※この作品はR-18です。

南雲ハジメは悪魔にエロ技能を与えられた!   作:木崎楓

48 / 103
 今回は濡れ場無しです。というか今作のクライマックスへ近づいてきているので、しばらくは濡れ場がありません、すみません。今回は、ハルツィナ樹海の大迷宮を超高速攻略します。


すぐ側に

 二日ほどの休憩をフェアベルゲンでとったハジメは、樹海の奥に存在する大樹の前へ立っていた。

 

「“四つの証”“再生の力”“紡がれた絆の道標”全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう、か」

 

 枯れた大樹の前に設置された石版を、改めて読む。そしてハジメは軽く笑う。

 

「まぁ、四つの証と再生の証はいいとして、絆の道標は紡いでないんだけどね。紡いだのは主と奴隷の主従関係だけだ」

 

 ここを作り上げた解放者……オスカーやバーンの手記によると、リューティリス・ハルツィナというらしいが、彼女の意図とは違う方法でここまでたどり着いた。そして、滑稽だとも感じた。解放者の用意した迷宮と神代魔法で、新たなる支配者がトータスに君臨することになるのだから。

 

 ハジメは、四つの攻略の証を石板にはめ込む。すると輝きが解き放たれたように地面を這って大樹に向かい、今度は大樹そのものを盛大に輝かせた。

 

「……大樹よ、甦れ」

 

 そして、時は巻き戻る。枯れた大樹は光を放ち、まるで波紋のように何度も光の波が天辺に向かって走り始める。燦然と輝く大樹は、まるで根から水を汲み取るように光を隅々まで行き渡らせ徐々に瑞々しさを取り戻していき、最後には……大樹は一気に生い茂り、鮮やかな緑を取り戻した。

 

「……枯れた大樹が甦る。そうすることで、塞がれていた道が開くわけだ」

 

 気づいた時には、正面の幹は裂けるように左右に分かれ、数十人が優に入れるくらいの大きな洞ができていた。少なくとも、最初は何もなかったはずだ。

 

「あと二つか。ただこれでも、あいつと正面から戦うのは正直キツイだろうなぁ……」

 

 ハジメは、今後確実に戦うことになる天之河光輝の力についてを考える。

 

 光輝の強さは、心が折れない限りは、実質的に無敵であるという点だろう。いや、攻撃は効くはずだ。しかし、明らかに死ぬようなダメージを与えたとしても、光輝が負けないと信じている限り、彼は死なない。

 まず、首を切られたり、頭を潰されたりといった即死攻撃が一切効かない。そして出血多量等で倒れたとしても、まるで不思議な力が働いたかのように、傷は癒えていき、立ち上がる。まさしく、ゲームの勇者を思わせるような力だ。

 

 幸運なのは、光輝自身がこの能力を認識できていない点だろう。彼は自身が起こした奇妙な事象の全てが、自分が努力して起こした奇跡だと考えている節がある。ここに付け入る隙があると、ハジメが考えていると、

 

「ハジメ様……って、なんですかぁ!?」

「うそ、大樹が……」

 

 いつの間にか、シアとアルテナがここにやって来ていた。確かこの二人は、用事でウルの方に行かせていたはずである。どうやらその仕事を終え、ここへ戻ってきたらしい。

 

「おっ、戻ってきていたのか」

「はい! 愛子先生と一緒に土壌や植物の調節を終わらせましたわ!」

「私も、ちゃんとアルテナちゃんのお手伝いを頑張りました!」

「あー分かった分かった。ご褒美はまた後でな」

 

 随分と欲しがっている様子が伝わってきたが、その前にやりたいことがあるので、それは後にする。

 

「二人が戻ってきたならちょうどいい。全員呼び寄せるか」

 

 そう言った瞬間、シアとアルテナの後ろに、美しい女性達が現れた。クラスメイトの大半と、亜人族の中でもハジメが気に入った女の子達だ。全員に、首輪と指輪が付けられている。

 

「よし。じゃあまずは全員に神代魔法を与える」

 

 すると彼女らの立っている場所に、巨大な魔法陣が形成される。それが淡く輝くと同時に、多くの性奴隷は、軽く頭を押さえたり、目を強く瞑ったりした。割と脳への負荷はあるようだ。

 しかしそれも一秒で終わる。たったこれだけで、ハジメが今までに手に入れた神代魔法を、皆に与えることができたのだ。

 

「さて、ここにいるメンバーで、この迷宮攻略を行う。精神を揺さぶってくることもあるから、ちゃんと警戒しておくように」

 

 そうして、洞の奥へと進む。

 

 今回の攻略メンバーは、ハジメを除くと、香織、鈴、恵里、優花、妙子、奈々、ユエ、シア、アルテナ、ティオ、ノイントだ。愛子先生と雫に関しては、攻略後に神代魔法を与える予定である。

 

 洞の中へ全員が入り終えると、中にあった魔法陣が起動され、ハジメ達は転移されるのであった。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 そうして洞の中へと入ると、木々の生い茂る樹海だった。大樹の中の樹海という、何とも奇妙な状況である。

 

「……なるほど、こういう感じか」

 

 近くにいたのは、香織と恵里と妙子とユエの四人。ハジメは無言で彼女らを見つめて、そう言った。

 

「香織、ユエ。命令だ、自殺しろ」

「「……!」」

「ふんっ」

 

 言葉に反応したが、香織とユエの二人は、ハジメの命令に従わなかった。普通なら即座に従うはずなのに。故にハジメは、彼女らの頭を吹き飛ばした。

 その瞬間、頭からは赤錆色のスライムのようなものが飛び散り、身体も溶けて地面と同化していった。そう、彼女らは偽物だったのだ。肉体の差異を一瞬で見抜き、彼は二人が偽物と断定したのだ。

 

「……この程度か。偽物を見抜くなど、容易にできる。さぁ、行こうか」

 

 そうして先へと進む。この後も、何度か偽物が現れたり、それ以外にも魔物が出てきたりもしたが、本当に大したことはない。なんせハジメの技能があれば、魔物を見抜くことくらい容易であるからだ。

 

 ……それと、今回は発生していないが、本来この試練では、一部の人がゴブリンへと変えられる。しかし今回は、そんなことは起きていない。

 理由は簡単で、ハジメ達の肉体が、普通のそこらの魔法を軽く凌駕する能力により、変異させられているからである。故にそちらの方が優先され、変異が起きなかったわけだ。

 

 そのため、大したことも起きず、最後には全員が集合することに成功した。そして最後に倒したトレントのような魔物が変質し、新たなる道が開けた。

 

 そこへ入ると、またしても転移の魔法陣が起動し、彼らの意識は莫大な光によって塗りつぶされた。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

チュンチュン、チュン……

 

 朝を知らせる鳥のさえずりが、カーテンの隙間から陽の光と共に薄暗い部屋の中へと侵入してくる。なんとなく心地良い音を味わいながら、ハジメは目を覚ました。

 

「……!」

 

 その瞬間、ハジメは異変に気づいた。先程まで迷宮にいたはずなのに、今はフカフカのベッドの上にいたのだから。

 

 ハジメは幻覚を見せられること自体はあるし、それを防ぐ術はない。しかし記憶の操作を受けることは、基本的にはあり得ない。少なくとも、神代魔法ごときの影響は受けないのは、既に実証済みだ。

 そして実際に、記憶操作による認識改変は受けなかった。だから幻覚を見せられても、それを幻覚だと一瞬で認識することができたのだ。

 

「僕が能力を持ってなかったら、中々に面倒な試練になってただろうなぁ……」

 

 そんなことを呟いていると、世界は崩れていく。ボロボロと、世界が少しずつ破壊されていく。黒が増えていき、同時に意識も黒に飲み込まれていく。

 

「……合格だよ。甘く優しいだけのものに価値はない。与えられるだけじゃ意味がない。たとえ辛くとも苦しくとも、現実で積み重ね紡いだものこそが君を幸せにするんだ。忘れないでね」

 

 意識が暗転する直前、聞いたことのない女性の声が聞こえた。しかし彼女の言う言葉は、ひどく的外れであった。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 どうやら全員が幻覚を見せられていたようだが、全員が即座に幻覚だと認識したおかげで、一瞬で二つ目の試練をクリアしたみたいだ。

 

 見た感じだと、全員が琥珀の中に閉じ込められて、幻覚を見せられていたらしい。本来は認識改変等をさせられたのだろうが……ハジメにもその性奴隷にも、洗脳やそれに類する魔法は一切の効果を発揮しない。それこそ、光輝レベルの能力でもなければ効かないだろう。

 

 そしてその次の試練も、媚薬のような効果を持つスライムが降ってきたりもしたが、そもそもハジメの体液を味わったことがある性奴隷達に対して、目に見えるほどの効果は発揮することもなく、そのまま普通に突破した。

 

 そして最後には、大量のゴキブリの魔物と戦うことになった。ゴキブリみたいだったこともあり、非常に気持ち悪くはあったが、それだけだ。

 一応、精神操作系の魔法を使ってきてはいたようだが、そもそもそんな魔法は、ハジメ達には一切効かない。だからただ倒すだけで、あっさりと突破することに成功したのであった。

 

 

 

 そしてたどり着いたのは……庭園だった。可愛らしい水路と芝生のような地面、あちこちから突き出すように伸びている比較的小さな樹々、小さな白亜の建物があった。

 そして一番奥には円形の水路で囲まれた小さな島と、その中央に一際大きな樹、その樹の枝が絡みついている石版があった。

 

 そしてハジメは気づいた。自分達は、大樹の天辺付近にいると。庭園の淵から見える眼下には、広大な雲海と見紛う濃霧の海が広がっていた。

 

「……濃霧から突き抜けてる。でも、どうして」

 

 大樹の大きさは桁違いで、普通であればハルツィナ樹海の外側からでも見えるはずの高さだ。なのに、今まで大樹が見えなかったことには、一切の疑問を抱かなかった。

 

「なるほど、そういう魔法の使い方か。悪魔の能力に探知系の能力は無いからな……」

 

 ハジメは様々な神代魔法を得て気づいた。悪魔から貰った能力は、神代魔法を超えていると。だからこそ、特に魂魄魔法系統の洗脳を受け付けない。しかしそれ以外の、隠蔽系の魔法や認識阻害は効果があるわけだ。そういった類を見破る能力は、持ち合わせていないから。

 

 水路で囲まれた円状の小さな島に、ハジメ達が可愛らしいアーチを渡って降り立つ。途端、石版が輝き出し、水路に若草色の魔力が流れ込んだ。水路そのものが魔法陣となっているのだ。ホタルのような燐光がゆらゆらと立ち昇る。

 いつもと同じように記憶を精査されるような感覚と、直後の知識を無理やり刻み込まれる感覚を覚える。全員が似たようなことをハジメにやられているので、案外簡単に受け入れることができたようだ。

 

 ハジメが、流れ込んできた知識から読み取った新たな神代魔法を口にしようとしたその時、おもむろに目の前の石版に絡みついた樹がうねり始めた。

 

 何事かとハジメ達が身構える。そんなハジメ達を尻目に立ち昇る燐光に照らされた樹はぐねぐねと形を変えていき、やがて、その幹の真ん中に人の顔を作り始めた。ググッとせり出てきて、肩から上だけの女性とわかる容姿が出来上がっていく。

 

 そうして完全に人型が出来上がると、その女性は閉じていた目を開ける。そして、そっと口を開いた。

 

「まずは、おめでとうと言わせてもらうわ。よく、数々の大迷宮とわたくしの、このリューティリス・ハルツィナの用意した試練を乗り越えたわね。あなた達に最大限の敬意を表し、ひどく辛い試練を仕掛けたことを深くお詫び致します」

 

 どうやら樹を媒体にした記録のようだ。オスカーのような映像の代わりということだろう。どこかリリアーナのような王族に通じる気品と威厳があるように感じる。樹の幹から出来ているのではっきりとは分からないが、ストレートの髪を中分けにした美人に見える。

 

「しかし、これもまた必要なこと。他の大迷宮を乗り越えて来たあなた方ならば、神々と我々の関係、過去の悲劇、そして今、起きている何か……全て把握しているはずね? それ故に、揺るがぬ絆と、揺らぎ得る心というものを知って欲しかったのよ。きっと、ここまでたどり着いたあなた達なら、心の強さというものも、逆に、弱さというものも理解したと思う。それが、この先の未来で、あなた達の力になることを切に願っているわ」

 

 全員が全員、神妙な顔でリューティリスの話を聞く。それもそうだろう。一切の洗脳系の魔法の効果を無効化するハジメ達にとっては、迷宮内では何も起きなかったのと同義なのだから。だからこそ、少し焦れてくるというものだ。

 

「あなた達が、どんな目的の為に、私の魔法―― “昇華魔法”を得ようとしたのかは分からない。どう使おうとも、あなた達の自由だわ。でも。どうか力に溺れることだけはなく、そうなりそうな時は絆の標に縋りなさい」

 

 絆の標。どうやらリューティリスは、絆というものを大切に考えているらしい。しかしハジメ達にはそんなものは存在しない。あるのは主人と性奴隷との、絶対的な主従関係だけ。まぁ、攻略が認められたといえばその通りなので問題は無い。

 

「わたくしの与えた神代の魔法“昇華”は、全ての“力”を最低でも一段進化させる。与えた知識の通りに。けれど、この魔法の真価は、もっと別のところにあるわ」

 

 意識が散漫になってきていたハジメだったが、今の言葉で意識を映像の方へと向ける。何か、重要そうな情報を話すような、そんな気がしたのだ。

 

「昇華魔法は、文字通り全ての“力”を昇華させる。それは神代魔法も例外じゃない。生成魔法、重力魔法、魂魄魔法、変成魔法、空間魔法、再生魔法……これらは理の根幹に作用する強大な力。その全てが一段進化し、更に組み合わさることで神代魔法を超える魔法に至る。神の御業とも言うべき魔法――“概念魔法”に」

 

 概念魔法。

 

 この言葉を聞いた瞬間、ハジメは察した。今の自分が持っている、悪魔から与えられた能力の正体を。それが、この概念魔法だった。

 あらゆる魔法のさらに上に存在する魔法が、悪魔の能力。もちろん序列的には、概念魔法は神代魔法よりも上だ。となると、迷宮で使われていたであろう魂魄魔法が効かなかったのも頷ける。

 

「概念魔法――そのままの意味よ。あらゆる概念をこの世に顕現・作用させる魔法。ただし、この魔法は全ての神代魔法を手に入れたとしても容易に修得することは出来ないわ。なぜなら、概念魔法は理論ではなく極限の意志によって生み出されるものだから」

 

 これを聞き、改めてハジメは恐怖した。エヒトにとか解放者にとか、ではない。地球に存在するという、神々という名の上位者についてだ。

 これは、悪魔から能力を与えられ、神々のことを知ったハジメだからこそ感じる恐怖だ。圧倒的上位者が、全ての頂点に君臨する魔法を、人間に与えられるくらいには普通に行使できる。つまり、いつ気まぐれで殺されてもおかしくないということだ。頭が良くなりすぎたハジメにとって、これを恐怖と感じないわけがない。

 

「わたくし達、解放者のメンバーでも七人掛りで何十年かけても、たった三つの概念魔法しか生み出すことが出来なかったわ。もっとも、わたくし達にはそれで十分ではあったのだけれど……。その内の一つをあなた達に」

 

 そうして、石版の中央がスライドし奥から何かが出てきたが、それに気づかないほどにはハジメは震えていた。すぐに近くにいた香織に肩をたたかれて正気に戻ったが、そこにあったのは、懐中時計のようなものだった。表には半透明の蓋の中に同じ長さの針が一本中央に固定されており、裏側にはリューティリス・ハルツィナの紋様が描かれていた。どうやら攻略の証も兼ねているようだ。ハジメが、手中のそれをしげしげと見つめているとリューティリスが説明を再開した。

 

「名を“導越の羅針盤”――込められた概念は“望んだ場所を指し示す”よ。どこでも、何にでも、望めばその場所へと導いてくれるわ。それが隠されたものでもあっても、あるいは――別の世界であっても」

 

 リューティリスの伝えたいこと。それは、これさえあれば、エヒトのいる場所が分かる、ということだろう。ただハジメ達にとっては、これこそが、帰還に必要な重要アイテムだった。

 

「全ての神代魔法を手に入れ、そこに確かな意志があるのなら、あなた達はどこにでも行ける。自由な意志のもと、あなた達の進む未来に幸多からんことを祈っているわ」

 

 伝えることは最低限伝えたということか、リューティリスはそれを最後の言葉に再び樹の中へと戻っていき、後には唯の石版に絡みついた樹だけが残った。

 

「…………なるほど」

 

 ハジメは大きく息を吐き、導越の羅針盤を見る。早速使ってみようと思ったが、何を探してみるべきか。そう考えていると、ふと思いついたものがあった。

 

「天之河光輝の居所を指せ」

 

 なんとなく、ハジメはそう言ってみた。もちろん、居所を知っておきたいという、ちょっとした理由もあったりするが、まぁ気楽な感じに言った。

 

 しかし、そんな表情も、一瞬で凍りつく。

 

 

 

 針は、ちょうどハジメ達の真下を指していた。

 

 

 

「真下……ッ!!」

 

 ハジメは即座に理解した。光輝が今この場にやって来ているのだと。

 

「氷雪洞窟の場所を示せ!」

 

 ハジメは慌てて導越の羅針盤に向けて叫ぶ。そして針が指した方向へ向けて、空間魔法でワープするのであった。




・南雲ハジメ∶迷宮はめちゃくちゃ余裕だった。しかし例のアイツが近づいてきててビビり散らす。

・天之河光輝∶寵愛の力で大樹へ不法侵入。現在大迷宮を攻略中。



湯タンポ様
Pppppaaa様

評価していただきありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。