明治時代後期、巷の裏社会では若い女性の売買が横行していた。
事情があり行くあてのない女性に甘い言葉で近付いては売り飛ばす。
万世極楽教という寺院に、夫のDVから逃れて子供と共に身を寄せていた嘴平琴葉もこの商売の餌食となりかけていた。
人間の女を見てヤりたいと思うのは何年、いや何十年ぶりだろうと万世極楽教の教祖である童磨は考えていた。
実は彼は人ではなく不老不死の鬼である。
見た目は二十歳だが鬼になって一世紀を軽く超えていた。
なのに、まだそんな人間のような性質が自分にあったのかと考えて童磨は少し悩む。
鬼になってしばらくの頃はそう、陵辱を楽しんだ後に喰うという残忍なことを夜毎していたのだが、鬼化が進行するうちに、俗なことは稀にしかしなくなった。
しなくなったというよりは、しなくても支障のない崇高で清らかな鬼の身体に変化したと言うべきか。
しかしここのところ、心とは裏腹に身体が勝手に反応してしまうのである。
ヤりたい対象の女は何ヵ月か前に、この万世極楽教に逃れてきた女で、小さな赤ん坊を抱いた若い女だった。
着の身着のまま雪の中を裸足で、その細い身体にケガを負いながら万世極楽教の門をくぐった彼女を、教祖である童磨は保護した。
もちろん後々に喰うためにだ。
しかしこの琴葉という女は天然バカで裏表がなく、狐の皮をかぶった人間が多い中、童磨にとって一緒にいると妙に落ち着く女だった。
それに見目麗しく、小鳥のような歌声も童磨を癒した。
童磨は琴葉をいまや食料としてみておらず、ペットのように可愛がっていた。
「琴葉、後で俺のあの部屋においでよ。いいものがあるんだ」
「は、はい…じゃあここの掃除が終わったら行きます」
赤ん坊の伊之助を背負いながら拭き掃除をしていた琴葉から、童磨は伊之助を奪う。
「この子は俺がみててあげよう」
この光景は珍しいものではなく、童磨は琴葉の子供である彼女にそっくりな伊之助の相手をよくしていた。
伊之助は童磨の匂いを覚えたのか、嫌がらず泣きもせずに童磨に抱かれながら琴葉の前から立ち去った。
童磨のプライベートな部屋に入れるのは琴葉と伊之助だけで、信者たち、特に女性信者たちは教祖である童磨がこの母子を構うのが気に入らなかったが、今では暗黙の了解になっていた。
琴葉が美しすぎるからである。
「これは?」
「チョコレートだよ。もらったけど俺は食べないから琴葉にあげる。はい、あーんしてごらん」
「え?は、はい」
琴葉の口の中に、童磨はエサをつまんで入れてやる。
すると童磨の指と琴葉の唇が触れた。
琴葉の舌にその甘いチョコの味がひろがる。
「わぁ!とっても美味しいです!」
「あはは、良かった。まだあるから全部琴葉にあげるよ。伊之助はまだ食べられないかなぁ」
嬉しそうにチョコを頬張る琴葉を
そしてやっぱり欲情している自分がいることに気がつき、フム…と、考える。
(久しぶりにヤるか…)
久しぶりと言っても一週間や一ヶ月、一年のレベルではない。
正直その前がいつだったのかわからないレベルで、おそらく十年、いやそれ以上前だったとしかわからない。
彼は低俗な人間とは違い崇高な鬼であり、そのような俗っぽいことに身を任せはしない。
しかし“この女とヤりたい”とDNAが正直に訴えてくる。
心では何も感じなくても、だ。
童磨は琴葉に危うさのようなものを感じていた。
琴葉は信者ではないし、傷も完治したので、ここを出ていくのではないかという危うさだ。
だとしたら早急に事を成さなければならない。
(むー…どうしたものかなぁ…)
童磨は琴葉を少しでも長く引き留めるために琴葉にプレゼントを贈った。
いわば餌付けのようなものだ。
お菓子、花、着物、髪飾り、櫛…etc.
しかしそれは逆効果だった。
好きでもない男から贈り物をされても全く嬉しくない、琴葉はこのタイプの女だったからだ。
どうしようかなと琴葉は考えていた。
教祖様はわたしのことが好きなのだろうか、遠回しに貰う理由がないと断りはしたものの、理由なんていらないと微笑まれて、図々しく贈り物は頂いてしまった。
それに、伊之助のおしめや着替えも贈ってもらえて、かなり助かってもいた。
しかし、感覚の鋭い琴葉は感じていた。
教祖様はわたしが好きなんじゃなくて、何か裏があってのことだと。
(わたしの身体が目当てなのかしら…)
もし身体を捧げて伊之助が幸せになれるなら喜んで捧げるが、でもそれは違う気がするので琴葉はここを出ようと思う。
でもどこへ?わたしに行く場所なんてないのにと琴葉は途方に暮れていた。
そんな或る日。
「ねえ琴葉ちゃん。仕事ならあるわよ。あなた美人だから稼げるわよ。男にお酌してあげるの。酔っ払いの相手は大変だけど、その間は子供も預かってもらえるし、部屋も貸してもらえるわ」
琴葉は信者の女性から、たまに尻や胸を触られることもあるが、それでも良ければと言われ飛び付いた。
「ぜひ紹介して下さい!!」
琴葉が風俗に売られたと童磨の耳に情報が入ったのはその日の夕刻だった。
以前にも似たような事件はあった。
信者のフリをして万世極楽教へ潜入し、どこへも帰る場所がない女性の弱みにつけこみ、性風俗へ売り飛ばして金を稼ぐ商売。
巷ではこのような商売が横行しており、特に美人で若い女は高値で取引される。
魔の手は山奥の寺院にまで伸びていたのだった。
いかに感情がないとはいえ、童磨にも快、不快はある。
癒しの存在である琴葉を売られ童磨の不快はMAXに近い状態だった。
「教祖様!この女が犯人です!他にも売られそうになった女性信者がおりました!」
琴葉を売人に引き渡したその女は男性信者の手によって捕らえられ、童磨の手によって密かに始末された。
売り飛ばされたのが琴葉でなければ童磨もここまではしなかっただろう。
心では何も感じない。
でもこの肉体が、細胞が、あの娘が欲しいと訴え彼を動かす。
吉原にある遊廓のように窮屈ではなく、もっと近代的で手軽に遊べる風俗店が最近増えはじめているという話は童磨も知っていた。
「時代は違えど人の世は今も昔も変わらないねぇ」
男は女の肌を求める、欲望を満たすために。
そしてそれを売る女達。
ヘルスにソープにピンサロにおっパブetc.
童磨が琴葉を探して風俗店が立ち並ぶ通りを歩いていると、本番OKと文字を掲げた店の前で、母乳が出る清純派の美少女が入ったと客を引いている男を見つける。
母乳、清純と聞き、琴葉に間違いないと考えた童磨は我先にとその店に入った。
「ま、待ってください!話が違います!!わたしはお酒の相手をすればいいだけと聞いて…こ、こんな裸になるなんてひと言も聞いていません!!」
琴葉は店の中で必死に訴えていた。
素っ裸にさせられ、薄羽蜉蝣の羽のように透けた小さな布をただ一枚身体に巻いた状態にさせられ、琴葉は震えがとまらない。
しかし命より大切な伊之助は店の子守係に預けており、いわゆる人質にとられているのと同然だった。
「お、もう客が来た!たくさんサービスするんだぜ!なに、すぐ慣れる慣れる!」
店長と呼ばれている男は琴葉の訴えなど全く聞いてはいなかった。
(どうしよう!どうしよう!!こわい!!誰か助けて!!!)
琴葉は心臓が口から飛び出してしまいそうなほどパニックに陥る。
しかし、窓の隙間から客の男の顔をそっと覗き見てみると、
「え?」
琴葉が助けてと頭に思い浮かべた万世極楽教の教祖、童磨だった。
童磨の喰うつもりなかった発言、童磨を何度も罵った琴葉に弁解し説明した童磨(痴話喧嘩とも言う)
まあ、十中八九ヤっていたと想定し、遅ればせながら妄想を文章にしました。
ちなみにこの妄想では、美巨乳で母乳が出る琴葉を童磨に殺させはしません(多分)
青い彼岸花を探しもせずに琴葉とえっちしまくる童磨の前に、怒った無惨様が現れて3Pもしくは寝とられ……の展開にしたいがそこまで書けるかどうかf(^^;