幼馴染を忘れられなくて童貞34年極めたらリア充になれた話 作:味噌村 幸太郎
「あのオヤジ! 最後の一言が余計だろうが……」
別れ際「兄さんも童貞早く捨てろよ」とか言いやがるもんだから、家族で爆笑しやがった。
しばらく店のいいネタになるのだろうか。
「まあまあいいじゃないか」
代行タクシーの中、愚痴を言う。
「お客さん。風俗でも行きますか?」
タクシーの運転手にまで言われる始末。
「いや、いいですよ。最初に言ったマンションに向かってください」
「そうですか? 私も風俗がやめられなくてね~ 今年で還暦なのに」
男ってこんなに風俗行くものなんですか?
ということは死んだうちの父も、ヘビーユーザーだったのでしょうか?
「いいことじゃないですか? 僕はやっぱりアナルプレイが……」
イッチーの性癖に運転手が食いつく。
「お客さんもアナルですか!? いや、私もアナル大好きでね! 家内が嫌がるもんだから、風俗でやってみたらそりゃもう!」
「僕もですよ! 嫁さんが妊娠してからつわりがひどくて、ずっと出来なかったから、ちょっと通いだしたらそりゃもう!」
さっきの感動の話はどこいったよ。
「もうアナルはいいよ。イッチー」
「ええ! いいとこだったのに!?」
お前はどんだけアナルが好きなんだよ。
「どこがいいんだよ、どこが!? 台無しだよ」
「お客さん、今度、私がいい店を紹介しますから一緒にいきましょう」
お前も黙れ。
「ですね!」
ですね、じゃないだろ。
もうどうにでもなれ。
しばらくすると車は高層マンションの前で止まった。
「うわぁ……いいとこ住んでんな」
30階建てのタワーマンション。
登るのがちょっと怖い。高所恐怖症ではないんだけど。
「まあアニメ化も決まったしね」
さらっと金持ち臭を出すな!
オートロックの玄関を通り、最上階だと言うのにエレベーターはとても短い時間で着いた。
「はやっ!」
カーペットが引かれた廊下は、まるでホテルのようで、そこをまっすぐ歩くとイッチーの家はあった。
「さあ入って、子供が寝てるかもしれないから、静かにね」
静かにねって……今、夜中だぜ?
玄関に入って靴を脱ぐと、廊下の向こうにある居間のドアは閉まってはいたが、明かりがついていた。
「あれ? 起きているのかな?」
扉を開けるとソファで20代後半ぐらいの女が、恥ずかしげもなく乳を放り出して、赤ん坊にくわえさせていた。
嫁さんはショートカットで、眉毛は太め、目はイッチーほどではないが細め、鼻は小さくて丸い。唇は小さいがふっくらしている。
顔を見る限りでは優しそうな奥さんだ。
体格はけっこうムッチリしている。
そんなに美人ではないが、一発ヤるだけならお願いしてもいい。
って俺は何を考えているんだ。
嫁さんは、寝ている赤ん坊と同じく、うつらうつらしていた。
赤ん坊がいるからだと思うのだけど、乳がグラドルなみにデカい!
俺も吸ったり揉みまくりたいしたいな……。
って、人様の嫁さんでまた俺は。
「あ、海人くん。おかえりさない……」
寝ぼけているのか、目が完全に開いてないのか、俺の存在には気がついてない。
だが、数秒後。
「イヤーー!」
予想通りのリアクションだな。
俺にビックリして、放り出していた乳を急いで隠したもんだから、赤ん坊の口から乳首が外れ、泣き出してしまった。
というか、乳首ピンクだったな。うまそう♪
「驚くなよ。言ってただろ。友達のヒロちゃんだよ?」
そりゃ無理ってもんだ。
それにはお前は、友達とはいえ、嫁の乳を見られて嫌じゃないのかね?
「あ、こ、こんにちは……」
ぎこちなく会釈をしてくれる。
ひいとるがな。
「あ、こんちわっす。あの、いきなり来てスンマセン……」
俺もあいさつが、ぎこちない。
「僕が悪いんだよ、ハハハ!」
ハハハじゃねーよ、全く。
顔を真っ赤にして泣きまくる赤ん坊を抱いて、急いで隣りの部屋に去っていった。
「とりあえず、ビールでいい?」
冷蔵庫から見るからにキンキンに冷えたビール缶を2つ出す。
「まだ飲むのかよ?」
と言いながら、俺もテイクアウトした手羽先をテーブルに広げた。
「いやー、悪いね。ヒロちゃん。子供がいると女性もあんなオープンになりやすいからね、ハハハ!」
「笑いごとじゃねーだろ! 先に言えよ」
そして、また乾杯する。静かに昔話で盛り上がる。
しばらく飲んでいると隣りの部屋からイッチーの奥さんが出てきた。
「あ、先ほどはすみませんでした」
深く俺に頭をたれる。
「いやいや、こっちこそ、いきなり来て申し訳ないっす!」
「ハハハ!」
笑いこっちゃねーだろ。
奥さんの腕には、先ほど泣いていた赤ん坊が機嫌を直したのか、ニコニコ笑っている。
「お、泣き止んだか!? ヒロちゃん、せっかくだから抱っこしてくれよ」
唐突なリクエストにとても困った。
俺は妹に嫌がられて、未だに姪すら触ったことがない。
というか、俺は子供自体を触ったことがないのでは?
他人の子供をそんなにいやらしい目では……見てるか。
まあロリコンっちゃロリコンの気はあるんだよね。正直、生理さえ始まってれば、いくつでもいいのだろうか?
って、また脱線しちゃってた。
イッチーの子供は息子だからいいよな?
「俺なんかでいいの?」
「もちろんだよ! なぁ?」
嫁に視線をやるイッチー。
「もちろんですよ。なんてったって、名前を頂いたんですから」
は? はぁ!?
「名前を?」
責任重大ですぞ。
「はい、広さんの字ではないですけど、
悪いけど、どっちもどっち。
「おい……お前。こんなことまで隠してたのかよ?」
「え!? 言ってなかったの、海人くん!?」
俺と奥さんが詰め寄って、笑ってごまかすイッチー。
「アハハ、なんか言いづらくて。ごめんね~」
笑顔が妙にムカつく。
こいつ、殴ろうかな。マジで。
「まあまあ、さあ、僕ん家の博司を抱っこしてやってよ!」
イッチーは冷たい視線を無視して、奥さんから赤ん坊をとると、俺の腕へ優しく渡してくれた。
暖かい。
赤ん坊の体温って、こんなに熱いのもんなのか?
病気じゃないのか?
「お、おーい。もう1人のヒロシくん?」
俺がそう言うと俺の目を見て、大きな目でニッコリ笑った。
か、かわいい! かわいいな、おい!
これ、欲しいぞ。すごく欲しい!
「どちらかというと、奥さん似? だよね」
「はい。よく言われます」
苦笑いする嫁さん。
「僕に似なくて良かったよ。目が細くなるからね、アハハハ」
一理あるというか、それは断固として阻止しなくては。奥さんの遺伝子が強くてよかったな、おまえ。
「でも、私は海人くんに似てた方がよかったよ」
「まあまあいいじゃない、ハハ」
ノロケだしやがった。
赤ん坊は思ったより重く感じる。肩がこって仕方ない。
「ごめん、もういいよ。ありがと」
赤ん坊をイッチーに返す。
「え、もういいの?」
「うん、俺、正直初めて赤ちゃん抱っこしたし」
「そうなんだ……」
夫婦して俺を悲しそうな目で見つめる。
そんな目で、俺を見ないでくれるだろうか。