幼馴染を忘れられなくて童貞34年極めたらリア充になれた話 作:味噌村 幸太郎
「そんな若い女の子とどっかいっちゃえばいいんよ! 私のことなんかほっといて、どっかいって! うわーーーん!」
泣き崩れる京子を夫の守が「すいません」とあすかをどかせて、京子の背中をさする。
「兄さん……こいつ。京子は口ベタなんですよ」
「もういいとよ! お兄ちゃんなんかどっか行ってもかまわんけん! 京子のことなんか放っておいて!」
子供のように泣き喚く妹(30歳)をそれこそ優しい兄のように夫が「大丈夫だから、兄さんはどこにもいかないよ」となだめる。
す、すまん……誰かこの状況を説明してくれんかね。
「実は、僕たちが予定より早く実家に来たのも兄さんが普段、家にずっと篭ってらっしゃるのにいきなり1人で何も告げず旅に出たことに心配していたからなんです。京子はこう見えて兄さんが大好きなんですよ、ハハハ!」
お前だけだぞ、爆笑しているのは。
「昔はよく2人で仲良く遊んでいたのに、お兄さんが福岡に引っ越してきてからは、部屋に篭りっきりで、かまってもらえなくなったそうです。特にお風呂に一緒に入れなかったのが辛かったそうです……プププ」
なんか聞いてて恥ずかしいんですけど……。
一緒に聞いてるあすかもお風呂のくだり、引いてないっすか?
俺たち兄妹の関係。
「まあそれで長い時間の間、こじれにこじれて気持ちとは裏腹の表現しか京子はできなくなったと言うわけですよ、ガハハ!」
お前バカにしてんだろ? 殴るぞ、犬!
あすかの後ろで玄関で1人腰を抜かしたまま、泣き出す母。
おいおい、あんたもこの内情知ってたんかい。こじれた原因の1つでもあるだろ、母ちゃんよ。
「でも、僕と2人でいる間や兄さんがいないところでは、とにっかく! 兄さんの話ばかりですよw 引きこもっている兄さんをいつも心配ばかりしています。僕も正直ちょっと妬いてしまいますよ、ハハハ!」
ま、まさかの遅すぎる妹萌え……きっついわー! 20年前ならありえたわー!
だが、少し疑問が残る。こじれただけにしてはなんで、結婚式の時は遠縁の席で、姪たち2人を一回も触らせてくれないのだ?
「ちょ、ちょっと待ってくれ……じゃあ、結婚式披露宴での遠縁の親戚のテーブルに俺だけ座らせたんだ?」
「うわあああん!」
俺の問いかけに、更に大きな声で泣き叫ぶ京子。
「あ、あれですか……本当に申し訳ないことをした思っているんです。あれは会場の手違いなんですよ」
「手違い!?」
「はい、どうやら同姓同名の『本田 広』さんという方がいらっしゃったようで・・・」
うそだろ?
「じゃあじゃあ、お前ら子供達を抱かせてくれなかったのは?」
「それについては先ほどの裏腹な表現です……京子は兄さんと何かとケンカばかりで。それでも、謝る機会を探し続けて10数年経ってしまい、今日までけんか腰でしか話せなくなってしまいました」
バカだろ!? お前らバカだろ!?
「……じゃあ、本当は抱っこしてもよかったの?」
「もちろんです! 2人が生まれる当時も産婦人科でご両親よりも一番に兄さんに抱っこしてほしいと、それを機会に謝るって……言っていたのですが……」
どんだけツンツンツンデレ妹なの!?
「お父さんも亡くなる直前までお2人の関係を心配されていました。いつも『京子はまだ素直になれないのか?』と……」
無念……。というか、死ぬ前に言っとけよ、バカ親父。
「そっ、そっか……悪かったな、京子……」
しゃっくりのように声をあげる京子の肩に優しく手をあてる。
今度は払いのけない。
素直に俺を受け入れている。
まあ俺も悪かったよな……こいつの気持ちを無視して神埼のことだけを糧にして生きてきたわけだしな。
「京子こそ、えっえ……ごめんなさい、お兄ちゃん。えっ、兄ちゃんに昨日……い、言われた……」
俺も背中さすりに協力する。
大の男が2人でなにをしているんだ。
「なんだ? ゆっくり言ってみろ、時間はあるんだ」
「に、兄ちゃんに……ふぐっ、お友達の赤ちゃんを抱っこして、ひぐっ、暖かいよって言われたのが一番辛かったよぉぉ!」
「そうだな……兄ちゃん、酷かったな。兄ちゃんもお前の子供を一番抱っこしたかったからな。ごめんな」
「お兄ちゃぁぁぁん!」
俺の胸に飛び込む京子(30歳)
こいつ授乳中じゃないのに、胸でかいな……。
まあペチャパイの頃しか裸を知らないしね。
「うわああん! お兄ちゃん、今までごめんなさい! 大好きやけん、出ていかんで!」
はずっ! いや、このやり取りマジではずすぎるんすけど!
あすかが心配になって、チラ見したが彼女も涙をぼろぼろこぼしながらつられ泣きしている。
「兄ちゃんも京子のこと大好きだから安心しろ」
そして、俺の言葉に合わせて家族全員が俺に飛び込んできた。ちなみに、あすかも。
俺は床に倒れながら、思った。
うん、こういうのも悪くないかもな。