仕方ないこともあるというかー。
エロシーンはありません。
「第一な、おれだって博打してたようなもんだろ!? そもそも、誰だってそんなもんは勝手に決められなくてだなあ」
「さっきからね。不思議に思っていたんだけど」
立城はそう言い置いてカップを唇から離した。赤い紅茶を見つめて小さく笑う。水輝は立城の力が今は使えないことを全く気にしてはいない。いや、それどころかすっかり忘れてしまっているのだ。それ故に説明をしなくても立城が全ての事情を知っているのだと思っている。心の内側が読めなくてもその程度のことは立城にも理解できた。
「水輝、君は僕が何でも知っていると思っていないかな? 残念ながら僕には全く説明されていないんだけれど」
そう告げると初めて水輝が得心のいった顔になる。次いでその顔は不機嫌極まりないものへと変化した。説明しなくていいことなら説明したくない。そんな思いが顔ににじみ出ている。
「いいよ、別に。説明しなくても。その代わり、僕は愚痴には付き合わないよ」
「あー! 判ったよ! 説明してやる! おい、蒼。元の姿に戻ってやれ!」
半ばやけ気味に水輝が喚く。立城はカップをテーブルに置いて蒼を見やった。まだ口をつけていなかったらしい。蒼ははあ、と力ない返事をして紅茶が満ちているカップをテーブルに置いた。
空気が鳴り、長い髪が一瞬で薄青に染まる。そして現れたその姿を見止め、立城は思わず吹き出した。声を殺して腹を押さえる。だが笑いの衝動はなかなかおさまらない。予想もしなかったことに立城は本気で笑っていた。
「……くそう。やっぱり笑いやがった」
不服そうに水輝が呻く。だが水輝の機嫌は少しは良くなったようだ。さっきまでの噛み付くような勢いはない。要するに立城に何事かを言って欲しかったのだろう。そのことを立城は理解したが、どうにも笑いが止まらない。懸命に声を殺してはいるが、立城の唇からは少しだけ笑いが漏れていた。
「いつまで笑ってやがるんだ」
「だ、だって……ごめん、止めるの、しばらく無理かも」
これまでに水輝は数えるほどだけだが使い魔を作ったことがある。だがその悉くは男性だった。通常、使い魔は姫と呼ばれるくらいだから圧倒的に女性の数の方が多い。そんな中で何故か水輝の作るそれは男性ばかりなのだ。
蒼だけが不思議そうに立城と水輝を見ている。きっと生まれたばかりでまだよく理解していないのだ。立城は何とか笑いの衝動を堪え、紅茶のカップを手に取った。どうぞ、と目ですすめると、蒼もカップを取り直した。ついでに立城は自分の横を目で示した。水輝の横を示さなかったのは、まだ膨れ面をしているからだ。蒼は一瞬、困ったように眉を寄せたが、意外と大人しく立城の横に腰掛けた。
「くそー。絶対、今回は大丈夫だと思ったんだよ、おれも」
「何事にも絶対はありえないと思うけど」
簡単にコメントして立城は口許にカップを寄せた。だがまだ笑いの余波が残っていて、不自然にカップが震える。立城は何とかそれを抑えてカップに口をつけた。
「大体なあ。何でお前のとこばっかり女が集中してるんだよ。その運、少しはおれに分けてくれようとは思わないのか?」
どうにもならないことを水輝が口にする。立城は苦笑して首を振った。
「そもそもその性の別は使い魔には選べないし、僕たちにも当然指定できない。それは水輝がよく知ってるでしょ?」
指定できるなら水輝はきっと使い魔の全てを女性にしている。力の差は女性も男性も使い魔に関しては差はない。だがきっと水輝は女性を欲するだろう。そう思いながらコメントした立城の言葉に水輝は予想通りに落胆したため息をついた。
「そうなんだよなあ。おい。お前、生まれる時に男になりたいとか思ったんじゃあるまいな?」
今度は矛先が蒼に向けられる。蒼はここに来るまでに何度か同じやり取りを水輝としていたらしい。うう、と力なく呻いてため息をつく。
「何度聞かれましても、わたくしには生まれた瞬間の記憶などありませんし、そもそも主が望まないことを望む訳がないじゃありませんか」
涼やかな声が応える。こちらの方が水輝よりよほどしっかりして見えるのは気のせいだろうか。立城は胸の内でそう呟いて紅茶を啜った。あー、と声をあげて水輝が立城を指差す。
「お前、いま不穏なことを考えやがったな!?」
「……あのね。いまの僕が君への防御壁を完璧に築くのは無理だって判ってる?」
再び立城の力が弱くなっていることを忘れていたのだろう。立城がため息と共に吐き出した言葉に水輝がぽん、と手を打つ。やれやれ、今日は長い夜になりそうだ。そう呟いて立城は紅茶のおかわりをカップに注いだ。
テレパシーとかそういったものは、龍神の場合はデフォルトで持ってる奴が多いです。
感知されたくない場合、防御が出来ます。
中にはとても不器用というか、その手の能力を使いこなせないのもいますw