チャラゲス男がゆく!NARUTO世界! 作:特盛炭酸ラーメン
テンジという男はどの時代でも常に好き勝手をしている。
とは言っても、主に女関係だけが目立って破天荒で、好き好んで歴史の表舞台に立って引っ掻き回すタイプでもない。
そのへんはテンジの
「はい、父さん」
黒ゼツが、やたらかっこいいデザインの仮面をテンジへと手渡すと、テンジは「へー、かっけーじゃん」とまじまじと観察し、評した。
〝かっけーマスク〟……そのデザインは実に厨二心を絶妙にくすぐる代物で、暗部が装着している仮面に比べると和風度合いが低い。
和を基本としつつ微妙にSFチックでサイバーパンクなガスマスクといった感じであり、つまりは音に聞こえる雨隠れの〝山椒魚の半蔵〟の防毒シュノーケルっぽい。
そこに目元もサイバーな感じに隠すバイザーまでついていた。
「なに?くれんの?サンキューな、息子!…………コーホー…コーホー…どう?俺イケてる?」
「やっぱりだ!すごく似合ってるよ父さん!」
早速イケメンフェイスに括り付けて、イケてるポーズを一頻りとった後、ゼツの頭を抱えてよーしよしよしよしと撫でまくると、ゼツは「へへへ」と黒い顔に浮かぶ琥珀色の目と、ホワイトニングでもしたかのような真っ白いギザ歯をニンマリと弧にして実に嬉しそうだった。
そのまま撫でられる事、十数分。
いい加減、テンジの方が疲れてきた時にようやくゼツが、
「いや、違う。そうじゃないんだ父さん」
我に返ったように父からむにーーーっと離れた。
「父さんにはこの仮面をつけてもらって、正体を隠して色々活動してもらいたんだ」
「マスクで隠さなくても変化で他人になれっけど?」
「……まぁ……父さんの術の精度ならそれで絶対バレないだろうけどさ…。
………………………そこは……気分というか。
かっこよくてミステリアスを演出したいんだよ…!
母さんも、〝テンジは虚仮威しも大事じゃと言っておった〟って喋ってる記憶が僕にはある。
だからこれも大事な作戦なんだ!」
どうやらゼツは歴史を動かすために暗躍するとてもかっこよ!な組織を作るらしい。
その組織は少数精鋭でありながら大国をも揺るがす事の出来る、というなんとも素敵な組織らしい。
だからケレン味とか凄味とかの演出面でも手を抜かず、一目見て「あいつらただもんじゃねぇ」という組織をつくりたいらしい。
「組織の要……表向きのリーダーとか、そいつを裏から操る黒幕まで、もう設定してあるんだよ!」
ウキウキ顔で〝ボクの考えた最強の秘密結社〟の設定を疲労するゼツの笑顔は、実に子供らしく輝いていた。真っ黒だけど。
そんな厨二病真っ盛りの息子を生暖かい目で見守りつつも、テンジとてそんな厨二設定が嫌いではない。むしろ好きだ。いくつになっても○○女子とか自称してキャピキャピする女と同じで、男もまた何歳になっても男の子なのだ。
ほほぅそれでそれで?と腕を組んで息子の練りに練った設定を頷いて聞く父。
「最近、活きの良いうちはの子供を見つけてね。
オビトっていうんだけど。
しかもいい感じにあの一族らしく情が深過ぎて、しかも片想いしてて、単細胞なんだ。
すっごく利用しやすそうでしょ?
近い内にタイミング見計らって、地下に匿ってるマダラに接触させようかなって思ってる。
あと、雨隠れにも面白そうな奴らいるんだ。
そいつらが〝暁〟って組織作って色々やっててさ!
その暁を最強テロ集団に育てて、母さん復活計画に役立ってもらうんだ!」
「でた!暁!もうそんな時代か~~…時が経つのはえーわ」
「でたー!父さんの未来を見通す時空間術!
暁を僕が利用するのも、もう知ってたんだね?さすが父さん…やはり天才…」
「え~?よせやい、照れるっつーの!……まぁホントのことなんだけどな!がはは!」
「さすが母さんがべた惚れしただけはあるよ!父さんさすがだなぁー!」
ゼツは基本的にとてつもない策謀家であるのだが、愛情に飢えているゼツは父テンジと会話していると、知能レベルが親に甘えるガキンチョレベルに下がるというか、鈍るらしい。
互いに「でたー!」とか言いつつ盛り上げあって、二人共酔っ払ってんのかというぐらいのテンションでガハガハ笑い合っている。
「それでね…父さんにはこの仮面をつけてもらって、ゆくゆくは〝暁〟の精鋭として活動してほしいんだ」
「へぇ…俺が暁か…ふーん…」
ゼツの提案は、テンジにとっても実に魅力的だった。
主に厨二心的に。
男なら、誰だって〝とんでもない力を持った一匹狼達の群れ世帯で、その気になれば一国をも相手取る事ができるアウトロー組織〟に惹かれる。
入らない?なんて聞かれたら、入りたいです!と答えるのが男心。
しかも、テンジはピーーンと来たのだ。閃いたのだ。
(…暁に………たしか、可愛いデカパイがいた気がする…)
小南である。
彼女は、〝暁〟所属を示すあの、黄赤色の暁雲模様を刻んだ黒い外套の下に、とんでもないスケベボディを隠し持っているエロ女なのだ。
原作中ではその豊満な肉体を晒す機会に恵まれなかった小南だが、設定資料やスマホゲームでは惜しみなくそのスケベっぷりを披露している。
胸の大きさでは綱手に劣るだろうが、それは相手が悪い。
千手綱手は恐らく忍界一のスケベ巨乳を誇る美女で、綱手と相対すればカグヤとておっぱいでは負ける。
綱手の乳は、ベッド百戦錬磨のテンジから見ても、「かつてこんな美巨乳は他にいない」と思わせた。
そんなおっぱい界の横綱は置いておくとして、とにかく小南もまた隠れ美巨乳の一人。
現時点ではまだ青い果実だが、テンジがロックオンするには充分過ぎる理由があった。
「オッケー!しょーがねーなーー…可愛い息子からの頼みだかんな…パパンに任せておけって、マイサン」
歯をキラリとさせて爽やかに了承すれば、
「ありがとう父さん。ふふふ…これで僕の計画は成功したも同然だよ。
糸はそこら中に張り巡らせているのに、そこに父さんまで加わったら、もう失敗しようがない」
母解放はいよいよ現実味を帯びてきて、しかも父とこうまで一緒に活動できている。
それがゼツには嬉しかった。
千年近く、ゼツはたった一人で活動を続けていた。
甥達には自分を否定され、理解を示してくれるかもしれない兄姉達は月に籠もっていてコンタクトがとれない。
母との再会をひたすらに一途に目指して、そのためにはどんな汚い手も使ってきた。
自分という存在を否定した意趣返しもあったが、甥達すら目的の為に利用してやった。
その中で見つけた〝父の破片〟。
母カグヤから受け継いだ記憶が、感情が、
間違えよう筈がなく、「これは、と、父さんだ…!父さん!まだ、生きている!!」と、そう叫んで思わず落涙しつつ、ゼツは必死に父の破片を集めた。
そして、母解放の計画を練り、進めると並行して、父の破片を集め、父の再生を助長し、その復活にも細心の注意を払い続けてきた。
その果てに、父テンジと再会し、しかもテンジは一目見るなりゼツという〝息子〟の存在を受け入れてくれたのだ。
ゼツの喜びと感動は如何許か。
その上、ゼツはカグヤから記憶や感情を多く受け継いだ〝クローン〟としての性質もあり、テンジを強烈に慕うカグヤの想いも受け継いでいるものだから、もうテンジにはダダ甘なのだ。
きっとテンジが「カグヤ復活やめて、俺と面白おかしく父子家庭築こうぜ?」なんて言われたら頷く。…かもしれない。
とにかく、そんなふうにテンジにダダ甘の尽くしちゃう系息子であるゼツだから、これからの計画の一端をテンジに説明している中で、父が渋い顔をした瞬間にゼツは(っ!と、父さんが、嫌がっている!!)と速攻で計画の変更を確定事項として受け入れていた。
こんな感じで。
「それで…まぁ結構な運も絡んだけど、改竄したハゴロモの石碑を利用して……マダラって奴がとうとう輪廻眼を開眼したんだ!
母さんの復活には輪廻眼が必須だ…マダラなら、母さん復活の生贄に丁度いい。
けど、マダラは歳を取りすぎているから……今はマダラに全盛期を取り戻させる計画を進行中さ。
そして、暁には十尾の本体である外道魔像を解放する為に、一尾から九尾までの尾獣を回収させる。
マダラの方は何とかするから、父さんは暁に潜り込んで、暁という組織を崇高で若い志の集団から、テロ集団にでも変えてもらいたくて。
…ま、変えるっていっても、その布石ももう打ってあるんだ。
だから父さんは、暁に潜り込んで、だらだらしてればいいよ」
「…(なんか…うろ覚えだけど、嫌な予感すンだよな~。ここって結構カワイソな展開多めじゃなかったっけ?)
息子よ。ちょい聞いていい?具体的にどんな手段使う感じ?ストーリー教えてくんね?」
「うーんそうだね。
例えば…オビトって奴の片思い利用して、片思い相手…リンっていうんだけど、そいつを目の前で殺そうかなって思ってるんだ。
キャストもばっちり揃えてるよ。
まずオビトを半死半生にして、それから爺になったマダラに接触させるでしょ?
そして…霧隠れの里を使ってリンって子を尾獣爆弾にでも変えちゃうんだ。
そうしたら、いつ暴走するか分かんない人柱力になったリンを、オビトの親友のカカシって奴に殺させる。
大事なのはタイミング…カカシがリンに止め刺した瞬間を、オビトに見せつけて絶望を与えてやれば、うちは一族特有の絶望に誘発されるチャクラ信号でさらに瞳力は強くなる。
しかも憎悪とか復讐とかに取り憑かれた奴って制御が簡単だからね。
オビトは、マダラを若返らせる起爆剤としては申し分ないと思うよ。
それから……―――――
…
……
そしてね――――――
…
……
んでもってさ―――――
…
……
そしたらそこでなんと!―――――
…
……
九尾を暴走させて木ノ葉の里に火種を蒔いておいて、その次はうちは一族に濡れ衣着せて内乱でもしてもらって――――
…
……
………
―――ってことになるよう仕向けるつもりさ!すっごい計画でしょ!?
え?
暁をどうやってテロ集団に変えるかも聞きたい?
いいよ!
あのね…まずは、長門ってやつにマダラの輪廻眼を埋め込んだんだ。
その眼の力を使って自分を救世主って勘違いさせて――――
…
そしたら、ダンゾウを裏から操って、暁と半蔵を仲違いさせて――――
…
仕上げに、半蔵の手で弥彦を始末させて…そうしたらきっと長門と小南は――――
…
…………ど、どうしたの父さん!
そんな渋すぎる渋柿食っちゃったみたいな顔をして!」
「む、息子ォ?
ちょい外道過ぎンじゃね?…ちょっと計画変えね?
さすがの俺もそれはちょいドン引くっつーか…。
確かに前にさ…もうこんだけ世代またいでると他人みたいなもんだよね~、やっちゃったもんはしょーがねーべってな感じの事言ったよ?
言ったけどな?これから皆殺すンだわ~♪って言われたら俺もちょっと、それやめなよ!って言うかもしれねーわ!つか、今言うわ!
それやめよーぜ、ゼツぅ?前もパパ言ったよな!?マイルド路線でいこーぜって」
「わかった、やめる」(即答)
という運びになったわけである。
無事、大きな不幸フラグはへし折れた模様。
しかしゼツとしても大筋の流れ自体は大幅な改変はしたくなかったので、そこから父子の話し合いが数十分行われたところ、以下のようになった。
「――…僕としても、いずれ大筒木本家が襲来した時の為にも、優秀な忍は好き好んで殺したくはないし…不幸を振りまきたいわけじゃないからそれでいこう。
作戦決行に伴う犠牲者は、父さんの…峰打ちチャクラ?とかいう原理不明のよくわかんない不殺技で殺したフリして、気絶させてから時間を凍結させて異空間に保存。
母さん復活計画成就のあかつきには、全部の犠牲を無事にお返しするってことで……。
うーーん…でも、これって…父さんの負担大きくない?
だって、これから起こす作戦の犠牲者はかなりの数だよ…?
不殺の峰打ちチャクラなんて謎技は父さんしか使えないし…対象の時間を凍結させるなんていうチート時空間術も父さんしか使えないし…全部の作戦で発生する戦闘を父さんが担当するなんて…」
「任せとけって!その為に日々、女を抱いてチャクラ集めてんだからさ!」
本当だろうか。浮気したいだけでは?
ゼツは訝しんだ。
そもそも女抱いてチャクラ強化に繋がるだなんてトンデモ理論、有る筈が―――
いや、あるかもしれない。
なにせこの父だ。
なんでもありの、奇想天外で、美人のためなら不可能を可能にする、とんでもない女ったらしで困った……けれど自慢の最愛の父だ。
「…そうだね!父さんだからね!
ころっと父に納得させられた。
ゼツも大概だ。さすがカグヤ分身体であった。
テンジはカグヤ特攻のフェロモンでも放出しているのかもしれない。
そんなこんなで大体なんとなく原作通りに運命が進むことになるわけだが、ちょっと違うのは、歴史の中で起きる事件の犠牲者達が、実は裏では生きている事ぐらいだろう。
さすがに名無しのモブキャラ達全員は無理だが、メインどころは大体テンジは助けている。
普通は転生忍術などを使えば自分が死ぬものだが、テンジはコスト踏み倒しでもうなんかやりたい放題である。理屈はゼツにもテンジ本人にも分からないが、なんとなく古代の原始チャクラとカグヤの愛とが超融合して化学反応でも起こしたのだろう。そもそもテンジ自身、原子の単位まで分解しながら復活した奴だし、それに全身柱間細胞の千手柱間よりも血が濃い直系ご先祖様なわけだから、きっと全身テンジ細胞なのだ。
で、どんなご都合主義をしてのけたかと言えば…一例を紹介すると、まずはNARUTO作中ビッグイベントの木ノ葉九尾襲撃事件。
傷を負いながらもオビトを追い払い、九尾をナルトへと封印する事になるミナト・クシナ夫妻を、テンジパワーでまるっと解決して時間を止めて異次元に保存するとか。
ついでに九尾戦で死んじゃう親世代モブも出来る限り助けておいて冷凍保存とか。
他にも、他国の里のエピソードにもテンジは顔を出している。
主に女の香りに釣られてだが。
儚げな人妻がいると思ったらそいつは我愛羅のママで、衰弱死する
出産直後の衰弱してハァハァ状態の加瑠羅さんにちょっとムラついたが、そこは生まれたての我愛羅ベイビーに免じて許してやった。生まれたての赤ん坊を放っておいて、お母さんキャラを犯すのはちょっと赤ん坊が可哀想だから…と思って止めるだけの理性はテンジにもあったのである。
数年後、その加瑠羅さんの弟・夜叉丸も死にたてホヤホヤの所を回収して蘇生させて時止めからの保存もした。
あまりにも小綺麗な女顔なので思わず女体化させて犯してやろうかこの野郎よくも騙したなと思ったテンジだが止めておいた。運がいいな貴様、次に女顔男キャラ来たらTSさせて犯すぞと誓いながら、一回目の慈悲を与えたのだ。実際慈悲深い。(白フラグ)
ちなみに、オビト闇落ちの一件でも、リンをいい感じのタイミングで超高速極秘回収からの蘇生からの時間停止で保存庫にポイっと突っ込んであるのは言うまでもない。
最終局面でオビトにネタバレして、生きてるリンを突きつけて「生きてるけど(笑)復讐(笑)おつ(笑)」してやるつもりのテンジだ。それはそれである意味、黒ゼツよりも腹黒い。さすが親子。
うちは粛清イベントでは、サスケのおっかさんの人妻色気にムラつきながらも、イタチにコロコロされた全うちはを冷凍保存からの保管庫行き。
ダンゾウには、テンジとゼツお手製の複製死体に写輪眼っぽい類似品をねじ込んだのを置き土産にしてやった。
今頃、偽物写輪眼をお手々に埋め込んでキャッキャっしているだろう。
これも、良いタイミングを見計らってサスケにネタバレして「レボリューション(笑)イタチを父を母を一族をここへ連れてこい!(笑)よしわかった」とか言って本当に元気一杯うちは一族を連れてきてみせたりする予定のテンジはなかなかにゲスいのだ。
そういった出来事の合間には、もちろん爛れた女関係が繰り広げられているわけだが、全ての情事を覗き見てはこの物語は1000話とかになってしまうので、ここは有名所だけをピックアップしよう。
~~~その日のテンジ~~~
その少年は孤独な少年だった。
里でも屈指のエース忍者・木ノ葉の黄色い閃光とも呼ばれた波風ミナトの子であるにも関わらず、父がとある事情で戦死し、キュウビを胎内に封印されてからは里の〝歩く火薬庫〟のような扱いを受けて、触れ得ざるモノとされた。
まぁミナトもクシナも、おまけにイルカ先生の両親とか三代目の奥さんとかも生きているわけだが、実際問題として
そんなナルト少年は、元気にすくすくと育ち「どの道ろくな奴じゃねーんだ!見つけ次第殺るぞ!おー!」な目にあって、だってばよ少年へと成長し、そして波の国編へと物語は進んでいく。
―
――
―――
そして、波の国にて…カカシ先生の修行が始まって六日目の朝。森にて、それは起きた。
修行に疲れて眠りこけるナルトと、町娘のようにしか見えない忍…白が出会う。
ナルトの事を仕事の障害と認識しながらも、妙な友情か、はたまたシンパシーかを感じて、いつでも殺せるのに素知らぬ顔で言葉をかわす。
「こんな所で寝ていると、風邪を引きますよ」
「…ん?………んーーーーーー?アンタ…だれ~~…?」
そして、言葉をかわしてみれば、やはり二人共に、妙に気心が知れると互いに心の底で感じられた。つまりは気が合う。
とりとめのない話をし、そして二人で一緒に薬草を詰み、
「…君には…大切な人はいますか?」
「?」
(むぅ~~~~~…何が言いたいのか、姉ちゃん…)
強くなりたいと熱弁する新米忍者に、白は正体を隠しながら、短くも強い想いを込めた言葉で語りかける。
「人は…大切な何かを守りたいと思った時に、本当に強くなれるものなんです」
白の言葉は、ナルトにも良く分かった。
思い当たる節が、そこかしこにあった。
禁呪盗み出し事件の折、イルカ先生に庇われ守られ、そして自分もイルカ先生を守りたいと、ミズキに立ち向かった。
波の国で聞いた、英雄カイザの話。
自分達部下を守るために体を張ってくれたカカシ先生。
大切な何かを守ろうとする時、時に人は限界以上の力がでるのだと、孤独な少年は知り始めていた。
「…うん!それはオレもよく分かってるってばよ!」
だからニッコリと笑って力強く頷いた。
つられて白も優しく笑う。
いつか敵対するであろう身の二人で、それを白は知っていたが、それでも無邪気で無知なナルトといると心は朗らかになれた。
(…薬草も充分集め終わった…)
少し名残惜しい。
そういう気持ちが白にはあったが、それを掻き消して美少女のような少年はたおやかに立ち上がり、そしてナルトへ別れを告げる。
「君は強くなる…またどこかで会いましょう」
「うん!」
次に会う時は、殺し合う敵同士だろうと白は確信し、そしてナルトはそんな事は露知らずに明るく頷く。
「あ…それと…………」
「?」
「ぼくは男ですよ」
「!!?」
ンなバカなっ!!サクラちゃんよりカワイイのにィー!!?とショックを受けてガーーーーンとなるナルト。さもありなん。どう見ても美少女だった。
そして、その衝撃はナルト以外にも…。
「ンなバカなァっっ!!!!!??」
奇しくもナルトの心の叫びと同じ言葉を物理的に叫んだ者が一人。森の木の上に気配を隠して潜んでいた。
「っ!?だ、誰です!?」
「誰だってばよ!?」
年若いとはいえ凄腕の忍である白。
そして、未熟でありながらも、一応は忍と認められるまでになったナルト。
一般人から見れば、明らかに強者である筈の二人の少年が、木の上の観察者に全く気づけていなかったのだ。
その衝撃は大きい。特に、白にとっては脅威であった。
(ぼくが…全く気付けなかったなんて!)
樹上で叫んだ観察者は、ショックのあまりに枝の上から落ちてきた。
まるで気を失ったデカいコウモリのように、黒い男が薬草畑にドサリと落ちて、そして「う、嘘だろ…裏切られた…いや、ってか…そうだった。そうだったぜ…あんなカワイイのに男かよ!ってアノ時ダチと盛り上がったわ…くっそ…」とぶつぶつ言っていた。
「っ…あ、あの格好…し、忍か…!?」
またガトーに雇われた凄腕忍者か、とナルトが身構える。
白も想定外の出来事に、逃げるべきか戦うべきかの判断がつきかねた。
そもそも敵かどうかも分からない。
ナルトも知らない所を見ると、木ノ葉隠れの忍でもなさそうだし、実際、木ノ葉の額当てはどこにも見当たらない。
だが、
(…強いのは…確かだ!)
そう白は確信していた。
隙だらけに寝転んでいるようで、白から見ても全く付け入る隙が無い。
千本をどこに投げればいいのか、皆目検討もつかない。それ程に不気味な雰囲気が男を包んでいる。
ゆらりと男が立ち上がる。
「そうだったな…お前は…そういう奴だった……」
顔面を覆うガスマスク越しに、男のくぐもった声が幽鬼のように低く響いた。
(…なんだ?ぼ、ぼくに対する…恨み…?いや、これは…まるで、怨念…!!)
白が腰を落とし、身構える。
ナルトの前で正体を知られたくはないが、謎のガスマスク忍者から感じる視線は、余りにも鋭く、強い。
これは逃げ切れない。
視線だけで、そう予感させる。
ナルトから見ても、その男が只者でないのは解る。
数日前に接敵した、あの桃地再不斬からも感じた格上の気配。
そういったモノを、眼前の黒尽くめのマスク男からも感じるのだ。
だが、だからといって恐怖に身を竦めて恐れ慄くナルトではない。
「あ、安心しろ、ネーチャン!…じゃなくって、にーちゃん!オレだって忍びだってばよ!
こういうツエー奴には、よく効く忍術持ってんだ…!」
「き、君にそんな術が…!?」
ナルトの〝自信あり!〟な態度に、白はごくりと息を呑んで、知り合ったばかりの快活な少年を見守った。
(まさか見れちゃうのか!?螺旋丸を!いいよーいいよー見せてくれ!
かめはめ波とアバンストラッシュの次に真似しやすいジャンプ技!
俺は断然バロスペシャル派で、よく山下(友達)にかけてけど…螺旋丸もよく握りっ屁してから田中(友達)にやったわ)
少年心を忘れぬテンジはワクワクしながら、少年時代の思い出に残る技を期待する……が、テンジは思い切り記憶違いをしていた。
当初、白のことも本気で可愛い女の子と信じ切って見守っていたテンジのガバガバ記憶力。
当たり前だが、まだ自来也とナルトは出会っていない。
ナルトの父と母は健在だが、
だから…
「くらえ!必殺………――――おいろけの術っ!!!」
当然こうなる。
「っ!?」
「なにーーーー!?」
ぼぉん!と白煙と共に現れたのは、まさに出るとこ出てて引っ込む所引っ込んでるグンバツ美女。
おっぱいは大きいながらも少し釣り型。
腰はくびれ、尻は大きい。だが垂れていない。ハリがある。
脚もまさにグンバツ。太ももはむっちり型に太く、そして膝下はスラリと長い。
さらさら金髪ツインテール。
ナルト特有の碧眼はややツリ目ながらパッチリ二重で睫毛も眉毛もややギャル風ながらも非常に美しくキマっている。
(ナルト…こいつ…!よく、女ってものを…研究してやがるじゃねーの!?すげぇクオリティだぜ!!)
よくぞ修行した。
そうテンジはべた褒めしたい気分であり、そしてナルトの…ある意味で目論見通りに術中にはまる。
(どうだってばよ!おいろけの術は、三代目のじいちゃんにも効いたんだ!強い奴にも絶対効く!そして、その隙きに…!!)
ナルとの短い人生で、今まで〝おいろけの術〟が効かなった者はいない。
イルカ先生だろうと、猿飛ヒルゼンだろうと、木の葉丸の家庭教師エビスだろうと、全員鼻血を拭き上げながら隙だらけになる。
そして、その隙に森で知り合ったねーちゃんモドキのにーちゃんを背負って全速力で走るのだ。
再不斬との戦いでナルトは知った。意地を張っても打開できぬ状況はあるのだから、頭を使え、と。
それに、今ここにいるのは自分だけでなく、無関係なキレーなにーちゃんまでいるのだ。
何とかして彼を連れて、カカシ先生達のところに戻る……。そう考えるだけの冷静さと客観性を、ナルトは少しだが身につけていたし、しかも、ガスマスク男から感じる気配はとにかくヤバかった。
(よぉし…!あとは決まって鼻血だしてぶっ倒れる…!お決まりのパターンだってばよ!)
ナルトはそう思っていたが…。
「――えっ!?」
(鼻血ださねぇ!?)
ナルトが驚き、瞬きをした次の瞬間。テンジは高速でかっ飛んだ。
未熟なナルトにはもちろん、天賦がある美少年忍者・白にも見えない速度。
そして気づけば、女ナルトは仮面の男にのしかかられていた。
「な…!?は、はぇぇ!?」
「オメェが悪いんだわ。そんな美少女で大人を挑発するからよぉ!」
グヘヘと笑って裸の美女を組み敷いて、そしてテンジはおっぱいを愛撫してやろうとして…
「ムム!?」
思わず一瞬完全停止した。
「こ……――
――このおっぱいは出来損ないだ…揉めたもんじゃないよ…!」(血涙)
今までテンジはちゃらんぽらんに生きてきた。
マジギレとかガチギレは、実は一回しかした事がない。
千年前の大筒木一族との大戦争で、自分が消し飛ばされた時もそこまで怒っていない。
イッシキ、モモシキ、ウラシキ達との戦いで、カグヤや子供達が本当の危険に晒された時に一回だけマジギレしてスーパーテンジモードになった事はあったが、基本、自分が殺されてもキレない。
そのテンジが、今、千年ぶりに……――キレた。
「こ、この俺に…!!偽物おっぱいを…!!!!!許せねーーーーーーっ!!!」
ドラゴンボ○ルのセルかってぐらいに、ちくしょーーーーっと叫んで、ドラゴンボー○の気のようにシュインシュイン、バチバチとスパークしながらテンジのチャクラオーラが拭き上がる。
凄まじいチャクラ圧に、ナルトも白も呼吸さえ苦しくなり、そして指一本動かない。
―――テンジ、キレた!!―――
「い、いや、本当にゆるせねーのは俺自身だっ!!!
こんな偽物おっぱいに釣られ、興奮し、揉んじまった俺自身だっ!!!
肌触り、質感、乳首の感触、乳首に流れる血流…そして勃起していく乳首…ッ!
てめぇのおっぱいにはそれら全部が…ねぇンだわ!!!
テメェのおっぱいには血が通ってねーーー!!!肉が詰まってねぇ!!愛がねぇ!ロマンがねぇ!そこに詰まってるのは何かよくわかんねぇぇゴムまりだ!ちっくしょうめっ!!
こ、この俺様に……よくも、よくも偽物おっぱいを…!!
許せねぇ!テメェ許さねぇぞガキっ!!!
おめぇーはおっぱいを侮辱した!
こんな、見せかけだけのハリボテ美人用意しやがって!
女に対する侮辱でもあるぜ、テメェーー!!!!」
テンジぶちぎれである。
その勢いと迫力にタジタジになるナルトだが、彼にだって言い分はある。
「なっ、なっ…う……(こ、怖ぇぇぇ!?怒ったサクラちゃんより怖いってばよこのおっさん!)
け、けど……っ!
し、し、仕方ねぇだろ…!
俺だって、おいろけの術をもっとスゲー術にしたくて一生懸命研究したんだってばよ!
橋の下に落ちてたエロ本集めたり!
街を歩いてるおねーさんとか一楽のねーちゃんを眺めて研究したんだ!
けどさ!けどっっ!!!
しょーがねーじゃんかよ!!
俺ってば、女の子の本当のおっぱい、見たことも触ったことも…ないんだからよぉ!!!」
「…」
いったい自分は何を見せられているんだ。
そう思いながらも、白はナルトと謎の男との盛大かつ低レベルな口喧嘩を見守るしかない。
なぜなら、こんなふざけた低レベル口喧嘩をしていながらも、仮面の男にはやはり一分の隙きも生まれないからである。
その時突然に、
「おめぇーもだぜ、男の娘野郎!!!!
夜叉丸の時は勘弁してやっけど、もう二度目だ!許せねー!
男の娘キャラにも分からせてやるわ!!!」
男はナルトに伸し掛かりながら、スビッと白を指差してきた。
「!?」
(え、ぼ、ぼくも?というかヤシャマルって誰!?)
とんだ飛び火が降ってきた。
ガスマスク男は尚、恨み籠もった声で言った。
「俺の…男の純情を弄んだ罪……償ってもらうぜぇ?
異論は認めねー…聞かねー…。
俺が、女舐めたガキ二人に真のメスを叩き込んでやるぜ…」
テンジの振り上げた右掌に、途轍もない禍々しい…人の欲望というモノが詰まったようなチャクラが集う。
「テンジ超必殺奥義!
ズンッ、とナルトの腹にテンジの右掌の指が食い込み、ずぶずぶと沈んでいく。
同じ瞬間…白の背後にも現れた、全く同質のガスマスク男が、白の下っ腹へと右掌を沈めた。
「うあ!?」
「なっ、分身!?いつの間に―――うぐっ!?」
熱そのものを腹に差し込まれたようだ。
ナルトと白が呻く。
直後、腹から全身に、鋭く灼熱が駆け巡る。
「あ、ああああっ!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁっ!!!」
熱が、じゅくじゅくと内側から侵食してくる違和感。
二人の少年忍者は、内側で何かが急速に変わっていくのが解った。
(オ、オレが……――!!)
(――変わって、いくっ!!)
灼熱が去って、五分程もしただろうか。
やがて、嵐のようだったチャクラの奔流も消え失せて、圧倒的な熱に気を失っていた少年忍者二人は、重たい頭を持ち上げて、あたりを見る。
景色に、何事も変化はない。
相変わらず、恐ろしげなガスマスク男が、圧倒的な強者の空気を纏って少年達を見下ろしているが、先程の攻撃でも特にダメージは無さそうで……(どういうことだ?)と己の身の状態を確認した。
よろりと立ち上がり、自分を見る。
「え…?」
「これ、は…」
そして少年二人の思考が一瞬、氷のように止まった。
胸が重たい。
ストンと下を見下ろせば、自分の股間が、足元がハッキリと確認出来た筈の視界が、妙な山で邪魔されている。服がパツパツでこんもりしている。
(お、おかしいってばよ…!オレのおいろけの術は、あんなダメージ受けてりゃ解除されるはずなのに!実際、素っ裸のねーちゃんの姿から、いつもの服に戻ってんのに…な、なんでまだ…おいろけの術みてーなおっぱいが…ここにあるんだってばよ!!!?)
(ぼ、僕の胸に…乳房!?これは、いったい…僕は、何をされたんだ!?)
忍は、まず第一に己の肉体管理能力が求められる。
だから、勝手知ったる自分の体が、常と違う事がハッキリと解ってきた。
――二の腕や脇腹の肉付きが、常より良い。服がキツイ。
――臀部が、いつもよりも大きく、重い。服がキツイ。
――太腿もだ。妙にムチムチしている。服がキツイ。
――睫毛が長くなって、瞬き一つするのも少々重さを感じる。
そして、少年二人は慌てて股間を確認する。
「な……………な………………―――」
「――――ない」
今まで人生を共にしてきたモツが。
男の証が。
将来有望だった筈の魔羅が。
そこには無かったのである。