――少し、微睡んでいたらしい。
「咲耶。起きろ、咲耶」
(んん……)
無愛想に己の名を呼ぶ男の声。身体に降りかかるお湯の感触。心地よい疲労感に包まれながら、円城咲耶は覚醒した。
「ようやく起きたか」
背中に感じるごつごつした人肌の感触、耳元で囁かれる男の声。
咲耶の背後に密着した男は、顔の横から覗きこむようにして女の様子を窺っていた。
頬同士が触れあうような近距離。吐息に混じる雄の匂いが鼻腔をくすぐる。
「いきなり崩れるから何事かと思ったぞ。仮にも最強などと名乗るくらいなら、もっと気を――むぶ」
「はむ――――ぶぁ、じゅるる……」
我慢する理由がどこにあるのだろうか。
衝動のまま男の唇を奪う咲耶。吸い付くように下唇を甘噛みし、零れ出た唾液を貪欲に啜り上げる。
ズクズクと子宮が疼いた。まだまだ愛され足りないと、下腹部の奥深くから鳴き声が聞こえようかというほどに。
「もっと、もっとぉ……オチンポもっと欲しいのぉ、奥が疼いてたまらないの……っ」
甘ったるい鼻声で女が哀願する。調教師に教え込まれた淫語が今や抵抗もなくするりと口から滑り出た。
男はそんな女の唇を舐め上げると、なだめるように言葉を選ぶ。
「とはいえ、このありさまでは流石にな」
「ひぅっ!?」
ズルリ、と咲耶の淫裂を厚い塊が擦り上げた。たまらず声を上げた咲耶に男が顎で指す。正面には浴室の鏡があった。
咲耶はいつの間にか両膝を掴まれ抱えあげられていた。背中に感じる男の胸が厚く頼もしい。膝を掴まれM字に開脚させられた女の姿が、鏡にありありと写しだされている。
女の腹は大きく膨れていた。中出しされた直後ほどではないが妊婦かと見紛うほどに大きくなった下腹部。そして秘裂からは失禁したかのような勢いで白濁液が逆流して溢れ出ている。
(あぁ……もったいない……)
咲耶の豊満な尻を伝って浴室のタイルへ垂れ落ちていく精液。どうにかとどめようとあちこちに力を込めるものの、トロトロと漏れ出る白濁は一向に勢いが衰える様子が無い。
隆々とそびえ立つ男の肉棒は咲耶の秘部の直下にて、硬さを失わないまま精液と愛液の混合シャワーを浴びていた。
ぬらぬらとてかり反り上がった亀頭が淫裂をなぞるようにあてがわれ、呼吸のたびに陰唇をこね回す。鈴口が硬くなった陰核を突くたびに痺れるような感覚が咲耶を襲った。
「――これ以上注ぎ込めば、流石に腹が破裂する。続きはもう少し垂れ出てくるのを待ってからだ」
「ぁ、ん……」
お預けを宣言する男に咲耶は悩ましげな喘ぎ声で応えた。視線の先には鏡越しに自らの淫芽をなぞり上げる萎える気配もなく逞しい肉棒。白い汁をとめどなく漏らす淫裂は、ヒクヒクと物足りなさげに口を開いて亀頭へ吸い付こうとしていた。
なのに男はそれに応じもせず、漫然と咲耶の膣から精液が抜け出て腹が萎むのを待つのだという。
(なんて卑劣な……こんな身体のまま、ずっと放置するつもりなのですか……っ)
取りこぼされていく精液に啜り泣く子宮、目の前に
気が狂いそうなほどのもどかしさが咲耶を襲う。力なく垂れていた腕を使い男の腿や尻を愛撫して誘惑しても、淫芽をつつく亀頭がますます固くなるばかりでそれ以上が起きる気配もなかった。
「は、ぁ――――ん……っ」
唇を噛み、眉根を寄せて力を込める。腹筋と括約筋、そして膣の肉に。
まるで赤ん坊の出産のようだ。膣口そのものは緩めながらも、中にあるものを押し出すように肉穴を蠕動させる。
全ては魔界一の奴隷調教師の調教の産物。彼自身が最高傑作と評した人類最高峰の肉体が、その技術の粋を駆使して淫肉を蠢かせた。
「ぉぉ……ふ、んぅ……」
「もう少しだ、咲耶。あと少し」
その姿はまるで、幼子の排尿を手伝う親のよう。倒錯的な背徳感がぞくぞくと背筋を震わせる。
声を詰まらせて体を息ませるボテ腹の女退魔師。押し出された白濁液がバチャバチャと浴室のタイルを叩いた。
彼女を抱える男はすぐにその意図を察し、耳元に口を寄せると励ましを囁く。同時に女の耳を口に咥えると、モミモミと甘噛みし舌で味わい始めた。その感触に腰が砕けそうになりながらも、必死の思いで咲耶は腹に力を込め続け、そして――
「ゃぁん、あ……おぉ、んぉぉぉぉおおおおおっ」
「――よく出来た。頑張ったな」
「ぁぶ……ちゅる、んふぁ……」
――出し切った。
男の足元に広がる白い水溜り。淫紋が赤く輝く下腹部は元あった曲線美を取り戻している。
ご褒美とばかりに男が口から突き出した舌に、咲耶は童女のような顔でしゃぶりついた。
――――咲耶を抱え上げたまま、男は浴室を出てベッドへと向かった。湯を浴びて火照った体を空調の利いた部屋の冷気が冷やそうとする。
大切な宝物を扱うように男は咲耶の身体をベッドに横たえた。弛緩する肉体、気だるい疲労感が心身に纏わりつく。
高鳴る期待感のまま、咲耶は言われるまでもなく足を広げて男を迎え入れ、
「――――さて、円城咲耶。ここが最後の分水嶺だ」
ツブ、と亀頭が半分まで埋まる。ひと息で貫いてくれないもどかしさに叫びそうになった。
そんな咲耶の内心など知らず、男は鈴口で陰唇をなぞり上げる。
「まさかここまで来るとは思わなかったが。まさに今、お前に刻んだ淫紋は最終段階に入った。俺のコレは容易に受け入れられるし、精液で膣口が裂けることもない。そして――――わかるか?」
タコのできた無骨な指が淫紋をなぞる。子宮の形を描くような赤い模様、その中心を親指の腹で圧す。
それの意味がわからない咲耶ではなかった。
「……だから、これが最後だ。今なら引き返せる。まだ元の生活に戻れるぞ」
感情を窺わせない声色で男が言う。
「身を引け。さもなければ俺の女になれ。今ここで選ぶといい」
「ぁ――――」
思わず身じろぎをした女の腰。しとどに潤い、糸すら引いた淫裂が男根を求めて男の鈴口にしゃぶりつく。パクパクと物欲しげにとどめを誘う肉穴に、しかし男は応えない。カチカチに硬くなった怒張は亀頭の半分の身を膣にうずめたまま、咲耶の返答を待っている。
(そんな……っ)
最後の最後でお預けを強いてきた男に、咲耶は悲痛な泣き声を内心で漏らした。
――ひどい男、わるい男、いじわるな男。
ここまで散々に追い詰めておきながら、最後の一線は女の意志で踏み越えさせようとする。答えなどわかりきっているようなものなのに、逃げ道を切り捨てたのは他ならぬ己の選択なのだと辱めたいのだろう。
いっそ無理矢理に組み敷いて犯してくれるなら言い訳も立つというのに、この男はそれさえも許してくれないのだ。
「は、ぁ―――――」
荒くなる呼吸、激しくなる鼓動。咲耶の熱い視線を受けて隆々と勃起する肉棒。しかしそれは男の強固な意志を示すように、女の肉裂に突き込まれる気配はない。
――――欲しい。この雄々しくそそり立ったモノが欲しい。
――――欲しい。子宮を突き上げ肉襞を押し分けるコレが欲しい。
――――欲しい。膣内をパンパンに満たし、子宮すら溺れさせるほどの――
「どうする、円城咲耶。俺のモノになるか?」
その問いに、咲耶は――
「もう――――なってる……ッ!!!」
男の背中で組み合わせた両足を使って、ひと息に抱き着いた。
「お゛ぉっ……」
どちゅん、と突き込まれた肉棒が容赦なく子宮をへこませた。あまりの衝撃に明滅する視界、くらくらとバランスを失う三半規管。――――そしてそれを上回る、圧倒的な充足感。
腰を浮かして背中を逸らし、舌を突き出して快感に酔い痴れる女退魔師。男は浮いた背中に腕を回し入れると、今度こそ注挿を開始した。
「ふ――――ふ、は……っ」
「あはぁああああっ! 大きいの、大きいの来たっ! 堕ちた、堕ちちゃった! 堕ちちゃいました! こんなに逞しいの勝てるワケ……っ」
荒々しいピストン。タガの外れた咲耶は人が変わったようによがり狂った。
征服の嗜虐感に獰猛な笑みを浮かべた男は追い詰めるように問いかける。
「なるんだな? 俺のモノに」
「なるぅっ!! なります!! へぇぁあ、あなただけの肉穴奴隷にっひぃぃいいいいっ!!」
「俺のために生き、俺の後に死ね」
「むりむりむりぃっ! あなた無しの人生なんてそんなの考えられ――――」
「咲耶」
――――ずん。
息の詰まるような一突き。コリコリに充血した乳首を指先で摘まみ上げられる。たまらず咲耶は涎まみれの悲鳴を上げた。
「んはぁあああああ乳首イクっ、オマンコイクっ! 両方いっしょにイってる止まらない止まらないのぉおぉお~!!」
「俺に全てを捧げ、全てを棄てられるか?」
「コレ以外何もいらないっ!! あなた以外何もいらないぃっ!! だか――あへぇぁあズンズンすごいっ、オチンポずんずんするの凄すぎるぅぅうぅうう!!」
すでに十回以上の絶頂に理性すら吹き飛ばされた。恥じらいもなく淫語を連発し更なる責めを誘惑する淫乱退魔師。それに応えるように男のピストンは激しさを増した。
そして、
「――――俺の子を孕み、ともに育てるか?」
その問いに、
(――――孕む。この人の、この人との、赤ちゃん――――)
言葉がリフレインする。脳裏に映し出されるのは、膨れ上がった己の腹とその中に感じる命の息吹。傍らで微笑む目の前の男。それはどんなに幸福で満ち足りた――
淫欲に染め上げられた脳髄は、躊躇いなく答えを弾き返した。
「――孕むっ、孕みますぅっ! 十人でも二十人でもぉぉおっ! だから下さいあなたの赤ちゃん汁っんぉほおおおお!!」
ぶっしゃぁあああ、と。痛々しいほど勃起した乳首から真っ白い母乳が噴き上がった。
初めての噴乳に仰け反って快感を示す女退魔師。男はそんな彼女を抱き上げると今度こそ破顔した。
「気の早い奴だ! そんなに欲しいか、俺の子種が!」
対面座位。自身の胡坐の上に女を座らせ、豊満な尻肉に指を沈み込ませる。アナルすら巻き込んでこね回される快感が脳髄を痺れさせた。
これまでは嫌というほど忌避してきた浅ましい淫らな感触。しかしもはやそれは遠ざけるものではなくなったのだ。
「いっひぃいぃいお尻っお尻でイク! 入れられてもないのにぃぃイクイクイクイクぅぅぅっ!」
媚肉をこね回され歓喜の悲鳴を上げる絶頂の退魔師。達するごとにピュッピュッとミルクを噴き出す乳首に、男が大口を開けてかぶりついた。
「あはぁああああっ、おっぱい……おっぱい飲まれてるぅ……っ」
歯型がつくほど強く乳房にかみつき、吸い上げながら舌で乳首をねぶり尽くす。淫乳を襲う虐悦に咲耶は感極まった吐息を漏らした。
(あぁ……さくやのおっぱい、たべられてる……)
まるで赤ちゃんみたい、と、無心に咲耶の乳房にしゃぶりつく男の姿を見て彼女は思った。汗ばんだ男の頭を抱え込み、もっともっとと言わんばかりに媚肉を押し付けた。
更なる吸引。じゅるるると涎混じりの母乳をすすり上げる水音が、鼓膜から女の官能をさらに煽る。
――どちゅ、――どちゅ、
「あはぁぁっ、ぉおおっ、んぉぉおっ、えへぇぁああっ」
注挿は休みなく続いていた。肉付きのいい女の尻を掴んだ男の手が、リズミカルに女の身体を揺さぶっている。
そして咲耶自身、肉棒がより自分の弱点を轢き潰すように腰を動かしていた。
もはや快楽に逆らう心を捨て去った淫乱女退魔師は、いっそ嬉々とした表情で自身の身体を汚しつくそうとする。
「おぉっ、ぉんっ、んぁっ、あはぁっ、へぅぁっ」
せわしなく熟れきった媚肉を突きあげる肉棒。言葉を話す余裕も失われ、一心不乱に腰を振る男女。突き上げるたびに降りきった子宮口は鈴口へ熱烈な口づけを落とし、肉襞の一つ一つがざわざわとうねり蠢いて肉棒を愛撫する。
グリグリとポルチオを圧迫する亀頭、引き抜くたびに膣内を掻き乱す雁首。快楽を受け入れた女にとってなにもかもが愛おしい。ひたすらに濃厚なオス汁をねだり身体全てを使って絡みつく。
ビクビクと脈打つ竿は締め上げるほどに太さを増して射精への期待を増した。
そして――
――――ごり
「ん゛、ぉお゛お゛ぉおっ」
(し、きゅう……っ)
ガッチリと掴まれた腰のくびれ。腰も砕けよとばかりに打ち落とされ、迎え入れた剛直は鉄のように固く。
まるで肉食獣のように女の喉笛に噛みついた男。もはや逃がさないと言わんばかりに白い肌に歯を立て、完全に屈服した女退魔師の被虐を高めた。
子宮で感じた二度目の爆発は、一度目とまるで遜色が無かった。
「――ぁ……」
びゅうびゅうと音を立てて膣内を満たしていく白濁液。勢いが衰えることもない長々とした射精は、あっという間に膣内に充満し再び拡張させていく。
「あ、ぁああぁああ~~~~ッ! ああァあぁああああああ――――ッ!?」
(すごいっ、これ凄すぎますっ! 絶対できてるっ、こんなの絶対受精してる赤ちゃん出来てる孕んでるのぉおおおお!)
狂乱しイキ狂う女退魔師。淫蕩にとろけきった表情にかつての面影はなく、メスの衝動に任せて快楽を貪る浅ましい姿には堕ちた女神のような背徳的な淫靡さが備わっていた。
受け入れた精液でパンパンに膨れ上がったボテ腹は、しかし彼女の美貌を一切損ねるものではない。
喉から込み上げる甲高い断末魔じみた悲鳴。苦悦の滲んたそれは長く尾を引くごとに艶を増し、歓喜の悲鳴へと切り替わる。
ベッドへと背中から倒れ込む。射精の余韻にビクビクと腰が跳ね、絶頂収まらず荒い息が肩を激しく上下する。赤々とした淫紋が刻まれ、臨月のように膨らんだ下腹部は、一匹のメスがオスへ隷属した証のようにも見えた。
舌を突き出して激しい呼吸を繰り返す咲耶に男が口を寄せる。メスの淫穴にひしめく肉棒は萎える様子もなく、まだまだ咲耶をいじめ足りないと主張していた。
「――まだ俺は物足りないが。お前はどうだ、咲耶」
「――――はぶぅ……っ」
返答は、貪るような口づけ。
男女のまぐわいは三日三晩続いた。
男の衰えることのない精力は女をとことんまで追い詰め、許しを乞わせ、泣き叫ばせた。なおも足りぬと男は女をひたすら責め苛み、女は何度も気を失った。
気を失うたびに男に口移しで唾液を飲まされ、それが気付けになって目を覚ます。そして再び淫獄へと突き落されるのだ。
食事など摂った記憶はない。口にする物は濃厚な男の精液と、また口移しで飲まされる唾液混じりのミネラルウォーター。極上の甘露のように受け入れた。ただそれだけで疲労は吹き飛び、舞い戻るように淫事へと没頭する。
咲耶の身体で男の舌が這わなかった場所はない。
咲耶の身体で白濁液がなすり付けられなかった場所はない。
咲耶の身体で奉仕に使わなかった場所はない。
丹念に、しかし乱暴な、宝物を愛でるような凌辱。
夢のような淫楽の中、とうとう咲耶が完全に力尽きる形でこの房事は幕を閉じた。
――――円城咲耶が失踪して、八カ月ばかりが経った。
現役最強の退魔師の突然の失踪である。当然、退魔界は混乱の坩堝に叩き落とされ、上も下も蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。
特に慌てたのは退魔省の役人である。彼女へ道鏡の討伐を依頼した、その直後の消息不明。恐らくは道鏡に敗れ遺体すら残らなかったのではないかと推察され、唯一無二の人材の喪失に責任問題にまで発展した。これを機に退魔省への予算編成に大きなメスが入れられることになる。
退魔界の混乱と対照的に、妖魔による被害件数は減少を続けていった。理由は明白、道鏡の暗躍である。
円城咲耶を打ち破ったのちも道鏡は精力的に退魔業をこなし続け、日本各地の妖魔目撃例はもはや数えるほどに減少し続けている。このままいけば五年以内にも妖魔は日本から撲滅寸前にまで駆逐され、人間への被害は最小に抑えられるようになるだろう。
しかしそれで収まらないのはその他の退魔師である。刻一刻と自分の食い扶持が食い尽されていき、残された時間も少ないとされた彼らは、少しでも後々の蓄えを残しておくために血眼になって妖魔討滅の任務をこなすようになっていく。いずれ来たる平穏な日本に自らの居場所はないと、海外へ飛ぶ退魔師も見られた。
そして何より、現神守家当主神守清華は、
「咲耶お姉さま……お姉さまの仇は、この清華が必ず……っ」
濡れ羽の黒髪をなびかせて、シスターの装いも勇ましく。
仇敵の打倒に心を燃やし、残された現役最高戦力の一人として妖魔討伐の使命に一層打ち込んでいく。
――――その光沢を放つラバースーツの下、可憐なつぼみを隠す下腹部に刻まれた桜の花弁のような痣に気付く者は未だにいない。
――――夕暮れのトーキョーを歩く。まだ空も赤らみ始めたばかりの、晩夏の高い空の下だ。
行き交うのは仕事帰りのサラリーマン、ファストフード店から出てくる学生たち、乳母車を押す主婦に、道端でアンケートを取っているボランティア。
耳をすませば子供の笑い声、男女の談笑する声、工事を急かす職長の怒鳴り声に、携帯越しに愛をささやく男の声。
たった一年でここまで変わったなぁ、となんだか感慨深い気分になった。もはやここは『魔胎都市トーキョー』と呼ぶにはふさわしくない。あやかしが産む闇は踏みつぶされ殴り潰され、今やある種健全な魔性の介在しない人とネオンが入り乱れる欲徳の街へ生まれ変わろうとしている。
懐かしい雰囲気が戻ってきた。PCの画面越しにしか知らない「トーキョー」から、前世の俺が知る「東京」へと少しずつ変質していく感じ。不快ではない。
もうこの街は夜中に女子供が当たり前のように犯される土地ではない。
もうこの街は遊びのように人間が殺される土地ではない。
もうこの街は得体の知れない退魔師が火を噴いたり剣を振り回す土地ではない。
ここならまぁ、オカンがよくやる「トーキョーはおっかない」のレッテル張りも少しは収まるのではないだろうか。
割とマジで切実なんだよなぁ、事あるごとに「帰って来い」ってしつこいし。でもゴキブリみたいに湧いてくる妖魔を駆除するのにあと20年は要ると見てるしなぁ。何とか納得してくれないかなぁ。
雑踏をかき分けながら帰路につく。辿り着いたのは四階建てのマンションだ。オートロックを抜けて部屋に入ると、味噌汁の香りが漂ってくる。
パタパタと床を鳴らすスリッパの音。居間の扉を開けて顔を出した女は俺を見ると綻ぶような笑顔を浮かべた。
「おかえりなさい、あなた」
「んー……」
なんだろう、ジーンときた。
靴を脱いで上がりこむと、きょとんとした顔の彼女に顔を近づける。
「――――どうしたんですか?」
「いや、まぁ……ただいまは、言いづらくてな」
しゃあないねん。帰った時に真っ暗じゃない部屋に迎えられるとか、ちょっとびっくりするしそのあと心が浮足立つねん。絶対に手に入らないものやと思っとったもん。
長々とした説明が面倒になり、咲耶の唇を軽く塞いだ。軽く目を見張った彼女はすぐに表情をとろけさせ、どちらかともなく舌を絡めた。
胸をまさぐる。ずっしりと重みを増した美巨乳は、服越しにもわかるほど張っている。
「ん――――もう、あなたのお乳じゃないんですよ?」
「生まれるまでは俺のだ。そうだろう?」
「なら――――あとでちゃんと、吸って飲んでください?」
布地にじわりと滲んだ母乳に、淫蕩に微笑む女の顔。彼女の左手は、大きく張り出した自らの腹をさすっている。
今すぐにでも押し倒してしまいたい気持ちがムクムクと起き上がるものの、そうはいかないと自制して。
「その前に、夕食にしよう。米は炊いてあるか?」
「えぇ、それとお味噌汁も」
「良さげな鯛が買えた。煮つけは……時間がかかるから明日にするにして、とりあえず造りと塩焼きにしよう」
「丸ごと一尾買ってきたんですね。……ちゃんと処理できるのですか?」
「当然。そういう心配は俺より料理がうまくなってから言うといい」
「まあ、ひどい」
二人で並んで居間へと歩く。狭い廊下では自然と身を寄り添いあって、腰に回した手の平の感触を愉しみながら。
――――まぁ、なんだ。
思いもよらない結末ではあったが。触手作品世界の竿役はこうして自分の居場所を見つけたのでした。めでたしめでたし――
作品制作経緯。
「魔胎都市の新作、RPGなんやって。こりゃあと一、二年は新作ないやろうなぁ、供給足りないなぁ」
↓
「せや、自分で書いたらええねん」
↓
「触手描写難しすぎ。どないすんねんこれ」(1話挫折)
↓
「しゃあない、転生オリ主に竿役させたろ」(何故かモリモリ書ける)
↓
「竿役が無双する触手作品とか、コンセプトから逸脱しまくってるのでは? むしろ腹斬って詫びる案件では?」(戦々恐々)(今ここ)
なので解釈違いのクレーム感想が来たら謝罪して削除の上逃亡する予定でした。匿名なのはそれが理由だよ。
ぶっちゃけこの二週間、文体を黒井先生にどうにか寄せようと真をずっと読み返していたので、仕事中もムラムラが収まらなくて大変でした。二度とやらねえ。
結局最後はもう自分の文章でやるしかねえなと開き直ったので、かなりむらのある文体となっていると思います。
投稿からこれまでお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
だいたい私が書きたいシチュエーションは書ききってしまったので、一旦これにて完結とさせていただきます。
続編が書けるかどうかは……リビドーの湧き具合次第、としか。
だからみなさんこれを機に「俺がほんとの魔胎都市触手ものSSをみせてやる」と奮起して投稿なさるとよろしい。負けじと私が竿役物を投稿します。
それではまた、これの続きか別の作品にて。