「当日の体調などにより、ご予約済みの艦娘のお付き添いが不可能な場合は提督の希望により予約のキャンセルか、お付き添い可能な艦娘による変更が可能です」
予約が終わり、吹雪ちゃんに当日の流れ等の説明を受けている俺。
観覧コース中にやってはならない事(常識の範疇)などが書かれたタブレットのページにタッチペンでサインもする。
もちろん艦娘に対して、身体を触ったり、如何わしい質問をする等も含まれていた。
要するにサービス良く一緒に回ってあげるけど、勘違いしてエロいを聞いたり、したりすんな、という事だね。
「······以上ですね、今日一緒に回って提督はとても優しい常識のある方でしたので、これらの注意は平気だと思いますけどね」
タブレットをしまいながら笑顔を見せてくれる吹雪ちゃん。
わかってますよ、艦娘の女の子も仕事なんですからお互いの気分の悪くなるような事は避けるよ。
「まぁ、ね」
「······でも、提督? 失礼になるかも知れないんですけど聞いてもいいですか? あ、答えたくなかったらもちろん構いませんから?」
「なんだい?」
タブレットで顔半分を隠すような仕草でこっちを見てくる吹雪ちゃん。
うん、可愛いですよ。
男に何でも答える気にさせる仕草だよ、卑怯だよ。
「提督、蒼龍さんの事知ってたのかな? そう思っただけです」
「え?」
「いえ、その······初めてコース予約を取る提督さんってタブレットをしばらく操作して迷う方も多いんです、沢山艦娘はいますしね、でも貴方はすぐに決められたので予め知っていたのかな、って?」
「ああ······」
そうだな。
俺もきっと迷ったに違いない。
物販コーナーであのポスターを見なければ。
「いやいや、たまたま貼ってあったポスターを見てね、それでカワイイなぁと思ったし、何より吹雪ちゃんが予約いっぱいだったでしょ?」
「え!? もう提督はお口も上手いんですね、じゃあ出口までお見送りします」
少したどたどしくもあった俺の返事に吹雪ちゃんはクスッとすると、パイプ椅子から腰を上げた。
「当日、まずはホールで駆逐艦の艦娘に声をかけてください、案内してくれますから」
「こっちから吹雪ちゃんに声をかけようかな? あ、ダメなのか」
「そうですね、私もその日はお付き添いなので」
そうなんだね、そうだからこそ吹雪ちゃんの予約は一杯だったんだ。
でもさっき答えたように吹雪ちゃんの予約が空いていたら······俺は吹雪ちゃんを指名しただろうか?
悪いけどしなかったかと思う。
色々と言い訳しながら、あの娘······蒼龍ちゃんを指名しただろう。
それくらいに一目で俺は······
「提督が来られたら、すぐにホールを哨戒中の誰かがお声かけをすると思うので」
「あ、ああ······う、うん、そうだね」
受付から吹雪ちゃんは立ち上がる。
今日はおひらきなのだろう。
俺も席から立つ。
「じゃあ、玄関までお見送りしますね」
「ありがと」
俺を先導して歩く笑顔の吹雪ちゃん。
お見送りまであるのか、ここまでサービスされたらハマる男も多くなるだろうな。
吹雪ちゃんの後ろをついて歩く。
ホールには先程までの人通りはなく、夕陽が差してきていた。
「今日はありがとうね、吹雪ちゃん、とても楽しかったよ」
「はいっ、ありがとうございます、提督」
ガラス張りの玄関。
吹雪ちゃんに礼を言うと、返ってくるのは可愛らしい素敵な笑顔。
この数時間で彼女はこの笑顔を何度向けてくれただろうか、もちろん営業スマイルなのだろうけど。
でも抜群なスマイルでした。
「じゃあね」
軽く彼女に手を振って玄関を出ようとした時だった······
「て~いとっく!」
高くて甘さを感じる少女の声が俺の耳に入って来た。
吹雪ちゃんではない。
もしかしたら他の客と他の艦娘の会話かとも思ったが俺は思わず振り返る。
「!?」
「て、い、と、く······ご指名ありがとうございます、蒼龍といいます」
そこに立っていたのは緑の着物、蒼い袴、短めのサイドツインの髪型の美少女。
さっき俺の視線を釘付けにしたポスターまんまの女の子がそこに俺に笑顔を向けてきていた。
「キ、キミが蒼龍ちゃん!?」
「そうだけど? 画像と違う?」
いやいや、そんな事無い。
むしろ実物カワイイ。
彼女の背後では、吹雪ちゃんが驚いた顔。
「そ、蒼龍さんっ?」
「今、フブちゃんが手続きしてる提督から予約入ったの判ったから、すぐにホールに出れば会えると思ってね、走ってきちゃった」
吹雪ちゃんにウインクする蒼龍ちゃん。
そうか。
自分に予約が入った事とか、すぐに判るようになってるんだな。
それですぐに挨拶に来てくれたのか。
「サ、サービスいいんだね」
「普段はここまではないよ、なんだかね」
吹雪ちゃんが驚いていた事もあり、誰にでもするサービスじゃないのか、何だかは本人もわからないと言っているが俺は運が良かったみたいだ。
「とにかく······」
蒼龍ちゃんは俺に近づき、覗き込むように見据えてくる。
「······うっ」
やっぱりカワイイ。
そして、プロポーションも抜群だ。
吹雪ちゃんよりも年上なのは容姿からも判るが、正直蒼龍ちゃんの胸元の隆起は······凄い。
俺は思わず赤らんでしまう。
「フフッ、か~わいい~」
少し小悪魔的な笑み。
蒼龍ちゃんはズイッと俺に近づいて······軽く抱きついてきた。
「そ、蒼龍ちゃん!?」
「蒼龍さぁん!?」
揃って驚く俺と吹雪ちゃん。
軽く、ホントに軽く抱きついてきただけだけど。
すごい······二房の感触が俺の胸に当たる。
「アハハハ、驚いてる、年上なのに提督カワイイね」
「か、かわいいって!? 俺はねぇ······」
ダメだ。
良い返しなんて浮かばない。
笑顔を近づけてくる蒼龍ちゃん。
「ねぇ、ねぇ」
「な、なに? なに?」
「なんで私を指名したの? 提督さん」
「え!? それはぁ」
わずかに笑みを残したまま、蒼龍ちゃんは俺を見据えてきた。
ん······ドキドキするっ。
絶対にかなり年下の女の子なのにっ。
吹雪ちゃん相手にはこんなに緊張しなかったのに!
ここまでの女性との関わりの少なさが絶対に顔に出てしまっているっ!!
うううっ。
上手く相手をいなす、ジョークでかわす、軽く気の効いた言葉を返す、どれも出来ない。
「ねぇ······教えて」
ぐっ······色っぽい!
軽くだけ触れあっている互いの身体の感触が少しだけ強くなる。
むね······デカいっ。
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。
俺は思わず、蒼龍ちゃんの両肩を掴んで身体を離す。
「そ、蒼龍ちゃん!」
「ん?」
両肩を掴まれて少しだけ驚く蒼龍ちゃん。
そんな顔もスゴいカワイイ。
「可愛かったから!!」
「えっ?」
いきなりの俺の言葉に蒼龍ちゃんはキョトンとする。
ヤバイ、主語がない!
「し······指名した理由」
「あ······」
「スゴいカワイイから一目惚れしたっ!」
あああ······余計なことまで言ってしまった。
赤面してしまう俺。
しかし、それは······
俺に両肩を掴まれたまま、そんな事を言われてしまった蒼龍ちゃんも一緒であった。
ポオッと頬を赤らめた蒼龍ちゃん。
少しの間、斜め上を観て考える素振りをした後で、
「ありがとう、嬉しい」
と、さっきまでの小悪魔的とは全く違う優しげな微笑みを俺に見せてくれたのだった。
続く