「何やら楽しそうだぜ」
「笑い事じゃありません!早く桜花を止めないと」
血相を変えた様子で琉奈は語る。
玲里を殺されたくないし、桜花を人殺しにもさせたくなかった。
何れにせよ‥‥早く二人を止めねば。
あ~あ。今は忙し過ぎてとても話せそうにねぇな〜。
世界が変わった理由を。
コイツは知らない、あの馬鹿に襲われた理由もまだ気付いてないが両親や他の人間がこの世から消えた理由も。
‥‥
‥‥‥
‥‥‥‥
‥‥‥‥‥
「この世は弱肉強食が世の常なのにどうしてあの世界の人間達は偽善とも思える法の秩序の中で過ごしてるんだろう?」
太古の文明で建てられた高く聳え立つ塔の頂上で考えながら黒衣の少年は寝そべりぼんやり空を眺めていた。
戦いは生物の本能の筈‥‥‥。
それが何故彼らの世界では少ないんだ。
「つまらない生き物だなぁ。人間って」
「あら来ていたのねボレアス」
ひょこっと白いドレスの少女が柱が等間隔に立つ出入口から姿を見せた。
「やぁ。ルーツ。中々面白い子達に
「あらごめんね。貴方が来る前に少々デリケートな訪問をしていたから」
「フッ」
思わず黒衣の青年‥‥ミラボレアスは吹き出した
「あれでデリケートだって?。君の訪問に比べたら泥棒するメラルーの方がよっぽどスマートでデリケートだ」
「ちょっと心外よ。あんな泥棒猫と一緒にするなんて」
言葉とは裏腹にルーツは笑っていた。
メラルー‥‥‥獣人族の一種で黒い毛並みを持ち現実世界の猫に似たような姿をしている。
アイルーの亜種とされメラルーもアイルーも互いを同胞と認識しているが‥‥毛並み以外にも両者には明確な違いがある。
メラルーは手癖がとにかく悪いのだ。
だからアイルーと比べて人間達にこっぴどく嫌われていた。
だがそんなメラルーも、祖龍ミラルーツの可愛い子供達の一体だ。
まぁ、平和や優しさだけの世界なんてつまらないものね。
メラルーみたいな誰しもが悪と見做す存在がいてこそ。
『世界に変化を常に与える』
人を殺す
何れ悪は悪なりの大道を作り、対する正義は悪を打ち消す為に傲慢とも言える流儀を持つ。
そしてそれらは交わり合い、混沌となす。
悪も正義も創造と破壊を繰り返し世界は進む。
ボレアスが言うようにあの世界の人間達は随分と破壊が小さくなりかけてるわね。
血肉を貪り、互いの命を奪おうとする闘争心が世界の変動には必須なのに。
平和だけでは繁栄しないわ。
だからこそ
そこまで考えルーツはふと笑う。
私から生まれてないボレアスをこの子と例えるのも比喩としてはおかしいわね、まぁ弟だから別にいいかしら。
「泥棒猫なんて言っちゃメラルーが泣くんじゃないか。お母さんにそんなこと言われたら悲しいよ」
「私が産んだと言ってもあの子達はそれを知らないわよ。ふふっ、泣くときはニャー!ね、いや、ニャ〜!かも」
「何れにせよニャーに変わりはなさそうだ」
ボレアスとルーツは互いに笑いながらふざけ合う。
「おいおい。随分と面白い話してんじゃねぇか。私も混ぜろ」
ゴォ。と炎が渦巻く。
紅炎と共に赤いドレスを着た少女が姿を現した。
「「バルカン」」
現れたその少女の名をボレアスとルーツはほぼ同時に発した。
「ちょうどいいや。二人に言おう僕があの世界に何をしたか君たちなら秘密は漏れない」
「遅かれ早かれ他の奴等も気づくぞ」
「その時はその時だ。僕はあの世界の勾玉使いとこれから勾玉使いになる予定以外の人間を全員消した」
「まぁ」
「そりゃあまた。随分と物騒だな。奴等の混乱を見るのが目的か」
「違う。混乱なんてどうでもいいんだ‥‥。能力を持つものしかいなくなった世界で彼らがどうするか見たいのさ。殺し合うか、傍または結束するか‥‥‥彼らのやり方をね」
「成程な」
‥‥‥‥‥
‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥
「どうやらお前の殺し合うって予想は当たったみたいだぜボレアス」