※この作品はR-18です。

魂の座 一部 凍えた魂   作:伊駒辰葉

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何事か起きたようです。
エロシーンはありません。


ロボット研究会非常事態 1

 誓約者。優一郎は何度目かの呟きを口に乗せてみた。だが幾ら考えてもその存在の意味が判らない。試しに端末を操作して調べてはみたが、目ぼしい資料は手に入れられなかった。

 

 優一郎は不機嫌な顔で軽くキーを弾いた。該当する単語を片っ端から検索してみたが、目ぼしいものはヒットしない。最後の一つを画面に開いてはみたが、やはりそれも優一郎の求める情報ではなかった。ため息をついて優一郎は検索を中止した。

 

 情報処理の教師はまだ年若い男性が務めている。どこかの会社から雇われた臨時教師なのだ。優一郎は教卓の前に立つ教師をぼんやりと眺め、次いで画面に目を移した。表計算ソフトの使い方を教える授業なのだが、その内容の多くを生徒の大半は知り尽くしている。結局、課題を早々に終えた生徒たちはオンラインゲームにいそしんでいる最中だ。教師も特に授業を前倒しで進める気もないのだろう。のんびりと雑誌を読んでいる。

 

 清陵高校では修得分野別にクラスが分けられている。その種類は様々だが、教室と教職員の数の都合により、クラスは一学年で十に分けられている。大きく分けると芸術コース、体育コース、理数コース、文系コースの四つに分類されるが、その中でも、生徒は特に学びたい分野を選ばなくてはならないことになっている。

 

 そしてそのクラス分けは純然たる成績順で行われる。クラス名が若い方から理数コース、文系コースと割り振られる。だがそんな中で更に成績が優秀な者は、三年に上がる際に特別クラスと呼ばれるクラスになる。この特別クラスはほんの数名ほどしか該当者がいなくても作られるクラスだ。そして高校二年の秋、この時期には既に優一郎はそのクラスへの編入が決まっていた。

 

 だが優一郎はそのことを担任に知らされた時、すぐには返答しなかった。自分が特別クラスになるのはいい。だが、そのクラスに斎姫が入らなければ意味はない。何より優一郎は斎姫と別クラスになることを望んではいなかったからだ。

 

 結局、斎姫は優一郎と同じ特別クラスへ編入することが決定した。優一郎はそれを聞いて安心して担任に承諾の意を示した。成績的には申し分ないと先に判っていたとは言え、少し不安はあったのだ。

 

 キータッチの音だけが室内を満たす。さぼって騒いでいる生徒は一人もいない。それも当然だろう。そんな真似をすれば即座に教室からたたき出される。他の学習している生徒の邪魔になるからだ。そして教室をたたき出された生徒は課題を終えなければ授業に復帰することは出来ない。優一郎が今いるクラスはそういうクラスなのだ。

 

 軽くキーを弾く。優一郎は出された課題を全て終えて暇を持て余していた。立城に示されたあの言葉の意味も、学校に備え付けられている端末で調べたところで何かがつかめる筈もない。同じ端末を使うなら自前のそれを使った方がよほど頼りになる。気紛れに開いた画面を閉じ、優一郎は小さくため息をついた。

 

 この情報処理室の端末同士は有線で繋がれている。外部から侵入することの出来ないネットワークが築かれているのだ。そしてそのケーブルを通して生徒たちは互いに文字で会話を楽しむことが出来る。優一郎は表示されたコール画面に目を向け、キーボードに向き直った。とある生徒から端末操作についての質問が飛んできたのだ。

 

 こなれていない文章をざっと読んで軽くキーを叩く。簡潔に質問に応えてから優一郎はそっと目を上げた。質問してきた男子生徒が後ろを向いて手を上げる。礼のつもりらしい。優一郎もそれに手を上げて応えた。

 

 今度は違う生徒からメッセージが飛んでくる。ロボット研究会の部長を務めているからだろうか。どうやらクラスの全員が優一郎が機械に強いと思っているらしい。優一郎はやれやれ、とため息をついてメッセージを開いた。

 

 優くん、侵入者がいるみたい。今、地下二階よ。

 

 簡潔な文章に優一郎は僅かに目を見張った。どうやら斎姫は地下にある警備システムを介して異常を察知したようだ。

 

 直ぐ行く。

 

 そう返答して優一郎は端末の電源を落とした。唐突に立ち上がる。地下の二階と言えば該当する場所は一箇所しかない。絵美佳の科学部の部室、ロボット研究会の研究室等は全て地下一階に作られている。問題のその場所は間違いなく優一郎の私室とも呼べる特別研究室なのだ。

 

「どうした? 吉良。まだ授業中だぞ?」

 

 担当教諭が怪訝そうな顔でそう告げる。生徒たちは優一郎の行動に驚いたようだが、騒ぎはしない。キータッチの音が幾分か早くなっただけだ。端末を通して生徒同士で話しているらしい。だが優一郎はそんな彼らのことを気にも留めなかった。事は一刻を争う。あの部屋にはまだ作りかけの機体が幾つもあるのだ。それに外部に漏らせない情報もある。簡単に突破できる防御壁を築いたつもりはないが、それでも万が一のことがあれば大変だ。




この頃の清陵高校の設定がブレブレ……。
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