※この作品はR-18です。

一時的代理春庭幻覚   作:虫餃子

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愛と誓いの乖離と別離

ウィンターローズの外れ、世界花の力で構成された強大なる結界の一角

 

ナイドホグルとの決戦の最中、鏖殺仕切れず溢れ返った眷属共を押さえ込む為に作られた境界線

 

その内側、狂気と渇望を身に溢れさせた男が小箱を手にしたまま障壁へと向かい往く

 

とある騎士団の団長である彼

 

手にある箱は、言葉にするのも憚られる製法で作られた、世界花の結界を砕く為だけに作られた手製の爆弾だった

 

結界の向こうに取り残され、もう一年程たった一人でいる筈の愛しい人、パフィオペディルムを迎えに往く為に

 

別れの瞬間の有様を覚えているならば、このような事を企てはしないのが普通だった

 

彼は完全に狂っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶望的な戦況の中、眷属に押し切られてしまうと判断され展開された世界花の強大な障壁

 

想定以上の精強さを誇る敵陣営、侮ってなどいなかったが故にこの強力無比な結界が張られた

 

無論結界の向こう側に取り残された花騎士は一人だけではない

 

所々で隔離された花騎士が絶望に泣き叫び、騎士団長や仲間達に救助の懇願、あるいは置いて行かれた恨み言を吐きながら殺されていた

 

ぎりぎり間に合わなかったパフィオペディルムも隔離されてしまっていたが、それでも泣き言や恨み節は吐かなかった

 

きっと生き残ってみせる、団長と約束したし、そのくらいでなければデンドロビウムには追いつけまい

 

改めて誓い、悲嘆する仲間達の前でたった一人毅然と眷属共に立ち向かおうとした

 

だが、現実は極めて悪辣だった

 

取り残された花騎士達の中でもっとも有能であったパフィオペディルムの元へ、通常の眷属とは違う、悍ましく淫猥な気配を纏ったものが這い寄ってきて、広い範囲へ汚らしい色合いの霧を吐き散らした

 

結界に阻まれ、眷属共に囲まれ避けきれず、僅かに霧に肌が触れてしまったパフィオペディルムが激しく震える

 

何か信じられないことが起きてしまったように虚空を見つめ、その場に頽れ、歯をガチガチと鳴らして酷く汗を垂らす

 

そして弱々しく、見ないでくれ団長、そう呟いた

 

直後醜い百足の足が伸びてパフィオペディルムの乳房を掴んだ

 

人間達が誰も予想していなかった、戦場の女神の快楽に染まった喘ぎが響いた

 

結界の内側の誰もが呆然と、その無理矢理発情させられた雌の声音を聞いた

 

唖然とする者達の前、霧の淫毒と羞恥に赤面した戦場の女神は顔を背けるも、次いで伸びてきた他の手に下着を剥かれ、汚らわしき虫の肉棒を突きつけられると生娘めいて息を飲んだ

 

愛しい人が何をされようとしているのか理解し憤激した騎士団長が衝動的に剣を結界に突き立てるも意味は無く

 

そのまま間近で色に染まりつつある哀切の慟哭を聞いてしまった

 

見ないで団長、皆も見ないで、お願い、お願いだから

 

花騎士達は歯を食い縛り、必死に目を背けて逃げた

 

戦場の女神の夫となる筈だった男は、がくりと頭を垂れ、全身の力が抜け、仲間達に引き摺られるまま敗走した

 

大害虫からのせめてもの土産だとばかりに、パフィオペディルムが陰茎を突き立てられて必死に拒絶する叫びが皆の耳に届けられた

 

誰もがあそこに囚われているのは実は傭兵でなく娼婦だったのではと思うほど、言葉だけの拒絶が嘘だと断じられるほど、快楽に堕ち狂ったものだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約束だった

 

団長がいればもっと強くなれる、団長がいなければ強くなれない

 

そう零した彼女に、離れていてもずっと愛しく想い続ける、そう誓った

 

パフィオペディルムは、離れた所で戦っていても必ず生きて帰ると、誓ってくれた

 

だから彼は国を終わらせる行いだと理解しながらこんな真似をしている

 

人々を地獄に叩き落とすと確信しながら結界を壊す

 

苗床に堕とされた瞬間の彼女の声は記憶の奥底へと無理矢理封じられていた

 

狂気に染まってパフィオペディルムだから大丈夫だと約束したから誓ったから大丈夫だと嘯きながら爆弾を炸裂させた

 

その瞬間の炸裂音と、数分後に響き渡った百足共の勝鬨と人々の悲鳴、どちらが大きかったろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不自然なまでに襲われないまま、騎士団長は歩んできた方向から聞こえてくる無数の絶叫を無視しながら、愛しい人を探し続け、あるものの前で立ち止まった

 

パフィオペディルムは、いなかった

 

戦場の女神と呼ばれ、舞踏の如く害虫を蹂躙してきた勇士は、消え去っていた

 

かつては人の世界でそう呼ばれていた無様な肉袋が、惨めな苗床が、交尾するしか能の無い最底辺の虫けらと仲睦まじく絡み合っているだけだった

 

孤独な私の唯一の相棒として、導き手として、キミ以上に相応しい者はいない

 

そう言っていた口から、醜く不格好で悍ましい小百足に媚びた嬌声を吐き散らす

 

虫の陰茎が貫く秘所からはぼたぼたと淫蜜が滴り続け、時折白濁した液体が隙間から噴き出すと雌肉は一際心地良さそうに吼える

 

大好き、愛してる、もっとして

 

ほとんど吠え声に近いパフィオペディルムだったものの言葉は、本来の彼女の心が完全に死んでしまった事を示していた

 

無防備に棒立ちする男の前、たんまりと虫の仔を孕んだ雌の腹部がぐねぐねと蠢く

 

臨月の妊婦を一回りは上回る腹が内から突き上げられる

 

その度に肉袋はそれがたまらなく嬉しいと言わんばかりに甘く喘ぎ、愛おしそうに百足に口づけを繰り返し、男の心の中に住まう愛しい女神の幻影を甚振ってゆく

 

そうして男が存分に絶望を味わった直後、醜い百足は、敗残者の目を見つめた

 

周囲の百足共も邪悪にほくそ笑んでいた

 

苗床の口から放たれた言葉が、男の魂を叩き砕き死を齎すと、解っていたから

 

産まれる、私とキミの可愛い赤ちゃん、大事な大事な赤ちゃん産まれる

 

そうして産まれた炎熱と宵闇の化身の眷属と戦場の女神の子供は、三つの首をうねらせながら、未だ柔らかい翼を拙くはためかせながら生まれ落ちた

 

臍の緒が繋がっているのが、絶望に意識が途切れかけていた男の目にも確かに見えた

 

男の狂気は振り切った

 

俺を殺せ、パフィオペディルムの子供よ俺を殺せ、せめて彼女の命の歴史に俺の残渣を刻ませてくれ

 

百足達は揃って彼を嘲笑い、相手にする事無く離れていった

 

苗床とその番いもまた、三つ首の赤子を大事そうに抱いたまま、騎士団長だったものに意識の欠片も向けず、去っていった

 

冬薔薇に地獄を齎した男は、凍死するまで延々とその場に座り込み、啜り泣き続けていた

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