BIOHAZARD sexual invasion 作:MIYOSHI
「旦那様、準備はよろしいでしょうか?」
「うん。大丈夫」
あれから、アダムが精通してから、二年の月日が経過した。
七歳になって言葉の拙さもほぼなくなり、知識も性技術も完璧と見なされた彼は例の絶海の孤島にある箱庭の館から出ることを許された。
そして、大学入学資格となるAレベルのテストを受け、受験した全科目で見事に満点を獲得。さらにアンブレラ教育陣の推薦状とそれまでの自身の研究をまとめたレポートを提出。
結果、無事その天才性が認められ、イギリスの有名大学への飛び入学が決まったのだ。
入学許可及び合格の通知が届いた際、スペンサーは当然とばかりに毅然とした態度でアダムを労っていたが、内心で大喜びしていたのは誰の目から見ても明らかであった。
その証拠に、スペンサーは本邸で盛大な祝賀会を開催。それを兼ねて、今まで隠していた息子の存在を明るみにし、政府関係者を含む取引先、各メディアへと紹介した。
僅か七歳の少年が飛び級して名門大学に入学。しかもそれが、跡取りがいないと思われていたアンブレラ会長であるスペンサー卿の子息と来れば、一躍大ニュースとなったのは言うまでもない。
そして今日は、その大学のオリエンテーションが行われる日だ。
「なるべく早く帰ってくるよ」
「嘘。絶対朝帰りになるわ。賭けてもいい」
高級ソファに寝そべってクッションを抱えているリサが、ジト目でそう投げかける。
孤島の箱庭から離れたアダムは、リサやジェシカを始めとするメイド達を全員連れて、スペンサーが購入した大学にほど近い別邸へと住居を移していた。
彼女らが脱走する可能性は低いと判断されてか、箱庭の館と違ってこの別邸内に設置された監視カメラは最低限の数だけ。必要であれば外出の許可まで出る。今までの過剰な監視の目から解放されたリサは、特にやることがない時はああして寛いで過ごすのが常となっていた。
はっきり言って、メイドとしてあるまじき態度だが、主人であるアダムはお客を招いたりしていない時であれば別に構わないと笑って許している。
これまで窮屈な思いをさせてしまった分、伸び伸びと過ごして欲しいからと。
「こっちに来てから近所の綺麗な人、片っ端から引っかけてるじゃない。その大学に通ってる女の子だっているんでしょう? どうせまた愛人増やしてくるに決まってる」
否定できず、頭を掻くアダム。
この別邸に越してきてからというもの、社会勉強を兼ねてご近所への挨拶に出向いたのだが、行く先々で出会った女性と肉体関係を持ってしまったのだ。
今から行く大学に通う女子学生達。その一人がいわゆる小さな男の子に興味がある人物で、挨拶の際に注がれる性的な視線に気づいてそれとなく誘いをかけたら、あっさりと自分の部屋に連れ込んで襲いかかってきた。
日々の勉强で鬱憤が溜まってる中、男児からの誘いという夢のような出来事に理性が崩壊したのだろう。さらにはその行為を目撃した同居人を共犯にさせるべく、乱交に発展した始末。
その日を皮切りに每日のように近所の女性を引っかけ続け、後日開いた引越し祝いのパーティでは参加した女性達全員がアダムとのセックス目当てで来ていたほど。そのまま仕事を辞めて、あるいは通いでアダムの新たな性処理係になった者までいる。
もちろん騒ぎになることはない。なんせバレれば犯罪者となるのは女性達の方だし、関係を持った女性の中には警察官もいたのだから。
それでも、さすがに既婚女性や子持ちのシングルマザーには手を出さなかった。いくら相手が魅力的な女性だとしても、ジェシカとリサという前例がある以上、愛する家族との関係を壊すような真似はしたくなかったからだ。
もっとも、それも長続きはしなさそうだが。
「もう、リサ! いつも言ってるけど、旦那様が出かける時ぐらいだらしない格好は止めなさい!」
「ふーんだ。そんなこと言って、お母さんは付き人としてアダムと一緒に大学に行けるから嬉しくてしょうがないんでしょう?」
「なっ……!」
図星だったのか、顔を真っ赤にさせてしどろもどろになるジェシカ。七歳という幼少での入学とあって、大学側から特別に保護者代理として同伴を許可されたのだ。
今の彼女の服装はいつものメイド服ではなく、高級なスーツに身を包んだ姿。その豊満な胸でブラウスがはち切れんほどに盛り上がっているため、はっきり言って目に毒だが。
ちなみに、スーツはアダムがプレゼントしたもの。昨今のアンブレラ製品には彼のアイデアが盛り込まれている物も多く、その報酬としてスペンサーから多額の収入を得ている。そこから出したお金で購入したのだ。
「メイド長だけずる~い」
「…………職権乱用」
「アダム! ボク、今度カーセックスっていうのしてみたい!」
「狭い車内で愛し合う男女が二人っきり……何も起きないはずもなく。あ、か、帰ってきたら感想を……」
ローラ、ヨナ、イルマ、フェリシアといったウェスカーチルドレンがそれぞれ不満を並べ立てている。一部そうではないものも混ざっているが。
「保護者代理になれるのが私だけなんですから、仕方がないの! 旦那様、行きましょう!」
「あ、待ってジェシカ……アリー」
肩を怒らせて玄関へ向かおうとするジェシカ。
アダムは彼女を引き止めて、隅に控えていた金髪の少女を呼び出した。
「はぁい。ご主人様」
にこやかな笑みを浮かべて、トコトコと軽い足取りで歩み寄ってくる少女──アリー。元の名をアレックス。
すっかり伸びた金髪を縦巻きツインテールにし、エプロンだけを身に着けた変態的な格好をした十八歳の彼女は、アダムの目の前で跪く。
彼の着るズボンのファスナーを降ろして勃起していない子供ちんぽを取り出し、その唯一の過去の面影である真っ赤な口紅を塗った唇で咥えた。
ショロロロロォォ…………
遠慮なくアリーの喉に向けて気持ち良さそうに放尿するアダム。アリーはゴクッ、ゴクッと喉を鳴らしながら美味そうに飲み込んでいる。その光景を羨ましげに眺めるメイド達。
暫しして、ブルリと身体を震わせて放出を終える。一滴残らず尿を飲み干したアリーは、名残惜しげに舌で皮を剥いて亀頭を舐め回してから、ちゅるりと唇を離し、ズボンの中へ丁寧に戻す。
「ありがとう。それじゃあ、いってきます」
「「「いってらっしゃいませ。ご主人様」」」
「お母さーん、お土産買ってきてね~」
愛するメイド達に見送られて、玄関を出る。
近年オイルショックによって注目を浴び始めた日本車。その中でも最も芸術性に満ちていると言うスペンサーから、ちょっとした小遣い感覚でプレゼントされた2000GT──オープン仕様ではないが、テレビ電話が搭載されている!──に乗り込むアダムとジェシカ。
ちなみに、スペンサーは日本車の出来の良さは絶賛していたが、日本のとある会社が製造するヘリコプターだけは絶対に乗りたくないと言っていた。
(ふぅ……)
男心くすぐるエンジン音を聞きながら、アダムは合格祝賀会の時のことを思い出す。
当初、自慢の息子を褒め称えられたスペンサーは我が事のように上機嫌で賓客を持て成していた。が、とある貴族仲間から伝えられた情報に一転して眉をひそめる形となったのだ。
アンブレラ共同創業者の一人である、エドワード・アシュフォード。その息子であるアレクサンダーが、スペンサーと同じように隠れて子を成していたらしい。
加えて、なんとその子供もAレベルで満点を取り、アダムと同じ大学に今年入学するというのだ。それも七歳、同い年の女の子であると。
エドワードは始祖ウィルスの実験による事故で死亡──実際はスペンサーの指示で暗殺された──し、息子のアレクサンダーが六代目当主となったが、彼に父の研究を継げるほどの才能はなかった。
それゆえに、目立った功績を上げることもできず。アシュフォード家は創設者の家系にも関わらず、アンブレラ社内においてその立場を危ういものとしていた。祝賀会に彼の姿がなかったのも、スペンサーが招待していなかったためである。
そのアレクサンダーに隠し子がおり、しかもその子供がアダムと同じ天才児だと言うのだ。
スペンサーは疑った。アレクサンダーの専攻は遺伝子工学。奴も自身と同じく遺伝子組み換えによって、デザイナーベビーを作り出したのではないか? それによって、アシュフォード家の復興を画策。あわよくば、自身の地位を乗っ取ろうしているのでは? と。
『だが、その子供が"女"であることが運の尽きだ』
アダムはスペンサーから、アシュフォード家の娘を堕とせと直々に命令された。
勉学以上に磨き上げてきたとも言えるその性技術で、特定の人物を虜にしろと言われたのはこれが初めてだ。
言われるまでもなく、その子にもアプローチを仕掛けるつもりだ。しかし、アダムには一つの疑問があった。
──なぜ、そこまでして僕に女性を抱かせたがるんだろう?
例の計画については聞かされていないアダムだが、トレヴァー母娘やウェスカーチルドレンが性処理係として迎えられたことぐらい、とうの昔に察している。
無論、女性とのセックスは何よりも好きなため、こうして疑問を浮かべても深く推測することはない。
自身を
そう。箱庭の館を出る際に、アダムは自身の出生の秘密についても聞かされていた。
元々普通ではないと自覚していたが、それでもショックを受けなかったと言えば嘘になるだろう。まさか、父の経営するアンブレラが裏で人体実験を繰り返している悪徳企業で、自身がウィルスによって生まれながらに遺伝子が強化されたデザイナベビーだったなんて。
ジェシカやリサといった恋人達が傍にいなかったら、今でも塞ぎ込んでいたかもしれない。
極悪非道の権化とも言える父スペンサーについて、思う所はある。だが、アダム自身何か反逆を起こそうだとかそういったことは考えたことはない。
犠牲になった人達のことを考えると良心は痛むが、かと言ってどうにかしようと思うほどの強い正義感は持ち合わせていなかったからだ。
それに、腐っても父親。愛情だってあるし、彼がいたからこそ自身は生まれ、ジェシカやリサといった愛すべき女性達と出会うことができた。
そう考えた結果、アダムは現状維持を選択したのである。
(どんな子なんだろう……)
これから出会うのは、そんな自身と同じく遺伝子操作されて生まれてきたであろう存在。
アシュフォード家の娘──アレクシア。アダムは期待に胸を膨らませた。
「あれ?」
突然、運転手のジェシカが走らせていた車が停車させた。
アダムの館は街中にある大学とは違って郊外に位置しており、停まった場所は丁度館からも見えない、住宅が並んだ通りへと続く道の路肩であった。周りにはもちろん人気はない。
ジェシカの方を振り向くアダム。
彼女は潤んだ瞳でアダムを見つめて……次いで、物欲しげに彼の股間に視線を注いだ。頬は館を出る時とは違った赤みを帯びている。
アダムは笑みを浮かべ、ズボンのファスナーに手をかける。
ちょっと早めに出過ぎたし、少しぐらい愛する人の奉仕を楽しんでからでも十分間に合うだろう。
☣ ☣ ☣
しっぽりと楽しんだ後、予定通りオリエンテーション開始の時刻に余裕を持って大学に到着したアダムとジェシカ。
他の新入生と違って、特殊入学のアダムは直接学長室へと赴く。
「改めて、ようこそアダム君。我が校に君を迎えることができたのは実に喜ばしいこと。君のように傑出した才能ある存在がいれば、他の生徒にとっても良い刺激になるはずだ」
学長とは面接を介して挨拶をしているので、既に顔見知りだ。新入生の前でスピーチを控えている彼から手厚い歓迎を受けると共に、時間割などの配布資料を受け取った。
飛び級という特殊入学だからというのもあるが、どちらかというとアダムが合格したのを切っ掛けにスペンサーがこの大学へ多額の出資を約束したのが主な理由だろう。
「ありがとうございます。ところで──」
アレクシアが既に到着しているかどうか聞こうと口を開いたところで、学長室の扉をノックする音がそれを遮った。
「おお、丁度良かった。どうぞ、お入りください」
顔を綻ばせ、訪問者に入室を促す学長。もしやと、振り返ったアダムは期待の眼差しを扉へと向ける。
開いた扉から入ってきたのは、スーツを着た三十代後半と思われる口髭を生やした男性。期待が外れた、と思うのは早計だった。その男性に隠れる形で、後ろから小さな影が姿を現す。
アダムは息を飲んだ。
そこには、輝いて見えるほどに見目麗しい妖精がいた。
身長はアダムより少し小さめ。学生らしく黒のボレロジャケットに白のブラウス、下はドット柄のロングスカートを着ている。赤い宝石をあしらったチョーカーはもちろん、財宝を溶かし込んだかのように美しい金色の髪が一際目立つ。
だが、それ以上に、あの氷のように冷たい、けれど惹き寄せられて仕方がない魅惑的な青い瞳。感情の一切伺えない表情も相まって、まるで人形に思えるほど完璧を絵に描いたような少女だった。
「失礼。少し遅れました」
「構いませんよ、アシュフォード卿。丁度アダム君に今後の説明をしようとしていたので、むしろベストタイミングです」
学長の言葉を聞いて、少女の前に立つ男性がアダムの方に視線を向ける。
「では、貴方があのスペンサー卿のご子息にして、アンブレラ御曹司の……初めまして、アレクサンダー・アシュフォードです。お会えできてとても光栄です」
「……っ! あ、アダム・スペンサーです。こちらこそ。彼女はジェシカ・トレヴァー。僕の保護者代理です」
差し出された手を、少女に見惚れていたアダムは慌てて握り返した。紹介されたジェシカも会釈しつつ、そんな彼に心の中で肩をすくめる。
父であるスペンサーが祝賀会に招待しなかったため、少しばかり後ろめたい気持ちがあったが、当のエドワードは気にした様子もない。
「ははは、アダム君はアシュフォード卿のご息女が気になってしょうがないみたいですな」
学長がアダムの子供らしい一面を見てか、笑ってそう口にする。史上最年少の大学入学者を一度に二人も迎えるとあって、上機嫌のようだ。
アダムは余計なことを言うなと恨みがましい目を彼に向けるも、その頬は気恥ずかしさで熱を帯びている。
「す、すみません。その、とても綺麗な子だと思って……」
「気に入っていただけたようで嬉しい限りです。何しろ、自慢の娘ですので……さあ、ご挨拶しなさい」
父に言われて、前に出る少女。黒い靴を履いた足を姿勢良く動かすその動作さえ、目を奪われる。
少女はスカートの裾を摘んで上げ、アダムに対して
「初めまして、アダム様。アレクシア・アシュフォードと申します。仲良くしてくださると嬉しいですわ」
薄く笑みを浮かべるアレクシア。
儚さを覚える笑みだが、やはりその瞳は表情を変えないままであった。
☣ ☣ ☣
その後、屋外での学長によるスピーチを新入生の集まりから離れた場所で聴き──アダムはアレクシアに意識がいってほとんど聴き流していた──終えた。
続けて、アドバイザーのもとでどのようなカリキュラムを組むか決めることとなったが、
問題は職員であるアドバイザーの女性。
なんと彼女はアダムの邸宅の近所に住んでいる、肉体関係を持った女性の内の一人だったのだ。
「終わり次第、アダム君は私が責任を持ってお家に送り届けますから、ジェシカさんは先にお帰りいただいても結構ですよ」
「え? ちょ、ちょっと──」
有無を言わせずジェシカを追い出し、特別に用意した個室に鍵をかけたアドバイザー。
彼女の膝に乗せられる形で今後の予定について話していたが、そんなどうでもいいことはすぐに終わらせて、そのまま他の新入生達がカリキュラムを組み終わる時間帯までセックスに耽っていたのだ。
「ああっ! すごいわ、アダム君! もっと、もっと突いてぇ!!」
「はぁっ、はぁっ……でも、いいの?」
「もう、貴方は子供なんだから、夫のことなんて気にしな──おっ、おおんっ!」
アダムは自ら身体を差し出す彼女に、申し訳なく思いつつも溜め込んでいたアレクシアへの欲求を思いっ切り吐き出した。
ちなみに、言葉から分かるようにアドバイザーの女性は既婚者である。アダムのペニスに突かれて淫らな喘ぎ声を漏らす彼女の左手の薬指には、しっかりと結婚指輪が輝いていた。
手は出さないとしていたが、出されるのはまた別の話。アダムと関係を持っている隣人が行為に及んでいるのを偶然覗いてしまい、旦那が留守にしている時間に彼を自宅へ誘ったのだ。
元々、その旦那とはとっくの昔に関係が冷めてセックスレスの状態だったらしく、三十代後半の彼女は欲求不満も相まって、七歳児とのセックスという禁じられた遊びにあっという間にのめり込んだ。
子宝にも恵まれていないようだし、恐らく近々離婚することになるだろう。
気づけば、アドバイザーのご夫人は白目を剥いて気絶していた。困り果てたアダムは、外で辛抱強く主人が出てくるのを待っていたジェシカに彼女を自宅へ送ってあげるよう頼む。
ジェシカは渋々承諾してくれたが、待ちぼうけを食らった上に使いっ走りにされて完全に機嫌を悪くしているようだった。
(今日の夜は普段よりも目一杯可愛がってあげないと、許してくれそうもないな)
アダムは愛する人の少女めいた嫉妬心に笑みを零しつつ、自身の体液で濡れた個室の掃除──自分で自分の精液を掃除すること以上に虚しいものはない──し終えて、屋外に出た。
ジェシカと共に帰宅しなかったのは、車に夫人を乗せていたからではない。違反にはなるが、気絶している彼女の膝に乗ることもできるのだから。
アダムが大学に残った理由。それは当然、アレクシアに会うためだ。
もしかしたら既に帰宅しているかもしれないが、それでも探さずにはいられなかった。今の彼はこれからの生活に胸躍らせる学生ではなく、完全に女性の尻を追い回す放蕩者であった。
「あ、あの綺麗な銀髪の子。噂の天才児じゃない?」
「嘘っ! あのアンブレラ御曹司の?」
「小さ~い! 本当に七歳なんだ! ね、話しかけてみようよ」
辺りをキョロキョロと見回すアダムの姿を見つける在校生と思われる女性達。彼女らは有名人を見つけたかのように黄色い悲鳴を上げて取り囲む。実際、有名人なわけだが。
「ハ~イ、ボク」
「アダム君だよね? 私達、ここの二年生なの」
「もしかして迷っちゃった? 良かったらお姉さん達が案内してあげよっか?」
「と言っても、自分達のカレッジ以外はあまり知らないんだけどね」
矢継ぎ早に言葉を投げかけられ、困り顔になりながらも慣れた様子で対応するアダム。家ではこれ以上の人数に囲まれるので、彼にとっては日常のようなものだ。
そんな様子を遠巻きに眺めている男子学生達からは、これでもかと疎ましげな視線が注がれている。残念ながら、同性の友人がいないアダムには彼らの気持ちを理解することはできなかった。
取り囲んでいる女の子達は夏季休暇でバカンスにでも行っていたのか、焼けた肌をこれ見よがしに露出した格好が目立つ。普段勉強漬けなため、二年に上がって学生生活に慣れてきた分ハメを外してきたのだろう。
アレクシアの姿は見当たらないし、このまま彼女達と適当な場所で楽しんでから帰るのもいいかもしれない。そう考え、口を開こうとするアダム。
「──まあ、アダム様。ここにいらしたの」
女の子達の騒ぐ中、鈴の音のような透き通った可愛らしい声が耳に届く。
声のした方を振り向くと、人集りに出来た僅かな隙間の先に、探し求めていた意中の少女──アレクシアがそこにいた。
「あの子って確か……」
「ほら、もう一人の飛び級してきた子じゃない? アシュフォード家の」
「すっごく綺麗な子だわ……」
この大学は学費もトップクラスに高く、在学生の半分は世帯所得が何十万ドル以上という裕福な家庭の者で占めている。
そんな彼女らでも、アレクシアの自分達とは住む世界が違うという佇まいを見て、無意識の内に感嘆の溜息を吐いた。
「失礼。学長がアダム様と私にお話があるということで、彼を探しておりましたの。お借りしてもよろしいでしょうか?」
一斉にお互いの顔を見合わせる女子学生達。「え、ええ。もちろん」とモーセの海割りの如くその場から退けて、彼女とアダムの間に道を作る。
アレクシアはそんな見えないレッドカーペットを通ってアダムのもとに歩み寄り、彼の手を取った。
「さぁ、行きましょう」
「う、うん……」
その陶器を思わせるしなやかな白い手に握られ、女子学生達の集まりからアレクシアと共に離れるアダム。
二人の天才児。金と銀の宝石はお互いの存在を際立たせ、すれ違う学生達はますます色めき立つ。
(本当に……綺麗だ)
心臓が口から飛び出るのではないかと思うほど、高鳴る胸。
自身の手を引くアレクシアの後ろ姿。そのキラキラと揺れてきらめく艷やかな金髪に見惚れて、アダムは何もないところで幾度も躓きそうになる。
「……あれ?」
気づけば、二人は夏季休暇で院生の姿だけがチラホラと見受けられる化学科の実験施設などが入った研究棟の敷地に入っていた。ここまでに見てきた中世時代の伝統建築物を再利用したものではなく、比較的新しい近代的な造りの建物だ。
「アレクシア。学長室に行くんじゃ……」
アダムがそう口を開くと、アレクシアはピタリと足を止めて振り返る。少し眠たげな印象を受ける瞼が少しばかり開いて、さも驚いたように握ってない方の手で口を覆った。
「あら、あんなのてっとり早く離れるための嘘ですわ。聡明なアダム様ですから、てっきり分かってついてきてくれてるのかと思ってました」
クフフ、と少し変わった声で小さく笑うアレクシア。
「なんだ。そうだったのか。じゃあ、どうして僕を……」
「それはもちろん。同年代の学友としてアダム様と二人っきりでお話してみたくて。私、キャンパス中を探検して丁度良い場所を見つけましたの。ぜひそこで……ああ、もちろん、アダム様が忙しくなければですけれど──」
「い、いや! 実は僕も君と話したくて、探してたんだ!」
挙動不審になりながらも、アダムは懸命にアレクシアとの関係を進めるべく話を繋げる。
無理もない。ジェシカやリサを除けば、出会ってすぐセックスがほとんどだった彼にとって、こんな会話からの馴れ初めから始めるのは初めてのことなのだから。
アレクシアはニコリと口元に笑みを浮かべ、「良かった」とアダムを再び案内し始める。
「……そういえば、アレクシアも専攻は生物学だよね? 副専攻は取るの?」
イギリスの大学ではアメリカの大学における"Double Major"と同じく、"Combined Degree"という異なる二つの分野を専攻できる制度が用いられている。アダムは学位を取得して卒業できればそれで良かったので、二つ目となる副専攻は取らなかった。
もちろん、スペンサーもそれに同意している。彼としては、どうせ我が子にはアンブレラの役員となる将来を約束しているのだから、より勤勉であることをアピールするより、女性とのセックスに励んで欲しかったのだ。
「いいえ。大学なんて、私達にとってはしょせん最年少で卒業したという箔をつけるためだけに存在するもの。そうでしょう?」
「まあ、そうだね。願書を出した時に色んな学部の教授達と面接したけど、はっきり言って父様につけてもらってた教育係の人達の方が優秀だったと思う」
「私もですわ。ですから、ここの教員達から新しい知識を得られるなんて、はなから期待しておりません。せいぜい、研究設備を利用できるだけ利用させてもらうぐらいでしょうか」
「家の設備の方がよっぽど整ってそうだけどね」
「クフッ。私達、気が合いますわね」
談笑を交わしながら歩く二人。天才児同士とても馬が合い、自然と会話が弾む。
あえて遺伝子操作されて生まれたのかは聞かない。もし知らないのであれば、自分と同じようにショックを受けると思ったからだ。
アダムは箱庭の館で栽培していたアフリカの花について研究したことを話し、興味を示したアレクシアが今度は自身の蟻の研究について話す。
実に心地良かった。アダムは口元が緩むのを必死で抑える。
もう分かりきっていることだが、認めよう。
アレクシアに恋をしていることを。一目惚れしたことを。
七歳にしてほとんどの男性よりも女性経験が豊富となった彼が、初心な気持ちになってしまうほどに恋して止まない少女。
澄ました顔を歪ませて、淫らに喘ぐアレクシアの裸体が思い浮かぶ。
荒ぶる金髪。ほのかに揺れる小さな乳房。血が滴る幼い秘裂。
抱きたい! 彼女を犯したい! 彼女の汚れを知らない身体を、自身の精液で汚したい!
口では真面目な会話をしつつも、頭ではそんなことばかり。
今まで関係を持った女性達のように、この自慢のペニスを見せつければあっという間に陥落してくれるだろうか? 後ろからいきなり抱きついて、思いっ切り突き上げれば可愛く鳴いてくれるだろうか?
悶々とする意識の中でそれらを実践しないのは、一重にジェシカの教育の賜物であろう。
もしくは、彼女に嫌われたくないという子供らしい臆病さからか。
「アダム様。こちらですわ」
アレクシアの声で、アダムは我に返る。彼女は研究棟内の地下へと続く階段を指し示していた。
降りた先には一つの部屋。そこは研究室であった。設備は少し古く埃っぽいが、タンパク質精製に必要な器材や培養室、それにシャワー室──カビ汚れがひどい──まで一通り整っている。
こういった施設は夏季休暇中でもあっても院生などによって利用されていそうなものだが……
「誰もいないね」
「ここは昔使われていた研究室で、建て替えの際にそのまま残して再利用していたと伺いましたわ。もっとも、今はあまり使われていないようですけれど。最新の設備が整った広い研究室が上に新しく設けられてますので、院生の方々や教授はそちらで研究を進めているようです」
そう説明したアレクシアは「もちろん、許可は頂いてきましたわ」と付け加えると、後ろ手を組んでコツコツと靴音を鳴らしながら研究室の中を歩く。
ふいにその歩みを止め、くるりと金の艶髪をなびかせて振り返る。アダムの方をその冷たい瞳で見つめて、ゆっくりとその口を開いた。
「さあ、アダム様──」
「
アレクシアは原作だと女王蟻から古代ウィルスの痕跡を見つけたのが切っ掛けで蟻に興味を持ち始めたと思うのですが、今作では幼少期からご執心という形にしております。
ちなみにアレクシア相手の話は数話続く予定。
理由はメインヒロインの一人であるということが一つ。もう一つは途中一時離脱して当分顔を出さなくなる予定だからです。
一時離脱の理由は原作をプレイしている方なら大体予想がつくかと。
よろしくお願いいたします。