種付けファイター達也くん(未公開シーン&ボツシナリオ) 作:minnie_remon
地下格闘技、と呼ばれる団体がある。
何だか物々しい名称だが、端的に言うと大きな団体に属さずモグリ(またはアマチュア)として独自に格闘技の試合を開催している団体の事である。格闘技団体として正式な届け出が行われていないケースが多く、所属選手のほとんどは元不良や暴走族といったいわゆるアウトローたちで、日々荒々しいファイトが行われている。ただし決してルール無視の決闘が行われている訳ではなく、試合自体は通常の総合格闘技ルールで行われるのが一般的だ。大晦日に達也と戦う金田悠希もまた、地下格闘技出身の選手である。
この日達也は、大阪最大と言われる規模の地下格闘技大会を主催している団体『なにわ幕府』のジムへと来ていた。なにわ幕府からFAILYへ挑戦状が送りつけられ、達也がそれを受けて立ったのである。
とはいえ達也にとってはあくまで、大晦日の試合に向けた調整の一環だった。小規模ジムFAILYの環境では実戦経験を積む事が難しい。なのでタイミング良く挑戦状を送り付けてきた地下格闘技団体の輩どもをスパーリング相手とする事にしたのである。まさに渡りに船。さらに言うなら、大阪最大の地下格闘技団体とやらがどの程度の実力なのか体感してみたいという思いもあった。
なにわ幕府のジムは、それはそれはイカツい雰囲気だった。自分たちから達也に挑戦状を叩き付けておきながら達也を歓迎する様子は全く無く、それどころかメンバーたちは一様に鋭い視線で達也を睨みつけている。全身にタトゥーが彫り込まれた半グレのような男も少なくない。
しかし、その程度の威嚇で達也が物怖じする筈もない。
積み重ねてきた努力が違う、戦ってきた舞台が違うという、確固たる自信があるから。
………………………………………
「よし、お疲れさん」
そう言って男の胸の辺りをぽんぽんと叩き、達也がすっと立ち上がる。ちょうど腕ひしぎ逆十字を極めてタップを奪った所だった。
「さ、次は誰が挑戦するんだ?誰でもいいからかかって来いよ?」
達也がリングの中央から言う。達也らしからぬ挑発的な口調で。
だが、誰もリングに上がろうとしない。なにわ幕府の男たちは皆、悔しそうな表情で俯いている。
達也に挑戦状を叩き付けたなにわ幕府だったが、結果は無惨だった。10人以上の男たちが入れ替わり立ち替わりで達也に挑んだが、力の差は歴然。一方的な内容の連続で、誰一人として達也にまともなダメージを与える事すらできなかった。
しかも達也は、全く本気を出していない。打撃で圧倒してしまってはトレーニングにならないからと敢えて打撃はほとんど封印してグラウンド勝負にこだわったのだが、それでも簡単に関節を取り続けた。たった一人で、しかもたっぷりと手加減しながらの余裕しゃくしゃくの戦いで、なにわ幕府を壊滅状態に追い込んで見せたのだった。
「ったく、大阪最大の地下格闘技団体っていうからワザワザ来てやったってのに、全く話にならねえじゃん。情っさけねえ連中だなぁ」
達也がなおも挑発するように言う。相手が相手だから遠慮する必要が無いと思っているのか、ちょっと珍しい光景だ。
実際、達也としては正直に言って拍子抜けだった。打撃をほとんど封印したにもかかわらず、こんなにも簡単に勝ててしまうものなのかと。
とはいえ、全力で向かってくる相手とガチンコの試合をできたという点においては、決して無駄ではない時間だった。実力差は圧倒的だったとはいえ、本番の試合さながらのシチュエーションで自身の寝技の進化を確認する事もできた。大晦日に向けて自信を深められたのは事実だった。
しかし、今回の殴り込みで、達也にとって何より大きかったのは。
「ま、これが日本最強の男の実力だ。俺はお前らがタバコ吸ってバイク乗り回して遊んでた時にも、必死に練習してきたんだよ。勝負にならないのは当然だって分かったか?」
「……」
「いいか、お前らみたいな中途半端な連中が間違っても強いだなんて勘違いするなよ?ていうか、真の強さってのは外見じゃなくて中身に表れるんだよ。見てくれだけイカツくしても肝心の中身が伴ってなきゃマジでダサいだけだぞ?」
…と、なにわ幕府の連中に説教をかまして日頃のストレスを大いに発散できた事が、この日の最大の収穫だった。
という話だったのですが、スケールがショボいという事でボツにして、米軍基地に乗り込む設定に変えました。なにわ幕府程度では達也くんの強さを際立たせるのは不可能なのでした。