――これは"虞美人"と"藤丸 立香"の二人が出会ってから、暫く経った頃のことである。
『……そういえば先輩は、好きなものとかあるんですか?』
ある日、マスターの部屋であるのにも関わらず、ベッドの上で我が物顔で寛いでいた虞美人は、マスターとの何気ない会話の中で"好きなもの"について聞かれていた。普段から彼の部屋に入り浸っている彼女は、自然と言葉を交わすことも多いのだ。
そんなマスターからの質問に対して、怪訝そうな表情を浮かべながらも虞美人は答える。
本質的な部分で彼女の心優しい部分が滲み出ており、彼に対して少しでも心を開いていることが垣間見ることが出来た。虞美人にとってマスターはカルデアでの"後輩"にもなるため、サーヴァントという主従関係には非ず、もっと近しい関係を築くことが出来ているのかも知れない。
『物言わぬ命、あるがままの姿で刹那の春を謳歌する者たち。そういう在り方は愛おしいわ。終わりなき命の連鎖……私は"傍観者"にしかなれないけれど』
彼女は普段の人間に近い感性から来る少し荒っぽい言葉とは違う、無限に等しい時を強制的に生きねばならない人外であるが故の諦観や憂いを含んだ、理知的な言の葉を紡いでいた。実際に虞美人は有名な詩を残していることからも、高い教養を持った文化人であることが伺える。
命の連鎖の中に彼女自身は入っておらず、周囲の動植物から命を吸収するだけの『奪う側』でしかない。刹那の春を謳歌する者の中に虞美人は含まれていないため、完全なる常識や規範の外側にいる存在なのだ。
悲しそうな表情を浮かべる虞美人が紡いだ言葉には、生命の輝きへの愛おしさや羨望が含まれていた。そして、変えようも無い前提として命の連鎖の中に存在しない彼女は、自分が蚊帳の外にいることへの"寂しさ"も滲ませている。
――それはきっと、彼女が"孤独"であることの表出だったのだろう。
星の意思から生み出された『受肉している精霊種』である虞美人に寿命は存在しておらず、誰にでも訪れる筈の"死"という概念が無かった。死にたくても死ぬことすら出来ない不死身であるがために、星の終わるその時まで生きなくてはならないのだ。
彼女は正真正銘の不老不死であるがために、創作上の存在では無い本物の"吸血鬼"に近しかった。
人類が長い歴史の中で想像する吸血やニンニクが苦手などのイメージという"歪み"に影響されていない彼女は、完全な"真祖"と呼ばれる者と酷似している。実際にはそれとはまた別種の存在ではあるのだが、成り立ちや生態が非常に似通っていた。
虞美人はただ永劫の時を生きる中で、出会いと別れを無数に繰り返している。
因みに吸血鬼で有名なブラド三世やカーミラは、無辜の怪物という民衆のイメージによって歪められていた。大抵のサーヴァント達は自分を歪められることに対して、溶岩のような熱く煮え滾った怒りや海よりも深い悲しみを覚えている。
そういった民衆の思いによって歪められた英霊の中には、願望器である聖杯を使用してでも、民衆の抱くイメージを変えたいと思っている者もいる程であった。
そんな人々の思いによって作られた吸血鬼とは根本から異なり、誰に歪められることの無い虞美人は本当の意味で"独り"なのかもしれない。きっと彼女の理解者は何人か居た筈なのだが、長い歴史の中で死に別れしてしまったのだ。
生物は生きる上で寿命に勝てる訳も無く、別れというものは必ず訪れてしまう。
虞美人が紡いだ言の葉は紛うことなき本心であり、少なからず契約を結んだ"マスター 藤丸 立香"に対して、少しばかりでも心を開いたからこその言葉であったのかもしれない。彼女は戦いの中で『殺されたぐらいで死ねるとは……幸せ者め』と、ぼそりと実感の籠った言葉を呟くことがある程である。
それを間近で見聞きしていたからこそマスターは、虞美人の孤独を癒せればと思ったのだ。
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人理保障継続機関 カルデアに所属していた"芥 ヒナコ"と、四面楚歌で有名な■■の愛人や妻であったと歴史上で伝えられており、ヒナゲシの別名である『虞美人草』の由来となった"虞美人"は、過去と未来ではあるが完全な"同一人物"であった。
時系列的には芥 ヒナコが過去の存在であり、サーヴァントとなった虞美人が未来に当たる。
説明すると少しだけややこしい話になってしまうのだが、精霊や星の触覚に近い存在である虞美人が、現代社会に溶け込むために使用している偽名が芥 ヒナコなのだ。
因みに芥 ヒナコの偽名の由来は、雛芥子(ヒナゲシ)のアナグラムである。
一般人を装う時には無口で本好きな"フリ"をしているのだが、実際には本は視線で追っているだけであり、代わりに他人を注意深く観察しているだけであった。長い時を生きる中で人々に騙されたことも数え切れない程にあり、次第に不信感を覚えるようになったのも自然な流れであるのだろう。
人間不信にも近しいために虞美人は、人を信用することが出来ていないのだ。
彼女がカルデアのマスター候補生となった経緯は、"オルガマリー・アニムスフィア"の父親でもあり、カルデアの前所長でもある"マリスビリー・アニムスフィア"が、芥 ヒナコを名乗り技術職として働いていた虞美人を推薦したという流れがあった。
存在自体が人類に推し量れ無い彼女が、マスター候補生の中でも精鋭である"Aチーム"に選抜されたのは当然のことである。
マリスビリー・アニムスフィアに関しては、未だに謎も多い人物ではあるのだが、芥 ヒナコの正体に気付いていたのは間違いない。実際に虞美人も『思い返せば、そもそもマリスビリーなんかの誘いに乗ったのが、大間違いだったのね』と、語っていることからも察することが出来る。
本来ならばマスター候補に選ばれたからと言って、それに従うような彼女では無かったのだが、"叶えたい願い"があったがために、カルデアのマスターになることを承諾したのだ。見方によっては人の弱みに付け込んでいるため、その提案をした人間は腹が黒いのかも知れない。
それ故にマリスビリー・アニムスフィアの誘いにも、乗ってしまったのだろう。
芥 ヒナコを含むカルデアAチームのメンバーが、人理修復後に"クリプター"となる契約を行い、異星の神と呼ばれる"モノ"の命令に従い汎人類史を白紙化し、正史から外れた異聞帯を作成するよりも"過去"に、虞美人はサーヴァントとして召喚されたのである。
――それが神の気まぐれによる悪戯であったのか、それとも彼女の運命だったのかは分からない。
一つだけ確かなことがあるとすれば、召喚された当時の虞美人は自分の不運を呪っていた。
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マスターの鼓膜を潰す程の大声を上げた虞美人は、カルデアで居心地の悪い生活を送っていた。
明らかに面識のある"ロマ二・アーキマン"や"レオナルド・ダ・ヴィンチ"、"マシュ・キリエライト"から、訝し気な表情や鎌掛けのような質問を投げ掛けられるという、鬱陶しいとすら感じる日々を過ごしている。
半ば虞美人と芥 ヒナコは同一人物であることが、周知の事実となってしまっているのだが、彼女は沈黙を貫き続けていた。本人も自分がどう行動するべきか分かっておらず、迷っているというのが現状である。
やろうと思えば憎きカルデアを滅ぼすことも容易いのだが、それでは自分の夢が叶うことは無いのだ。■■との再会を果たすためにも、虞美人は複雑な心境の中で生活を送っている。しかし、理屈と感情は別であり、感情がささくれ立ち荒ぶっているのは間違いようが無い。
自分を英霊になることを勧めた"始皇帝"に対して、恨み節の一つでも吐きたい気分であった。
■■が英霊の座に登録されるためには、虞美人が英霊となる必要があり、もしかすると再開することが出来るかも知れないという口車に乗せたのが、他ならぬ異聞帯の王たる始皇帝である。結果的に彼女は、"過去のカルデア"に召喚されてしまったのだ。
もしかすると虞美人が始皇帝を恨んでいるのは、逆恨みとは言い切れないかも知れない。
きっと張本人である始皇帝が、彼女の英霊になった"その後"を知ったのだとすれば、『ハハっ、それは如何に朕であれ、予想することが出来なかった。朕の顔に免じて許せっ!』と、虞美人に笑い掛けながら受け流しているのは、想像に難くない訳だが……少なくとも謝ることは無いだろう。
そんな悶々とした日々を過ごす彼女が一番接しやすかったのは、意外なことに宿敵と言っても差し支えない"藤丸 立香"であった。彼は色々と怪しまれている虞美人にも普通に接しており、一人の英霊として彼女を尊敬しながら、頼れる味方として接していたのだ。
マスターが善にも悪にも寄り過ぎず、中庸であるがために虞美人とも話すことが出来た。
自分の大切な人である■■を倒した張本人であるのだが、それが未来の出来事であるがために、憎み切れないという側面もあったのだ。何より彼の人に好かれ易い柔和な性格もあるからこそ、いつまでも怒りというモノが持続しなかった。
そして何よりも、多くの重圧の中で必死に努力するマスターに対して、怒れる程に彼女は鬼では無かったのだ。傍から見ても彼は、生き地獄の渦中にいた。
過去に来たのだから当然のことではあるのだが、未だにカルデアは人理定礎を破壊し人類史を焼却した"魔神王 ■ー■ィ■"との戦いの最中である。"人類最後のマスター 藤丸 立香"は、未熟な部分が目立つ半人前であった。
彼は数か月前までは一般人であったのにも関わらず、世界を救うという重責をいきなり与えられ、心身共にボロボロになりながらそれでも前を向いている。生傷が絶えない日々を送りながら、力を貸してくれる英霊のために心を砕いていた。
心身共に擦り減り摩耗しながらも、マスターの責務を果たそうとする彼自身は、痛々しいという感想が出るのも仕方の無いものである。さながら彼は人類を救うための奴隷であり、虞美人が同情するのも仕方無かったのかも知れない。
彼女は不服という態度を取りながらも、マスターに力を貸すようになったのに時間は掛からなかった。
―――――――――――――――――――――――――――――
『虞美人……ありがとう。力を貸してくれた皆のお陰で、人理の修復が出来たんだ……本当にありがとう』
『――――ッ、ふんっ! アンタも……凡人なりには頑張ったんじゃない』
ボロボロな状態でベッドの上に寝たきり状態なマスターに対して、虞美人はそっぽを向きながらも彼を労っていた。
彼は全身に包帯を巻きながらも、晴れやかな表情で笑っている。それもその筈、一年以上にも及んだ世界を救うという重責から解放されたのだ。晴れやかな表情になっても、仕方の無いことだろう。
それも本来ならばロマ二・アーキマンという"犠牲"が出ていた戦いだったのだが、愛の成せる奇跡であったのか、それとも本気になった"万物の天才"が凄まじかった。"魔術王 ■■■■"は座から完全に消滅したが、彼との間に宿った子供との"縁"によって、ロマ二・アーキマンは完全な消滅を免れたのだ。
"花の魔術師 マーリン"や"人類最古の英雄王 ギルガメッシュ"が腹を抱えて笑う程の奇跡であり、本来ならばあり得なかった大円団であった。犠牲も無いままに大義を遂げられたのだ、マスターが清々しい表情を浮かべてしまうのも仕方ないことだろう。
ずっと張り詰めていた糸が弛んだような状態である彼は、どこか遠くを見るような視線を天井に送りながら、独り言のように感慨深そうに呟いた。きっとマスターが見ているのは、これまでの思い出である。
『今まで何回も死を覚悟したことはあったし、痛いことや辛いことも沢山あったんだけど、世界を救えたんだって思うと……あの旅も悪くなかったと思えるんだ。――正直、旅の途中は何度も自分以外に"誰か"いないのかなって、ありもしないことを考えてたんだけどね』
人理修復中には絶対に口にしなかったマスターは、今だからこそ弱音を吐いている。
最後には魔神王 ■ー■ィ■改め、人王 ■ー■ィ■と意地の張り合いのような殴り合いまでしながら、ギリギリで生き残った彼は、生きてることが不思議な程に全身がボロボロであった。多数の骨折や捻挫、打撲は可愛らしいものであり、筋繊維の重度の断裂や神経がズタズタであるのだ。
非道な事かも知れないが決戦礼装は、着用者が"死んでも構わない"作りになっており、人理を修復さえ出来れば良いという設計である。結果的にマスターの神経や内臓は焼かれ、全身の穴という穴から出血する事態にまで陥った。
カルデアに戻った今も寝たきり状態でいるのは、その後遺症と治療のためである。
そんな大怪我を負いながらも幸せそうに微笑む彼を見て、虞美人の心はズキリと切り裂かれたかのように痛んでいた。一年近い時間を共に歩む中で、彼女のことを『虞美人』と呼ぶことを許すまでに、マスターとの絆も深まっている。
これから"過去の自分"がもう一度マスターに世界を救う重責を負わせると思うと、どうしようも無い位に罪悪感が押し寄せて来るのだ。しかし、彼女にとって最愛の■■との再会は、文字通り世界を敵に回しても叶えたいことである。
彼に聞こえない位の小さい声量で、虞美人はボソッと呟いた。
『……恨んでくれて構わないわ』
『何か言ったかな?』
彼女の呟きを聞き取れなかったマスターが聞き返そうとするが、虞美人は『何でもないわ』と、話を強制的に終わらせた。そのまま後ろを向いて部屋から出て行こうとするのだが、虞美人が浮かべている表情は悲し気なものである。
――マスターは未だ彼女の目的を知らないままであり、二人が本当の意味で心を交わすようになるのは先のことであった。
―――――――――――――――――――――――――――――――
「――んぁっ♡ せっ、折角シャワー浴びたのにぃ……っ♡♡ ぁっ♡ ぁひっ♡♡ もっ、もう朝よっ♡♡♡ いい加減に――んむっ゛♡♡ ちゅ……ちゅるるぅ……っ♡♡♡ バカぁ……っ♡♡♡ ン゛むっ……じゅるる♡♡ ――ちゅぅ……♡♡♡」
シャワー室で汗を流しながらまぐわっていた虞美人とマスターは、その後に繋がったまま部屋へと戻ることになった。彼女も言うようにシャワーを浴びた後でもあるのだが、結局はベッドの上での性行為に戻ってしまう。
それに対して文句を言おうとするのだが、彼に瑞々しい唇を奪われている。
満更でも無い虞美人は流されるままに、侵入してきたマスターの舌の動きに応えるように動かす。唾液を啜るような水音が室内に響き、彼女の膣孔を満たしているペニスが上下の腰の動きに合わせ、柔らかな膣肉や絡み付く膣襞をゴリゴリと抉っている。
「ぢゅるるるっっ゛♡♡ ちゅぅ……ぢゅるるっ♡♡♡ ちゅるる――ぷはッ♡♡ はぁっ……はぁっ♡♡♡ こっ、後輩の精液でいっぱいよ♡♡ んぅ……っ♡ まだシ足りないなんて……サルなんだからぁっ♡♡♡ んひっ♡」
蜂蜜のようにトロトロに蕩けた甘い声で、虞美人は形だけの文句を口にする。
その証拠と言っても過言では無いのだが、彼女の細くスラっとしているのにムチムチとした両脚をマスターの腰に巻き付けていた。体勢によっては"だいしゅきホールド"と呼ばれるモノであり、少なくとも好意を抱いていない相手に出来るものでは無い。
何度も濃厚な精を注がれている虞美人の子宮は、まるで水風船のように膨らんでおり、誰のモノであるかを理解させるようにマーキングされていた。避妊を全くしていないがために、子宮や膣孔全体に濃厚な雄の精が塗り込められている。
彼女の絡み付き締め付ける膣の感触を楽しむ腰の動かし方をしており、互いに快感を与えあうようなものでは無い。しかし、虞美人にしてみればポルチオ性感帯を亀頭で刺激されているので、気を抜けば直ぐにでも絶頂してしまいそうな状態である。
潤んだ朱色の瞳を見詰めるマスターは、もう少しセックスを続けたいと口にした。
「本当は終わらせたかったんだけど、まだ赤ちゃん出来て無いから……もう少しだけ、頑張ってみませんか? 俺は大好きな先輩との子供が欲しいです」
「~~~~~~~~~~っっっ゛♡♡♡♡ ぅっ♡ ばっ、バカバカっ♡♡ バカぁ……っ♡♡♡ んひっ♡♡ かっ、勝手にすれば良いじゃなぃ……っ♡♡♡ ぁんっ♡♡ ぅっ、産んであげるから、さっさと孕ませなさいよ……っ♡♡ ぁひ――っ♡♡♡」
耳の先端まで熟した林檎のように真っ赤に染める虞美人は、彼の胸板にグリグリと額を押し付けながらもセックスを受け入れてしまう。
今も白い腹部を精で膨らませている彼女を傍から見れば、妊娠していないという方が不思議な状態に感じるだろう。マスターは性行為の際に虞美人に孕んで欲しいと口にしており、彼女も口にはしないが彼との子供を望んでしまっている。
もしかすると一日中まぐわってもマスターが満足していないのは、未だに受精しない虞美人への欲求不満にも似た思いから来るのかもしれない。実際に彼女の孤独を癒したいと彼は思っており、そのこともあって二人の"愛の結晶"や"繋がり"である子供を欲しているのだ。
愛しているの意味を持つ額へと口付けを一つ落としたマスターは、真っ赤に染まった虞美人の耳元で囁いた。
「――ずっと一緒ですからね」
「んひッ~~~~~~~~~~っっっ゛♡♡♡」
その彼女が心の底から望む言葉によって、精神的な幸福感からの絶頂を迎えてしまう。二人は甘ったるい交尾に耽りながら、この性と愛に溺れるような"妊活"を行っている。
――虞美人の精に膨らむ子宮が、キュンキュンと疼いていた。
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