※この作品はR-18です。

BIOHAZARD sexual invasion   作:MIYOSHI

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Ep: Ashford 1(1981)

「ようこそ我が本邸へ、アダム様。ご卒業おめでとうございます」

「ありがとうございます。アシュフォード卿」

 

 歴史ある佇まいながらも、綺羅びやかで豪華絢爛を絵に描いたような宮殿。

 ホールでは大勢の人々がドレスコードに従ったその場にふさわしい高級なスーツやドレスを着込み、給仕の運ぶシャンパンやワインを肴に賑やかな夜を楽しんでいる。

 

 南米旅行から一年が経過し、晴れて十歳となったアダムもその一人。

 無事にアレクシアと共に大学を首席で卒業した彼は、アシュフォード家の本邸で催される卒業祝いを兼ねた彼女の誕生日パーティに招待されていた。

 

 アダムは普段無造作にしている銀髪をフォーマルな服装に合わせてオールバックに固めている。

 十歳になって身長も140cmを超え、幼さを残しつつも着実に大人へと近づいていく絶世の美少年。今や少年癖を患っていない者でさえも、その容姿端麗さとスーツ越しでも分かる引き締まった細身の身体に魅了されてしまう。

 すれ違って振り返らない女性はおらず、遠目からでも視線を集めて止まない存在となっていた。

 

「それにしても、アダム様には娘のアレクシアが随分とお世話になったようで。改めて、感謝いたします」

「いえ、僕も彼女には色々と世話になりましたので……」

 

 主に下半身が、だが。アダムは目を反らしながら答えた。

 アシュフォード家現当主であるアレクサンダーはそんな彼の前で膝を折り、何やら耳打ちし始める。

 

「ところで、アダム様はアンブレラの副会長に就任されると伺いましたが……」

「ええ。その通りです」

 

 そう。アダムは大学卒業と同時にアンブレラ副会長に就任し、世界各国の支部にある研究所を視察して回る役目を任されているのだ。

 

「ならば、これからは責任ある立場に置かれながらも社会に進んでいく身。そうなると、やはり自身を支えてくれるパートナーが必要だとは思いませんか?」

 

 どうやら、暗に娘のアレクシアと婚約することを勧めているようだ。

 

 アレクシアは父親である彼からアンブレラ御曹司──つまり、アダムを堕とせと指示されていた。アダムがスペンサーに言われたように。

 が、様子を見るにあくまで婚約関係を結ぶことを目的としていただけで、スペンサーが危惧するような会社の乗っ取りなんて考えてもなさそうだ。いや、最初は考えていたが、アレクシアの性格からそれが難しいと考えて、取り入ることに方針転換したのだろう。

 

 無論、まさか娘が指示を飛躍して、恋愛すっ飛ばしの肉体関係に及んでいるとは夢にも思っていないだろうが。

 そのアレクシアも、アンブレラへの就職が既に決まっている。

 

「……確かに、必要かもしれません」

「では……!」

「でも、まだそういったことは考えてないので」

 

 そうですか……と、明らかに残念そうな顔で身を引くアレクサンダー。

 

 考えてない、というのは嘘だ。

 アダムはたくさんの魅力的な女性達と出会って関係を持つことを望んでいるが、今はそれよりも特定の誰かと狂おしいほどに愛し合い続けることを心の奥で求めていた。

 

 そう考えるようになった原因は、南米旅行で出会ったヒルダにある。

 犯罪組織"聖なる蛇達"のボス、ハヴィエ・ヒダルゴの若き人妻。彼女は娘であるマヌエラを無事出産し、今現在もハヴィエと共に南米で暮らしている。

 

 アダムの女となり、共にイギリスに行くことを望んでいたヒルダ。

 その彼女がどうして未だにハヴィエのもとにいるのかというと、聖なる蛇についての懸念を話していた時に自らスパイを買って出たからである。

 

 現状アンブレラの活動を阻害している聖なる蛇達。ヒルダは逐一彼らの計画をアダムに密告し、アンブレラ側に先回りさせる。

 そうして徐々にハヴィエの組織を弱体化させ、吸収。そこにアンブレラが工場を建設し、聖なる蛇達の存在意義をなくしていくのだ。

 

 もちろん、アダムはハヴィエが不在の時を狙って定期的に南米へ赴き、今もヒルダと密会を重ねている。

 その際にマヌエラを抱かせてもらい、腕の中ですやすやと眠っている赤ん坊にいたく感激したのだ。父親以外の精液を浴びて生まれたとかそんな下卑た理由ではなく、普段当たり前のように每日行っている行為で、新たな生命が生まれるということをその手で実感して。

 これがもし自身の遺伝子を受け継いだ者だとしたら、その感激は計り知れないものになるだろう。

 

 それ以来、愛する恋人を孕ませたい、自身の遺伝子を引き継いだ子を生んでもらいたい、という欲求が高まるばかり。

 とは言っても、アダムには相手を妊娠させることができないという原因不明の症状がある。だが、今の彼は、どうしてかそれを覆せるのではないかという確信的な何かがあった。まるで、内なる始祖の力が本能に訴えかけているように。

 

「……ところで、アレクシアはどちらに?」

「それが、さっきまではいたはずなのですが、少し目を離した隙にどこかへ雲隠れしてしまったようで……」

「いいのですか? 今日の主役なのに」

「いつものことです。こういったパーティは苦手のようなので……」

 

 パーティの主役で今日が誕生日である娘が姿を見せないにも関わらず、アレクサンダーは特に気にしていない様子。彼にとって、この卒業祝いを兼ねた誕生日パーティは娘を餌に集まってきた要人達との新たな取引を結ぶための社交パーティに過ぎない。

 賓客達もメディアに塩対応を繰り返していたアレクシアの性格を察してか、主役が姿を見せなくても思い思いにパーティを楽しんでいるようだ。

 

「そうですか。では、僕は彼女を探してきます」

「ああ、アダム様。娘のことをぜひ──」

「アシュフォード卿。ご無沙汰ですな」

「おお! これはこれは、ロシュタント電子工業の……」

 

 本気でアシュフォード家の再興のことしか考えていない彼に、アダムは冷たい視線を送ってその場を離れた。

 

 

 パーティのためにお呼ばれした楽団による生演奏を耳にしながら、低所得者が一人もいない高貴な人混みを掻き分けて、邸内をうろつくアダム。

 途中何度も女性に声をかけられながらも、やんわりと断って──お尻ぐらいは触りたかったが──アレクシアを探し回る。だが、彼女の姿はどこにも見当たらなかった。

 

(いないな……使用人か誰かにアレクシアの部屋がどこか聞いてみるか)

 

 ちょうどそれらしき人物が視線の先にいたため、アダムは歩み寄ろうとする。

 

 

「──アダム様!」

 

 

 と、その時。後ろからアダムの背に声がかけられる。少し舌足らずで高い、小さな子どもらしい女の子の声だ。

 振り返ってみると、そこには可憐な女児の姿があった。

 

 第一印象は銀色。アダムと同じ宝石のような銀の長髪が、照明の明かりを受けてクリスタルシャンデリアのようにキラキラと眩く輝き、存在感を示す。

 まだ五歳ぐらいだろうか? 好奇心旺盛そうな笑みとは裏腹に、切れ長の金色の瞳からはアレクシアとは似て非なる冷たい色が垣間見える。

 

「やっとお会いできた!」

 

 銀色の少女は上品さと派手さを両立させたドレスをはためかせ、飛び込むようにしてアダムの腰に抱きつく。少しわざとらしさを感じたのは気のせいではないだろう。

 

「ええっと、君は……?」

「あっ! ごめんなさい! ご挨拶もせずに……」

 

 少女はアダムの腰から離れ、ドレスの裾を持ち上げて会釈(カーテシー)して見せる。

 

「ミレーヌ・ビアズレーと申します。ずっと貴方のことを探しておりましたの!」

 

 ビアズレーと言えば、ガディウォールという島を拠点にしている名門貴族だ。

 生化学に精通しているらしく、アンブレラ創立の際にも多大な貢献をしたと聞かされている。裏の創立メンバーと言っても過言ではないだろう。

 

「私、アダム様が発表した論文を全部読みましたわ! 『マウス実験での特定遺伝子による細胞の発がん抑制』や、『真菌生物による寄生対象の行動支配について』も! どれもこれ以上ないぐらいに素晴らしかったですわ!」

「あ、ありがとう。光栄だよ」

 

 ぐいぐいと積極的に身体を近づけながら、興奮したように話すミレーヌ嬢。その勢いもあって、アダムは少し押され気味になってしまう。

 

 彼女が話している論文はどれも大学在学中に発表したもの。

 発がん抑制については、論文を参考にアンブレラが新たな実験を行っているらしい。始祖の改良型となるt-ウィルスを使って、T-JCCC203という腫瘍溶解性ウィルスを開発中だとか。

 

 真菌生物の論文はアレクシアとの共同執筆になっており、内容は例の昆虫寄生菌についてまとめたもの。

 旅行中はヒルダも混ぜてセックス三昧の日々を送っていたが、研究所のスタッフにサンプルを採取し直してもらってちゃっかり研究の方も進めていたのである。

 

 驚くべきことに、あの菌は本体となる菌根が別に存在しており、空気中の菌を媒介して宿主の外部から行動を支配していることが分かったのだ。研究所のスタッフはウィルスの改良に使えないかと躍起になっていたが、始祖との相性は悪かったらしく目立った成果は出ていない。

 もし似たような菌が他にもあり、それが人間に寄生するとしたら、非常に驚異と言えるだろう。

 

「でも、すごいね。まだ小さいのに論文を読めるなんて。それなりに難しい内容のはずだけど」

「ええ。まだ五歳ですが、ビアズレー家の者ですもの。このぐらいは当然ですわ。もちろん、アダム様ほどではありませんが……でも、褒めていただけて嬉しい」

 

 ミレーヌは頬を紅潮させて微笑み、自身の腕をアダムの腕に絡めてこれでもかと幼い身体を押しつける。そして、上目遣いで彼を見つめた。

 

「アダム様……私、貴方と同じ大学に入学したいと思ってるんです。それで、良ければ……お勉強を教えていただけませんか? もちろん、二人っきりで……」

 

 皆まで言わなくとも分かる。

 彼女は誘っているのだ。アダムと関係を結ぶべく。五歳という幼い年齢で。

 

 ビアズレー家は、アレクシアを生み出す以前のアシュフォード家のように衰退の一途を辿っている。アシュフォード卿の企みと同じく、娘にアダムとの既成事実を作って再興と発展を狙っているのだろう。

 もっとも、その既成事実を作っている相手は既に山ほどいるわけだが。

 

 さて、どうしたものか。

 現在アダムが性行為をした相手で最年少となるのは同年代のアレクシアだ。十の歳になって、これだけ幼い少女からアプローチをかけられたのは初めて──そもそも、普通性知識もなければ流暢に話せもしない──となる。

 

 腹の底には打算しかないだろうが、お姫様のように気品に満ちた愛らしい子だ。

 フェラチオぐらいならしてもらってもいいかもしれない。

 

 アダムがそう考え始めたところで、もう片方の手を握る相手が現れる。

 

「ア、アレクシア……」

 

 それは、先ほどまで探し回っていたアレクシアだった。

 少し背が伸びた彼女は、身分の高さを表すような紫色のドレスを着ている。首元にはいつもの赤い宝石をあしらったチョーカー。

 

 一目見ただけで誰もがパーティの主役だと察するだろう、輝いて見えるほどの美貌を秘めた少女。その姿を見て、アダムはミレーヌのことなどすっぽり頭から抜けてしまう。

 

「…………」

 

 アレクシアはアダムの腕に絡んでいるミレーヌを一睨みすると、無言で彼の手を握ったまま背を向けて歩き始める。

 

「あっ、アダム様──」

 

 アダムはその手に引かれる形で彼女についていき、ミレーヌは否応なしに彼から離されてしまう。

 何の言葉も残さずに自分を置いて会場を後にしていく二人の背中を、忌々しげに睨むミレーヌ。

 

「……チッ、今に見てなさい。アレクシア・アシュフォード」

 

 親指の爪を噛みながら、呪詛を込めた呟きを口にするのだった。

 

 

 

 

 賑やかな喧騒の場から離れたアレクシアとアダム。

 芳醇な香りやビジネス絡みの話し声が遠のいていくのを耳にしながら、燭台や調度品が並んだ廊下を進む二人。

 

 赤い絨毯が敷き詰められているため、二人の足音は響かない。

 アレクシアは一言も話さず、顔を向けず、ひたすらに金の髪を揺らしてアダムを連れ歩く。完全に人気がなくなると、感じられるのはお互いの手を強く握る感触だけとなった。

 

 角に差しかかる。そう思いきや、急に足早になり始めるアレクシア。

 勢いのまま角を曲がり、アダムは遠心力で振り回されてしまう。そんな彼をアレクシアがもう片方の手で手繰り寄せ、唇を奪う。

 

「んっ……じゅる……ふぅ、ん、ちゅ」

 

 アダムも無言でそれに答え、アレクシアの唇と口内に舌を這わせる。

 お互いの髪を掻きむしる勢いで貪り合う、情熱的なキス。

 

 ひとしきり上の口による交配を堪能したアダムは、雛のように唇を突き出し続ける彼女から顔を離し、透明な涎の橋を垂らしながら諭すように沈黙を破る。

 

「……アレクシア。ここじゃ、誰かに見られるかも」

「はぁ……はぁ……誰も、来ないわ」

「でも、万が一ってこともあるし……君の肌を他の人に見せたくないんだ」

 

 そう言って、アレクシアの羽のように軽い身体を横抱きにして抱え上げるアダム。アレクシアは「きゃっ」と彼女にしては珍しい声を上げたが、そのまま彼に身を預ける。

 

「どっち?」

「もう一つ……角を曲がったところの部屋よ」

 

 彼女の指示で部屋を見つけ、扉を開けて中に入る二人。

 扉を閉め、ノブにかかっていた鍵で施錠した瞬間、アレクシアは横抱きにされた状態でアダムの首に抱きつき、再びキスを求める。

 

「はむっ……ちゅ……ん、アダ、ムっ……」

「……ア、アレクシアッ」

 

 辛抱堪らず、アダムは激しい接吻を続けながら歩を進め、天蓋付きの豪華なベッドに仰向けになる形で身を投げ出した。

 

「はぁっ、はぁっ……随分、積極的になったね」

「ん、ふ……そう? それより、どうしてもっと早く来てくれなかったの?」

「ちゃんと探してたさ。君が姿を隠してたから……」

「あら、ごめんなさい。いつも私のお尻を追いかけ回してた貴方なら、壁越しにでも見つけられるかと思ってたわ」

「無茶言わないでよ」

 

 アレクシアは素知らぬ顔で誤魔化しているが、彼女は本当に積極的になった。

 丁度南米旅行辺りからだろうか。それまではアダムが求める形だったというのに、ヒルダとの蜜月を交わしてからは、彼女の方から襲ってくる形で行為に及ぶことがほとんどだったのである。

 

「そうだ。アレクシア。誕生日プレゼント、持ってきたんだけど……」

 

 そう言って、懐から包みを取り出すアダム。中身は細かな宝石を散りばめた、金細工のチョーカーネックレス。丁度、彼女が愛用している赤い宝石を嵌められるようになっている。

 アレクシアはそれを受け取ると、嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「まあ、ありがとう。でも、今私が欲しいのは……分かるでしょう?」

 

 アダムとアレクシアがこうして肌を重ねるのは実に一週間ぶり。

 卒業後のアレコレでこのパーティの日まで顔を合わせることが出来ず仕舞いだったのだ。

 

「もう……我慢できないわ。ちょうだい、貴方を……」

「もちろん。今日は君の誕生日なんだから……!」

 

 二人はお互いを求める欲求を解放すべく、邪魔な衣服を破り捨てる勢いで脱ぎ始めた──

 

 




次回、アルフレッド登場。日曜に投稿予定です。

論文についてはあまりよく考えておらず、それっぽくしただけでその手の道の人なら「おかしいやろ」と思う部分があるかと思いますが、生暖かい目で見てもらえれば。
昆虫寄生菌による宿主の操り方も現実とは異なります。

また、途中出てきたミレーヌ・ビアズレーは本作オリジナルではなく、バイオハザードの初ノベライズ作品である「北海の妖獣」に登場するキャラクターです。
後々再登場する予定となってますが、特に覚えてなくても大丈夫だと思います。



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