※この作品はR-18です。

魂の座 一部 凍えた魂   作:伊駒辰葉

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チョコレート美味しいですよね……(棒
エロシーンはありません。


朝のチョコレートと喧嘩 1

 白い皿に乗せたチョコレートを落とさないよう、注意深く階段を昇る。多輝は片手にティセットの乗ったトレイを支え、もう片方の手にチョコレートを乗せた皿を持っていた。レストランの給仕のように手のひらでしっかりとそれらを支えて階段を昇りきる。

 

 今日は珍しく朝から由梨佳の姿が見えない。使用人の話だとどうやら休暇を取って家に戻っているようだ。まあ、ずっとここにいる訳にもいかないか。多輝は使用人からその話を聞いた時にそう思った。由梨佳はあくまでも夫持ちの主婦だ。いつもいつも泊り込みで働く訳にもいかないだろう。そう考えると少し気分が沈む。多輝はため息をついて立ち止まった。

 

 今日は朝から空は快晴だ。秋晴れの空は澄み切っている。廊下の窓から覗く青い空を見ても多輝の心は晴れなかった。由梨佳がいないということがとても寂しく感じられる。もう一つため息をつき、多輝は再び歩き出した。

 

 昨日はとても楽しかった。多輝は元々、料理をするのは嫌いではない。昨日は多輝と奈月、そして由梨佳を加えた三人で菓子を作った。それは多輝にとって初めての経験だった。これまで料理をしたことはあるが、わざわざ菓子類を作ろうとしたことはない。一度だけ、ケーキを焼こうかなと考えたことはある。だがその理由を多輝は思い出せなかった。どうせ大した理由じゃないか。どれだけ記憶を辿っても思い出せなかったため、結局多輝はその理由について考えるのをやめた。

 

 角を曲がって進む。多輝は目的の部屋にたどり着いてドアを軽くノックした。だが返事がない。首を傾げて多輝は再度、ドアを小さく鳴らした。だがやはり中から声は返ってこない。きっと疲れて寝てるんだな。多輝は苦笑しつつそっとドアを開けた。きっと急に姿を現したらびっくりするぞ。そんな悪戯心から多輝は黙ってその部屋に入った。

 

 窓にはレースのカーテンがかけられている。窓枠に小鳥が数羽、とまっている。きっと餌でも貰いに来ているのだろう。多輝はそっと微笑を浮かべて部屋を見回した。愛らしい色合いの壁にはパステルカラーの絵がかけられている。小さな本棚に詰まっているのは料理の本だ。机の隅には一台の端末がある。愛らしい部屋に何だかそれが不似合いな気がして多輝は思わず顔をほころばせた。

 

 部屋の一番奥にベッドがある。真っ白なシーツにくるまって眠っているのは奈月だった。多輝は起こして驚かせてやろうと足音を忍ばせて奈月に近づいた。眠る奈月の顔を少しの間、見つめる。そして多輝はサイドテーブルに静かにティセットを置いた。皿を片手にそっと奈月の肩に手をかける。

 

「奈月さん?」

 

 声をかけつつ多輝は奈月の身体を軽く揺すった。どうやら目が覚めたのだろう。奈月が瞼を擦りながら片目を開ける。

 

 奈月はゆっくりと身体を起こして乱れた髪を手櫛で整えた。

 

「んっ、おはようございます……。あれっ?」

 

 多輝は絶句して吸い寄せられるように奈月を見つめていた。手から皿が自然と滑り落ちる。奈月は多輝の顔をしばし見てから慌てた声を上げた。ずり落ちていた毛布を焦りながら胸元に引き寄せる。

 

「ごっ、ごめん!」

 

 奈月は何も着ていなかった。多輝は慌てて背を向けて目を硬く閉じた。白い肌が瞼の裏に焼きついている。顔が勝手に熱くなる。奈月も頬を真っ赤に染めて毛布に顔を埋めてしまった。

 

「多輝さん! 早く逃げてください!」

 

 白い肌と魅力的な乳房、淡く色づいた乳首。それらの事を思い出していた多輝はそんな奈月の叫びにすぐには反応出来なかった。え、とゆっくりと振り返る。それまで照れていた奈月は一転して心配顔になっている。毛布からほっそりとした肩がはみ出している。多輝はそれに見とれて言われている意味を理解することが出来なかった。

 

「くそがき……。てめえ、そこで何してやがる」

 

 不意に聞いたことのある声が背後から届く。多輝は嫌な予感を覚えつつも振り返った。開きっぱなしにしていたドアのところにいつの間にか水輝が立っている。多輝は思わず水輝と奈月を見比べた。

 

「あの、水輝さん! 多輝さんはその! きゃっ!」

 

 唐突に毛布が浮く。それは懸命に訴えかけようとしていた奈月の頭に被さり、彼女の姿を完全に隠した。多輝はその有様に言葉を失い、毛布の中でもがく奈月をただ唖然と見守った。

 

「おれのいない間に奈月の身体を見ようなんざ、いい度胸だ。その度胸だけは誉めてやるぜ」

 

 そう言いながらゆっくりと水輝が近づいてくる。肩にタオルをかけているところを見ると、きっと顔でも洗いに行っていたのだろう。そう理解して多輝は慌てて首を振った。まずい。絶対にやばい。それだけがはっきりと判る。

 

「い、いや、おれは別にそういうつもりじゃ」

「つもりがあろうがなかろうが、見たってことには変わらんだろが!」

 

 一気に間を詰め、水輝が多輝の胸倉をつかむ。避ける間もなく多輝は床に叩きつけられた。その衝撃を受け、散らばっていたチョコレートが一瞬、宙に浮く。顔面を強烈に殴打され、頭が一瞬ぐらつく。だが多輝は素早く身を起こして水輝から飛び離れた。反射的に身構える。




名前がそっくりなので見間違う方もいらっしゃるかと……(汗)
すみませんすみません。
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