BIOHAZARD sexual invasion 作:MIYOSHI
※ここからはVILLAGEのネタバレを含みますのでご注意ください。
真っ暗だ。
深淵にも似た、這い上がることさえ思いつきもしないような底なし。
光も、音も、感覚も、一切を受け入れず。
そんな悲しみの
「──アダム」
遠くから、ノックと共に心配そうな声が耳に届く。
でも、聞こえない。聞きたくない。頭の中で叫び声を上げ、両手で耳を塞ぐ。
声をかけた本人も、返事がないことは分かっていた。
「食事、またここに置いておくからね……」
そう続けて、声の主──メイド服を身に纏ったリサは、扉の傍にある机に食事を乗せたトレーを置く。
代わりに、手つかずのまま冷め切った食事をワゴンに乗せて、部屋の前を離れた。
ジェシカが亡くなって、もう一ヶ月半以上が経つ。
窓の外では、雨の代わりとばかりに雪が疎らに降り注ぎ、庭を白化粧で飾っていた。
時間というのは、どうしてこんなにもあっという間に、無情に流れていくのだろう。
ワゴンを運びながら、リサは小さく溜息を吐く。
あの日、いつまで経っても死んだジェシカから離れずにいた二人は、スペンサーの指示で捜索に訪れたU.S.S.の部隊によって発見された。
駆けつけたU.S.S.に対して、そして電話越しで父親に対して、アダムが初めて見るほど酷く激昂していたのは記憶に新しい。
ジェシカの遺体も運ばれ、翌日にアダムの私邸の庭で葬儀が執り行われた。娘のリサはもちろん、予定を繰り上げて訓練から戻ってきたウェスカーチルドレンを含むアダムの恋人達に囲まれて、彼女は見送られたのである。
皆が皆、涙を流して悲しみに暮れていた。あの敵視していたアリーでさえも。
メイド長として、それ以上に女性として、人として、皆から尊敬と親愛の情を向けられていたからだ。
ただ二人、アダムとリサだけは、涙で頬を濡らしておらず。
枯れるほどに泣き腫らした後だったのもあるだろう。だが、能面のように無感情の顔を張りつけたアダムと違って、リサの顔は決意のようなものを秘めていた。
棺に入れられ、土葬されたジェシカ。享年三十七。
墓には、彼女の名前と名もなきお腹の子。そして、夫であるジョージの名前が刻まれていた。
リサはジェシカの荷物の中にあった父の手記を改めて読み、最後のページに記された彼のメッセージに気づいたのである。
自分はなんて馬鹿だったのだろうか。最初からあのメッセージに気づいていれば、洋館に閉じ籠もるなんてことしなかった。母はもちろん、二人の子供も死ぬことなんてなかったのだ。
アダムは最愛の人の死に塞ぎ込み、あれからほとんど食事をしていない。それでも問題ないのは、例の始祖の力によるものなのだろう。
一方で、リサは違った。自分が殻に閉じ籠もっていたからこそ、あんな悲劇を引き起こしてしまったのだ。もうそんな馬鹿な真似はできない。するつもりもない。
それ以来、片時もアダムの傍を離れず、彼の世話を続けている。
少しでも母の、ジェシカの代わりができれば。彼の心の傷を埋めることができればと。
他の恋人達も全員そう。もう一ヶ月以上抱いてもらえてないのに、アダムから離れようとしない。彼のもとにいれば何不自由なく暮らしていけるから? 違う。皆、彼のことを心から愛しているからだ。
訓練を受けたウェスカーチルドレンの子達など、今度こそアダムを危険な目に合わせないと軍人顔負けの気迫で私邸の警備に就いている。
南米で彼と関係を持ったヒルダという人妻からも、心配の電話が何度もかかってきていた。
爛れた関係から始まったものであろうと、本気で愛されていることを分かっている彼女達に、彼から離れる理由などなかった。
一人一人が彼の恋人。もはや、ただのセックスだけの間柄ではないということだ。
彼女達のためにも、そして他ならぬアダム自身のためにも、早く元気になって欲しい。また、愛を交わしたい。
母だって、そう願っているに違いないのだから。
リサは唇を引き結び、堪えるように閉じた瞼を腕で拭った。
☣ ☣ ☣
夜中、アダムはベッドの中で目を覚ます。
眠りに落ちる前に火を灯していた暖炉は愛想を尽かしたかのように陰りを見せ、闇に溶け込んでいる。溜まった灰の味気なさと虚しさが、彼の心情を物語っていた。
窓の向こうから覗く、未だしんしんと降り注ぐ雪空。
寒い。普段なら全く堪えないというのに。今は身も心も凍えるようだ。
こんな時、ジェシカがいれば。
きっと彼女なら、そのはち切れんほどの柔和に満ちた至高の女体で、身体の芯から温めてくれたのに。
妻のように、母のように、抱きしめてくれただろう。
お腹の子と共に。
アダムは何もする気力が起きず、天井を見上げたまま、年齢相応の子供のように重ねた毛布を引っ張って頭から被る。
毛布の下は裸。五歳の頃にジェシカと心を通わせてから、夜はいつも彼女と蜜月を重ねていたため、裸で就寝するのが習慣となっていた。
しかし、もう彼女はいない。
それにこんな情けない姿。恋人達はもちろん、アレクシアやヒルダには絶対見せられないだろう。
(……?)
ふと、違和感。毛布の中、特に下半身の辺りが妙に生暖かく感じたのだ。
手で毛布を押し上げ、その正体を探ってみる。
「ん、ふ……すぅぅ、はあぁ……」
────ッ!?
そこにいたのは、ジェシカだった。
見間違うはずもない。会いたくて堪らなかった、最愛の恋人。
その彼女が、形の良い鼻をアダムの股間に密着させ、大きく深呼吸してその匂いを堪能している。
最初はアリーかリサか、はたまたローラかと思っていた。
だって、そうだろう。ジェシカは死んだのだから。棺に入れられて、土に還ったのもこの目で見ていたのだ。
「…………ジェシ、カ?」
「……ぁ、旦那様。お目覚めになられたのですね」
アダムに気づいたジェシカが、勃起していない子供ペニスから鼻を離し、ブラウンの絹髪を手で掻き上げて微笑み返した。
その笑みに若干の違和感を覚えつつも、アダムの心臓はうるさいほどに高鳴る。
「うふふ……とても不思議そうなお顔。逢いたかった……私の旦那様」
髪と同じ茶色の瞳が愛しい主人を捉え、ジェシカはその身体を毛布の中で動かす。
彼女もまた、裸だった。重力に従って垂れ下がっている胸を、小さな主人の幼い身体に擦りつけるようにして這い進み、覆い被さる。
重量感ある乳房の溶けるような柔らかい感触と、コリッとした硬い乳首による刺激。
ああ。まさに彼女そのものだ。
「どう、して……」
「どうして生きているのか……ですか? ふふ……それは、旦那様のお力のおかげですよ」
「僕の?」
「そう……オズウェル様から、お聞きになられたでしょう?」
力というのは……まさか、あの話のことだろうか?
アダムはジェシカの葬式後に父親から聞かされた話を思い出す。失意の中での話だったため、多少曖昧なところはあるが──
『すまなかった、アダム。お前には辛い思いをさせてしまった』
ジェシカと初孫が犠牲になったことを、スペンサーは本気で悲しんでいた。憂う仕草と漏らした溜息は、間違いなく本心からのもの。
今まで彼女の性事情を下卑た目線でからかっていたというのに。やはり、アダムの遺伝子を継いだ孫の損失が相当堪えたのだろうか。
『こんなはずではなかったのだ……本当にすまない』
そんなに後悔するなら、最初からU.S.S.を派遣してくれれば良かったんだ……!
アダムは血が滲むほどに歯を食い縛り、心中で恨み節をぶつけた。
『今、話すべきことではないのかもしれないが……説明しておかなければならないことがある』
『……聞きたくありません』
『頼む。お前も気になるはずだ。なぜ、リサ君が無事でいるのかを』
言われて、気づいた。
リサは度重なる人体実験を受けて記憶が曖昧となっており、また地下に監禁されていたのもあって、自分がいつから、どのくらいの間養成所に閉じ込められていたのかを把握できていなかった。
それでも、マーカスとアークレイ研究所の主任研究員であるウィリアム・バーキン。彼らによってt-ウィルスを何度も投与されたことは証言してくれたのだ。
普通なら、とうの昔にゾンビとなっていてもおかしくない。例え抗体因子があったとしても。だが、リサは衰弱してはいたものの、今では何事もなかったかのように健康体そのものである。
『……アダム。その原因は、お前にあるのだ』
スペンサーによると、なんとアダムの精子は幹細胞としても機能しており、相手の粘膜に接触することでその肉体に新たな細胞を分化して生み出す能力があるらしい。
彼はその細胞を"ADM細胞"と名付けた。
この細胞は毒素を持つ細胞に対して非常に攻撃的であり、始祖系列を始めとしたあらゆるウィルスや細菌に対しての万能抗体として活躍するのだという。
アダムの精液を何年もかけて大量に注ぎ込まれていたリサは、体内のADM細胞の量が潤沢だった。そのため、どれだけt-ウィルスを投与されても変異の兆候を見せなかったのだ。今思えば、ヒルに襲われたジェシカの遺体も二次感染の様子は一切見受けられなかった。
また、副次効果として、アダム以外の精液では妊娠できなくもなる。
これもスペンサーが独自に発見した新事実だが、女性の子宮には精子の受精能を高める働きは一切なく、逆に精子を殺して排除しようとする働きが備わっているらしい。
ADM細胞を持つ者はその働きが極限まで活発化しており、主であるアダム以外の精子は排除してしまう。また、卵胞液もアダムの精子しか引き寄せないことを確認できたとのこと。
さらにこれはADM細胞とは関係ないが、精液やカウパー液の成分が始祖の影響で強化されているため、豊富な栄養素と共に飛び抜けた美容・催淫効果までもが存在。
女性ホルモンであるエストロゲン量が最高値まで上昇、プロゲステロンも理想的な量に調整され、極端に言ってしまえばアダムの精液は摂取し続けるだけで健康を保てる霊薬とも呼べる物なのだとか。
膣内射精を受けた女性の生理が止まるのも、それによって子宮内膜が剥離せずに不死細胞の如く成熟したままの状態が続くからである。
何とも大判振る舞いな細胞だが、元となっている始祖が植物由来のウィルスであることを考えると、別段おかしな話とも言えないだろう。
元来、植物は分化細胞を幹細胞に変化させる遺伝子を持っているなど、その細胞に全能性を秘めた存在だからだ。始祖花もまた例外ではなく、そこから生成されたウィルスに完全適合しているのであれば、どんなことが起こっても不思議ではない。
『これは素晴らしいことだぞ。アダム、お前は世の女にとってまさに神と言える存在なのだ。お前の寵愛を受けることで、新世界で生きる権利を与えられるのはおろか、女として最も輝けるようになるのだからな』
スペンサーは興奮した様子で得意げに語っていたが、その時のアダムにとっては至極どうでもいいことであった。
リサが自身に抱かれていたおかげで助かったのは、確かに喜ばしいことだ。
それでも、ジェシカは救えなかったのだから。
「ADM細胞にはまだ秘められた力があった。そう……死者の蘇生。強い愛は、死さえも乗り越えてしまうのです」
アダムに覆い被さりながら言葉を紡ぐ、死んだはずのジェシカ。
その魅力的な唇が、窓からの僅かな月明かりに照らされて妖しく光る。艶かしい手つきで滑らせた手で、主人のペニスを擦った。
「ああ……私の愛しい、小さな旦那様……んっ」
そのまま、ねっとりと口づけを交わす。
次いでジェシカは上半身を起こし、背中で押し上げられた毛布がはだけてパサリと垂れ落ちた。
完璧とも言える女体が、アダムの幼い身体と共に外気に晒される。
弾けるような極上の肉つきに、それでいてはっきりとしたくびれからなる稜線。
股間を中心に、凍えるような寒さも全く気にならないほどに内から身体が熱くなっていく。
だが、その一方で、アダムの夢見るような顔は見る見る内に憎悪のそれへと歪んだ。
「さあ……たっぷりと愛し合いましょう」
「──めろ」
「逢えなかった分……時を忘れて、永遠に──」
「 やめろッ!! 」
ピタリ、と。
半勃起状態の男根に自らの女陰を擦りつけていたジェシカの動きが止まる。
叫び声を上げたアダムは、荒い息を漏らしながら怒りの眼差しで彼女を見上げていた。
「……どうされました? 私は、旦那様の愛するジェシカですよ」
微笑みを浮かべたまま、小首を傾げるジェシカ。
暫し考え、納得したように手の平を重ねる。
「ああっ。おっぱいですね! 旦那様は私のおっぱいが大好きですから──」
「やめろと言った。これ以上、僕の最愛の人を侮辱するな……!」
アダムは歯を食い縛り、血が滲むほどに拳を握りしめている。
それは、リサ捜索にU.S.S.を派遣しなかったスペンサーに向けた怒りをはるかに上回るだろう。
ジェシカはそんな彼を見てか、貼りつけていたその笑みをフッと消し、打って変わって人形のような無表情へと変化させる。
「……さすがは、始祖と特異菌に完全適合した存在というべきか」
声質が、声色が、ジェシカのものと全く違う。
まるで地の底から響くような、低く険しい、それでいて
「なぜ、私がジェシカでないと分かった?」
「簡単さ。笑い方だよ」
そう。ジェシカの笑みは聖母のような慈しみや優しさに満ちた純朴なもの。
いくら身体や表情を模倣しようと、醸し出す母性や包み込むようなあの暖かさは決して真似できるものではない。リサだって違和感に気づくだろう。
加えて、この女からはジェシカがいつも注いでくれた溢れんばかりの愛も感じなかった。
子供と大人であった二人は、禁断の関係の中で本気の愛を交わしていたのだ。お互いを恋人として、親子として、一人の人間同士として。
そんな肉体的にも精神的にも深い間柄に割って入って成り代わるような真似は、悪手としか言いようがない。
ADM細胞もそうだ。いくら万能な細胞といっても、死者蘇生までできるとは考え難い。
「お前は、一体誰だ? どうやってジェシカの身体を──」
「……フッフフフ」
ジェシカに成りすました何者かは顔を伏せ、肩を揺らして奇怪な笑い声を漏らした。
すると、どうだろう。
彼女の身体が濁りの混ざった黒色に変色し始めたのだ。
それと同時に、背中から四対、計八枚の鴉のような漆黒の翼が生えて全身を覆い隠す。
「──ッ!?」
数秒の後に翼が開かれ、隠されたその身体が露わとなる。
そこにジェシカの姿はどこにもなかった。
あるのは、彼女と比べて見劣りはするものの、肉欲をそそるに相応しい艷やかな全裸の肢体。
そして、顔。
彫りが深く、目元は濃いアイシャドウに染まっている。口端を三日月型に歪めて残酷な笑みを浮かべているその様は、ジェシカとは似ても似つかない。
だが、何よりアダムが注目したのは、ベールに納められた髪。
後頭部でまとめられたその髪は薄い金色、いや、灰色と言っていいほどに色素が失われていたのだ。
アダムにはその色に見覚えがあった。
あの日。ジェシカと初めて心を通わし、結ばれた日。彼女に重なって見えた女性の姿。
ただの幻覚と思っていたが、朧げな記憶の中でもそれが目の前の女性そっくりだということは疑いようがなかった。
「フフフ……どうだ? アダム・スペンサー。お前の母の裸体は」
「……母? かあ、さま……?」
瞑目していたアダムは瞼を瞬かせる。
最初は何を言っているのか分からなかったが、内なる遺伝子が嫌でも教えてくれた。この女は、この女性は、自身の血の繋がった母親であると。
自然と彼の聞かん棒は、ぐんっ、ぐんっ、と硬くそそり勃っていく。
「おやおや……記録通り、節操のないペニスだ。実の母にまで性欲をたぎらせるとは」
目を細め、含み笑いを漏らす女。
その鋭い爪が生えた手の平で、カウパー液がぷくりと浮かんだ亀頭を嗜めるように撫でる。
「う゛っ! あ……」
「お前はスペンサーの分化精子と、ある女性の卵子が組み合わさってできた胚から誕生した。その女性というのが、この私……マザー・ミランダだ」
ミランダと名乗った女は、アダムの震えるペニスに自身の涎を垂らす。
氷のように冷たい潤滑油を得てビクリと揺れたそれを、ゆっくりと、丹念に扱き始めた。
「あ……ああっ!」
「スペンサーがお前に話していないのはそれだけではない。お前の身体は始祖だけでなく、"特異菌"という真菌生物にも適合しているのだ」
ミランダの手が、母の手が、ペニスを上下に擦る度、アダムの腰は地に打ち上げられた魚のように跳ねる。ぬちゃり、ぬちゃりと、水気に満ちたイヤらしい音が静まり切った部屋に響く。
「特異菌は受精卵に投与された始祖と共生する形で、お前の身体に完全適合した。それも通常の適合とは異なり、共生に傾注しているがゆえに身体はカビに変わらないままという他に例を見ない事例。まさに選ばれた存在と言えるだろう」
ミランダは手淫を続けながら語る。
そのような特別な存在を生み出すことに成功したスペンサーは、当初アダム一人では満足せず、再び同じ方法で神となる子を創り増やそうとした。
だが、それは尽く失敗に終わる。環境、条件、方法を同様にしても、胚は成長することなく全て死滅してしまった。クローンでさえも、作製することはできなかったのだ。
これはコンピュータに極稀に起こる謎のエラーのようなもの。
宇宙から降り注ぐ宇宙線の中性子などといった、スペンサーが知覚していない何かが影響したことによる、神の悪戯の如き偶然の産物。
アダムはそんな天文学的な確率で誕生した、奇跡の子だったのである。
「お前は素晴らしい存在だ。それは認めよう……だが、お前はあの子ではない」
その言葉と共に、ペニスを扱き続けていた手の動きを止めるミランダ。
「感謝しているぞ、アダム。お前がジェシカと作った子供のおかげで、我が最愛の娘に復活の時が訪れたのだから」
自身の涎と大量のカウパー液でまみれた巨大な怒張。その奇跡の象徴に唇を近づける。
「これはその褒美だ。受け取るがいい」
チュッ、と。亀頭にキスが落とされた。
「────ア゛ッ!」
ドピュルルルルゥゥーーッ!! ビュボルッビュボッ!! ブボピュルルルルゥゥーーー!!
白目を剥いたアダムの視界に火花が飛び散る。
それと同時に、尿道が爆発噴火したかのような膨大な射精。間欠泉の勢いで精液が噴射され、彼の腰は激しい
ジェシカを孕ました時以上に大量の射精が続き、豪雨のように部屋中に精液がほとばしる。
ベッドの周りは精液で満たされ、まるで白い液溜まりの上に浮かぶ孤島となった。
「……フフ、ハハハッ! 凄まじい量だ。私という黒に対照的で実に美しいな。本当はジェシカの身体で思う存分褒美を与えてやろうかと思っていたのだが……」
ミランダは無意識の内に鼻を膨らませて深呼吸し、頂点に位置する雄の臭いを堪能する。
「スー、ハー……それにしても、このむせ返るような濃厚な臭い。女を刺激されたのは、七十年ぶりか……いや、私としたことが、何を考えているのだ」
だが、すぐに思い直したのか、アダムの柔らかくなったペニスから弾かれるように手を離した。
その身体は菌の力で防いだのか精液のシャワーを浴びた様子もなく、綺麗な肌を保っている。
「ミ……ミランダ」
気づけば、部屋の扉が開かれ、そこにはアダムの父親であるスペンサーが立っていた。
彼の胸には、白い布に巻かれた30cmほどの
「ああ……我が娘エヴァよ。ついに母のもとへ戻る時が来たのだな」
ベッドを降りたミランダは裸のままスペンサーに歩み寄る。
その
それは、赤子であった。
アダムとジェシカの子は生きていたのだ。
重さは僅か500gほど。通常なら超早産、流産として扱われるだろう。だが、彼女はスペンサーのもとで秘密裏にジェシカの遺体から摘出。試験管ベビーとして培養されていたのである。
「フフ……この子もまたアダムほどでないにしろ、始祖と特異菌に適合した存在。早産による発達の遅れなどありはしないだろう。だが……器となるには、後一年ほどは肉体の成長が必要か」
自身の孫であるはずの未熟児を、ミランダは実の娘を相手にするかのようにあやす。
「ミランダ……や、約束は守りました。どうか、アダムだけは……あの子は私の最愛の子。神となる子なのです」
そんな彼女にスペンサーが平身低頭といった様子で懇願する。あの傲岸不遜を絵に描いたようなスペンサーがだ。
彼の言葉に、未だにベッドの上で痙攣と射精を続けているアダムを一瞥するミランダ。
「……いや、駄目だ。やはりあの貴重な存在も私が頂いていく」
「そ、そんな……ッ!」
スペンサーは絶望の表情を浮かべて縋りつこうとするが、ミランダは彼の皺の目立つ額に手の平を当ててそれを止めた。
「安心しろ、不要になれば返してやる……ともかく、献身的な弟子にも褒美を与えねばな」
ミランダの唇がスペンサーの額に近づき、口づける。
「──おっ、おお、お゛っ、おほッ!?」
ビューーーーッ! ビュルルルーーッ!!
初老の男性による大量射精。
彼のズボンは失禁したかのように見る間に精液で濡れていき、脚を伝って床に液溜まりを作る。無論、無精子症ゆえに色は薄い。
子鹿のように膝が揺れて立っていることもままならず、スペンサーは液濡れの床に仰向けに倒れ伏す。残された一生分の精液を出したのは間違いないだろう。
神を目指した男の無様な姿をミランダは唾棄するような眼差しで見下し、実際にキスした唇を舐めて唾を吐き捨てた。
「……さて、もうこんなところに用はない。我が家に帰るとしよう」
そう独りごち、ミランダはようやく射精が収まったアダムのベッドに近づく。
アダムに手を伸ばそうとしたその時、意識を取り戻したのであろう彼がその腕を掴んだ。
「──ッ! 全て出し切って気絶したかと思ったが、まだ抵抗する気力があるとは」
「……生憎、僕はある女の子のおかげで、射精量を制御できるようになったんだ。何をしたのかは分からないけど、無理やり止めさせてもらったよ」
驚くことに、アダムは部屋中を白く染めるだけの量を出したにも関わらず、未だに射精の余力を残していた。
だが、ミランダの腕を掴む彼の力は弱々しく、息も絶え絶えで話すのがやっとといった状態なのには違いない。
「僕の、僕とジェシカの子を、どうするつもりだ」
それでも、我が子を思うその赤い瞳は鈍く光り、怒りに燃え上がっていた。
「……知る必要はない。お前は今後、不測の事態のための種馬として、そして贄として余生を過ごすのだから……さあ、大人しくもう一度眠りにつくがいい」
「ッ、待──」
再びペニスを握られ、脳に謎の刺激が与えられると同時に射精が再開される。
ブビュルルルッ!! ボビュッ! ボビュルッ! ビュルルルーー! ビューーーッ!!
(ああ……あ、あ、ぁぁ……)
死を思わせるほどの壮絶な快楽を前に、アダムの腰は跳ね上がり、意識が急激に薄れていく。
脳裏には走馬灯のように恋人達の笑顔が浮かんでは消えていった。
「そうとも。我が子は愛しいエヴァ、ただ一人……あの子だけなのだ」
ミランダは幸せそうな笑みを浮かべて赤子の黒髪を撫で、瞳を閉じて抱きしめる。
彼女は気づかなかった。
死んだように眠り続けていたその愛し子が瞼を開き、緑色の瞳で気絶したアダムをじっと見つめていることに。
そんなわけで、ヴィレッジ編です。
……と言いたいところなのですが、ここで一旦アンケートを取りたいと思います。
前回ジェシカが死亡したことにより色々と反響があったので、作者なりに一日かけて再考を重ねてみました。
その結果、生還ルートでも話を繋げられる展開を新たに思いつきました。書けないと思っていたジェシカとリサの親子丼も挟めそうです。
ただ、いくら一部読者の反響が悪かったとはいえ修正するのもいかがなものかなと思い、苦肉の策としてアンケートを用意した次第です。
修正すべきという意見が多ければ、せっかく感想を頂いたのに大変申し訳ないのですが、今回の話ごと当該エピソードを削除する形に。逆であれば、そのまま続きを投稿する形で結果発表とさせていだだきます。
修正する場合は再開までにしばらく時間をいただくとは思いますが、よろしくお願いいたします。
ジェシカが生還する形に修正すべきか?
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修正しなくてもよい
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修正すべき