7話
栄華と爛熟の象徴であった魔胎都市より、腐敗が取り除かれようとしている。
人間の性根が善性に傾いたというわけではない。むしろ悪性より生じた淫気邪気は魔性を呼び寄せ、更なる腐敗をもたらす呼び水となっている。改善の傾向は見られず、トーキョーの民は欲望のままに繁栄を謳歌していた。
変化したのは排除機構そのものだ。
理不尽なまでの暴力により問答無用で蹴散らされた妖魔淫獣の数々。妖気が人間を堕落させ更なる魔性への呼び水となるのならば、その呼び水ごと根絶せんと徹底的な蹂躙が行われた。
これは退魔省はおろか教皇庁直轄組織イバラの姉妹、そして最強の退魔師で
たとえ当人たちが苦々しく思っていようと、それを成し遂げた個人は真実英雄と称えられておかしくない功績を残していたのだ。
そうして、魔胎都市トーキョーは少しずつ生まれ変わろうとしている。
妖魔淫獣の増殖の気配なく、そして彼らの妖気が人間を邪悪へ誘惑する負のサイクルが強引に断ち切られ、平穏へと均されていく。
あたかも汚濁した海水を機械を使って無理矢理浄化しているような、歪な平和が完成しようとしていた。
――しかし、道鏡という浄化装置がいかに強力であろうと、それが個人である限り必ず取りこぼしが現れる。日本中の妖魔を休む間もなく討滅し続け、日本の退魔師という退魔師を空前の就職難へと追い込んだ男であろうと、完璧ではないのだ。
それを表すような代物が今、神守清華の目の前に横たわっていた。
大陸から流れ着いたコンテナ船である。
トーキョー湾に浮かぶ巨大な輸送船は、バラスト排水口から汚らしいピンク色の肉片を垂らしながら、内部へ乗り込もうとしている獲物を待ち構えているようだった。
「ひどい邪気……中身はほぼ異界化していると見た方がいいですわね」
むせ返るような妖気と淫気、そして精臭に清華は眉をひそめた。脚甲を纏った足がカツカツと埠頭を叩き、歩み寄るほどに輸送船から漂う異臭は濃厚さを増していく。
「……ヨーロッパから上海を経由し、引き返す途上で遭難。救難信号が出された形跡もなく、忽然と東シナ海から姿を消し、そして同様に突如として東京湾沖に現れる……これは偶然なのか、それとも……」
そも、上海で積み降ろしした荷の正体すら明らかでない。輸送船が流れ着き面食らった日本政府の要請に、当局は梨の飛礫を投げて寄越した。
あの輸送船はよほど都合の悪い積み荷を載せていたらしい。銃火器か、生物兵器か……それとも今の惨状を鑑みるに、大陸で行われた妖魔研究の一端が事故として噴出したのか。
何にせよ、外交の結果を指をくわえて待つわけにはいかない。輸送船は今もなお瘴気を撒き散らして港湾の汚染を広げているし、近付いた人間にどんな影響が現れるかもわからない。
迅速に事態の収束を図るならば、輸送船の内部に乗り込んでそこに巣食う妖魔を討伐するほかにない。
「妖魔の体内に潜りこむなど、考えただけで怖気が走りますが……」
ぐい、と肩を回して体をほぐす清華。腕に装着したアームガードがガチャリと無骨な音を立てた。
女退魔師は漆黒の装いで身を飾っていた。
とはいえ、それを一目見て彼女が纏うのが『戦闘服』であると判断する人間は多くあるまい。むしろ『黒い全身タイツ』と表現する者の方が多いだろう。
黒い光沢を放つラバー質の衣装である。伸縮性の高い生地は適度に肢体を締めつけ、肉体の動きの阻害が最低限に留まるように設計されている。極度のインファイトを重視する神守流護神術にとって、無用な装飾を徹底的に排したこのラバースーツはひとつの完成形といえた。
――欠点は、見た目があまりに破廉恥に過ぎることか。
ピッタリと身体のラインにフィットする黒いラバースーツは、清華の熟れきった肉体を隠すことなく、これ以上なく主張していた。たわわに実った双丘は張りと揉み応えを主張するようにつんと上を向き、微かに突き出した乳首の形すらスーツはありありと浮き上がらせている。
むっちりとした脚部のラインと歩くたびに振動する尻肉は、男が見れば淫気に侵されずともそこに顔をうずめたいと血迷うほど。
身体を適度に締め付けるラバーは下半身も同様で、本来秘されるべき股間部はくっきりと秘唇を形作っていた。
「んっ……」
僅かに顔をしかめ、歩みを止める。釣り目がちな風貌を羞恥に赤らめ、清華はもじもじと太腿をこすり合わせた。
くに、とただそれだけで形を変える秘唇。ラバースーツ越しで見ることは叶わないが、その下は既に汗とは違う熱気で蒸れはじめていた。
「――――はぁっ、少し呼吸するだけでここまで……これほどの淫気、一体どれほどの妖魔が。――――いいえ、泣き言は言っていられません」
気を取り直し、きっと眦を決して輸送船を睨みつける神守清華。彼女の闘志に応えるように、ぎちぎちと握りこんだアームガードが軋みを上げる。
「神守の退魔師として、また『イバラの姉妹』の一員として、そして何より、咲耶お姉さまの跡を継ぐ者として、わたくしに敗北は許されません……っ!!」
円城咲耶亡き後、日本最強と目される女退魔師は決意も露わに虎穴へと踏み込んだ。
――――濃厚な妖気が充満する船内。内部は既に妖魔と同化し、船全てが妖魔の体内と同義と化している。
肉の蠢く壁から突き出たパイプが時折に噴き出すピンク色の蒸気は、さながら妖魔の排気行為か。蒸気に触れれば肌は爛れるような熱を持ち、吸い込めば瞬く間に淫気が肺を犯して肉体を汚染するだろう。
数分もしないうちに出来上がるのは、秘部を掻き毟りながら凌辱をねだる浅ましい淫乱メス奴隷。歓喜とともに触手を迎え入れ、喉がしゃがれて潰れるまで淫らな嗚咽で泣き続ける家畜のごとき生涯を送ることになる。
かつて妖魔に敗北し生々しい凌辱の記憶を植え付けられた清華は、その末路をありありと想像できてしまう。尊敬する先輩退魔師に救われるまで過ごし続けた屈辱と喜悦の日々。思い出すだけで嫌悪感で心が満たされ、それと同時にぞくぞくとした熱い高鳴りが胸を襲うのだ。
己のような犠牲者を出さないためにも、この輸送船の妖魔は己ひとりでけりを着けなければならない。そう考えていた。
ゆえに――
「はぁああああっ!!」
斬断、消滅。
撃墜、蹂躙。
異界化した肉部屋の中、黒いラバースーツの影が躍る。
飛び散る肉片、飛沫を上げる妖魔の体液。
四方八方から襲いかかる触手の一切合財を纏めて回し蹴りで薙ぎ払い、振り上げた脛が断頭のごとく肉塊を切断し宙を舞わせる。
まさに鎧袖一触。しなやかな鞭のように放たれた踵の一撃が正確無比に蟲魔の核を撃ち抜き、近寄ることもままならず妖魔たちは霧散浄滅を強いられる。
足技を多用する神守流は消耗は激しいものの機動戦に優れている。縦横無尽に船内を駆け巡り妖魔の触手を蹴断し続ける清華の顔に、緊張はあれど危機感はない。
「ふっ……!」
鮮血の代わりに飛び散るのは白濁した体液だ。死骸すら女を堕とすことに特化した淫魔たちの体液は、触れれば即効の発情媚薬として女体を犯す。
清華は飛び散る飛沫を軽やかなフットワークで躱し、逃れきれないものは手甲や足甲で弾きながら前進した。それはさながら猛進する戦馬のごとき勇猛さだった。
――しかし忘れてはならない。この船は既に妖魔と一体化した異界、完全なアウェーであることを。
肉床を踏みしめるたびに染み出てくる粘液、触手を潰すたびに飛び散る体液、肉壁から清華目がけて噴出する白濁液。
室内温度は30度を超え、ラバースーツの下の裸体は動くほどに蒸し暑さから不快指数を跳ね上げる。熱気に気化した妖魔体液の混合物は、防ぎようもなく清華の呼吸に入り込んだ。
「く、ん……っ」
はぁ、と大きな呼吸。吐き出した息はそれまでの戦闘もあって茹だるように熱かった。
隙を見て立ち止まり、息を整える。大きく肩が上下するにつれて豊かな乳房がプルンと震えた。
(まずいですわね。思ったより淫気の影響が……)
粘液は念入りに躱してきたつもりだった。特にこの半年、鬼気迫る鍛錬の成果か清華の戦闘力は如実に伸び上がっている。
そのことに自信を付けた清華は、むしろ自身の被弾を顧みず強引に前を突き破る肉弾戦を得手とするようになった。
流石に今回の相手はあまりに濃厚な気配のため、可能な限り返り血を防ぐように立ち回ってきたが……
(なんていやらしい臭い……疼きが、とまりませんわ……っ)
ヌチャリ、と肉床ごと踏み躙った体液が波を立てる。ブーツの中はしみ込んだ淫濁でビチャビチャになっていた。足の裏から奇妙な痺れが昇ってくるようだ。
肉感的な脚線を強調するスーツの下では、激しい動きで汗だくに蒸れた媚肉がはちきれそうになっている。新鮮な空気を求めて呼吸を繰り返すも、淫毒混じりのそれは肺から肉体を徐々に浸蝕していた。
汗ばんだ肌とスーツのこすれ合うベタベタとした感触が気持ち悪い。
「忌々しいっ、所詮知性のない妖魔。手口が姑息で不快ですわっ」
なにもかも脱ぎ捨てて熱いシャワーを浴びたい。さっぱりとした体で夜風に当たれば、それはどんなに爽快なことか。
――それとも、ここで脱いでしまえば? 汗で蒸れた肌にそれ以上にむっとする熱気を浴びせられ、押し寄せる生臭い濁液に身を任せてしまえば?
きっと目も眩む、気が狂うほどの奔流に押し流されるに違いない。それはどんなに惨めで屈辱的で、どんなに甘美な敗北の瞬間――
「く――――ッ」
脳裏にちらついた被虐の予感。それに一瞬でも誘惑を感じてしまった自分を叱咤し、清華はひときわ大きな触手を踏み潰した。
背後を襲う気配。直感に任せて手を振るうと、アナルを狙う肉触手を捕らえた。容赦なく引き千切る。
ブチブチと触手が千切れる感触はいい、それは構わない。しかし粘液でぬめる手の平に伝わる手触りそのものが気に入らない。男の男根を模した形状、竿の隆起や裏筋の皺、張り出した雁首の形まで、まざまざとその感触を手の平に残していくのだ。これではまるで手を使ってローションまみれの肉棒に奉仕しているようではないか。
「下劣な!」
高鳴る鼓動は戦闘の昂揚によるものだ。
スーツの下で湿度を上げるのは自らの汗だけだ。
断じて肉を蹴り抜く感触に疼くような痺れを覚えてはいない。
断じて太腿に垂れる熱い液体は愛液ではない。
断じて肉棒触手を見るたびに生唾など呑み込んではいない。
断じて、己の敗北の先にある淫蕩な末路を想像し、あまつさえ背徳的な期待など懐いてはいないのだ――
「ふぅうぅううう……そろそろ、船の中枢に近いはずですが」
異界化の発生源と目される第四船倉に辿り着いたとき、清華の呼吸は千々に乱れていた。
船内で襲い来る触手や淫蟲の討滅は苦ではないものの、淫気の充満した船内を進むことが相当な負担になっていた。熟れた巨乳を備えた胸は大きく上下しているし、隠そうと努力しているものの立っているのもやっとなのか膝が細かく震えている。
――戦えるとしても、精々があと数戦。それまでの間にこの船の異常を発生させている妖魔を討伐しなければならない。
この第四船倉がもぬけの殻なら潔く諦め、一度撤退し仕切り直しを図ることも視野に入っていた。
――――幸か不幸か、その心配は不要だったが。
〔ォォォオォオオォオオオオオオオオ――――!!!〕
第四船倉中央にてそびえ立つ、柱のごとき大妖魔。
形状は卑猥なイソギンチャク。触手の先端一つ一つに亀頭を備えているうえに、根元部分からも細長い触腕を伸ばしているところが大違いであるが。
どこに発声器官があるのかもわからない化け物は、自らのねぐらに極上の獲物が迷いこんできたことを知り歓喜の咆哮を上げる。
「ようやく姿を見せましたわね!」
女を慄かせ身動きできなくさせる呪を秘めた咆哮を受け、それでも清華は自らを奮い立たせて立ち向かう。
消耗した体力、蝕まれた肉体。思考は靄がかかったように明瞭とせず、戦略を組み立てる暇はない。
ならば勝機は速戦以外にない。初撃に全身全霊を込めて妖魔の核を砕き、反撃を許さず浄滅するのみ。
「その醜悪な外見、とても見るに堪えませんわ。イバラの姉妹の一員として、このわたくしが引導を渡して差し上げます!!」
足元の淫濁が炸裂する勢いで飛び散った。
引き締まった脚による渾身の踏み込み。わずか二歩でトップスピードに乗り、最短のルートを辿って大妖魔の懐へ潜りこむ。
清華に出せる全霊の一撃。対物ライフルに匹敵する踵の突撃を食らえば、いかな軟体生物であろうと身体の中心をぶち抜かれ即死する。
勝利を確信した清華が、助走が乗りに乗った蹴りを放たんと左脚に体重を預け、いままさに――
戦列のように並べられた肉触手。
膨らむ亀頭、広がる鈴口。
次の瞬間、清華の視界は噴射された白濁液で真っ白に染まった。
「え――――きゃぁあああああ!?」
今まで念入りに避けてきた淫液の洪水をまともに受け、清華は絹を裂いたような悲鳴を上げた。
容赦なくぶっかけられる触手精液は退魔師の黒スーツを真っ白に染め上げ、瞬く間に内部へ浸透し熟れきった肌を犯していく。即効性の淫毒は脳髄を容易く痺れさせ、待ちかねていた淫裂は今まで堪えていた愛液を洪水のように垂れ流した。
イバラの姉妹より取り寄せたラバースーツは高い運動性を着用者に約束するものの、物理的防御力は皆無に等しい。身体を汚染する呪力をいくらかは中和してくれるが、淫毒液で直接浸されればそれもまったくの無意味と化す。
すなわち、この大イソギンチャクが吐き出した大量の白濁淫液は清華にとって最悪の殺し手といえた。
(なんてこと!? なんて卑劣な……あぁあぁあああ!?)
内部に浸透した粘液がスーツ下の汗と混じりニチャニチャとこすれ合う。精液風呂に浸されるような感覚に女退魔師の肉体は瞬く間に発情し、全身の筋肉がへなへなと力を失っていく。
機能性を重視するあまり薄すぎるぴっちりスーツが肌に貼り付き、ぷっくりとした乳頭や硬く勃起した乳首の形までありありと浮かび上がらせた。下手をすればその淡いピンク色さえも透けて見えるほど。
たまらずバランスを崩した清華はもんどりうって転倒する。勢いのついた彼女の身体を正面の大妖魔がずっしりと受け止めた。
そして――
「な――――おやめなさい! そのような、あひぃいいい!?」
腰砕けになった獲物に向けて肉触手が殺到する。力の抜けた腕で抵抗しようとするものの、何十本もの触手を捌くことなど到底かなわず、あっけなく四肢を拘束されてしまう。
身体中を這い回りながら触手が巻き付く。ぬめぬめと粘液を帯びた肉触手はスーツ越しに清華の肢体を擦り上げ、同時に彼女の肉体を空中に釣り上げた上で自由を奪い取った。
足首、膝の裏、太腿に股関節、脇腹に肩や肘。とぐろを巻くように豊かな乳房へ巻き付き、搾り上げるような動きで乳悦を煽った。ズルズルと這い回る動きはアナルから淫裂へ肉の三角木馬のように圧迫し、たまらず清華は悲鳴を上げた。
「こ、こんな下等生物にやられるなど――ぉぉおぉお!? そこ、そこぉぉ……ぉぉおっ」
密着したスーツは感触を減退なく伝えてくる。すなわち肌の感触に関しては裸体とほぼ変わらないのだ。
淫毒に侵され乳房と変わらない感度になった太腿を締めつけられた挙句、一本の亀頭が清華の肛門をツンツンとつついた。それだけでゾクゾクとした快感が背筋を駆け巡り、艶めいたメスの悲鳴が清華の口から飛び出してくる。
犯されまいとキュッと締めようとした尻肉は、逆効果なことにそれまでアナルを弄っていた亀頭を挟み込みますます大妖魔を喜ばせる結果となった。尻たぶ越しに感じる亀頭は熱く硬く、これに貫かれればどうなってしまうのか絶望的な未来を清華に想像させた。
(こんなものがわたくしのお尻を……お腹の中をぐちゃぐちゃにして、それから……っ)
鈴口からはトロトロと白濁した先走り液が絶えず零れ続け、スーツを浸透してアナルを汁まみれにしている。肛門の皺に染み入り直腸に入り込んだ発情淫液は清華の理性を一つ一つはがし続け、硬く閉じた括約筋を緩ませようとしていた。
尻肉で挟み込んだ亀頭。力を緩めれば貫かれ、挟みつづければ淫液が身体を蝕む。何本もある触手が清華の淫尻を撫でては揉み上げ、そのたびに彼女はあられもない嬌声を上げるのだ。
「だめっ、だめですわっ、そんなお尻なんてぇっつんつんしないで我慢できなひぃぃいぃっ乳首だめぇぇぇっ!?」
食べられた。一瞬そう思った。
目の前に並んだ二本の肉触手。ぱっくりとグロテスクに口を開けた鈴口が、歯のない肉食獣のように清華の両乳首にかぶりついたのだ。
モミモミと咀嚼され、チュウチュウと吸引される。スーツ越しに勃起乳首を襲う絶感と直接責められることのない切なさに、清華の精神はいとも簡単に追い詰められた。
(おっぱいあついぃ、あついのにたべられてるぅ、こんなの気持ち良すぎますわぁ……)
淫肉をこね回す触手の愛撫に蕩かされていく。触手を引き剥がそうと掴む手からは力が抜け、さわさわと竿をさする手つきはもはや愛撫にしか見えない。唯一責められていない淫裂は蜜液だけで糸を引き、股に挟まれ蠢く触手に押し付けられて卑猥なマーキングを施した。
物足りない腰は刺激を求めてカクカクと痙攣し、ついに決壊し緩みきった括約筋は肉棒の侵入を許した。
「ぉほぉぉおおっ!? おしりっおしっぃむぐぅぅうぅう!?」
強引な挿入にもラバースーツは破れることなく耐えてみせた。伸びきった生地が触手ごとアナルに突き込まれたのだ。
腸壁を擦過するスーツ生地を纏った亀頭の感触。それに悲鳴を上げる間もなく肉棒が口に突き込まれた。噛み千切ろうという考えは一瞬で吹き飛び、潤んだ瞳を蕩かせた清華は口の中で脈打つ触手へ舌を絡める。
「あぶ、んんんぶ、えぅ、れろぁ……」
(あぁ……なんてはしたない……お尻とおっぱいを犯されて、その上口まで……このまま中に出されたら、きっと……)
絶望の予感か、それとも淫猥な期待か。
いずれにせよ、『その時』は呆気なく早かった。
口の中、尻の中でビクビクと痙攣する肉触手。来る、と予兆を感じる間もなく、イソギンチャクの本体から送り出された白濁汁が清華の口と尻に注ぎ込まれた。
「んぉぉぉ!? おぅぶぉぉおおっ!? んんんんぶぅぅっ……!」
焼けるような感触が直腸を逆流していく。体内から染みわたっていく特製子種汁が女の胎を作り変えていく実感。
肛瘧の果てに吐き出される熱い蹂躙汁に、清華は身体を仰け反らせて絶頂した。
腔内で充満していく白濁液。飲み込まなければ溺れ死ぬ液量に、清華は喉を鳴らして嚥下していった。
「んっ……ぐ、んはぁ……いけませんのに、飲んではいけないとわかっていますのに……っ、こんなのいっぱい出されたらぁ、飲むしかぁ……っ」
誰に対する言い訳なのか。もはや口から抜き取られ飲み込む必要もないというのに、肉棒から滴る残り汁を名残惜しげに舐めとる清華。甘露のように白濁汁を飲み干す彼女の顔に、つい半刻前の気丈な退魔師の面影はない。
敗虐の予感が胸を高鳴らせる。堕ちまいと心を奮い立たせる言葉は空虚に響き、胸奥のどこかには逆に圧し折られる瞬間を心待ちにしている何かがいる。
「あ、あぁあぁぁあぁぁぁぁ……っ」
止めが来た。清華を完全に堕とすための最後の責めが。
目の前に見せつけるように掲げられた巨大な肉触手棒。亀頭などという生易しいものではない。
ジュルジュルと染みだす淫液を撒き散らしながら、ドリルのように回転する異形の肉棒。亀頭にびっしりと生えたイボイボの一つ一つから白い汁が溢れ出す。
(なんて凶悪な見た目……こんなもの入れられたら、耐えられるはずが……っ)
耐えられるはずがない。理性は破壊され脳髄は快楽に狂わされ、肉棒に子宮まで蹂躙されて心の底から屈服させられる。
負けても仕方がないのだ。こんな立派なモノに勝てるわけがなかった。だからこれは仕方のない末路……清華が己を苛む自虐はしかし、敗北の言い訳と自らの被虐を煽る自慰に等しい。
その証拠に、スーツを巻き込んで挿入されようとしている肉棒に対し、淫乱聖女は自ら腰を持ち上げて迎え入れようとしている――
「はぁあぁぁぁっ、んはぁぁぁぁっ、ふ、ふ、ぁぁぁぁ……っ」
それを承知しているのか、肉棒は焦らすように淫裂を撫で上げ、卑猥なドリル回転が陰唇をバイブのように振動させた。ただそれだけで清華は舌を突き出して快楽を訴える。
満を持して肉棒は一層白濁を滲ませ、ひと息に清華の淫裂を貫かんと――
――――ズシン!!
突如響く、雷鳴のごとき異音。
地震のように世界が鳴動し、嵐に遭ったように輸送船が大きく傾く。
ぱたり、と。清華を貫くはずだった触手は唐突に力を失って地面に落ちた。
それだけではない。
「あう……!?」
清華を掴み上げていた十本以上の触手たちが一斉に萎え落ちた。一緒になって肉床に落とされた清華は衝撃に悲鳴を上げる。
触手を統率する大イソギンチャクは――――身体の上半分を消失していた。
見間違いようがなく大妖魔は死亡している。死骸からは体液が拡がり、秒ごとに肉体は崩壊を始めていった。周囲を異界化している肉壁や床は激しく蠢動し、動きが鈍くなった部分から腐り落ちていく。だんだんと本来の船内であったパイプや鋼鉄の壁が露わになって行った。
「ぁ……は、ぁ……」
――しかし、今の清華にとってそれはどうでもいい。
今は、待ちに待っていたとどめを阻まれ、破裂寸前に高まっていた淫乱な肉体をどうすればいいのか。その煩悩に頭が犯されきっている。
「たりない……たりないぃぃ……っ」
スーツ越しに巨乳を乱暴に揉み上げ、指先を淫裂へ突き込んでぐちょぐちょと掻きまわす。それでも高みにはなお遠い。
崩壊する妖魔の体液に全身を浸からせ、妖魔の残滓が完全に消え去るまでの時間が経っても淫乱聖女の自慰は続き、ついぞ満たされることなく朝を迎える――
――――トーキョー湾を一望できる高層ビルの屋上。そこにひとりの男が佇んでいた。
鍛え上げた長身は武人のごとき風格を滲みだし、赤色ランプの光は一見無個性な男の容貌を照らし出している。
傍らにはへし折れた避雷針の残骸。根元からもぎ取られた避雷針の跡は、本格的な工事を入れなければ修復不可能であることを物語っていた。
本来の男であればかかる費用に頭痛を堪えているであろう景色。しかし今はそれどころではなかった。
「どういうことだ、これは……!?」
眼下に見える、港湾に漂着した豆粒ほどの大きさの輸送船。
直線距離にして6キロは離れた場所から、輸送船第四船倉に巣食う妖魔の核を投槍のごとく避雷針を投擲し狙撃してみせた男は、自らの戦果以上のモノに目を奪われていた。
目を見開いて船を凝視する男は、思いがけないところで親の仇を見つけた、と言いたげな表情で口を歪める。
魔胎都市の夜は、あと少しで明けようとしている――