それと、アニメのIS二期を見たのですが、簪ちゃんが可愛かったです。何気に今までなかったタイプのヒロインでは?
さらに翌日。ハジメは朝食を食べて、雑に楯無を使って性欲処理してから教室へ入っていく。これが最近のルーティンになっている。
「おはよう、一夏」
「おはようハジメ」
そして、割とHRが始まるくらいに、一夏も教室へ入ってくる。わずかに汗をかいていることから、急いでいたっぽいのは分かる。
「一夏、調子はどうだ?」
「調子といってもなぁ……正直全然だ。ISについて覚えようとしてるけど、あれキツ過ぎるよ……!」
「まぁ、あの分厚いのをやるとなるとねぇ……」
一夏は、本当にゼロからのスタートだ。ハジメなんかとは違って、極端に身体や頭脳のスペックが高いわけではないので、勉強系は中々にしんどいだろう。
「でも確か、入学試験で教官に勝ったんだよね?」
「いや、勝ったには勝ったけど……正直、相手が自滅した、みたいな感じだったし……」
「でも運は一夏に向いてるんじゃない? ま、今できることを全力でやる。そうすれば、運が味方してくれるはずだ」
「ああ、そうだ――」
話している途中に、バチンと、一夏の頭に出席簿が振り下ろされる。ちょうど立っていたのは一夏だったので、千冬にぶん叩かれてしまった。
「HRだ、席につけ」
その一言だけで、教室は静かになる。一夏もそそくさと自分の席へ座ったところで、千冬は話し始める。
「さて、HRを始める前に……織斑。お前のISだが、準備に時間がかかる」
「へ?」
「予備機がない。だからデータ収集の一環で、学園で専用機を用意することになった」
千冬の言葉に、クラスがざわめき出す。
「専用機!? 一年の、しかもこの時期に?」
「つまりそれって政府からの支援が出てるってことで」
「いいなぁ〜。私も早く専用機欲しいなぁ」
彼女らの言う通り、これは異常だ。こんな時に専用機が与えられるなど、普通はあり得ない。まぁ、希少な男性操縦者のデータを取るためだろう。
「あらあら。良かったですわね。私てっきり訓練機にお相手なさらなければならないかと思いましたわ」
そんな一夏の事情を耳にしたセシリアは、煽り散らす。
「なに?」
「訓練機相手に勝ったところで、つまらないんですもの」
まるで、自分が勝つことなど当然であるかのように。
「んんっ……それと南雲、お前の専用機についてだが……残念ながら用意できないそうだ。自分で作れ」
「……はい? 自分で?」
「ああ。一応、外側の装甲部分は用意されているから、そこから好きに武装を入れろ、とのことだ」
「いやそういうわけじゃなくて……何でそんなことになったんですか?」
そして次はハジメの専用機について……なのだが、出てきたのはまさかの、自分で作れという言葉だ。ISに関する知識もまだ乏しい方に見える人にISを作らせるなど、それこそ、一夏の場合より異常だ。周りも「えっ、ウソ?」「どうしてそうなったの?」など、一夏の時以上に困惑気味である。
「理由はいくつかあるらしいが、一番大きいのは、お前が十全に使用できるISを用意する技術が無い、といったところか」
「それは……どういうことですか?」
「私も詳しいことは分からんが……南雲、お前の身体は少々特殊らしい。それ故に現行のISでは、むしろお前の活動を阻害する足枷になってしまう、とのことだ」
どうやら、ハジメのISは倉持技術研究所という場所で作られる予定だったらしい。だが、この世界に存在する技術では、ハジメの能力を超えるISは作り出せなかった。どう頑張っても、足枷にしかならないISしか作り出せなかった。
……というのが、表向きの理由。だがノイントから話を聞く限りだと、一夏の方を優先したせいで、本当はハジメの方に人員を回せなかったからだという。
確かに、世界最強の操縦者の弟のISか、ただの一般家庭出身の男子のISか、どちらを優先すべきかと考えると、前者になってくるだろう。立場的に。
要するに、一夏のISを優先して作るために、ハジメのIS製作が遅れてしまっていたというわけだ。
「簡単に言ってしまえば、研究所がさじを投げた。篠ノ之博士と連絡がつけば、何かが変わったかもしれないが……すまないな」
「いえいえ。かなりキツいでしょうけど、なんとかやってみせますよ」
「……そうか。では授業を始める」
正直な話、高性能のISを作るだけであれば、束に頼めば一発である。だがハジメとの関係性を悟られてはならないため、その選択肢は取れなかった。
だから、自分で作らざるを得なかった。普通のISだと、満足な性能が発揮されない。というか、ハジメ本来のスペックを活かせなくなってしまうのだ、仕方がない。
そうして、いつも通りの授業が始まる。やはりというべきか、ハジメにとっては簡単で、一夏は頭を抱えていた。
◆◇◆◇
放課後。ハジメは真耶先生に整備室へ案内された。この部屋の一角で、ISを作ることになるらしい。そしてハジメの目の前には、黒を貴重とした、重々しい雰囲気のISの外面だけがあった。
「では、私は用があるのでこれで。何かあったら、力になりますからね」
「ありがとうございます」
こんな妙な状況になったからなのか、真耶先生は随分とハジメのことを気にかけているように見える。まぁ、まだ分からないことが多いISを、つい先日まで中学生だった人が作るとなると、普通に考えたら難しいので仕方無いのかもしれない。
ハジメは、自分に与えられたISに近づき、軽く触れる。かなり良質な金属が使われており、非常に高品質であることが分かる。
それと、一切の武装などが存在せず、装甲だけしかないとのことではあるが、流石に最低限の浮遊と飛行能力だけはあるみたいだ。
「やっぱり凄いよなぁISって。でも普通の改造じゃあ、僕にとっては足枷になるだけだからなぁ」
攻撃力と防御力は問題無い。一番の課題は機動力だ。どうやって機動力を上げるのか、いっそのことPIC*1やスラスターを完全に取っ払うべきか。そんなことを考えていると、整備室の扉が開くときの機械音が聞こえた。
「ん?」
真耶先生の話だと、新年度が始まったばかりなので、ISによる模擬戦を行う人もおらず、ここを使う人はほぼいないと聞いている。では、真耶先生が何か伝え忘れて戻ってきたのだろうか。そう思い、ハジメは入口の方へ向かおうと、曲がり角を曲がった。
その時、水色の髪が目に入る。
「わっ!?」
ハジメの肩に何かがぶつかる。そこにはバランスを崩して転びかけている少女がいた。ハジメは反射的に、彼女の腕を掴み、支えた。
「っとと、危ない危ない……ごめん、大丈夫だった?」
「へ……あっ、うん、大丈夫……」
恥ずかしそうに頬を少し赤くしながら、少女は言う。セミロングの癖のある青髪に、四角い眼鏡をかけた少女。彼女の弱々しげな口調や、伏せがちな視線から、内気な性格が容易に見て取れた。
だが彼女の目に、ハジメの後ろに鎮座する、まだISとは呼べない装甲が映った。
「あれ……未完成のIS……」
予想外のモノを目にした少女は、思わず小さく声に出してしまう。
「ん? ああ、このISは僕のなんだ。まぁ見ての通り未完成だけど」
「え……どうして? 男性操縦者なんだから、企業がISを作るはずじゃ……」
「最初はその予定だったらしいけど、もう一人に人員を割きまくったらしい。まぁ、一般家庭出身の男子か、世界最強の操縦者を姉に持つ男子か、立場的に後者を優先するのは仕方無いことなんだろうけどさ……」
「……そうなんだ」
もう一人が織斑一夏であることは、少女は言わなくても理解してくれたらしい。彼女は少し同情するような視線を向けてきた。
「そういえば自己紹介忘れてたな。僕は南雲ハジメだ」
「あっ、えっと……
「更織さん、ね。確か――」
代表候補生だったっけと、そう続けようとしたら、簪は割って入ってきて、今までより強い口調で言った。
「簪って、呼んで」
ハジメは「お、おう」と言うが、彼女がそう言った理由はすぐに理解できた。
簪は名字で分かる通り、楯無の妹である。姉の楯無は生徒会長で、ロシアの代表。はっきり言ってとても優秀である。そんな姉と比較されて、簪はコンプレックスを抱いているらしいと、楯無は言っていた。
「まぁそれはそれとして、確か簪さんって代表候補生だったよね?」
「うん、一応……でも……」
「……! 専用機が無い、とか?」
「そう……南雲君と同じで、ISの開発計画が凍結して……今は私が組み立てようとしてるんだけど……」
「上手く行ってない、か」
コクリと、簪は頷く。そこから何とも言えない雰囲気になって、少しの間、沈黙が続く。
それを断ち切ったのは、ハジメだった。
「……簪さん。もしよければだけど、IS作るの手伝おうか?」
「えっ? でも、その……南雲君も、自分のISがあるでしょう……?」
遠回しに、遠慮しますと言ってくる簪。ただハジメとしては、今まであまり見たことなかった、内気な少女を堕としたくて仕方がなかった。それに楯無から、堕としてほしいと言われてもいる。なので話を続けた。
「ごめん、言い方を間違えた。簪さんのISを作るのを、
「……手伝わせて、ほしい?」
「ああ。正直な話、突然ISを作れと言われても、何もアイデアが無い。だから簪さんのIS作りを手伝う過程で、色々と学ばせてほしいんだ」
IS作りについて学びたい、だから手伝わせてほしい。これがもし、ただの手伝おうか? という提案とかだったら、簪も普通に拒否していたことだろう。
しかし今回のは、困ってるから手伝ってほしいという、あくまでお願いの形式になっている。そして簪は、困っている人を簡単に見捨てることができる性格ではなかった。ハジメの境遇に少なからず同情していた簪は、悩みに悩んだ末に、ゆっくりと頷いた。
そういうわけで、簪のISが置いてある区画に案内される。その際に聞いた話では、中学三年生の二月くらいから開発をスタートしていたみたいだ。ハジメは純粋に、中学生だった頃から自分でISを作ろうとする簪を凄いと感じていた。
そうして案内された場所には、日本の量産機である
「へぇ、
タブレットを借りて、情報を見せてもらう。ミサイルに薙刀、それと荷電粒子砲が主な武装のようだ。それと、少し見て気づいたのだが、コアとの適合が上手く行ってないようだ。
「これ、ミサイルとかに第三世代の技術を組み込んだら良い感じになりそうだね?」
「それは、私も思ってるけど……かなり難しくて……」
「ふむふむ……」
ハジメぐらいの頭脳であれば、ISを完成させるのは容易い。だが、だからといって全てハジメ自身がやってしまうと、簪にとっては、特に精神的にあまり良くないだろう。
(魔法で夢でも見せて、知識を渡せばいっか)
どうするべきかと少し考えていたハジメだったが、最初に思いついた雑な考えを、今夜実行することにした。
・南雲ハジメ:一夏のISを優先された結果、自分でISを作ることに。まぁ、神なので普通にどうにかなるし、むしろそっちのほうがいいとすら思っている。
・更織簪:優秀な姉にコンプレックスを抱いている内気な少女。似た境遇のハジメと共にISを作ることになる。ハジメへの好感度は、まだ普通くらい。