「やっぱり教祖様のお友達だったんですね!教祖様は信者様とお話中なので、よろしければここでお待ち下さい」
琴葉がお茶を用意をしようとすると無惨から必要ないと言われたので、童磨と同じタイプなのだと琴葉は察した。
たしかに無惨は童磨と同じ不思議な香りが漂っている。
そう言えば、と、琴葉はあのレイプされそうになった日の事を思い出した。
あの日、助けてくれたのはこの方ではなかったかと記憶を呼び覚ます。
顔は覚えていないがその香りで琴葉は確信する。
「無惨様…またお会いできて嬉しいです。無惨様は忘れちゃったかもしれませんけど・・・」
琴葉が男達に追いかけられていたあの日の出来事を説明すると無惨は覚えていた。
(あの時気まぐれで助けた女だったのか・・・)
無惨が覚えていますよと琴葉に告げると、琴葉は大きな瞳を輝かせながら無惨に何度も頭を下げた。
その時、伊之助が壺の中のどんぐりを畳の上にぶちまけてしまい、琴葉は一緒にかたずけようと立ち上がるがよろめいてしまい、なんと胡座をかいて座る無惨の膝の上にお尻をドボンと沈めてしまった。
「きゃあッ」
無惨の太ももに琴葉のムチッとした尻肉が食い込む。
「大丈夫ですか?」
「ご、ごめんなさいッ」
琴葉は童磨の友人になんて無礼なことをしてしまったのかと顔から火が出そうな状況だが、無惨はただ心地良い重みと柔らかさを感じるだけで不快ではなかった。
頭は悪そうだが稀に見る美しい娘なので寧ろもう少しこのままでと思えてしまうから不思議だった。
そして、まるでタイミングを計ったかのように、
「琴葉、入るよ」
障子がスライドされて、童磨が現れてしまう。
( ! ? )
その光景に童磨は思わず絶句する。
鬼界のレジェンド、鬼舞辻無惨にさえも動じない鋼の心臓を持つ童磨の心に波紋が広がるのを無惨は細胞を通じなくても、童磨の表情からそれを読み取る。
「久しぶりだな、童磨」
無惨が先手を切ったのは自分の優位性を見せつけたかったのかもしれない。
(いつの間にいらしたんだ!?それになぜ琴葉がこの方の膝の上に!?)
作り笑いする童磨の心の声は全て無惨に読まれていた。
「琴葉さん、立てますか?」
「は、はい…」
無惨に尻を支えられながら琴葉は立ち上がった。
童磨の視界に琴葉のムチムチした尻が映り、パンティを履いていないことに気がつく。
着物の上からでも微妙な尻の変化で童磨はそれが認識できた。
琴葉は伊之助とどんぐりを壺の中にかたずけながら童磨に言う。
「わたし、よろめいて無惨様の膝に座ってしまって・・・」
そして無惨に視線を移し、
「本当にごめんなさい…わたし、そそっかしくて…」
謝罪する。
すると無惨が、
「気にやむことなどありませんよ。もう一度座っていただきたいくらいです」
そんな冗談めいたことを言うので、童磨は己の耳を疑ってしまう。
それともこっちが真の姿なのだろうか。
無惨は琴葉の前では童磨のように擬態しており、鋭い爪も縦長の瞳孔も今は人間仕様でとても善人な紳士に見えた。
童磨は、よろめいて膝に座ってしまったのは百歩譲って納得できるが、パンティを履いてないことはどう説明するつもりなんだと思う。
琴葉はいつも自作の紐パンティを履いているというのに。
「琴葉おまえ・・・パ」
「童磨、信者との話は済んだのか?」
無惨が童磨の台詞に被せてきた。
俺が喋ってるだろうにと思いながら童磨は無惨の方へ
「そうか、なら
無惨はそう言って立ち上がり、童磨と共に琴葉の部屋から出た。
そして、渡り廊下を歩きながら細胞を通じて鳴女を呼ぶと、ベベンと言う琵琶の音が響き、着いた先は上下も左右も出鱈目な異空間、無限城だ。
そこにはもちろん琵琶を抱えた鳴女が静かに座っていた。
「よくやった童磨!女に
童磨にしては珍しく、すぐに言葉を発することが出来ずに一瞬妙な間があってから、
「あなた様のお役に立てて光栄でございます」
と、いつもの調子で言ったが、
(む~…仕方ない、パンティのことは帰ってから琴葉に聞こう…)
心の声はもちろん無惨に読まれていた。
「仕方ないだと!?童磨!!貴様はペットと青い彼岸花の情報!どちらを優先すべきだと思う!答えろ!!」
おそらく、青い彼岸花と答えるのが正解だが無惨は裏の声を読める。
「もちろん青い彼岸花でございます!しかし俺は彼女のことも気になるのでございます」
童磨は正直に答えた。
以前の童磨は感情が薄すぎて読めず、不気味で扱いにくかったが今の童磨はどうだ。
随分変わったなと無惨は思う。
変化は大半は劣化だが必ずしもそうとは限らない。
儚いが美しく変化していく景色もあるだろう。
とりあえず今回の童磨の功績は大きい。
「童磨、貴様の疑問に答えてやろう。娘のパンティは犬が持って逃げた…私を疑うのはやめろ!わかったならさっさと横浜へ行け!やれ鳴女!」
ベベべン!
童磨が飛ばされた先は横浜の山手の方で、こちらもシトシトと雨が降っていた。
犬ってあの犬のことかと思いながら童磨は秋雨に濡れて歩く。
そして、とりあえず大きな樹木の下まで歩いて雨宿りをする。
(俺はてっきりあの方が琴葉に手を出したのかと・・・あれ?)
童磨がふと視線を反らすと見たことがある壺があった。
「ヒョッ!童磨殿!」
「やあ、玉壺…おまえも来たのか…」
無惨様は俺が探知探索が不得意なのを知ってて玉壺を呼んだんだなと童磨は思う。
けれど童磨は俺の手柄なのにとか細かいことは気にしない質だ。
童磨と玉壺は少し世間話をする。
「解凍した人間は旨味が増しますな、
「毎日一緒に風呂に入ってるよ、子供と三人で」
「ヒョヒョッ!これはまたお熱いですなあ・・・」
腹黒い玉壺は、童磨が無惨から粛清されることを内心は強く願っていた。
「童磨殿、お先に失礼!」
「へ!?あ、待っ・・・」
壺を移動できる玉壺は童磨と違い探知は得意分野だった。
童磨は先を越されてしまうが彼は焦ったりなどしない。
「玉壺殿はせっかちだなあ…まあ俺には俺のやり方がある」
童磨は
けれど場所はだいたいしぼられている。
「結晶の御子」
童磨は御子を複数体出して探索させることにした。
人の世に生まれて千年。
世は移ろい明治時代後期。
無惨は千年に一人の美少女と呼ぶに相応しい娘と出会った。
遥かな千年の時を経て出会った娘は綺麗なだけでなく珍しいルーツをした血液型キメラだった。
(童磨が娘を喰わずにペットとして飼ったのは、あいつの鬼としての本能かもしれないな・・・いや、あいつのことなどどうでもいい・・・なんと言う名だったか・・・そう、琴葉・・・)
無惨は再び万世極楽教を訪れていた。
不本意ではあるが彼は童磨の姿に擬態し琴葉の前に現れた。
それが手っ取り早く母乳を採取し、味も確かめることができる近道だからだ。
無惨はその顔を鏡に映して見た。
彼の擬態は凄まじい精度のため、その瞳の色さえも気色悪いくらいにどこからどう見ても童磨である。
(琴葉はこの姿に懐いている・・・まずは一晩の辛抱だ)
無惨はそう己に言い聞かせて琴葉の部屋へ歩を進める。
すると廊下の先に琴葉の姿が見え、その横をハゲ頭の男性信者が通り過ぎたが、すれ違い様にその信者が琴葉の胸と尻を触るのを無惨の眼は捉えた。
なんと琴葉は女性信者からいじめられているだけでなく、男性信者からはセクハラ行為もされていたのだ。
琴葉はよちよちと歩く伊之助を連れているのでゆっくりと歩を進め、やがて童磨の姿をした無惨に気がつく。
「あ、教祖様…無惨様とはたくさんお話できましたか?お風呂が沸いたので呼びに来ました」
「・・・・・・・」
「教祖様?」
この娘はセクハラされたことを何故報告しないのかと無惨は不思議に思う。
「今そこでおまえは信者とすれ違ったが、何かされなかったか?」
「え?」
琴葉は童磨の口調がちょっと違うような気がすると思ったがまさか擬態した無惨だとは思わない。
「ちょっとぶつかってしまっただけで、何もされてないです。男性信者様とはよくぶつかってしまうから気をつけてはいるけど、わたしがそそっかしいから・・・」
無惨はまた一瞬で全てを理解した。
この琴葉という女はいじめられていることもセクハラされていることもわかっていないバカな女だと。
そしてどうやら童磨は琴葉が数々のいじめやセクハラ被害に遭っていることに気がついていない。
いや、あれはもうセクハラという曖昧なものではなく痴漢行為ではあるまいか。
そしておそらくあの日、琴葉を追いかけていた男達も首謀信者が放った刺客であろうと無惨は確信する。
人間とはなんと愚かで滑稽な生き物なのだろうか。
無惨にとってはどうでも良いことであるが、何もわかっていない琴葉に対して不可思議な感情が無惨を侵食し苛立たせた。
(こんなに頭の悪い女がこの世にいようとは・・・)
しかし琴葉に全く下品さはなく、立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿はまさに百合の花のように可憐だった。
おそらくこの時代、女の子の着物の中はノーパンが正解なのかもしれません