幼馴染を忘れられなくて童貞34年極めたらリア充になれた話 作:味噌村 幸太郎
結局どこにも行くあてがないので、古本屋でイッチーの書いたマンガを5冊買って公園のベンチで時間を潰していた。
公園といっても家から歩いて5分の場所だ。これで自立といえるのだろうか?
暇だな。
残金2500円。これでどう過せと?
おいおい、タンカきって初日からホームレスかよ。働くかな。
34歳からのアルバイトか、辛い……。
「俺もイッチーみたいにマンガ書くか!?」
いやいや、俺は昔から絵なんてヘタじゃん。
コンビニで弁当とお茶を買い、公園で食べ始める。
もう6月だと言うのに、夜の公園は冷えるな……。
ダンボール持ってこようかな? マジでホームレスのおじさんじゃん。
なぜか、1人公園のベンチで爆笑していた。
「やめてください・・・嫌です!」
どこかから若い女の声が聞こえる。
一旦、箸を止めて耳を澄ます。
「警察を呼びますよ! 私は絶対そんなのしません!」
「大丈夫だぎゃ! 金は弾むだぎゃ!」
うーん、なにこのAV的展開。
というか、「だぎゃ」? えーとどっかで聞いたな。
「もうしつこいです!」
「いいだぎゃ! おめぇなかなかの美人だぎゃ♪ さすが福岡だぎゃ」
なんだか段々、声が近づいてくるぞ。
やめてくれよ、人が食事中なのに。
「いや! だ、誰か助けてぇ!」
「や、やめるだぎゃ! 大声を出さんでくれだぎゃ! ご、誤解だぎゃ!」
二人が俺のベンチの前に来たところで、足が止まる。
女子高生がスーツを着たおっさんに口を手で押さえられ羽交い絞めにされている。
暗くて顔はよくわからない。
なんだなんだ? AVの撮影でもしてんのか?
近くにカメラをもったスタッフがいないか、辺りを見回す。
「た、助けてください!」
女子高生が俺に手を伸ばしている。
「え? 俺のこと?」
「そうです!」
「ご、誤解だって言ってるだぎゃ!」
なんなんだ? このコントみたいな展開は?
とりあえず、弁当にフタをして、割り箸を袋に戻す。
その間もずっと2人はもぞもぞしている。
ベンチからゆっくり立ち上がると指さして叫んだ。
「おい、おっさん! その子から手を離すんだ!」
うーん…我ながらこの棒読み……。
「いや、誤解しないでほしいぎゃ。私は風俗をやってるもんで」
「風俗……」
名古屋に行くときに夜行バスで会った『だぎゃだぎゃ』うるさい風俗店長か?
「ひょっとして、この店の?」
財布から以前もらったピンクのチラシを見せる。
「あー! そうだぎゃ! なんだ~! ウチの常連さんだぎゃ~♪」
「いや、以前あなたにもらっただけですよ…」
「そ、そうなのだぎゃ? 私はこの娘をスカウトしようとしただけだぎゃ」
いや、普通にダメだろ。
「だから私は最初から断っているじゃないですか! 警察を呼んでください!」
「何を言ってるだぎゃ? 合法的なスカウトだぎゃ?」
いやいや、女子高生を羽交い絞めにして、足をバタバタさせて、もがいとるがな。
あんた即効、逮捕やで?
「店長、スカウトしたらダメでしょ……だってその子は制服着ているし、普通に女子高生じゃないですか? 犯罪ですよ」
「ええ!?」
おっさんが公園の明かりがある方に、女子高生をズルズルと引きずっていく。
上から下まで眺めたあと、JKから手を離す。JKちゃんは咳をしている。
おっさんは女子高生と俺に向かって、勢いよく土下座した。おでこを地面にガンガン当てている。
「すまんだぎゃ! 今日はコンタクトしてなくて……許しくれだぎゃ!」
「わかってくれたなら大丈夫です、えっほえっほ!」
しばらく咳で話せない様子なので、俺が変わりにおっさんを叱った。
「店長、これに懲りたら早くとんこつラーメン食って、名古屋に帰りなさい!」
「ひい、でも、可愛い娘は自分で選びたいぎゃ……」
肩を落とす店長。
「まあとりあえず警察は呼びませんから…もう行っていいですよ」
「恩に切るだぎゃ! 名古屋にまた遊びにきたら一発無料にするだぎゃ」
一発無料に思わずちょっと股間が動いてしまったぜ。
JKちゃんの方に目をやると、相変わらず激しい咳をしている。
「だ、大丈夫!?」
背中をさすってあげたかったが、触ったら俺まで捕まりそうなので黙ってみていた。
「げほっげほっ! 大丈夫です、発作ですから」
発作? なんの発作なの?
女子高生はカバンから小さな筒状の容器を取り出すと蓋を開け、口に突っ込むと深く吸い込んだ。
なんだかおフェラしてる見たいでエロいな。
吸い終わると女子高生は息が整ったようで、俺に改めて頭を垂れ、礼を言った。
「あ、あの…ありがとうございま……」
と言い掛けたところで俺の顔をじっと見つめている。
「どうしたの?」
女子高生がハッとして、「すいません!」と謝る。
「あの……同じマンションの本田さんですよね?」
「え? 近所の子?」
女子高生の顔を俺もまじまじと見た。
目は大きな方だが、鼻は小さく、唇も薄く小さい。
眉毛はあまりいじってないのか、結構太いほうだ。
頬はまだ赤みが残っている。
紺色のセーラー服に白いカーディガンを着ている。
俺がずっと見ていたせいか、恥ずかしがって目をそらした。
「ああ! お隣の・・・」
俺が名前を思い出せず、考えていると変わりに答えてくれた。
「
あすか……あすか!?
おいおい、なんでこんなにも偶然が重なるんだよ?
「あすかって……・漢字ではどう書くの?」
なんとなく聞いてみた。
「あ、ひらがなです。うちの親がひらがなの方がかわいいって言うんです」
いや、知らんがな…。
でも、漢字じゃなくてよかった~。なんとなく……。
「あの……ここでなにしてたんですか?」
聞かれて返答にすごく困った。
家出というわけにはいかんしな。
「き、気分転換だよ、ははは。たまには外で弁当でもと思ってね」
俺の答えに首をかしげる、もう1人のあすか。
「あ、じゃあ、私もご一緒してもいいですか?」
満面の笑みで言う。
「え!」
や、やめてくんないかな。
まあこんな可愛いJKとご飯を食べたことなんてないから嬉しいんだが。
「いいけど……帰らなくて大丈夫なの?」
「はい!」
気持ちの良い声で返事する。よっぽど腹が減ってたのかな?
まあ10代の腹減り度は半端ないからな。
「じゃあベンチで食べよっか?」
「はい!」
俺は食べていたコンビニ弁当を。彼女はカバンから出した母親が作ったらしき弁当を。
34歳の家出おっさんと女子高生が仲良く夜の公園で仲良く弁当を食べるとは。
なんなのこの展開は? 俺はその後も緊張で食った気がしなかった。