだし、問題ねえじゃん」
きっぱりとそう告げると由梨佳の顔から悲しみの表情が消えた。どこかほっとしたように微笑んでいる。多輝はうん、とその笑顔に答えて再び頭を下げた。
「優しいのね」
彼とは全然違うわ。由梨佳の微かな囁きは多輝の耳にしっかりと届いた。多輝は怪訝な顔で手を止めた。めくろうとしていた由梨佳のスカートを静かに下ろす。
「彼?」
「あなたに似てる人が居るの。わたしのことを、出来損ないの玩具としか思って居ない人が」
おれに? 多輝はそう呟いて不快感に眉を寄せた。一体、どんなやつだよ、それは。思わず苦い呟きを漏らす。しかもおれに似てるって? 多輝はそう呟いて頭をかいた。少なくともそれはおれじゃない。由梨佳にそう告げる。
「安心してよ。おれとそいつは別人だからさ」
そう言って多輝は由梨佳に笑みかけた。余程、傷ついていたのだろうか。だから自分は最初、拒絶されたのか。多輝は由梨佳の態度をそう理解した。そんなこと言う奴に似てたら、確かに嫌だよな。心の中で呟く。
「そうよね、ごめんなさい。ほんとうに、ごめんなさい」
由梨佳は顔を手で覆って小声で詫びた。どうやら似ているという事実が由梨佳の心に余計な負担をかけていたらしい。多輝はよしよし、と由梨佳の頭を撫ぜた。似ているという誰かのことを多輝は知らない。だが由梨佳に負担になっているなら、その不安は取り除きたい。そう思った。
そうじゃないと落ち着いてできねえだろ。心の底で声がする。多輝は慌ててその言葉を心の中で否定した。なにを考えているんだ、自分は。多輝は強く頭を振って急に浮かんできた妙な考えを追い出した。
由梨佳の快楽を引き出すのはわけなかった。多輝は無意識に手を動かし、由梨佳の情欲を次々に引き出した。どうして自分がそんな真似ができるのかを多輝は疑問には思わなかった。由梨佳を抱きたいという欲望が勝手にそうさせるのだ、と適当な理由をつけていたのだ。
指を巧みに使って由梨佳を絶頂に導く。満足するまで多輝はあらゆる手を使って由梨佳を攻めた。多輝の意志のままに由梨佳は乱れ、そして何度も果てた。そんな由梨佳の姿に多輝は更に欲情し、結局最後には由梨佳と女性器をすり合わせて互いに絶頂を迎えた。
やがて失神した由梨佳を立城が迎えにきた。修理するのだ、と言って客室を去る。多輝は手を振って見送ったが気分は晴れなかった。抱きたいと思っていた由梨佳を抱くことが出来たのだ。満足できている筈ではないのか。そう自分に言い聞かせる。おまけに自分も絶頂を迎え、身体が震えるほどの快楽を手に入れたのだ。
だがどうしても満足できない。多輝は客室で一人、自分の手を見下ろしながら考え続けていた。
そろそろ欲求不満の多輝w
ここで二章は終わりです。