『最近の兄貴が結婚を機に色ボケしてきた件について』
「なに言うとんのや」
ヒロキです……たまに電話してくる妹からの誹謗中傷が辛いとです……
小さかった頃はあんなに世話を焼いてやり、妹も「ウチ大きくなったら兄ちゃんのおよめさんになる!」とか言っていたというのに、高校に上がったら反抗期が来たのかこのありさまである。かえして。
昼食を摂って後片付けやら掃除やら洗濯やらを済ませて、夕食用の離乳食を調理してタッパーに入れて冷めるまでだらけていたら、実家の妹から電話が来た。
まだ高1で受験も遠いし、土曜日の昼下がりなんだから友達と遊びに出かければいいのに。もしや学校でボッチなのではと心配になってしまう。
ちなみに咲耶は娘とお昼寝の時間だ。つまり俺が今から居間にお邪魔しても睡眠の妨げにしかならないわけですねぇ。
かくして父は大人しくソファで寝転びながらスマホを弄るか、叔母ちゃんと電話で駄弁るしか暇つぶしが出来ないのだよ娘よ。
そんな俺の近況が気に入らないのか、妹は唐突に俺に向けて色情魔のレッテルを張りつけてきやがったのだ。否定できないのが悔しい。
『兄貴も昔はなぁ、ウチらの友達とかからも結構人気あったねんで? 見た目爽やか系やし? がっついてないし? 合宿に車で送り迎えしてくれるくらい親切やったし?』
「そらなぁ。年季がちゃうからなぁ。ルックスなんて身綺麗にしとったらそれなりにイケるもんやろ」
前世からの教訓である。よほど顔面が壊滅していない限り、オシャレなんて身嗜みの延長でどうとでもなるもんなのだ。
月に一度散髪に行けば眉は整えて貰えるし、あとは吹き出物が出ないように気を付けて無精髭にならないように毎朝剃刀を当てる。清潔かつヨレてない服装を無難な組み合わせで固めれば、周囲に不快感を与えない程度に爽やか好青年の出来上がりだ。
そう持論を披露したのだが、妹の方の意見は違うようだった。
『いやちゃうって。兄貴のルックスとかは見られとらんわ。あれ絶対兄貴の筋肉にやられたクチやって』
「そっちかぁ……」
【悲報】ワイのファッション論はまったくの的外れだった模様【自意識過剰】
そうだよなぁ。あのころから転生特典のせいでかなりムキムキだったもんなぁ。いや、筋肉達磨という意味ではなく、ワイシャツ越しに形が浮き出る程度に抑えていた細マッチョだ。
そう、俺の筋肉は伸縮自在。戦闘時には自力でのパンプアップで二回りほど筋肉を隆起させることが可能なのである。
これといって筋力が増大するわけではないが、見た目のインパクトが凄いのだ。でなければ服を弾き飛ばす特技なんて大道芸以下の猥陳犯罪である。
『にしても特に筋トレとかしとらんかったやろ? 大学んときもレポート書くとき以外は家事ばっかで部屋にダンベル一つないやん。ウチとかいくら鍛えてもウエスト絞れへんねんけど? 兄貴のアレやっぱ詐欺やわ』
「身体の造りが違うからなぁ」
というか妹よ、勝手に人の部屋を漁るな。
俺の返答が気に食わないのか、妹は食ってかかった。
『身体の造りであんな腹筋割れるわけないやん! きんにくんがやる胸ピクピクさせるアレ実際にやられたときは軽くキモかったわ!』
「キモいとか言うなや。咲耶からのウケはいいんやぞ。「逞しいあなたの胸に抱かれていると心が安らぎます」って……」
『あー来た! はァーまた来たそのノロケ!! 嫁のリアクションなんか誰も聞いとらんわ! そんなに美人な嫁が自慢かァ!? 「あんなデカいおっぱいの嫁持っとう俺は人生の成功者です」言いたいんか!? どうせ毎晩揉みしだいとるんやろあのおっぱい!? ウチにも揉ませろや羨ましい!!』
「女の子がおっぱいおっぱい言うんとちゃうわ」
『FU●K!!!』
あかん、よし子がぐれてしもうた……。
去年の盆に帰省した際、連れて帰った咲耶は無事妹の脳を破壊してしまったらしい。気持ちはわかる。俺だって原作を知らず覚悟も無しに出くわしてたら美人過ぎて肝を潰してたかもしれないし。
感慨にふける俺を尻目に妹のぼやきは続く。
『だいたい何やねんアレ。マタニティ服越しにもわかる巨乳っておかしいやろ。肌もなんかすべすべして産毛もないし……何なん? この世って理不尽なん?』
ムダ毛がないのは多分淫紋の影響だろうなぁ。
第二段階以降に進んだ淫紋は、肉体を常に全盛期の状態に維持し続ける。つまり淫気が尽きない限り肌はピチピチだし腿はムチムチだしクーパー靭帯は伸びないという寸法だ。
そもそも、こうでもして肉体強度を上げないと俺との性交に耐えられないというのが泣き所なのだが。
「いや、よし子もそこそこイケとう方やって」
『半端な慰めとかマジ殺意しか湧かんからやめてくれへん?』
「あっはい」
コンプレックスが深刻なことになってる……。
この世の無常を嘆く妹を慰めることは俺には困難であったらしい。強く生きろ。
――と、そんなこんなで駄弁っていたら居間から話題の咲耶が戻ってきた。
「あなた、初穂は寝入って――」
「しー」
静かにするようジェスチャーで留めると、咲耶は得心がいった様子で口をつぐんだ。
なんだかんだ言って妹は咲耶に懐いているのだ。自分の妬み嫉みが彼女に聞かれていたと知ったら羞恥のあまり憤死しかねない。
そして妹の愚痴は留まる事を知らない。
『あんな美人と結婚したんやからわかるけどなぁ、兄貴も大概やねん。昔はあんなに女に興味ありませんって顔しといて、今や「子供は十人は欲しい」とか「今のマンションだと将来手狭になるかもしれん」とか? ――知らんがな!! 胸焼けするわ!!
ウチまだ高校生! 加古川一戸建ての物件なんて知っとるわけないやろ!!』
「せやろなぁ」
それについては我ながら早まった。高校生にする相談じゃなかった。でも仕方ないところもあると思う。
一年半前まではまさか俺が結婚して子供が作れるだなんて思いもしなかったもの。精々妹が結婚するのを見守って甥姪が大きくなるのを楽しみに老いていくんだなぁ、なんて達観していたのだ。
将来の展望なんてその日暮らしで充分だし、百年後のことなんて毛ほども興味が湧かなかった。父と母と妹、それだけで世界は完結していた。
――最近は、少し違う。
良くも悪くも愛は人を変えるのだろう。もう少し遠くを見るようになったし、手を伸ばす距離をもう少し伸ばそうとも思っている。
ごく最近気づいたことではあるが、どうやら俺は相当に強欲であるらしい。
…………そして咲耶、わざわざ俺がソファのスペースを開けて座れるようにしたのに、意味深な笑みを浮かべて立ったままなのはどういう意味なんです?
『おかしいやろ、兄貴ばっかりズルいわ。ろくに働いとるようにも見えんのに羽振りがいいし、ひとりだけトーキョー行ってシティボーイやっとうやん。自慢か!』
「言うて、トーキョーかてそないに見るもんとかないやん」
『新宿! 原宿! 渋谷! 浅草寺! 若者スポット盛りだくさんやろ! こっちは山と田んぼしかないのに!』
「ふふっ」
「ちょ……っ」
いきなりのことだった。唐突に咲耶が俺の脚に身体を割り入れ、ズボンのジッパーを下ろしだしたのは。
面食らったのは俺の方である。思わず声を上擦らせて抗議をあげるものの、露出した陰茎をまさぐられてあえなく黙らされた。鋼の精神力を誇る我が息子も、滑らかな指先で撫でられては抵抗する余地もない。ムクムクと硬くなっていく節操のなさに目を覆いたくなった。
『――なんやねん?』
電話越しに漏れた声に怪訝な様子の妹。いかん、どうにかして誤魔化さなければ……。
「なんもないわ。っていうか、その……アレやって。東京かてそんな良いもんでもないって。ものは高いし飯は不味いし、空気も悪いし方向もわからん」
『山の向きで南北見るのはウチらだけやねんで?』
「知っとうわそんなん。そこかしこに似たようなビルが建っとうからどこに何があるかわからんのや。人混みも凄くて気分悪なるし」
「あ~~んっ」
パクリ、と横合いから肉棒にかぶりつく咲耶。口の中に溜めた涎を肉棒に塗りたくり、ハーモニカのように唇をスライドさせる。裏筋を這う舌先の感触にゾクゾクと背筋が粟立った。
妹と電話で世間話をしている裏で行われる口淫奉仕。えもいわれぬ背徳感に怒張がますます固さを増していった。
「っ、……そ、それにホラ、トーキョー土産ならこないだ持って帰ったやろ?」
『お土産ってアレ? どこでも売ってそうな雷門饅頭と木刀とだんだらの羽織? 中学生の修学旅行土産かいな! あと新撰組なら
「いやアレは新撰組やなくて赤穂浪士のだんだらやから……」
『どっちにしたってウチの方が地元やん!』
失礼な。討ち入りのあった吉良邸は墨田区だから広義では浅草の方も地元といえるはず。まぁそれを言ったらどこもかしこも聖地だらけになってしまうが。
「んふ……」
「…………っ」
繊細な指使いで睾丸を揉まれ、亀頭の半ばまで頬張りながら舌先でチロチロと鈴口をくすぐられる。止めどなく溢れる先走りをその都度舐め取られ、嚥下する音がことさら大きく響いた。
これはマズい、完全にスイッチが入っている。最近は娘が夜中に起き出すのが気になってご無沙汰だったせいだろうか。潤んだ瞳が彼女がいかに欲情しているかよく表していた。
流石に様子のおかしい俺に気付いたのか、怪訝な声で妹が問い質してくる。
『……なんかあったん?』
「なんもない。ちょっと蹴躓いただけや……っ」
ズゾゾゾゾ! といやらしい音を立てて勢いよく肉棒を啜る咲耶。喉奥まで陰茎を呑み込み、舌と喉を使ったディープスロートで奉仕に没頭する。怒張が行き来するたびに細い喉が膨れ上がり、性交にありえない器官を犯しているという背徳感が興奮を煽った。
しかしいくら昂ったからといって本能のままに射精はできない。もし我慢が切れて白濁を放出すれば、たちまちに咲耶の喉は張り裂け精液が肺に雪崩れこみ溺れ死ぬことになる。
彼女はそれを理解しているのだろうか。理解したうえで受け入れているというのか。
何にせよ電話越しに誤魔化すのも限界が近い。無理矢理でもいいから通話を打ち切らないと――
『なあ、なんか変な音が聞こえたんやけど?』
「咲耶が鼻かんだ音やろ。冷房つけはじめた頃やし、夏風邪気味やねん」
『はぁ、咲耶さんが? あの人夏風邪とか引かんタイプに見えたねんけど』
そうだよなぁ。夏風邪はむしろ清華やリーゼが引くイメージだ(偏見)。いやでも、今まで出会って来た中で一番寒そうな格好してるのは咲耶だったしなぁ……。
「よし子も風邪には気ぃつけるんよ。最近は夏場でも危ないウイルスが蔓延っとるんやから」
『要らん心配せんでええわ、オカンか』
あ、そんなこと言っちゃう? 言っちゃうんだ?
実の兄貴のことをオカン呼ばわりしたからには、本当にオカンみたいに振舞った黒歴史を開示しちゃうよ?
「そらぁオカンみたいにもなるわ。こちとらよし子が風邪ひいたとき鼻水啜ってやった兄貴やぞ」
『…………はぁ?』
「んんっ……♡」
変な声が漏れないよう咲耶の後頭部に手を乗せて抑え込み、怪訝な返事を上げるスマホへ口を寄せた。喉奥を圧迫された咲耶がくぐもった苦鳴を上げ、喉全体が収縮し肉棒を締め上げる。
『何の話よ? 鼻水噛ましたくらいで何言っとうねん』
「ちゃうちゃう。赤ん坊は鼻づまり起こすと上手く鼻噛めへんねん。でも放っとくと中耳炎になるやろ? だから鼻を口でくわえて、思いっきりジュルジュル……と」
『はあああああああ!!??』
――――ボスン、と間の抜けた音。
どうやら妹はスマホをベッドへと投げ捨てたらしい。
『お母さぁぁあああああん!!! なあお母さん!! お兄ちゃんがウチの鼻水啜ってたってホント――――ッ!?』
遠ざかっていく妹の絶叫。思春期の女子高生にはいささか刺激の強い暴露話であったか。
ちなみに啜った鼻水はちゃんと口をすすいで流しました。そのうちウチの初穂が風邪をひいたら同じように接するつもりです。
――――あ、やば。
「そこまでだ、咲耶」
「ん、ご……っ」
名残惜しげに肉棒を呑み込む咲耶を無理矢理に引き剥がす。急に動かして喉を傷つけないように慎重に陰茎を引き抜いたが、唾液にまみれた肉棒が出きる寸前、咲耶の伸ばした舌先が鈴口を舐め上げたのがとどめになった。
「むぅ……っ」
「あはぁっ……」
ビュウビュウと音を立てて発射される我が精液。恍惚とした表情でそれを顔面に受け止める咲耶は、瞬く間にその顔を白濁まみれに染め上げられていく。
もはや着ていたTシャツは使い物にならなくなってしまった。ベトベトの粘液でブラが透け上がり、それを通してすらくっきりと見て取れる勃起した乳首が彼女の発情具合を表している。
「やってくれたな、咲耶」
「あァっ」
跪いていた彼女の脇を抱え上げ、ソファの上に押し倒す。脚を広げて身体を割り入れ、のしかかるようにして動きを封じた。
剥き出しになった肉棒がジーンズ越しに彼女の秘裂をグリグリと捏ね上げる。熱い吐息を漏らした咲耶は、期待の籠もった瞳で俺を見つめた。
「まったく。こういうのはやめろと言っただろうが」
危うく妹に痴態を感づかれるところだったし、おまけに下手をすれば咲耶自身死んでいた。悪戯にしては度が過ぎている。
咎める俺の内心を知ってか知らずか、組み伏せられた咲耶はどこか拗ねた風に唇を尖らせた。
「だって……最近あなた、初穂に構いっぱなしで御無沙汰なんですもの……」
「それは……かもしれんが」
首に咲耶の両腕が絡みつく。引き寄せられ、吐息がかかるほどの距離で見つめ合った。
「――二人目、早くつくりましょう……?」
「――――」
手を伸ばす。掌で咲耶の顔に付着した精液を拭い取る。次第に近づく互いの顔と顔。鼻先が触れあうほどの距離にまで近づいた。
潤んだ瞳が目の前にある。俺は込み上げる衝動に逆らわず、貪るような口づけを――
あ、ダメだこりゃ。
「初穂が起きる」
「えっ?」
襖越しに赤ん坊が身じろぎする気配がする。寝返りとは違う感じ、恐らく覚醒が近いのだろう。
寝る前には母親と一緒だったというのに、ふと目を覚ましたら隣に誰もいない状況――これはギャン泣き待ったなしである。
急いで娘のもとへ行かなければなるまい。咲耶の服は俺の精液でベトベトに汚れているし、一度シャワーを浴びた方が良い。つまり俺が娘のもとへ急行するべきだ。
「今回はお預けだ。名残惜しいが――」
「むぅ……っ」
ふと見下ろすと、眼前には頬を膨らませた咲耶の美貌。
欲求不満で堪えきれなくなった彼女が俺の鼻に噛みつくまで、残り三秒――
咲耶
自分の旦那が妹と、自分にはしない言葉遣いで楽しげに談笑している。
自分が蔑ろにされているわけではないが、微妙に疎外感。
何とも形容しがたい鬱憤をセクハラで晴らそうとした。
道鏡(本名:ヒロキ)
育児スキルがB-の男。
炊事洗濯掃除に裁縫と子育てに必要なスキルは中学時代にマスターした。
一時期自室の本棚がひよこクラブで埋まっていたことがある。
欠点はあまりに赤ん坊に構い過ぎるため、赤ん坊がむずがって自己主張する前に世話をしてしまい自立性を損ないかねない点。
学業と部活を投げ出して妹の世話にかかりきりになろうとしたら両親にどやされた。
ちなみにセックス時のスパンキングや首絞めといったSMスキルは前世の風俗通いでキャストのお姉さんに教わったもの。SはサービスのSです。
妹(本名:よし子)
別に兄貴に恋愛感情を抱いているわけではないが、男性観はだいぶ狂わされている。
修学旅行先が北海道に決まり、前々から報告するよう兄貴から言われていたので電話を入れたが、最後の爆弾発言で吹っ飛んだ。
後日改めて報告したが、これにより道鏡がトーキョーにこだわる理由がまた一つ無くなったことになる。