メルジーネ海底神殿から帰還したハジメ達。戻ってきたのは、セーフティハウスと化したレミア宅だ。
「あら。お帰りなさい、あなた」
「うん、ただいま」
しかし、以前とは外観はともかく、内装は大きく変わっていた。ハジメ達五人も住まわせてもらっているので、空間魔法を利用して部屋を拡張しているのだ。そのおかげか、外観からは予想できないほどの大きさの家となっていた。
「さて、じゃあ作戦会議といこうか」
ハジメのその一声で、レミアとミュウを除く全員は、新たに家に作られた会議室の中へ入っていく。とはいえ、ものは最低限の机と椅子くらいしか無い。
「まず、僕達の得た再生魔法についてなんだけど。あの……他の神代魔法と比べると、名前のスケールが小さくない?」
そこでハジメが切り出した最初の話がこれだ。大迷宮で得た神代魔法である再生魔法についての話。
「ん。確かに効果が他に比べると地味……」
「確かに……言われてみればそうですね」
確かにハジメの言う通り、他の魔法と比較してみると、名前は地味だ。効果も、あらゆるモノを再生するというものだと頭に刻み込まれているが、それもまた地味な感じがする。
ユエやアルテナといった、性格的に魔法を操る才能に長けている者達は、ハジメの考えに同意している。
「で、思うんだよ。……単純にあらゆるモノを修復する魔法、ってだけじゃないよね? この内容の神代魔法で、シアの適性がやけに高いのも違和感があるし」
「え? あー、確かに……何となく、他の神代魔法よりは上手く使える気がしますねぇ」
性奴隷達は、基本的にあらゆる魔法へ高い適性を持っている。少なくとも、適性が低くてまともに使えない魔法がある、ということは決して無い。
このように、基本的には高い魔法適性を持ち合わせているが性奴隷達だが、それでもある程度のバラつきはある。例えば、ユエなら特に重力魔法に長けていて、シアなら再生魔法に長けている、というように。
ここから分かる通り、性奴隷達の魔法適性の下限は高い水準で一定になっているが、上限は存在しない。だから適性にバラつきが出てくるのだ。
そしてハジメは、皆の魔法適性がある程度は分かる。その中でもシアは、何故か再生魔法への適性が恐ろしいほどに高かったのだ。他の神代魔法への適性は、全て性奴隷の中でも最低レベルなのに。
流石にこれには違和感があった。何か理由があるはずだと、ハジメは考えたのだ。
「今のシアの魔法適性は高い……とはいえ、元々全体的に低かったのを、性奴隷にして強制的に引き上げただけだし。元々が高い、ということになるけど……」
ここまでは分かった。元々シアが高い再生魔法への適性を持っていたから、今も高い適性を持っている。しかし問題は、何故適性が高いのか、だ。これにはハジメも考えが思いつかず、悩んでしまう。
「……固有魔法の影響、というのは考えられないかの?」
ふと、ここでティオの言葉が耳に入る。ハジメ含め全員が、ティオの方を向く。
「シアの固有魔法は、いわゆる未来視。それと身体強化もあるが……今回は未来視が、適性に影響していると見ていいじゃろう」
「未来視……あ」
未来視と簡単に言ったが、これは未来を視る魔法である。しかしそれを行うには、未来へ干渉し、そこを覗かなければならないわけだ。そしてそれを行うには――
「何でシアの適性がやけに高いか分かった。この再生魔法……時間に干渉する魔法だ。物質を再生させるのも、時間へ干渉して時を戻した結果そうなってるだけだ。そりゃあ、普段から時間に干渉して未来を視てるシアの適性が高いわけだ……」
「時への干渉ですか……なるほど。それなら確かにシアの適性が高いのにも頷けますね」
「えっと……みんな、なんか私への当たりが強くないですか?」
「ああいや、そういうわけじゃなくて。というかこの議論自体、魔法の本質的な部分を理解するためのものだからさ。まぁでも、不快にさせてしまったのなら、そこは謝る。ごめん」
軽くシアに詫びを入れるハジメ。だがご主人様に謝らせるなど畏れ多いとでも思ったのか、シアはオーバー気味に「大丈夫です大丈夫です!」と言っていた。
「……でも時に干渉できるとなれば、できることも増えそうだ。アイツを倒す未来と、トータスを支配する未来が現実的なものになってきた」
ハジメの目的は二つ。一つは天之河光輝の無力化をすることで、もう一つはトータスの支配だ。その二つが現実的に可能になってきた気がして、ハジメは軽く笑みを浮かべる。
「まずは天之河を倒す。そしてこの狂ったトータス住人を性奴隷にして、世界を変える。僕はエヒトと同じ過ちはしない」
「それはつまり、戦争を起こさない、ということですか?」
「そう。ノイントなら分かるでしょ? エヒトがどれだけ残酷な存在かが。僕はそんなことをしない。性奴隷になる時の一瞬の苦しみこそあれど、その後には、皆に圧倒的な幸福が訪れる」
メルジーネ海底神殿で見せられたもの。それは神の残虐さもあるが、人間の愚かさもあった。そしてハジメの目にはどうしても、人間の愚かさの方が強く映っていたのだ。
だからこそ、この世界を変えたいと強く思った。結果として人間を性奴隷にすることにも、躊躇の感情をあまり持たなくなっていたのだ。
「まぁ、再生魔法を利用したアーティファクトは後で作るとして……ここからは別行動で行こう。とりあえず、シアとアルテナは、フェアベルゲンに戻って拠点を作っといて。人間族と魔人族の思考傾向を考えると、あそこが一番安全だ」
「では私達はどうするのじゃ?」
「残りでハイリヒ王国へ行く……が、その前に、あいつらを回収しないとな。新聞によると……」
ハジメはとある新聞を広げる。そこには神の使徒である畑山愛子先生と、その護衛の神の使徒の活躍が載っていた。
「どうも戦線から離れて、先生についていってる人がいるらしい。まずは彼女らを回収する。もちろん回収した後の対策もしておくけどね」
ハジメは新聞のある一文を見る。そこには愛子先生と共にいる神の使徒の名前があった。
相川昇、清水幸利、菅原妙子、園部優花、玉井淳史、仁村明人、宮崎奈々。その中でもハジメが注目したのは、清水幸利だった。
独自で収集した情報によると、彼は中学生時代にはイジメを受けて引きこもりになっていたとか。それもあり、高校ではハジメに対してあまり直接的な手出しはしてこなかった。
割とおとなしい性格だと思っていたし、だからこそ、こういう場所に行くとは思えなかった。だが、逆にそこが利用できる。
「……よし。ノイント、この七人の居所と動向を探ってきて。ついでに再生魔法も、できたら利用してみて」
「かしこまりました」
そうして部屋から消えるノイントだったが、それから約十秒後、彼女は戻ってきた。
「空間魔法と再生魔法を応用し、調査を終わらせました。結果をご報告します」
「おっ、いいね。じゃあ報告頼むよ」
「まず第一に、清水幸利が魔人族と手を組んでいました。現在は単独行動中とのことです」
「…………へぇ〜」
これにはハジメも驚いた。だが同時にニヤリと笑ってみせた。彼を利用してやれば、いい感じに上手く行きそうだと、そう感じたのだ。
「他のメンバーは?」
「畑山愛子と同行しています」
「そうか。じゃあ清水の目的とか分かる?」
「はい。どうやらウルの街を壊滅させるそうです。そしてそこに、畑山愛子達は向かっています」
「…………いいね」
街が滅ぶ可能性を聞いたとしても、ハジメの表情に不安は無い。
「ならば僕達の方でも魔物を集め、清水に受け渡す。あいつには派手に暴れてもらう。その混乱に乗じて、先生達を回収する。いや、いっそのことハイリヒ王国王都についても侵攻させる。ユエとノイントは僕についてくること。いいね?」
「「「はい」」」
「それでシアとアルテナは、さっきも言ったとおりフェアベルゲンで拠点作りを頼む。空間魔法を上手く使ってくれ」
「「はい」」
「最後にティオだが……ウルが壊滅した翌日に、ハイリヒ王国王都への攻撃を行うこと。そのために、こっちで爆弾とかも用意しとく。それと、街を襲う際には竜化すること、いいね?」
「了解した」
「じゃあ会議は終わる。可能な限り急ごう」
そうしてハジメ達は二つのグループに分かれて、徐々に動き出す。少しずつ、少しずつ……王国や教会から神の使徒を取り上げていくのだ。
・南雲ハジメ∶性奴隷を増やしていくことへの抵抗感が減っている。というか性奴隷を増やしたほうが平和になる、とすら思っている。