それから約一年後。ハジメは悪魔の指示通りの高校を受験し、無事合格を果たした。その高校は、県内トップクラスの私立高校の特進コースであり、そして天之河光輝が入学するはずの高校だ。
他にもハジメが性奴隷にした面々も、無事合格を果たした。悪魔の話によると、少々世界へ干渉して、性奴隷が全員が同じクラスになるようにしてくれるようにしてくれたらしい。
「ん、ふぁぁ……」
そうして、今日は入学式の日。ハジメは珍しく誰もいない自室で目を覚まし、朝食を食べ、制服に着替えると学校へと向かった。
学校へ向かう道中で、ハジメは可能な限り精神を整え、臨戦体勢に入っていく。だがその時、
「やぁ」
後ろから声がかかった。振り返るとそこには、少年の姿をした悪魔がいた。
「……ああ、あなたですか」
「とりあえず、入学おめでとう。よく頑張ってくれたよ」
「そりゃあまぁ、頑張らないといけなかったですし。それで、要件は何ですか?」
「真面目だねぇ。……でも、もう少し肩の力を抜いてもいいと思うよ。ただそれだけ」
悪魔は続ける。
「君が光輝のことを警戒しているのは分かるけど、あいつも節操無しではない。周囲の目があれば、攻撃はしてこないはずだよ」
「本当、かなぁ?」
「あいつが恐れることはただ一つ。自分が失敗して、周囲の人間を失望させてしまうことだ。つまりは、他人の目がある以上は、失望されるような……例えば暴力行為とかは、基本的に行わない」
「えっでも……」
「あの時は本当に例外中の例外。あの場にいたのは、光輝から見ると
「むー、ん〜……まぁ、分かった」
腑に落ちない感じはしていたが、ハジメは一応納得するようにした。
そんなこんなで、学校に到着。ハジメは特進クラスのため、学年が上がってもクラスメイトが変わることは基本的にあり得ない。つまりは、ここで光輝をなんとかしろ、ということだ。
教室を確認したハジメは、そこへ行く道すがらで様々な生徒や教師達、その中でも特に女性を見ながら、心を覗き込んでいた。今後、堕とす可能性のある学校の女性達を。
光輝の能力と、それによる影響力は絶大だ。何もしなければ劣勢に立たされていくので、誰かを味方につける必要がある。だがハジメであれば、女性を堕とすことで確実に味方につけることができる。クラスメイトでも教師でも、女性ならば誰にだって効果を発揮する。
そんなことを考えながら、ハジメは教室前までたどり着く。そして、教室へ足を踏み入れた。
そこには、既に半分ほどの生徒が集まっていた。その中には見覚えのある人達も何人かいるが、大半が知らない人達だ。県内トップクラスの進学校ということもあり、それなりに遠い地域から来ている人達も多いのだろう。
とりあえず、クラスメイトの心を読む。そうして分かったのは、男子達の下心。ハジメが性奴隷にした女子達は、高校生とは思えない色気を纏っているが、それ故に男の視線を惹きつけてしまう。それを嫌がり、性奴隷の女子達は例外なく、ハジメ以外のほぼ全ての男子を嫌悪しているようだ。
特に目立っていたのは、やはり香織と雫だろうか。中学校の時から可愛くて人気だったらしいが、それは高校生になっても健在。それどころか、性奴隷になってからは発育が更に良くなり、凄まじい色気を纏うようになったため、さらに注目の的となっていた。
「あっ、ハジメくん!」
ハジメが自分の席に座る寸前に、香織が気づいた。そしてギュッと抱きしめてきた。
「待て待て待て! ちょっ、人前で抱きつくな!」
「あっ、ごめんね。でも同じ学校なんだって思うと嬉しくて……雫ちゃんもそうでしょ?」
謝りつつも、香織と一緒にやって来た雫に話を振る。
「そうね。周りの視線とか、アイツがいるのが嫌だけど……ハジメと一緒なだけで嬉しいわ」
雫はチラチラと周囲を見る。男子達の視線が痛々しく突き刺さっているのだろう。能力で心を読むことができるハジメには、雫の周囲の男子達に対する不快な感情がよく分かる。香織の感情についても、雫とほとんど同じように見える。
が、同時にハジメにも、男子達からの感情が突き刺さる。興味、好奇、羨望など、様々な種の感情があるが、その中でも最も比率が高いのは、嫉妬の類だった。
こんな美少女と仲良くしているなんて妬ましい、といった感じだ。
とはいえ、別に実害は無い。いや、光輝が絡むと実害が発生する可能性はあるが……
「ッ!? なんでお前がここに……!」
と、そう考えながら席に着くと、声がかかる。どこかで聞いたことのあるような男性の声だ。ハジメがそちらの方を向いてみると、そこには茶髪で長身の、整った容姿の男子がいた。ハジメは約一年前に一度だけ、その人物と会ったことがある。
「ああ、あの時の……お久しぶりです」
「なんで、お前がこんな所に……」
「普通に受験して受かったから。……っと、そういえば自己紹介は一度もしてなかったね」
そう言って、自己紹介をする。
「改めまして、南雲ハジメです」
「……天之河光輝だ」
「そんな堅くならないでよ。せっかく同じクラスになるんだから、お互いある程度肩の力を抜いてやってこうよ」
適当に空気をはぐらかすように言うハジメ。しかし光輝としては、肩の力を抜くなどということはできない。
「そんなことはできない。お前が香織と雫を――」
「
「でも、俺達は幼馴染……」
「アンタみたいな奴が幼馴染だった覚えなんて無いわ。変なこと言うならさっさとどっか行って」
「えっ……な、なぁ香織……」
「……? ハジメくん、さっきから誰と喋ってるの?」
光輝はまだ、ハジメが香織と雫を脅していると思い込んでいるらしい。そして彼女らは、嫌々ハジメと一緒にいるんだと。
しかし実際はというと、香織と雫は二人とも、ハジメを傷つけた光輝のことをひどく嫌悪している。もちろん、かつて幼馴染であったことなど決して認めない。それどころか香織にいたっては、光輝を存在しないものとして扱っているほどだ。
「さっさとどっか行って」
「……ッ」
最後の雫の言葉を受けて、光輝は何もせずに去っていった。が、それとほぼ行き違いで、もう一人の男子がやって来た。かなりの大柄で、陽気そうな雰囲気をした大男だ。
「おいおい……またケンカしたのか?」
「あの程度、ケンカじゃないわ。というか、アイツがハジメを殴ったのがいけないのよ……」
「ハジメ……ああ、たまに話に出てたヤツか。……会話的に、もしかしてお前?」
大男は、ハジメの方に目を向ける。ハジメは、またしても自己紹介をした。
「あ、はじめまして。南雲ハジメです」
「おう、お前だったのか。俺は坂上、坂上龍太郎だ。香織や雫、あと光輝とは昔からの付き合いだ。んで、ちょっと聞きたいんだけど」
「ん?」
そう言うと、龍太郎はハジメに対して小声で尋ねる。
「光輝から聞いたんだけど、香織と雫を脅してるって本当なのか?」
「いやいや、そんなことしてないよ」
どうやら龍太郎は、光輝に色々と話を聞かされているらしい。それ故に信じきっている……というわけではないようだ。
「……まぁ、そりゃそうだな。もし脅されてたなら、あんな嬉しそうに近寄っていくわけがないか」
龍太郎は、難しいことはあまり考えないタイプの人間だ。それ故に嬉しそうな香織や雫を見てから光輝から話を聞いても、脅されているとは思えなかったのだ。
「とりあえず、これからよろしくな」
「うん、よろしく」
光輝と長い付き合いと聞いて、少しだけ不安に思ったりもしたが、案外なんとかなりそうでホッとするハジメであった。
◆◇◆◇
その後は入学式があったりして、また教室へと戻ってきた。その際にも、ハジメは心を覗くことを忘れない。多くの人を味方につけるため、クラスメイトの心を覗きながら、今後の行動方針を練っていた。
その時だった。
(光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん)
「ッ!!」
おぞましいほどの感情が、脳内に流れ込んできた。慌てて感情の主を探すと……それはつい先程、光輝の側を通っていった女子だった。
容姿としては、どちらかというと小柄な方で、メガネをかけた、ナチュラルボブの黒髪の少女だ。少しやつれているように見えるが……それがなければかなりの美少女だったことだろう。
(……あの席は確か、
その女子の座った席を見て、ハジメは名前を覚えた。ここまでの黒い感情を持った相手だ。早急に対処しなければならない。そう思ったハジメは、この中村恵里を、第一ターゲットにすることに決めたのであった。
(ただ、まずは色々探らないとな。あの黒い感情は、確実に何かがある……)
危険な相手をどうやって攻略するか。ハジメは席に座り、高校最初の作戦を練ることにした。
・南雲ハジメ:光輝と大きく敵対はしたくないと思っている。だけど敵対した時に備えて行動へと移る。
・香織と雫:光輝のことを嫌悪しており、幼馴染とは決して認めない。香織については、光輝と一切口を利かないようになった。
・坂上龍太郎:香織と雫、それと光輝が仲違いしたので苦労人枠に。脳筋だが、それ故に見たまま直感を信じる傾向がある。
・中村恵里:第一ターゲット。地味にウェブ原作の地の文で美人と書かれている。何事もなければ、彼女も女神の仲間入りをしていた可能性がある。
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