レミアとミュウを性奴隷にした翌日。ハジメ達はエリセンから西北西に約三百キロメートル行った所にいた。そこが、かつてミレディ・ライセンから聞いた七大迷宮の一つ【メルジーネ海底遺跡】の存在する場所だ。
とはいえど、細かな場所は教えてもらっていない。その時に言われたのは「“月”と“グリューエンの証”に従え」というもの。
おそらくは夜になり、かつグリューエンの証を利用しないと大迷宮が現れない、正確には認識できないようになっているのだろう。
そう予測したハジメは、夕方頃に出発した。重力魔法でモーセの奇跡を起こせば船など必要無いので、サクッと到着して色々と海を漁ってみたが、何も見つかることはなかった。
ただ妙なのは、ミレディに教えられた場所は、他の場所と比べて妙に浅いという点だろうか。実際に重力魔法で海水を退けて探索したため、これは確実だった。
「……普通には見つからないか」
「なにもないですねぇ……あっ!」
その時だった。ハジメの右手にあったグリューエンの証が輝き出した。その時最も近くにいたシアが、真っ先に気づいた。
グリューエンの証は、サークル内に女性がランタンを掲げている姿がデザインされており、ランタンの部分だけがくり抜かれている。その中のランタンが、輝き出したのだ。
グリューエンの証に視線が集まる。しかしハジメだけは異なり、空を見上げていた。そして、空には月が浮かんでいた。
再び証の方に目を向けると、ランタンに光を溜めきったペンダントは全体に光を帯びると、直後、ランタンから一直線に光を放ち、とある場所を指し示した。
「……そうか、そういうことか」
ハジメ達は、光の指す方向へ向けて走る。そしてたどり着いたのは、海底の岩壁地帯だった。無数の歪な岩壁が山脈のように連なっている。昼間にも探索した場所で、その時には何もなかったのだが、輝くグリューエンの証を手に近づくと、ゴゴゴゴッ! と音を響かせて地震のような震動が発生し始めた。
その音と震動は、岩壁が動き出したことが原因だ。岩壁の一部が真っ二つに裂け、扉のように左右に開き出したのである。その奥には冥界に誘うかのような暗い道が続いていた。
「……これは見つからないわけだ」
そう言いながら、ハジメは先頭を行き、他の五人もそれに続く。ちなみにレミアとミュウに関しては、家で待ってもらっている。特にミュウは、歳も歳なので、連れて行くべきではないだろう。
迷宮内の海水についても、重力魔法で退けて先へ進む。そして海水内のトビウオのような魔物は、これまた重力魔法で身体を破裂させて即死させる。こうして、特に戦闘では苦労することなく進んでいく。
◆◇◆◇
そうして魔物を蹴散らし、奥へ奥へと進むと……そこは、破壊された廃都のような場所だった。かなり大きな都市、それこそハイリヒ王国の王都くらいはありそうである。
「……ここからが本番、ってことかな?」
「多分、そんな気がする」
明らかに雰囲気が異なる。今までは遺跡とか洞窟といった雰囲気だったが、ここは違う。全員が気を引き締め、先へと進む。
廃都は破壊されてはいるが、自然災害によってそうなったとは思えなかった。具体的に言うと、魔法による破壊が行われたような、そんな痕がある。
民家は荒らされ血痕が残り、店からはほとんどモノが無くなっている。辛うじて残っているのは、腐った野菜や肉、果物といったものばかり。
「これは……戦争か何かが起きているのでしょうか?」
「多分ね。昔から人間族と魔人族は争ってきたと聞く。ここは多分、その当時を再現しているのだと思う」
この廃都に関する推察をしながら先に進むと、広場のような場所に出た。今までの通りのような場所と比べるとそれなりに広く、周囲の様子をそこそこ確認することができる。
だがその瞬間、
――うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
――ワァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
「なんだ!?」
「ッ! 周りがっ!」
突然、大勢の人間の雄叫びが聞こえたかと思うと、周囲の風景がぐにゃりと歪み始めた。驚いて足を止めたハジメ達が何事かと周囲を見渡すが、そうしている間にも風景の歪みは一層激しくなり――気が付けばハジメ達は、血の匂いと硝煙の立ち込める戦場に立っていた。
そして周囲に視線を巡らせば、何百もの人間が、浅黒い肌の人間に似た存在と戦っていた。おそらくは、人間族と魔人族の戦闘なのだろう。
「これは……幻覚か? いや、ならば普通の幻覚じゃない……!」
「確かに……私達には、主様から以外の洗脳等は効かないはず……」
普通ならあり得ないような現象と光景に、ハジメも含めて全員が度肝を抜かれてしまい、何とか混乱しそうな精神を落ち着かせながら周囲の様子を見ることしかできない。
ゴォオオオオオオオオ!!
ドォガァアアン!!
ドバァアアアア!!!
轟音と共に火炎弾が飛び交い、街は炎に包まれる。木材が焼ける音に、単純な石材の破砕音、それに加えて人々の悲鳴が響き渡る。
ハジメ達は、ちょうど人間族と魔人族の陣営に挟まれるようになっていたので、特に攻撃に晒されていた。
「これは、面倒そう……」
「じゃがここから進むには、一体何をすればいいのじゃ?」
「え? 全て倒せばいいんじゃないの?」
「シア……ここは大迷宮よ? 他にもやることが――」
「いや、ここはシアの案でいく」
性奴隷達をまとめるハジメの一声で、今後の方針が決まった。
「見た感じ、ここにいる人達はかなり特殊な幻覚のようだ。目に見えるし魔力もある、技能も一部は効果があるのに、気配だけ無いんだ。なら」
軽くハジメは戦っている人々を見渡す。ついでに心も読んでみる。
「全ては神の御為にぃ!」
「エヒト様ぁ! 万歳ぃ!」
「異教徒めぇ! 我が神の為に死ねぇ!」
人々の中に存在するのはただ一つ、狂気だ。血走った瞳に、唾液を撒き散らしながら絶叫を上げる口元。
理由は単純に、崇める神が違うから。ここにいる兵士達は皆、神を妄信的に信じている。彼らからしてみたら、異教徒であるという理由は、敵を残虐に殺すのに充分な理由になっていた。
「大迷宮で見せられている幻覚……ということは、これは昔の戦争を模したものなのかな? 神のためという名目でなら、ここまで人は残酷になれるのか……」
そうハジメが言うと、大気が、空間がねじれる。ビリビリと黒い稲妻のような何かが走る。もう、この空間から学ぶべきものは無い。だから破壊する。
「まぁ、これは僕が支配者になった時の糧にしよう。……“波濤”」
そう呟いた瞬間、空間のねじれは解消される。いや、ねじれは勢いよく元に戻り、その衝撃は大気を伝って、空間全体へと響き渡る。
ズバァァァァァアアアアン!!
街はもちろん、人も吹き飛ばされる。しかし人に関しては、吹き飛ばされ大怪我する前の、わずかな風に触れただけで、淡い光となり消滅した。
「んん……消滅?」
単純に血を撒き散らして破裂するように死亡するのではなく、淡い光となって消えたのだ。少なからずハジメは困惑の色を示す。
しかしすぐに、一つの結論に至る。あいつらは、魔法による何らかの作用があれば消滅するのではないかと。最初の弱い風に当たっただけで消え去った点を鑑みるに、おそらくそれは正しいだろう。
「……ちょっとやり過ぎたか?」
しかし街が破壊されるのとほぼ同時に、ハジメ達は元いた場所へと戻っていた。血や硝煙の匂いなどは、もうしない。
どうやら幻覚の廃都を破壊しまくっても、本来の廃都には影響は無いらしい。まぁこれも、おそらくは何らかの魔法で保護されているからなのだろうが。
「……まぁ、そんなことを考えたって仕方がない。とりあえず、街の探索を進めよう」
街は荒涼としており、人の気配などは無い。その雰囲気のせいで、嫌でも暗く不安な気持ちになってしまいそうなくらいだ。
ただその中でも、街の奥の方にある大きな建物だけは、なんとなく違うように感じた。その建物は……ハイリヒ王国の王城と、神山の聖教教会が合わさったもののように見えなくもない。
なんとなくで、ハジメはその方向へと向かっていた。
「……ご主人様は、あの教会? へ向かっておるのか?」
「うん。あそこだけ雰囲気が違う気がするし」
行く宛は無いが、だからこそ、他とは違う場所へ行こうとするものだ。そこだけやたら小綺麗なのには、確実に理由がある。誘導されている気もしなくはないが、他に行く場所も無さそうなので、そちらへ行くのだ。
とはいえ、その道中は大したことはなかった。時折周囲が歪んで敵が現れるが、その度に魔法で敵を吹き飛ばしていたからだ。
「……ねぇハジメ様」
「ん?」
また敵が出てきて、一瞬で倒して。ここでシアが尋ねた。
「なんか……敵、弱くない?」
「そうですわ。先程から戦っていますけど、どんな弱い魔法でも一撃で倒せるなんて……」
そう、あまりにも敵が弱過ぎるのだ。確かに目の前で争いを始める上、ハジメ達以外の攻撃だと血飛沫も飛ぶためグロテスクではある。しかしハジメ達の魔法攻撃なら、下級魔法ですら当たれば一撃で倒せる。他の迷宮と比べると、異常なほどに弱かったのだ。
「確かに、アルテナは途中から下級魔法一発で倒してたな。ここまで弱いとなると……単なる戦闘能力を見られている、というわけではなさそうだ」
ハジメは足を止める。
「僕達が今まで攻略してきた迷宮は、ここ含めると四つ。それぞれの特色を考えると、ライセンが魔法縛りでの戦闘能力、グリューエンが過酷な環境下での継戦能力、オルクスは……総合的な戦闘能力を見ている、ように思える」
「では、この迷宮で見られているものは何じゃ?」
「少なくとも戦闘能力ではない。多分、精神力を見られているのだと思う。いや、あるいは……逆に僕達に、この惨状を見せつけているのかもしれない」
「惨状? この戦争の、ということか?」
「まぁ戦争といえばそうだけど……どちらかというと、人間の
ハジメの言葉に、何人かは「なるほど」といった感じに頷く。フェアベルゲン出身のシアやアルテナには、漠然としか分からないようだが、趣旨は理解できただろう。
その中でも特にこのことを理解できたのは、元々が神の使徒だったノイントだろう。
「おそらく、主様の推察はほとんど合っていると思います。この迷宮に出てくる人々は皆、神のために、といった類の言葉を発しています」
「なるほどなるほど。で、戦争についてはどう思う?」
「この戦争は、神が原因で起きたことです。人間族が崇めるエヒトと、魔人族が崇めるアルヴヘイト、この違いが戦争を生んだのです。最もアルヴヘイトは、エヒトの眷属神なのですが」
「なるほどねぇ……つまり戦争は本当に、神によって作為的に作られたってことか」
そう言いながら、ハジメは再び歩き出す。この迷宮がどういう目的で作られたのかは分からないが、神の何かしらを知らせる目的があることだけは分かったから。後は進むだけだ。
◆◇◆◇
しばらく敵と戦いつつ進み、ハジメ達は城のような場所へとたどり着いた。大きな門を破壊して進むとそこは、外観から予想できた通り、豪奢な造りだった。
建物内では、文官のような人物がせわしなく動いている。しかし都市内の人とは違い、誰もハジメ達には見向きもしない。
動き回る人々にぶつからないように進むと、やがて玉座がある間に辿り着く。玉座に腰掛けている老人がこの国の王なのだろう。下座には重鎮であろう、五人の大臣のような人間が言い争いをしていた。
「くそっ、魔人族どもめ! よもやここまで攻めてこようとは! 兵士はもういないのか!?」
「すでに各所からかき集めた後です! これ以上の戦力はもうどこにもいません!」
「そんな……ではどうすれば……!」
ハジメはため息を吐くしか出来なかった。
「戦争を止めればいいだけの話、なんだけどねぇ。まぁでも、神を信じている人達に『神を裏切れ』と言うようなものだから、無理なのかな?」
「フェアベルゲンには神なんていなかったから詳しくは分からないけど、兵士の狂信具合を鑑みると、無理でしょうね。ね、シア?」
「えっ? う~ん、無理なんじゃない?」
そんな気が抜けた会話をしつつ、ハジメ達な王と大臣の会話を聞いていたが、それは途中から、責任の押し付け合いのように変わっていった。しかしそれを聞いて、全員が呆れ返った。
「そ、そもそも貴様が考え付いた事だろう!」
「何を言うか! 貴様とて『村一つを滅ぼして魔人族の仕業に見せかけて報復戦争を仕掛ける』という案に賛同していたではないか!」
「魔人族を絶滅させるためには必要な事だと、そう言っていたのは貴様だろう!」
「わ、私ではない! 光教教会の司祭殿が言っていたのだ! 私はそれを俎上に載せただけだ!」
ハジメは、戦争のことをあまり理解していない。なんせハジメの住む国では、戦争なんて遠い過去のことだ。別の国では紛争といったものが起きているが、それも遠い場所の話。
しかし昔のはともかく、現在の戦争や紛争の原因は、昔の植民地支配によって残された領土や民族的な問題であることが多い。それに関してはハジメもまだ理解できる。
しかしこの世界で起きている戦争は、言ってしまえば、誰も実際に見たことのない神に従い、それを崇める宗教の教義に従って戦争を起こすというもの。ハジメが日本出身故の無神論者だからというのもあるのだろうが、理解ができなかった。
「……愚かだ」
「え?」
ハジメはボソリと呟く。本当に小さな声だったため、すぐ横にいたユエだけしかそれには気づかなかった。
「まぁ根本の原因には神によるマッチポンプだけど……それにしたって愚かとしか思えない」
ハジメ以外は、神に対して怒っているように見える。根本的な原因は、誰がどう見ても神なのだから。ノイントの言葉により、それは絶対的なものとなった。
しかしハジメの目には、神よりも人の愚かさの方が強く映った。憎き魔人族を殺す理由作りのために同族を躊躇なく殺し、それが失敗したと分かれば責任転嫁。宗教を信じる人間の欲望のせいで、罪の無い人は死に、戦争は起こされ、無駄に徴兵され、外で死体の山を築いている。これを愚かと言わずに何というか。
冷たい目で重鎮達を見ていたハジメだったが、またしても空間が歪む。視界が歪み、見えるものが変わっていく。
「……またか」
「これで最後……なのかな?」
「これで終わってくれればいいけど……」
動揺することなく、何時でも動けるようにしていると、今度は城ではなく、なんもなく教会と思わしき場所が見えていた。
薄暗い教会内にはエヒトを表現したものであろうステンドグラスが飾り付けられており、荘厳な雰囲気を放っている。大広間であり、魔法陣が複数設置されていることから、何らかの儀式が行われる部屋だと容易に想像できた。
そこには軽く五十人を超える子供達と、一人の豪奢なローブを纏った司祭と思われる中年の男性がいた。ちなみにだが、子供達は全員女の子のようだ。
やはり彼らも、ハジメ達に気づく様子はない。では何をしているのかというと、子供達は、魔法陣の上で祈りを捧げている様子だった。その対象は、十中八九エヒトだろう。
「さあ、祈りなさい。さすればエヒト様が救ってくださる。あなた達に出来る事は、ただ心を込めて祈る事だけなのです」
司祭は祈る子供達にゆっくりと語りかける。そんな中、一人の子どもが尋ねる。
「司祭さま、祈ったらエヒト様が魔人族をやっつけてくれるの?」
「ええ、もちろんです。エヒト様が我々を決して見捨てることはありません。心から救済を願えば、必ず応えてくださるでしょう」
その子どもに向けて、にこやかに微笑む司祭。その言葉を受けて、子供達はまたしても静かに祈り始めた。
ハジメ達は警戒心を高める。彼女らの足元の魔法陣のせいで、嫌な予感しかしなかったからだ。
しかし何も起こらない。
一分。子供達は静かに胸の前で腕を組み、祈り続けている。
二分。やはり子供達は祈り続ける。祈りを止める、といったことは決してしない。
「……何も、起こらない?」
何も起こらないことに最初に痺れを切らしたのはシアだった。彼女は「別の場所を探しませんか?」とハジメに提案しようとした、その時だった。
べちゃっ。
何かが、ハジメの顔に当たる。同時に液体も付着する。
薄いピンク色の固形物。表面には複雑なシワがある。……人間の脳が、ハジメの顔に当たったのだ。
「ッ!? はっ、え……!」
気づいた時には、目の前で祈りを捧げていた少女達が肉塊へと変わっていた。ある一人は皮膚から内臓や血管が飛び出し、またある一人は身体を破裂させて血を撒き散らす。
あっという間に死ぬ者もいれば、手足が少しずつねじ切れたりして、苦痛を伴いながら死ぬ者もいる。どちらにしても、惨い光景であった。
「エヒト様ァァァァ!! 貴方様に無垢なる少女の血肉を捧げますぞぉぉぉぉ!! どうか私に力をぉぉぉぉ!!」
それを見て、ただ一人司祭のみは嗤う。血だまりの中に肉塊が倒れる不快な音に、司祭の狂信的な笑い声が混ざる。
「あっ……な、なんだ……これ……」
全身が震え、あまりのショックに倒れそうになるハジメ。なんとか堪えたものの、声すらまともに出ない。できるのは、身体を震わせることだけだった。
後ろから性奴隷達の悲鳴が響き渡るが、ハジメの耳には届かない。彼の耳に入るのは、肉が引きちぎられる音、血が飛び散る音、少女達の苦悶の声、そして狂的なまでに嗤う司祭の声だけだった。
◆◇◆◇
「…………さ……! ……様! 主様!」
「ご主人様!」
「ッ!!」
声が、聞こえた。ノイントとティオの声だ。二人とも不安そうに、ハジメのことを見つめていた。ティオはともかくとして、ノイントが涙目で見つめていたことに、わずかに驚いたりもした。
「主様……大丈夫、ですか……?」
「…………正直、かなりキツかった。というか、あんなの……あんなのって、ないよ……」
天を仰ぎ、目元を押さえるハジメ。涙こそ流してはいないが、息は荒くなり、身体も少し震えていた。
「落ち着くのじゃ……大きく息を吸って……吐いて……」
そんなハジメの側で声がけするのはティオだ。そしてノイントは、ハジメの背をゆっくりとさする。
約二分。ハジメがなんとか落ち着くのに、それだけの時間がかかった。
「…………ごめん」
「謝らんでもいい。あんなものを見せられたら、妾も流石に吐き気がした……」
「私も、しばらくは震えが止まりませんでした」
「……そうか。でもあれっ? 他の三人は?」
そう言って後ろの方を見ると、そこには無事に三人がいた。とはいえ、後方には吐き出されたであろう汚物が撒き散らされており、アルテナは気を失って、ユエに担がれていた。そのユエも、顔色が優れない。
そもそもあんな映像を見せられて、正気でいられる方が異常というものだ。
「……アルテナ、“起きろ”」
「っ! は、はい!」
「よし。じゃあみんな、“この迷宮にいる間、負の感情を決して抱くな”」
その瞬間、性奴隷達の中に大小あった負の感情が完全に消え去り、顔色も元に戻った。ハジメの命令には絶対服従、故に彼女らの脳が勝手に動き、負の感情を消し去ったのだ。
「……よし。じゃあ行こう」
気づいた時には、教会の幻覚も消え去っていた。それとハジメに付着していた血液も、まるで最初から無かったかのように消えていた。
そして、床には魔法陣が用意されていた。少なくとも、最初は存在していなかったはずだ。
魔法陣に乗り込むと、光が視界を塗りつぶして、次の瞬間にはハジメ達の姿が完全に消えた。
◆◇◆◇
光が消えて、ハジメ達の目に飛び込んできたのは海上神殿とでもいうべきものであった。
その空間には、中央に神殿のような建造物があり、四本の巨大な支柱に支えられていた。支柱の間に壁はなく、吹き抜けになっている。神殿の中央の祭壇らしき場所には精緻で複雑な魔法陣が描かれていた。また、周囲を海水で満たされたその神殿からは、海面に浮かぶ通路が四方に伸びており、その先端は円形になっている。そして、その円形の足場にも魔法陣が描かれていた。
「……これで、終わりでいいのか?」
「おそらくはそうでしょう。あの祭壇の魔法陣は、大火山の最奥で見たそれと似ています」
ノイントの言葉を聞き、ハジメ達は祭壇へと進む。そして乗ると、いつもの通り脳内を精査され、記憶が読み取られた。その過程で、またしても記憶が掘り返される。
「……!」
ハジメだけは、どうしても震えてしまう。性奴隷達とは違い、恐怖を感じるから。
しかしその恐怖を耐えきった時には、ハジメ達の脳内に新たな神代魔法が刻み込まれていった。
「……こいつか。こいつが“再生の力”だ」
ハジメ達が得たのは“再生魔法”というものだ。文字通り、物体の再生や修復を行うことができる魔法だ。いや他の神代魔法と比べると、妙にスケールが小さいような気もしたが……
「とりあえず、考えるのは後だ。さっさとこんな場所は出ていこう」
ハジメは相当この場所が嫌だったのだろう。空間魔法を使って、さっさと大迷宮を出ていってしまった。空間に浮かび上がったメイル・メルジーネと、その言葉を完全に無視して。
・南雲ハジメ∶SANチェックに失敗して、一度にSAN値が5以上減って、一時的狂気に陥る。ダイスロールの結果、その場に釘付けになってしまった。
・シア∶ハジメと同じく一時的狂気に陥る。結果、嘔吐を引き起こした。でも発狂時間は短かった。
・アルテナ∶SANチェックでファンブルして、一時的狂気に陥った。その結果、気絶してしまった。
雷狼輝刃様
かば焼き様
ふへっへっへへ様
剣十郎様
評価していただきありがとうございます。