今回はエロありません!!
「あ、大将」
ドクターがやってきたのはロドス艦内に設けられている休憩スペース。その一角には周囲に似つかわしくないシンプルな屋台が設置されていた。
「今日はこんな風に店構えさせてもらってありがとうございやす」
「気にしないで。僕も今日の手伝い頑張るね」
深々と頭を下げるジェイにドクターは大げさだなと笑う。
ジェイがどこかに店を構えるいい場所がないか探していること自体は前からドクターも知っていたが、今回ドクターが便宜を図り、屋台を開くことの許可を取ってきた。
「俺ぁ見てくれがこんななので始めのうちはドクターがついてくれてたほうがいいと思うんです」
そんなことを言ってジェイは所有権を利用しドクターに店の手伝いを頼んだのだ。
店の準備中とはいうものの、ドクターが屋台に着いたときにはすでに大方のことをジェイは済ませており、特にやることのないドクターは客側の席に着く。席から見えたのは屋台に似合わないとても大きな冷蔵庫と、所せましと並べられた大量の酒瓶だった。
「なんかいいね、こういうの」
「そうですかい?」
ドクターが座っている間もジェイはなにかの作業をしており手を止めずに返事をする。その後もテキパキと準備をするジェイを眺めているとドクターの前に皿が差し出された。
「大将、これどうぞ。あとこれも。前におっしゃってたやつでさぁ」
「あ、ありがとう。でもよく覚えてたね。ちらっと言っただけだったのに」
ドクターに差し出された皿の中には、以前ジェイとの会話中にドクターがぽろりと食べたいといった料理だった。ドクターでさえ話したことなどすっかり忘れていた。
「みんな、俺記憶力いいっていいやすが、俺は別にそんなこたぁないと思うんですがね」
ぼりぼりと頭を掻きながらそういうと、ジェイはまた準備に戻る。
「うん、おいしいよ。ありがとう」
「そいつはよかったです。ほかのみんながくる時間まで、大将はのんびりしててください。つまめるものとかもサッと作りますんでなんでもいってください」
そのままドクターはジェイと世間話なんかをしながらゆったりと過ごした。
「それじゃ大将、そろそろお願いしやす」
時間が過ぎるのはあっという間で気が付けばロドスの終業時間が近くなっていた。
「わかった」
ドクターは渡されていた前掛けを普段のコートの上からつける。終業を告げる放送が流れてから少しすると仕事を終えた医療スタッフや研究スタッフがぞろぞろと歩いてくる。みんな屋台を珍しそうに眺めながらドクターに挨拶をして通り過ぎていく。
「なかなか座ってくれないね」
「そういうもんでさぁ。気長に待ちましょ」
二人がそんな話をしていると聞きなれた声が聞こえてきた。
「あ、ドクター、お疲れ様。今日もお手伝い?」
そこにいたのはアンジェリーナだった。
「お疲れ様、アンジェリーナ。よかったら座っていってよ」
ドクターに促され彼女は物珍しそうに椅子に座る。
「はい、どうぞ」
ジェイの作った料理をドクターがアンジェリーナの前に置く。
「いただきまーす」
彼女はそれを口に運ぶ。
「んー!! すっごいおいしい!!」
「それはよかった」
「なんかあったかい味がするね!!」
幸せそうに料理を食べるアンジェリーナを眺めているとまたしても知った声が聞こえてきた。
「あ、ドクター! これ、何やってるの?」
声の主はブレミシャインだった。彼女の後ろからはウィスラッシュと二アールもついてきていた。
「3人ともいらっしゃい」
ドクターは事情を説明する。
「へーおもしろそう! お姉ちゃん、ゾフィアおばさん、寄ってこうよ」
「あぁ、そうしようか」
「しょうがないわね」
「やったー!」
ブレミシャインははしゃぐように席に着く。それに続くように二人も席に着いた。
「ジェイ、3人分よろしくね」
「わかりやした」
そういうとジェイは見事な包丁さばきで料理を仕上げていく。
「美味しかったー」
ブレミシャインたちと話をしている間にアンジェリーナは料理を食べ終えていた。
「ほかにもあるけど食べる?」
「うぅ、おいしそうだけどこれ以上食べちゃうと……じゃなくて!! ほ、報告!! お仕事の報告があるから私行かなきゃ!!」
「そっか、残念」
慌てるアンジェリーナを不思議に思いながら器をさげる。
「そうだ、お金はどうすればいい?」
「あぁ、お代は結構です。ケルシーさんから許可は取ってあるので」
「あ、そうなんだ。じゃあ私行くね。えっと、料理美味しかったです。ごちそうさまでした」
アンジェリーナは席を立つとドクターに軽く手を振り、ジェイには礼儀正しくお辞儀をして走っていった。アンジェリーナを見送ったドクターは二アールたちの前に小鉢を差し出した。
「どうぞ」
「ありがとう」
彼女たちは受け取った料理を口に運んでいく。ブレミシャインは目を輝かせながら、ウィスラッシュと二アールはオーケストラの演奏を聴いているかのように目を閉じながら、料理を味わっている。
「お酒もあるよ」
「あら、龍門のお酒かしら」
ドクターが一升瓶を掲げると、ウィスラッシュが珍しそうに眺める。
「はい、せっかくなんでそれなりにいいものを用意してきやした。ロドスの仕入れルートを頼って東国のお酒なんかもありやす」
「へぇ~、じゃあいただこうかしら」
「なら私ももらおう」
「じゃあ私も!」
「マリアはダメに決まってるでしょ」
身を乗り出して手を上げたブレミシャインだったが、ウィスラッシュに止められしょんぼりしながら手を降ろした。
「マリア、もし私たちが酔いすぎてしまったら介抱を頼む」
「はぁ~い……」
落ち込む彼女をフォローするように二アールが言葉をかける。ドクターはその様子を楽しそうに見つめていた。
その後、ジェイの屋台にはオペレーターたちが入れ替わりながら食事をしていき、ドクターは彼らと談笑をしながらジェイの手伝いをこなしていた。
しばらくして、屋台の席に誰もいなくなり、ドクターが一息ついていた。
「おや、ドクター。これは……屋台ですか」
そのとき、通りががったホシグマに声をかけられた。その横にはスワイヤーとチェンもいた。
「3人ともお疲れ様。よかったら寄っていかない? お酒もあるよ」
そういったドクターは同じように一升瓶を持ち上げる。
「あら、いいじゃない」
「そうですね。ではすこし寄らせていただきましょう」
「いや、私は遠慮しておく」
乗り気なスワイヤーとホシグマをよそにチェンは一人ですたすたと帰ろうとする。だがホシグマは彼女の手を掴む。
「まぁそういわず。ドクターもいますし、小官に付き合うつもりでどうか」
「ちょっとアンタねぇ、少しは空気読みなさいよね。そんなだから友達も少ないのよ」
「ぐっ……。はぁ、仕方ない、少しだけだからな」
スワイヤーの余計な一言にチェンは眉毛を引くつかせるが、観念して屋台の席に着く。
「ホシグマさん、元気そうで何よりです」
すると酒瓶を持ってきたジェイがホシグマに挨拶をする。
「あら、知り合いなの?」
「えぇ、まぁ。昔ちょっとしたことで彼と知り合いまして。そのあと私がロドスに推薦したんです」
「その節はお世話になりやした。いろいろとよくしてくださってありがとうございやす」
二人の話にスワイヤーとチェンは意外そうな顔をしていた。
「今日は俺のおごりなんで、どんどん飲み食いしてってくだせぇ」
「あぁ、ごちそうになるよ」
ジェイはそういうと調理場に戻った。
それから時間は過ぎ、途中でスワイヤーとチェンの口げんかが始まり、そこからなぜか飲み競べが始まってしまい、二人はすっかり酔っていた。
「あのねぇ……、アンタが一人で突っ走ってるときぃ、こっちがどれだけ迷惑しているのかわかってるのぉ……?」
「別に……お前に迷惑をかけてはいないだろう」
「かけまくってるわよ……、それでぇどぇだけあぁしが心配してると思ってるのよぉ……」
すでにどちらも限界であろうほど呂律も回らず、視線も定まっていない状態であったが、それでも言い合いをしながら交互に酒を飲みあっていく。
「わたしだっておまぇたちを危険なこぉにつきあわせたくはない……」
「それがぁ、迷惑だって……いってるのよぉ。なんで信じて頼ってくれないのよぉ」
酒を飲み干したスワイヤーはそういうと顔を腕の中にうずめてしまい、そのまま寝息を立て始めた。
「ふっ……、わたしのかちだな。すぁないが、すこし席をはずす……」
そういってチェンは立ち上がるが体は前のめりに倒れ始める。しかし、それをホシグマがすぐさま彼女を抱きとめた。チェンを座らせ机に突っ伏した姿勢で眠らせるとホシグマはまた席に着いた。
「危ないところだった」
ホシグマ自身も二人と変わらぬペースで酒を飲んでいたと思うのだが、酔った雰囲気など微塵も感じられなかった。
「相変わらずホシグマはお酒強いね」
「あぁ。二人とも眠ってしまったし相手がいなくて寂しいんだが、どうだドクター?」
「じゃあ一杯だけ」
「つれないな。酔いつぶれても私が部屋まで送るから心配無用だというのに」
そういって笑いながら酒をなみなみと注ぐ。
「一杯だけなら、長く相手してくれ。ジェイも」
「え? あぁはい。わかりやした」
急に声をかけられたジェイも、片付けの手を止めこちらに合流した。
「ジェイ、ロドスでの暮らしはどうだ」
「気に入ってますよ。龍門じゃ珍しい食材とかも扱えるんで、それなりに楽しくやってます」
「そうか、それはよかった」
ジェイの言葉を聞いたホシグマは安心した表情で酒を一杯飲み干して、新しく注ぐ。
「そういえば、なぜ急に珍しいことを始めたんだ?」
「あぁ、それは──」
ドクターは一日所有権のこととジェイの要望のことを話す。
「なるほど、あの面白そうな制度のことか。確かにドクターが私物になればいろいろなことができそうだが、ドクターも大変だな」
「そんなことないよ」
「そういってもらえると、少し肩の荷が下りやす」
ドクターの言葉にジェイはほっとしたように口元を緩める。
「気になったんだけど、ジェイとホシグマってどんな風に知り合ったの?」
「それは──」
今度は二人の昔話になり時間は過ぎていく。
「おや──」
ドクターのグラスが空になったのを見つけたホシグマは席を立つ。
「一杯という話だったし、私はそろそろ帰るとするよ」
「うん。ホシグマ、ありがとう」
「ホシグマさん、ありがとうございやした」
「あぁ、こちらこそ」
そういうとホシグマはチェンとスワイヤーを担いで帰っていった。
こうして、ジェイの屋台は店じまいとなった。
「ドクター」
そして屋台の片付けの最中、ジェイが話しかけてきた。
「今日はホントにありがとうございやした。きっと、俺だけじゃあここまでいろんな人に来てもらえなかったと思うんです」
そういいながら、ジェイは淡々と片付けを進めていく。
「もし何かあったら俺に言ってください。力になりやす」
最後の荷物を片付けたジェイは頬を掻きながらすこし気恥ずかしそうにそういった。
「うん、そうさせてもらうね」
後日──。
「ジェイ、この前の屋台の料理なんだけど、またみんなが食べたいって言ってるんだ」
「はぁ、そうですかい」
「なんとかならない?」
ドクターの少し申し訳なさそうな声にジェイも考えるそぶりを見せる。
「そうですねぇ。じゃあレシピを教えやしょう」
「ほんとに? 助かるよ」
そういって二人は食堂のほうに歩いて行った。
ジェイ君好きなんですよね、イベントで初めて見た時から。雰囲気とかが。
ただやっぱりしりすぼみになってしまいますね。途中でモチベ抜けちゃうのなんとかしたいですねー。