幼馴染を忘れられなくて童貞34年極めたらリア充になれた話 作:味噌村 幸太郎
周りのビルの灯りで公園は明るくなり、お互いの顔はさっきよりもよく見えるようになった。
「あの、これよかったら食べてください」
『若いほう』のあすかちゃんが自分の弁当からタコさんウインナーと厚焼き玉子を俺の弁当に入れる。
「いや、悪いよ……。若いんだからもっと食べないと」
俺がそういうと寂しそうな顔をする。
「お嫌い、ですか?」
「いやいや! そういうんじゃなくて……ね。じゃあ、いただくよ?」
あすかちゃんの顔が明るくなる。
「はい!」
まずタコさんウインナーからいった。こんなの小学生の遠足以来だよ。
味の方は…うまい! 普通にうまい。
続いて厚焼き玉子。
これは……。
「うまい!」
「よかったぁ」
あすかちゃんが嬉しそうに笑う。
お世辞抜きでうまかった。
俺は卵焼きは甘口派で、この卵焼きは、本当に俺に向いている味付けだった。
箸で持ち上げてみたら、いくつも層にわかれていて丁寧に焼いたのがよくわかる。
「いやぁ、お母さん上手だね!」
そういうとあすかちゃんの顔が真っ赤になる。
「わ、私が作りました……」
耳を疑った。こんな女の子ってマジでいるの?
「ええ!? あすかちゃんが! あ、ごめん名前で呼んじゃって……。嫌だよね、俺みたいな汚いおっさんに呼ばれたら」
そう言って遠くを見ると、あすかちゃんの叫び声が公園に響き渡った。
「全然! 全然、嫌じゃありません!」
泣いていた。
なぜ泣くの? もしかして女の子の日なの?
とりあえず、リュックサックから何日も使っていた汚いよれよれのハンカチを差し出した。
汚いから断られると思ったら。
「あ、ありがとう、ヒック。ございます……」
なんと礼をいいながら、涙を拭くわけでもなく俺の汚いハンカチを両手で抱え、大事そうに胸に当てている。
なんで? 心を病んでいるの? この子。
「だ、大丈夫? なんか辛いことでもあるの?」
頭を強く左右に振る。
「じゃあ、どうして泣いているの?」
「嬉しくて……」
は? はぁ!?
「な、何が嬉しいの?」
俺がそう言うと、あすかちゃんはゆっくりベンチから立ち上がった。
「聞いてくれますか?」
なんだ。やっぱり相談事じゃないか。
「いいよ」
軽く答えた。
俺を見つめながら強く両手で手を握る。
彼女の顔は涙でくしゃくしゃになっている。赤い頬が更に赤くなっている。
「ヒック……きです」
すすり泣きで、聞き取れなかった。
「え? ごめん、もう一回いいかな?」
聞き返すと彼女が深く息を吸い込んだあと、公園中、いや公園の外の通りにまで響き渡るぐらいの大きな声で叫んだ。
「あなたのことが好きです!」
驚いた俺は手を握られたまま、立ち上がった。
「はぁ!?」
これ以外、言葉が見つからなかった。