※この作品はR-18です。

オルタはお嫌いですか?   作:濁り丸

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番外編:最強種は屈服を覚える-1

 ――これは"星に帰り損ねた竜"が最期を迎えた後、無の海を飛び続けた後の"夢物語"である。

 

 

 虹色に光り輝く召喚サークルの中心から、目も開けていられなくなる程の眩い光と共に、近代的にも感じられる蒼を基調とした甲冑を身に纏った白髪の少女が現れた。伊吹童子やヴリトラのような人外特有の雰囲気を醸し出している彼女は、見た目だけなら華奢で可愛らしい容姿をしている。

 

 その可愛らしい容姿に加えて、身長も小学校高学年程度しか無いため、庇護欲と呼ばれるものを掻き立てるのだろう。それはウサギやハムスターのような小動物に抱く感情と、非常に良く似ているのかも知れない。

 

 少女はその特殊な誕生や経歴から合計で"三つの名前"があるのだが、今の鎧を身に纏った彼女は"妖精騎士 ランスロット"の名を名乗るのに相応しい出で立ちであった。素人目にも一点物だと判別の出来る蒼色の鎧が、与える印象も大きく影響しているのだと思うが、可愛らしい容姿の少女に凛々しさのようなものを感じてしまう。

 

 流線形の鎧の上からでも分かる細くしなやかな両腕には、小楯のような武装がそれぞれ取り付けられているのだが、これは彼女自身の"魔力"や"外皮"によって作られた"アロンダイトの鞘"である。少女が両手に装備している"二つのアロンダイト"は贋作である。

 

 正式な武装の名前も『妖精剣アロンダイト』であり、本物の所有者である"円卓最強の騎士 ランスロット"の名前を"妖精國の女王 モルガン"から拝命したからこその"仮の宝具"なのだ。本物よりも威力が低い分、手数と小回りが利く射撃武器のような剣である。

 

 

 ――彼女に円卓最強の騎士の名前を授けたモルガンとしては、最強の騎士という意味も確かにあるのだが、"悪い意味"でもランスロットに似通っていると思い拝命させたようだが……

 

 

 汎人類史とは違う歴史を辿った閉ざされた世界――異聞帯 妖精國に於いては、ランスロットの名を拝命した少女だが、実力では正史の円卓最強の騎士に劣らないどころか、お世辞を抜きにして数多の英雄達の中でも一、二を争う強さを誇っている。

 

 それは彼女という存在そのものが、人間とは比べものにならない程の"神秘"を秘めているからだろう。

 

 "世界を滅ぼす獣 ビースト"を倒すための抑止力が遣わした英霊――"グランドサーヴァント"と呼ばれる通常のサーヴァントよりも霊基の格が違う存在と比較しても、少女は存在する世界そのものが違うかのようであった。

 

 一般人にも分かり易いようにたとえ話をするならば、少女は最新鋭の戦闘機のようなものであり、刀や槍を持った武士が一般的なサーヴァントである。戦えばどちらが勝つかは火を見るよりも明らかであり、そもそも戦う土俵からして違っているのだ。

 

 

 ――それでも彼女と対等な勝負の出来る人間種のサーヴァントが複数存在しているのは、彼らが未来に於いても英雄と呼ばれる所以なのだろう。

 

 

 そんなある意味で生まれる世界観すら間違っていそうな強さの少女は、瞬時に自身の置かれた状況を理解した。本来ならば有り得なかった"夢の続き"を見せてくれる黒髪の青年を見詰めながら、凛とした鈴の音のような美しい声で、ようやく得た自分の意思を持って名前を名乗る。

 

 

『僕……いや、私は"メリュジーヌ"。異聞帯ブリテンにおいて最強の妖精騎士と言われた者』

 

 

 元の"個体名"や授かった"騎士の名前"とは違うものであったが、少女は呼んで欲しいと思える"大切な名前"を口にした。一人称も公人として使用していた『僕』から、自分の意思を持った私人としての『私』を使っている。

 

 彼女が口にした『メリュジーヌ』とは、史実では人間と妖精のハーフである。

 

 妖精である母親に『土曜日になると半身が蛇や竜になる呪い』を与えられ、変身する所を見られると永久に戻れなくなる使命を背負わされた妖精だ。史実で語られるメリュジーヌは、人間の男性と恋に落ち、一人の子を授かったとされている。

 

 まだ世界を飛び続けることを出来る喜びを噛み締めながら、彼女はサーヴァントとしての生き方に思いを馳せるのだ。

 

 

 竜でも無く、騎士でも無く、妖精でも無い――自由な生き方を。

 

 

『……そうか。朽ちていくだけの私でも、 サーヴァントとしてなら君の役に立てるんだな。……うん、とても嬉しい。たとえ一時の夢であっても、私の翼は君のために羽ばたかせるよ』

 

 

 その後、メリュジーヌは史実に於いて、ハッピーエンドとバッドエンドのどちらかの未来を迎えるのだが、二つの内どちらが"オリジナル"であるのかは不明である。

 

 

 ――メリュジーヌを名乗る少女が、どちらの未来を辿るのかは未だ分からない。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 ――境界の竜 アルビオン

 

 

 神秘に溢れていた神代が終わろうとしていたその時、最期までブリテン島に残ろうとして死滅した幻想種。その遺体は汎人類史に於いて、"人類最後のマスター 藤丸 立香"が生きる現代では、魔術師達の総本山――時計塔の地下に拡がる"霊墓アルビオン"の礎となっており、最後の"純血たる竜"である。

 

 現代に於ける『竜』と呼ばれる存在は、世界の裏側に移動した竜種たちの残した"竜の因子"が付着し、それぞれの生態を維持したまま"竜に近い生態"となった生物である。勿論、その竜に近い生態となったものは、そこらの人間の手に負えるものでは無いのだが、オリジナルとは比べることも烏滸がましい。

 

 

 それらの竜の因子の大本となった存在が、他ならぬ"境界の竜 アルビオン"なのだ。

 

 

 竜種における冠位と呼ばれる原種であり、地球が誕生した時から"存在していた"のであれば、四十六億年近い生命情報を持っていたこととなる。人間の認知によって象られた神、信仰によって発見された神とは全くの別種、アルビオンとは原初の超存在なのだ。

 

 汎人類史において多くの竜種が神代の終わりを予見した時、幻想が失われる前に世界の裏側へ移動する中、何らかの理由でアルビオンは世界の表側に長く留まっている。汎人類史のアルビオンが何故、幻想の失われる世界に留まろうとしたのかは、今となっては知る者は一人としていない。

 

 結果的にアルビオンは、世界の表側に自分が存在が出来ないことを受け容れ、世界の裏側へ移動しようとしたのだが、その時には既に世界の裏側へと移動するための"孔"を穿ちようがない程に、世界の神秘は衰退しており、既に転移が不可能な状態となっていた。

 

 神秘が薄れていく世界で、原初の竜が取り残されたのだ。

 

 それでもアルビオンが諦めることは無く、『神秘による転移ができないのなら、物理的に移動する』と神秘の残る地底へと潜っていき、最期は地中深くで力尽きたのだ。比喩抜きに山にも匹敵するその遺骸は、やがて地中のうねりによって幾つにも引き裂かれ、元から巨大だった身体を更に大規模にした迷宮となった。

 

 これが汎人類史に於ける、霊墓アルビオンと呼ばれる場所が誕生した経緯である。

 

 時計塔が霊墓アルビオンの上に建築されたのは偶然などでは無く、この巨大竜種の遺骸という最大級の神秘が埋まっていたからこそ、意図してその上に魔術協会の総本山が建てられたのだ。ダンジョンと化した霊墓の中では、地上では失われた神秘が色濃く残っており、竜種の牙や純度の高い霊石といった現代では得られない貴重な呪体が数多く眠っている。

 

 

 

 ――ここまでは汎人類史での、アルビオンが辿った顛末である。

 

 

 

 汎人類史とは異なる歴史を辿った世界――異聞帯 妖精國に於いては、『北の妖精』達の大地である湖水地方の森となっていた。

 

 妖精達からは『境界のアルビオン』と呼ばれており、遺っている巨大な竜骨が失われると湖の栓が抜けて湖水地方一帯が海に戻り、地上と霊洞の境界が無くなってしまうと伝えられている。それだけなら汎人類史のアルビオンと違いは殆ど無いのだが、異聞帯のアルビオンは朽ちる前に自らの"左腕"を切り離していた。

 

 切り離された左腕は湖の中で動くことすらないまま、ただの黒いアメーバ状の肉塊でしかなかった。しかし、そんなものに興味を抱いて唯一自分に近付いた"誰よりも純粋だった妖精"を参考にすることによって、原初の竜の細胞塊は"竜の妖精"へと変性したのだ。

 

 それこそがカルデアに召喚されたメリュジーヌの"正体"であり、汎人類史の伝承"異類婚姻譚"の妖精の名をアルビオンが名付けされた経緯である。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

『弱い生き物は強い生き物に従う──のは、当たり前の話だと思うけど……。生存競争をしているわけでもないんだし』

 

 

 これは世界が神秘に溢れていた神代の頃の原始的な考え方であり、それが当然のことであるかのようにメリュジーヌはマスターに話していた。種族としての違いやこれまで自分の意思を持たずに、妖精騎士として生きていたことが原因であろう。

 

 通常の人間や動物達とは異なっており、彼女は個だけで成立する生物であるが故に、他者と群れる生き方がそもそも不得意なのだ。生まれながらの強者であったがために、強き者に弱者は従って当然だと考えている。

 

 実際に彼女が自分のことを地球最強だと自負しているのは、増長などでは無く純粋な事実である。

 

 それ故に相手を見下すような態度を無自覚に取ってしまうことがあり、相対した者からは冷酷で傲慢な性格をしていると誤解されることが多かった。その上で会話をしている時に、自らの出自に関して必要以上に喋ってしまったり、正論で説き伏せられると拗ねて退却したりと、他者との距離感も測り損ねることが多い。

 

 人間社会という枠組みに当て嵌めるならば、メリュジーヌ本人も自覚している程のコミュ障であり、人理継続保障機関 カルデアに来てからは、自分の思いや考えを伝えることを苦手としている自分を改善が出来るようにと努力しているのだ。

 

 まだまだ一般常識について勉強中の彼女だったが、自分に対して優しくしてくれるマスターに対して好意を抱くようになり、絆を深めていく中で自分の中で最大限の"妥協"をした。それはメリュジーヌなりに彼の思いを酌んだ結果であり、相手のために自分の気持ちをほんの少しだけだが我慢したのだ。

 

 しかし、元が尊大で横暴な竜種の源流であるがために、人間から見れば妥協しているのかが分からない所が種族としての違いなのだろう。

 

 

『君から見て、私は凛々しいんだ。そっか。……なら、その期待に応えないといけないね。本当のところ、自分でもなんていうか……私は孤独に弱くて、自信が無くて、君の顔を一日二十四時間は見ていたくて、放っておかれると、カルデアを焼き尽くしたくなるけど……うん! 私は君が誇りに思うサーヴァント! だから、『我慢して』君の一番であり続けるよ』

 

 

 本人的には直ぐにでもマスターを"世界の裏側 アヴァロン"へと拉致・監禁を行い、彼の優しさを独占するだけの生活を送りたかった。心根の優しいマスターのことを一日中ダラダラと見詰め続け、彼には自分のことだけを考えていて欲しいのだ。

 

 自分自身で言っているように『孤独に弱く』寂しがり屋な彼女としては、冗談を抜きにしてマスターと一緒に居られる時間を強制的に削ってくるカルデアでの生活を許容していることは、メリュジーヌなりの最大限の我慢をしているのだ。

 

 

 ――しかし、彼女には一つだけ大きな見落としが存在していた。

 

 

 あくまでもメリュジーヌがカルデアでの生活を我慢出来ているのは、彼にとっての"一番"が彼女自身であると言う前提があってこそなのだ。万が一にもマスターに自分以外に愛している女が存在すれば、先程の言葉通りにカルデアを焼き尽くし、彼のことを誰にも邪魔されないアヴァロンへと拉致する可能性が高い。

 

 この時点でカルデアの内情について詳しくなかったメリュジーヌは、マスターにとっての一番が"他に沢山いる"ことを知らなかった。多くの女性と性的な関係を持っており、既に彼との子を孕んでいる女性も複数人いる。

 

 それは汎人類史に於ける円卓最強の騎士 ランスロットが、アーサー王の妻であるグィネヴィアを奪い取り、逃走の際に円卓の騎士を殺害した時と同じように、カルデア崩壊の切っ掛けとなってしまうだろう。

 

 

 ――メリュジーヌがマスターの"浮気"を知るのに、時間はそう掛からなかった。

 

 

「ふーん……君には私だけを見ていてくれるように、"お仕置き"をしないと……ね」

 

 

 初めての"嫉妬"という感情を覚えながら、複数の女性達と楽し気に話している彼のことを見詰めるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 ジャラ……

 

 

 金属同士の擦れる音が鳴り響き、マスターは自分の上に"跨る"メリュジーヌに声を掛ける。

 

 

「――メリュジーヌ……この手枷は何かな?」

「ふふっ、それは私の愛だよ」

 

 

 いつもとは違うどこか妖艶な笑みを口元に小さく浮かべる彼女は、視線だけでこの手錠を外す気は無いと告げていた。

 

 彼からすれば本当に一瞬の出来事だったのだが、通路を歩いていると風よりも速い速度で連れ去られ、気が付けばベッドの上で手首を革製の手錠で固定されていた。革製の手錠は金属製の鎖を用いてベッドへと繋がれており、一般人であるマスターでは逃げられる可能性は殆ど無いだろう。

 

 頼みの綱である令呪も規格外な存在であるメリュジーヌに対しては、今の危機的状況を打破するだけの効果があるとは思えなかった。後は誰かの助けを待つしか無いのだが、そこら辺は彼女も想定して対策しているだろう。

 

 それに本気になったメリュジーヌに暴れられれば、新生カルデアは壊滅的な被害を被るだろう。ただでさえ最近は、虫を怖がったモルガンによる破壊活動があったのだ。資源に限りがある今の状況では、極力穏便に済ませる必要があるだろう。

 

 色々な考えを巡らせているマスターに対して、自分以外のことを考えていることにムッとした彼女が右手の人差し指を動かし始める。彼の厚い胸板に指先で円を描くように動かしながら、彼女は自分がマスターを拉致・拘束した目的を告げる。

 

 

「私のことよりも他の女のことを優先する君に、私という存在を刻み付けながら……もう浮気が出来ない位に、"お仕置き"をするんだっ♡♡ ちゃんと私"だけ"を愛するって約束するまで、ここからは帰さないからねっ♡♡♡ ――はむっ♡♡」

「んっ……」

 

 

 彼女にされるがままであるマスターの口から、小さな呻く声のようなものが漏れる。

 

 メリュジーヌは男らしい太めの首筋に甘噛みを行い、彼が自分のモノであると主張するように歯型を付けてマーキングをした。マスターの鼻腔には彼女の白髪から漂う甘い香りが入り込み、オスとしての本能を否応無しに刺激されてしまう。

 

 小振りだがハリのある美尻の下で、彼の長大なペニスに血流が集まっていく。その感触を確かに感じ取りながら、メリュジーヌはゆっくりと甘嚙みしていた首筋から口を離した。

 

 

「んっ♡ ――はぁ……っ♡♡」

 

 

 彼女の歯並びの良い歯形がしっかりと綺麗に、マスターの首筋には赤い痕となって残っている。そのマーキングの痕を見たメリュジーヌは、背中にゾクゾクとした快感が走ってしまう。それは動物的な衝動である征服欲が満たされた快感であり、彼女は仄暗い悦びを確かに感じていた。

 

 メリュジーヌは華奢な肩をブルリと一度だけ震わせた後に、マスターの耳元に瑞々しい桜色の唇を近付けて囁く。

 

 

「……私でしか気持ち良くなれなくしてあげるッ♡♡♡」

 

 

 




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