そして今回も濡れ場なし。今回は氷雪洞窟の攻略なのですが、少しだけ長くなります。まぁ理由は簡単で、ここだけが、ハジメが唯一苦戦する大迷宮だからです。それとまた言いますが、濡れ場はしばらくありません。戦闘が続くことでしょう。
光輝の接近に気づいたハジメは、ハルツィナ樹海に存在する大迷宮を攻略するやいなや、即座にシュネー雪原へと向かった。
そこは、極寒の地だった。何か対策しないと、普通の人なら簡単に凍死してしまうくらいには寒かった。
だがハジメもその性奴隷も、身体があり得ないくらいに丈夫になっていた。それこそ、絶対零度くらいなら余裕で耐えられるくらいには。
そうしてハジメ達は、大迷宮である氷雪洞窟が存在するであろう場所付近にたどり着いた。一見すると雪で覆われた地ではあるが、その下に大迷宮が隠されているみたいだ。
「……さぁ、行こう」
軽く衝撃波を発生させて雪を振り払うと、そこには大穴があった。ハジメはそれを見て深呼吸をすると、一気に飛び込んだ。
◆◇◆◇
下に飛び降りて分かることではあるが、峡谷は雪と氷だけで形成されていた。そこを少し早足に進む。光輝に追いつかれないように。
すると数分で、羅針盤の示していた迷宮の入口へとたどり着いた。峡谷の行き止まりの先に、二等辺三角形のような綺麗な形の縦割れが見えた。
「……あ、そうだ」
そして迷宮に入る直前で、ハジメはあることを思いついた。神山の大迷宮に、ハルツィナ樹海の大迷宮……そこと同じように、精神力を試される可能性があると。ふと思い浮かんだアイデアを試すために、ハジメは性奴隷達の方に向いて言った。
「みんな、命令だ。最後の神代魔法を得るまでの間、僕への愛情と忠誠心以外の感情を消し去り、感じないようにしろ」
「「「はい!!」」」
そう言うと、性奴隷達は完全に無表情になった。今までは寒さで少し震えている子もいたが、その寒さも一切感じなくなったのか、全員震えは止まっていた。
そうして迷宮へ突入するわけなのだが、序盤の方は大したことが無かった。迷宮内はミラーハウスのようになっており、吹雪いている雪に触れると凍傷になりかけるのだが……そこは再生魔法で対処可能な上、結界を利用すれば無効化できるので、普通に進むことができた。
そして壁の中には、魔人族の凍死体があり、動き出したりもしたが、それもただ不気味なだけで、ハジメにとっては大したことはなかった。
「……魔人族の死体ばかりだ。まぁ、領土的にそれが普通か」
シュネー雪原は、魔人族の領土に存在する。そして壁の中の死体は、おそらく魔人族の挑戦者のものだろう。それらは倒しても倒しても再生してきたが……ノイントを性奴隷化した時に得た“分解能力”を利用してしまえば、塵すら残さず消滅させ、再生を封じることはできた。
ともかく、魔物を倒すということ自体は、ハジメ達にとっては容易なことだった。というかハジメ自身のステータスが百万を超えているのだから、通常の戦闘で苦戦する方が難しいというものだ。
「……警戒しようか。まだ、
ハジメの言葉に、後ろの性奴隷達は無言で頷くだけ。命令通りに警戒はすれど、緊張感は無く、ただ五感で周囲の情報を得ていく。
そうして道を進んでいくと……そこには、大迷宮が存在していた。大迷宮の中に大迷宮。壁で区切られ上が吹き抜けとなっている、アスレチックパークなどでよく見る迷路そのままだが、その規模は凄まじい。見える先だけでも確実に一キロはあり、そこから先は雪煙で見えなくなっているのだが、横幅が確実に十キロメートルはあるので、おそらく奥行もそれくらいあるのだろう。
「……面倒だ。ひっっっったすらに面倒そうだ。こういう所は、さっさと行くに限る」
ハジメはそのステータスを活かし、氷の大迷宮へと突入する。慌てている……というわけではないようだが、非常に速い速度で進んでいく。ここに長い時間をかけてしまえば、光輝に追いつかれるかもしれないから。
もちろん性奴隷達もハジメに続く。ハジメも急いでいるとはいえ、性奴隷達を置いていくつもりはないらしく、彼女達でも問題無い速度で走る。
ちなみにだが、ハジメは様々な人物を性奴隷にした結果、探知系の能力を得ている。それを利用してしまえば、迷路を突破すること程度、普通なら造作もなかった。
――普通なら。
『……また欲望に従うのか?』
「ん?」
ハジメは足を止める。何かが聞こえた。走りながら、現れる魔物を倒しまくってしたら、囁くような男の声が聞こえてきた。
「どうしたの?」
「いや、なんというか……」
『全ては自分のためなのだろう?』
「……まただ」
何かが、聞こえる。いや、脳内に響いているような、そんな感じがする。ハジメにだけ、その謎の声は聞こえていた。
「何か、聞こえないか? 囁くような声が聞こえてくるんだけど……」
「ん……女の声が聞こえるけど、気にはならない」
「妾も気にならんな。ご主人様のご命令のおかげかもしれん」
ユエやティオの言葉に、他の性奴隷達も頷く。彼女らにも声は聞こえているらしいが、それに対して何も感じていないらしい。事前に命令をしていたのが功を奏したようだ。
「でも、声は何を言ってるんだろう? なんか……言ってることが抽象的な気が……」
「ん? ああ……確かに言われてみたらそうだな。だから人を惑わすとか、そういう意味合いを持っているわけではなさそうだけど……」
香織の言ったこともあり、ハジメは色々と聞こえてきた言葉に対する推測を行うことができた。が、それについて考えれば考えるほど、なんとなく嫌な気分になってくるような、そんな感じがした。
「……考えるのは止めだ。さっさと進もう」
『目を逸らしたな?』
そうしてハジメ達は、この氷の迷宮に突入して三十分で、全てを突破し、最奥へとたどり着いた。そしてその氷の迷宮の奥地には、巨大な門が鎮座していた。
考えるのも面倒だと言わんばかりに、ハジメは奥へと進んでいく。そもそも考えなくても、シアから得た“未来視”があれば、その先の危険が何となく分かる。そして危険性は、一切無かった。
「さぁみんな、もう一つ命令だ。もしこの迷宮内でよく分からない声が聞こえたとしても、一切それに反応しないこと」
「「「はい!!」」」
ハジメは門を開ける前に、それだけ言った。そして一歩踏み出すと、そこには……太陽があった。
大迷宮の中なので、当然だが本物の太陽なわけないのだが、皮膚に感じる熱が、それが本物なのだと錯覚させるほどのものだった。
しかしそれよりも厄介なのが、周囲の全てが煌めいている点だろう。天空から空を覆う雪煙を貫いて差し込む陽の光が空気中の細氷に反射しているのだろう。いわゆる、ダイヤモンドダストというやつだ。
しかし、本当のダイヤモンドダストのようには見えない。何かがおかしい気がする。というのも、煌きが明らかに強すぎるのである。
「走るぞ!」
視界も狭い。探知能力があればマシだが、それでも面倒だ。そんな場所はさっさと突破するに限る。そういうわけで、ハジメはそう叫び、駆け出す。
ズドンッ!!
それとほぼ同時に、地響きを立てながら上空から迫る雪煙から、大型自動車くらいの大きさの氷塊が複数落ちて来たのだ。かなりの重量があるようで、落ちた衝撃により地面が砕けてクレーターが出来ている。向こう側が透けて見えるほど透明度の高い氷塊で、いわゆる純氷というやつなのかもしれない。胸元には、わかりやすく赤黒い結晶が見えていた。
それに呼応でもしたかのように、直後、氷塊は一気に形を変えて体長五メートル程の人型となった。片手にハルバードを持ち、もう片手にはタワーシールドを持っている。その数は全部で九体。ちょうどハジメ達と同じ数だ。ゴーレムのようにずんぐりしていて、横列となって出口を塞いでいる。
「終わりだ」
しかし、ハジメにかかれば瞬殺できる。一秒もしない内に、ゴーレムは光に飲み込まれて完全に消滅してしまったのだ。
倒すと、眼前に雪煙のトンネルが出来上がっていく。そこを進んでいくと、やがて光の門のようなものが見えた。おそらくここが、この空間の出口なのだろう。
と、そんなことを考えていると、軽く分断されていた性奴隷達も、ゴーレムを倒してやってきたようだ。全員が揃ったことを確認すると、ハジメ達は、同時に光の門を潜った。
◆◇◆◇
視界を染め上げた輝きが収まり、ハジメはゆっくりと目を開いた。
「……まだ続いたか。まぁでも、これで最後だろ」
どうやら分断されているようだが、そこは大して気にならない。ハジメは自分の能力もそうだが、性奴隷達の能力も信頼しているから。だからこそ、さっさと進んでいく。
カツカツと鏡のような氷の地面を歩く足音が反響する。
十分くらい歩いただろうか。分かれ道のない一直線の道を歩き続けて、やがてハジメは、中央に天井と地面を結ぶ巨大な氷柱のある大きな部屋に辿り着いた。鏡のような氷壁と同じく、円柱型の氷柱もよくハジメの姿を反射している。
「行き止まりか」
そう独りごちながら、ハジメは氷柱に歩み寄って行った。何かがあるとしたら、確実に氷柱だ。そう考え、ある一定の距離まで近づいた瞬間……
『このまま進むつもりか?』
謎の男の声がした。いや、もう謎の男の声と言うべきではない。なんせ喋っていたのは、氷柱に映った自分自身だったのだから。
「……まさか、こんなことになるとは」
『おっと。どうやらこの展開は、予想していなかったみたいだね?』
この迷宮の最後の戦い。それは、自分自身との戦いだった。
今までの迷宮は、大体が魔物が相手だった。ライセン大迷宮だけ少し違うが、それでも、少なくとも、人型の生命体を相手にすることはなかった。だからこそ、ここで人型生命体、しかも自分の写身のような存在と戦うなどということを、ハジメは予想すらしなかったのだ。
「それで? 今から戦いを始めるのか?」
『まぁ戦いはやるけど……今はその時じゃない。とりあえず、話をしよう』
そう言うと、氷柱の中の自分は変わっていく。肌は浅黒く変色し、髪は完全な白髪へと変わる。そうして柱から出て実体を得ると、その場に座った。
『ほら、座ったら? 少なくとも、話をしている時は攻撃するつもりはないから』
「……わかった」
ハジメは、素直にあぐらをかいて座った。
『で、早速なんだけど……お前のその行動は、本当に正しいものか?』
「…………何を言いたい?」
『いやいや……
「ああ、それは知ってる。けど、やらなければならないことだ」
『やらなければならない、か。そんな言葉で、自分の感情を取り繕っても無駄だよ』
「何が言いたい?」
ハジメは目を細める。なんとなく、心がざわつくような、そんな感覚がする。
『
「ッ!!」
『罪悪感がある風に言い訳しているみたいだけど、本当は違う。確かに最初は罪悪感もあったけど、今は欲望に忠実に性奴隷を増やしている。違うかい?』
「それはッ……」
心の奥底、誰にも見せないように隠してきた本心が暴かれるような、そんな感覚。大切に大切に、何重にもロックを掛けて、それこそ自分ですら認識できないように隠しておいた本心が露になる。
『
「そんなことはない!」
『あー、ははは……やっぱり
その時だった。勢いよくハジメは立ち上がり、攻撃を仕掛けた。ありえないほどに高密度な魔力の塊を放つ。
ズゴォォォォォン!!
凄まじい衝撃と共に、熱と煙で視界が塞がれる。そんな攻撃を放ったハジメの方は、身体がわずかに震えていた。
そして煙が薄れていくとそこには、偽ハジメが無傷で立っていた。
『攻撃したね? じゃあこっちもやらせてもらうよ』
・南雲ハジメ∶本心というのは、表面に出されたら非常に脆い。ハジメの本心を見せつけられた結果、心が締め付けられることに。
坂田銀時様
評価していただきありがとうございます。