BIOHAZARD sexual invasion 作:MIYOSHI
「何? アダム・スペンサーが視察に来てる?」
白衣を着た短い金髪の年若い青年──ウィリアム・バーキンは、不満げな態度を隠しもせず、唸るようにそう返した。
「なんでもっと早く教えなかったんだ!」
「いや、ウィリアム──」
「言い訳なんて聞きたくないね! いいか? 僕はあんな親の七光りなお坊ちゃまと仲良くするつもりはないからな!」
言い繕う暇もない。ウィリアムはまるで子供のように癇癪を起こして喚き、嫌悪と苛立ちを身体全体で表現するかのような荒い足取りで廊下を去っていった。
「……一週間前に伝えたはずなのだがね」
「いいわ。アルバート。私がフォローしておくから」
そう言って、研究員の一人であるアネットが歩き去るウィリアムを追いかけていく。
「変わった女だ」
ボブカットの髪を揺らしながら走る彼女を見送りながら、アルバートと呼ばれたサングラスの青年は至って気にも留めていない様子で独りごちる。
(それにしても、アダム・スペンサーか……)
ここはアメリカ合衆国中西部、ラクーンシティ郊外の森林地帯にあるアークレイ研究所。
稀代の建築家ジョージ・トレヴァーが遺した館の地下に隠された、アンブレラにとって現在最も重要と言える施設だ。
そこへ、アンブレラ副会長に就任したばかりの御曹司が初仕事という名目で来訪してきて、もう二日ほど経つ。
十歳という年齢で有名大学を卒業した天才と聞いていたこともあり、またウィリアムのような扱いに困る癇癪持ちか、それとも不利益を被せてくる厄介な存在かと警戒していたが──
(……肩透かしもいいところだったな)
やってきたのは、写真通りの銀髪の美少年。だが、それは見た目だけ。
正体は見目麗しい母娘と金髪の女をメイドとして侍らせた、乳臭いながらに女漁りに夢中な助平坊主だった。
天才というわりに、兵器開発業務には直接携わる予定もないらしい。そうなると、発表している論文も本当に本人が書いたのか怪しくなってくるというもの。
メディアによると、南極研究所に配属されたアレクシアという天才少女とも親しい関係にあるとか。あれと仲良くしているようでは、彼女も同類だろう。
その事実をアネットから説明されれば、嫉妬深いウィリアムも幾分か落ち着きを取り戻すに違いない。
以上の点から、今のところお坊ちゃまの登場は特段気にする必要もなさそうだ。
女遊びが過ぎてこちらに迷惑がかかることだけは御免被りたいが。アルバートは顔には出さずほくそ笑む。
唯一気になることと言えば、侍らせていたメイドの内、金髪の女には少し見覚えがあったこと。
無論、他人の空似であろう。自分が知っているのは毅然にして孤高な女だ。厚化粧はともかく、あんな売春婦染みた格好──谷間をこれでもかと晒したり、下着が丸見えになりそうな丈の短いスカートを履いたりなど間違ってもするタチではない。
「ン゛ンッ」
低俗極まりない映像が頭を過ぎり、一人咳払いするアルバート。
ともかく、アダムによる今回の視察はあくまで形式的なものらしく、館内や寄宿舎、所内の見学、それに生体兵器開発の簡易的な進捗報告だけに留まっている。明日には別の研究所へ視察に向かうとのことだ。
後のことは名ばかり所長に任せておけばいい。
御曹司の襲来をとるに足らないことと片づけ、アルバートは研究所にある自身の個室へ消え、しばらく出てこなかった。
「待って、ウィリアム!」
「僕は新たな生体兵器の開発で忙しいんだ。お坊ちゃまの相手なんてしてる暇ないんだよ!」
「分かってる。だから、スペンサーJr.は私達が対応しているわ。貴方が気にする必要はないのよ」
「そうかい。わざわざ伝えてくれてどうも」
皮肉で返す彼に、小さく溜息を零すアネット。
彼は三年前、二つ年上のアルバートと共に十六歳という若さで主任研究員に就任した秀才。研究者としては非常に優秀なのだが、いかんせん精神的に成熟していないのが難点だ。年相応とも言えるが。
「……それで、どうだったんだ?」
「どうだったって?」
「だから、アダム・スペンサーだよ!」
アネットはやれやれと心中で肩を竦める。何だかんだ文句を言いながらも、結局は気になってしょうがないのだろう。過剰に反応しているのがその証拠だ。
ここ最近、彼は荒れに荒れて、後先を考えずに実験材料を使い潰すような愚行を繰り返している。その原因はもちろん、アダム・スペンサー。それにアレクシア・アシュフォード。
これまで優秀だと持て囃されていたウィリアムにとって、自身の立場を脅かしかねない存在。それが一度に二人と来れば、穏やかでいられなくなるのも無理はない。
「……確かに端正な顔立ちをしていて、年の割に落ち着いているというのが第一印象だったけれど、中身はとんだ放蕩者だったわ。子供ながらに女性を囲って……ガールフレンドらしいアシュフォード家の娘がどう思っているのか──」
「女!? それにガールフレンドだって!?」
ウィリアムは予想外の部分に反応し、素っ頓狂な声を上げた。
その手の話には一切興味がないと思っていただけに、アネットもびくりと肩を震わせる。
「だ、だけど、まだ精通もしてないような十歳の子供だろう?」
「中には早い子もいるようだけれど……まあ、そうね」
アネットとしては、侍らせていた三人が全員好きで傍にいるように見えたのが不可解でしょうがなかった。
確かに理想を詰め込んだかのような絶世の美少年で、その浅黒い肌に色気さえも感じた。だが、しょせんは子供だ。大金でも渡されているのだろうか?
「ッ、クソ……!」
明らかに動揺した様子のウィリアム。口を手で覆い、「僕は勉強以外のことになんてうつつを抜かしていなかったのに」とか「ガキ共はそんな余裕もあるって言いたいのか……!?」などとブツブツ呟きながら、その場をせわしなく歩き回っている。
かと思えば、弾かれたように首を上げた。そのまま良いことを思いついたと言わんばかりの顔でアネットに歩み寄り、彼女の手を取る。
「アネット。僕の恋人になれ」
突然の告白にアネットは面食らい、一拍遅れて叫びそうになったのを何とか飲み込む。
周りから堅物扱いされている彼女のとても貴重な反応である。
「い、いきなり何を言って──」
「誤魔化しても無駄だ。君は僕に気があるんだろう? だったらいいじゃないか。上司と部下という関係に、恋人同士という要素が追加されるだけのことだ」
ムードもへったくれもない。そのつもりがあるのか信じがたいような口説き文句だ。
いや、恐らく彼に恋愛感情などといった物は欠片もないのだろう。アダムとアレクシアへの妬み。彼らが恋人を持っていて、自分が持っていないというのが我慢ならない。そんなところか。
彼の言っていることは正しい。
事実、アネットはウィリアムに並々ならぬ関心を抱いている。
現在二十ニ歳の彼女は、一年前にアンブレラに入社してすぐアークレイ研究所への配属が決まり、ウィリアムの部下として働くようになった。
当初は上司とはいえ、三歳差で未だ大人になり切れていない彼のことを手のかかる子供程度にしか思っていなかった。だが、いつからか、気づけばその度が過ぎているとも言える研究熱心な背中を目で追うようになっていたのである。
放っておけなくて、できる限り傍でサポートしなくてはと誰よりも率先して研究補佐を買って出ていた。ウィリアムはそれをいいことに決して文句を言わない部下として重宝していたようだが。
これが果たして恋愛感情なのかどうかは分からない。ひたむきさに惹かれたのか、優秀さへの羨望なのか、それとも年上ゆえの母性本能によるものか。
それでも、恋人になれと言われて、嬉しく思ったのは確かだ。
「……え、ええ。いいわよ」
どちらにせよ、これは形式的な物。彼の自尊心を満たすためだけの取り交わしだ。
一人だけ舞い上がって間抜けな姿を晒すつもりは毛頭ない。
でも、もしかしたら、きっと──
「そうか。よぉし、これで僕も恋人がいる男になったというわけだ。フフフ……アネット、君は運がいいぞ」
ウィリアムは上機嫌そうに口端を歪め、含み笑いを漏らす。ここにいない誰かを嘲笑うように。
少なくとも、その顔は告白に成功した人間がするようなものではなかった。
「さて、余計な時間を費やしてしまった。早く実験の続きと行こうじゃないか。恋人同士仲睦まじく」
「そう、ね……あ、そういえば、スペンサーJr.が──」
アネットは何事か話そうとして、なぜか言葉を切る。
アダムのことを口に出そうとしたためか、ウィリアムはまたしても眉を歪めた。
「お坊ちゃんがどうした?」
「……いえ、なんでもないわ」
──爬虫類の遺伝子を試してみたらどうでしょう?
生体兵器開発の進捗報告の際、行き詰まっている研究員達を見たアダムがたまたま近くにいたアネットに耳打ちした提案。
その時は愛想笑いで返したが、改めて考えた彼女はアダムの案に可能性を感じ始めていた。
しかし、彼の名を聞いただけであの反応だ。きっとこれを伝えたら、ウィリアムは対抗心から頑なに試そうとはしなくなるだろう。
それでも、実践すれば成果を出せる可能性は非常に高い。
私はウィリアムの恋人だ。パートナーなのだ。
ならば、彼がもっと上の立場になれるよう、以前にも増して尽くさないと……!
そして後日、ウィリアムはアルバートの思惑通り嫉妬の熱を少しばかり冷ます。
アダムの女好きという人柄や、そんな彼と仲良くしているアレクシアが成果など出せるはずがないと考えたのだ。
さらに、彼はt-ウィルスを用いた生体兵器開発において、ヒト受精卵に爬虫類のDNAをかけ合わせることに成功。
アンブレラの開発する生体兵器──Bio Organic Weapon。通称B.O.W.の初めての成功例と言える傑作を生み出す。
研究員達はどうやってこのアイデアを思いついたのかとウィリアムに聞くと、彼はそれはもう上機嫌に答えた。
彼はますます自身の才能に溺れ、ウィルス研究の魅力に取り込まれていくのだった。
その傍らで、常にアネットが支えていたことも気づかぬまま。
☣ ☣ ☣
──パンッ! パンッ! パンッ! パンッ!
「あ゛ぁ! ん、ぅッ! お゛、お゛お、おぉっほッ!」
腰から身体全体に衝撃が走る度、その強さを物語るように乳房と金髪のツインテールが跳ね動く。
「あ、あ゛あぁ……ご、主人、様ぁっ! はぁぁ……はぁぁ……も、もっとぉ……アリーを……アリーを、愛し、てぇ!!」
背面立位の形でアダムと愛し合っているアレックス──改め、アリー。もはやとうの昔にそちらが真名となっている。
二十一歳となったアリーは既に身長が伸びなくなっていたが、未だ差はある。そのため、ガニ股になって膝を折る形で、背後からアダムの激しいピストンによる強襲を受けていた。
既に彼女一人で十戦目を迎えており、息絶え絶えでされるがままの状態である。
「ア、アリーさん。あまり無理はしない方が……」
「うっ、うる、さい! 今は、私っ、が、性処理長の私が愛され、てるんだ! メイド長のお前は黙っ──ん、お゛っ!?」
ベッドに腰を下ろしている全裸のジェシカが心配そうに声をかけたが、アリーは突かれながらも傲岸不遜な態度で返す。
だが、ふいにアダムに後ろから抱え上げられ、より深く子宮を貫かれて声を上げる。
「駄目だよ、アリー。そんな乱暴な言い方は」
「おっ、お゛ぉっっ! ご、ごめん、なさ────お゛ほおおおぉぉぉぉッ!!」
プシャアアアーーッ! プシッ! プシィィーーッ!
猛攻に耐えられず、あっという間に絶頂を迎えて潮を吹くアリー。
獣のような嬌声に比例して、その淫汁は鯨の如き勢いで天井にまで届く。
「あ……ぁ……ごしゅ、じんさ、まぁ……」
アリーはついに気をやってしまい、アダムの腕でゆっくりと床に寝かされる。その隣にも、そのまた隣にも別の女性。広い一室の周りに数え切れないほど。
ウェスカーチルドレンや学生時代以降に加わった愛人達。皆一様に見目麗しい裸体を晒して、屍の山とばかりに何人も精液にまみれて気絶していた。
アダムはアリーと手近な女の子達の胸やお尻を労うように撫で、ジェシカの隣に腰を下ろす。
「旦那様、大丈夫ですか……?」
「うん。大丈夫。大丈夫だよ」
アークレイ研究所の視察は滞りなく終わった。
そこの所長や主任研究員の一人であるアルバート・ウェスカーとの顔合わせ。始祖の改良型であるt-ウィルスによる生体兵器開発の実物を交えた進捗報告。
目立っていたのはサングラスをかけたアルバートばかりで、所長の方は影が薄く、並んだだけで彼の役職が形骸化したものであることが見て取れた。
それに、"ウェスカー"。スペンサーから、アルバートがウェスカーチルドレンの一人であることはアダムも聞かされていた。
無論、だからと言ってどうこうするわけでもなく、スペンサーの手の平で踊らされている彼に隠れて憐憫の眼差しを向けたのは言うまでもない。
アルバートはもはや別人と化した
兄妹のような関係であったにも関わらず、お互いの存在に気づいていないという奇妙な構図が出来上がった。結局のところ、その程度の関係でしかなかったということだろう。
生体兵器──B.O.W.に関しても、現時点で目立った成果を上げられていないようだ。
確認できたのはドーベルマンや蜘蛛をベースとした制御の効かない、兵器としては失敗作と言えるものばかり。とは言っても、元々本社に送られてくる定期報告で把握していたことなので、それ自体には何の問題もない。
スペンサーはB.O.W.の開発について、資金稼ぎ目的だと言っていた。だが、本当の所は恐らく違うだろう。
アダムもアルバートと同じく、彼の手の平で踊らされていることには変わりない。違いがあるとすれば、愛情の有無。誰よりもそれを重んじるアダムは、父親のそれを信じて傍観を貫いている。
以上の通り、視察自体は何の問題もなかった。
問題があったとしたら──
「ごめん。ジェシカ……やっぱり、リサを連れて行ったのは間違いだった。僕のせいだ」
「そんなことありません。私が無理にでもあの子に留守番させていれば……」
そう。ジェシカの娘、リサだ。
アークレイ研究所。その隠れ蓑となっている地上に築かれた洋館は、何を隠そう二人が拉致された現場。そして、彼女の父親であるジョージが殺された場所でもある。
トラウマが残っているだろうことに加え、未だ父親が死んだことを知らないリサを案じて、当初はアダムとジェシカも彼女を連れて行く予定ではなかった。
だが、リサは断固としてついて行くと言って聞かず、アダムも『置いていったらもうセックスさせてあげないから!』と言われて、やむなく同行を許したのだ。
再び洋館を訪れた彼女は少し落ち着きがないようにも見えたが、至って正常な様子だった。初めて来た時は詳しく見て回れなかったから、改めて探検したいと言い出すほど。
さすがにそれは職員の迷惑になる。そう嗜めると、彼女は大人しく引き下がってくれた。
しかし、三日目の朝。視察を終えて洋館を後にする日に事は起きた。
『アダム……お母さん‥…これ、どういうことッ!?』
そう悲鳴にも似た怒鳴り声で彼女が叩きつけたのは、ライターと薄汚れた手帳。
手帳は、死んだジョージの遺した手記だった。
アネットは某非公式Wikiの英語版だと1964年生まれとなっているようです(情報元が不明なのですが、何かしらの書籍に書かれていたのでしょうか?)。
なので、その通りであればウィリアムより二歳年下ということになります。
作者は勝手にアネットが年上だと勘違い(RE2での老け具合も相まって)しており、それ前提で話を書いてしまってました。
ただ、個人的にウィリアムが年下の方が若くしてアンブレラ入りしたというところが強調されますし、情報元もはっきりしないのでそのままで良いかなと思って修正はしておりません。
また、ウィリアムの一人称も原作では「私」ですが、まだ若い頃なので「僕」にしてます。