一時的代理春庭幻覚 作:虫餃子
カンヒザクラとは全くの別人
花畑計画により復興の進んでいるコダイバナ方面
廃都状態から再建されつつある幾つかの都市、その内の一つから送られてきた救助要請
まるで極限指定害虫に襲われたかの様な大規模且つ緊急性の高い要請の様式でありながら、肝心の伝令文を見た者達はその奇異な内容に困惑した
霧が来る
その一言、たった一言書き殴られた破れかけの用紙
害虫の苗床にされて精神を破壊された花騎士が、時折療養所の中で壁に自らの血液で狂気の妄想を書き記す際の筆跡を思わせる
伝令役となっていたのは花騎士だったが、到着した時点で狂気に冒されており、話を訊くことも叶わなかった
助かった、私は助かった、皆壊された、私だけ助かっちゃった
そう繰り返して虚空を見つめて涙と涎を垂らし続けるだけの存在に恐怖を覚えながら、騎士団は贄を選び出す
その譫言の内容から、既に救助を求めた者達は全滅しているであろう事を前提に、霧を操る能力を持つと思しき珍しい害虫の様子を探る斥候の役目を求めた
あいつらは害虫じゃない、あんなものは害虫ですらない
騎士団の指針に異を唱えたのかもしれなかった狂人の譫言は聞き流された
寧ろ斥候の一員として選ばれたアイビーには、害虫への怒りを燃やす為の燃料、そして己の練り上げた独自の妄想話の補強材の一種とすら捉えられていた
その都市に踏み入ったアイビー達は驚愕せざるを得なかった
人々は大勢生き残っていた
泣きながら蹲り、或いは四方八方に視線を送りながら、囁き声で何事かを議論していた
誰も彼もが恐怖で表情を彩り、未来への絶望を隠しもしていない
更にその傍らには凶悪無慈悲である筈のコダイバナ害虫達がおり、まるでその死角を補い、人々と互いを護り合うかのように振る舞っていた
中には人間の乳幼児を守護するように抱きかかえている者までいた
まるで益虫に戻ったかの様に
害虫達もまた、端から見ると怯えていると表現するのが相応しい様相を呈している
困惑する花騎士らの来訪に気付いた人々は誰もが顔を手で覆って呟いた
なんて事だ、生贄が増えてしまった
何を言っているのか、そしてこの害虫との共生はどういう事なのか
アイビーらが問おうとした瞬間、都市の外縁部から喧しく警戒音を発する害虫が飛び込んでくる
反射的にそれを抹殺しようとする花騎士達だが、手が止まる
人々と害虫が揃って悲鳴を上げ、共に近くの家屋に必死の形相で逃げ込み始めたからだ
霧がまた来る、あんたらも隠れろ、花騎士は捕まったら悲惨な事になる
恐慌状態に陥っていない住人が叫び、害虫が震えながら老人や幼子を抱えて家屋に飛び込む
敵対関係にある人類と害虫が協力する、そんな理解不能な状況にありながらも、都市の外にその原因があるのかと視線を送り
魂が萎え、瘧に罹った様に全身が震える
霧なんて生易しいものではない、陸地に現れた白濁の津波が凄まじい勢いで全てを飲み込んでいた
害虫の毒による凶暴化すら無効化し、ただ生き残る為に益虫同然に振る舞わせる程の恐怖を与える忌まわしき奔流
その薄ぼんやりした隔たりの内側で、害虫など比べ物にならない悪意と狂気が対流しているのが感じ取れた
白濁の中にいるなにか共が、無数の視線で己等を射抜き、邪悪極まる意図を抱いているのが手に取るように解ってしまった
花騎士らの身体の奥底で本能が絶叫する
同時に世界花の加護が心身を無理矢理突き動かそうとする
今すぐ逃げろ、いいや駄目だ闘え、あんなこの世に存在してはならないもの共になんて勝てない、例え命と引き換えにしても奴らを鏖殺しろ
二つの心に花騎士らが逡巡している間に、霧の中から瘤に覆われた肉色の触手が伸び、男と害虫が引き摺り込まれた
直後、肉の裂ける音、あるいは甲殻が叩き砕かれる音が白き闇の彼方から吐き出されてきた
同時に二つの球体が放り出されてくる
酷く歪んだ男と害虫の生首だった
二つの玉は無残に萎み、切断面から血は一滴も垂れず、まるで一瞬で血を啜りきられたかのようだった
更に先のものより太く逞しい触手が霧の海より吐き出され、花騎士の一人を捕えた
アイビーの後輩で、アイビーがサクラを慕うよりも情熱的に、いや狂信的と呼ぶのが相応しい有様で慕情を募らせる少女
アイビーと同じ髪型にし、カラーコンタクトレンズを付け、同じ服を着た少女
身長がアイビーより低く、代わりに胸がアイビーよりも尚数段豊満に育った少女
そんな彼女が霧に呑まれた
アイビー師匠助けて
霧の中から届いた悲鳴は、アイビーの名を呼ぶ半ばから蕩け、助けてと言い切る頃には喘ぎ声と聞き分けが出来ないくらい甘ったるいものに成り果てていた
霧中に囚われた花騎士は媚びた声音で続けて叫ぶ
やだ、そんなに激しくしないで、あなたのオチンポすごすぎるんです、化け物オチンポ様、団長のオチンポより凄くて気持ち良い、あなたのお嫁さんになりますから、あなたの赤ちゃんいっぱい産みますから、壊さないで気持ち良くして
彼女も決して生半な花騎士ではない、そんな彼女も容易く堕とされてしまう
呆然としている間に白い壁は目前に
霧の中からは、女のくぐもった艶声が幾重にも重なって響いていた
人の言葉ではない、交尾の快楽に溺れた雌の獣共の吠え声
花騎士としての勘、もしくは世界花の力が、先にこの霧に呑まれた花騎士達のものなのだと伝えてきた
あの中にいるなにか共は、一部の害虫がするように、花騎士を捕らえて苗床に貶めるのだと
しかしそれを理解しても抵抗する手段が急に生じたりはしない
触手に次いで霧中より放たれた妖物、人体の部品を雑多に繋ぎ合わせて造ったとしか表現出来ない巨大な爬虫類めいたものに、アイビーの妹弟子が攫われた
アイビー同様サクラに心酔し師と仰ぎ、装いをサクラに似せたその少女もまた、化け物の与える肉の悦びにたちどころに屈した
これ駄目、化け物チンポお腹の奥まで届いてる、いっぱいオチンポ、オマンコもお尻の穴もオチンポ様で滅茶苦茶になってる、アイビー御姉様助けて、このままじゃ私化け物の苗床奴隷になっちゃいます、このオチンポ様をご主人様って認めちゃいます、助けて
害虫に両親を奪われた日の記憶から、無力感と絶望だけが抜き出され、増幅され、溢れかえる
気付けばアイビーは怯懦に駆られ泣き叫びながら逃げていた
陸の孤島、そう表現するのが相応しい有様となった都市に雌の喘ぎと得体の知れないものらの嗤いが反響する
みすぼらしい小屋の中で独り蹲るアイビーの耳に、後輩と弟子の喘ぎ混じりの艶めかしい呼び声が届く
どこですか御姉様逃げても無駄ですよ
アイビー師匠もこっち側の世界に来て下さい
私の赤ちゃんが産まれたら苗床になって下さい御姉様
勿論私の子供のお嫁さんにもなってくれますよね師匠
耳を塞いで子供がいやいやをするように頭を振るアイビー
怯える彼女はあれだけの巨体の化け物なのに、無理矢理押し入ったり建築物を破壊したりしない事の不自然さに気付けない
この瞬間に気付けていれば、この後起きる悲劇も避けられたかもしれなかった
しかし
オネエサマ! ワタシタチはブジです! ココをアけてクダさい!
シショウ! あいつらにダマされないでクダさい! ワタシタチをナカにイれてクダさい!
後輩達に似せられた声が届いてしまった、自分達は無事だと偽る声が
正常性に縋り付きたいアイビーが窓を見ると、必死の表情を浮かべた妹弟子と後輩が貼り付いている
扉に鍵がかかっているかどうか確かめもせず、自分で開けようともせず、窓に貼り付いて
しかしアイビーは瞳に希望を蘇らせ、扉を、開けてしまった
次の瞬間、哀れな花騎士は霧の中に引き摺り込まれていた
後輩達の顔の付いた、巨大な触手の塊共に
こっちの世界は凄いですよ師匠、私達さっき妊娠したばかりなのに、もうお母さんになっちゃったんです
御姉様、先程お願いした通り、私とあの子の赤ちゃん達の苗床になってくれますよね
呆気に取られたアイビーの衣類を化け物共が引き裂き、元仲間達に似た顔に邪悪な笑顔を浮かべた
呆然としたままのアイビーの口に触手が飛び込み、嘔気を催させる腐臭を放つカウパー腺液じみた体液を染み出させる
漸く法外の手段により騙された事に気付いた花騎士が青褪めるも、既に手遅れ
ワタシタチのアカちゃんウんでクダさいオネエサマ!
いっぱいいっぱいウんでクダさいねシショウ!
スプリングガーデンにおけるまともな性行為の手順など知らない化け物共が、乱暴に触手の束を被害者の膣に突き立てる
更には間違えたのか、それともどちらでも構わないのか、肛門まで力尽くで抉じ開けて触手束をぶち込む
狭い所に無理矢理侵入され、引き裂かれるような痛みを感じる筈が、真逆の膨大な快感がアイビーを襲う
一帯を包む穢らわしき霧の効力か、飲まされた化け物共の体液の効果か、正常な生き物の感覚が冒され壊されていた
触手で口を塞がれながら悶え泣くアイビーの雌の器官は、騎士団長との性行為以上の快楽を脳に伝え、心を引き裂いてゆく
豊かな乳房にも吸い付かれ、更なる快楽を齎された苗床候補は狂っていく肉体に涙を流すばかり
凌辱者共の悍ましき宣言が行われても、絶望に両目を見開く事しか抵抗の手段は無かった
アカちゃんのタネデる、いっぱいダしますねシショウ!
オネエサマからおカアさんになってくださいね!
無慈悲な言葉の後、アイビーの膣内と腸内に汚濁じみた種子が撒き散らされた
あまりの穢らわしさと嫌悪感、そしてそれらを塗り潰す快感に被害者が身を捩り、心中で悲哀に嘆く
だがこの世の法則を捻じ曲げる怪異はその間隙すら許してはくれない
腹の中で身の毛のよだつような鼓動音が響き、動揺する間も無く膨満感に満たされてゆく
子宮と腸管が滅茶苦茶に膨れ上がってゆく異常な感覚
そして哀れな苗床に断末魔じみた叫びを上げさせ、少女の腹の中に生じた有り得てはならない命達が、捻り出されていった
母親そのものの顔をしたそれらは、産道と肛門それぞれから粘液を滴らせ、全身を構成する触手を蠢かせながら、冒涜的な産声を上げた
フシなるセイメイのシュゴシャアイビー、ここにコウリンよ!
前例の無い、霧を通じた外なる世界からの侵略者
それに対するスプリングガーデンからの答えと呼ぶべき兵力、守護神蟲へと回帰したナイドホグルはそれを察知し、特別製の眷属達を直々に送り込んだ
それらは闇の力を籠めた炎で都市を覆う霧を祓い、穢らわしき異界の妖物共を残らず焼滅していった
化け物も、それらの子を産む事しか出来なくなった壊れた元花騎士の肉袋達も、人と化け物の間の子らも、区別無く
元花騎士の肉袋達の生きていた証は、僅かな遺品以外全て消えた
アイビー達の所属していた騎士団の団長やサクラ、カンヒザクラが懸命に探しても、彼女らの遺品だけは影も形も見つからなかった
その後もコダイバナの害虫達は怯え続け、コダイバナの周辺にどこからともなく霧が立ち籠めるようになった
ナイドホグルの眷属が発生する度に滅却しているが、霧の発生範囲は日々広がっている
今この瞬間も妖物共は霧の向こうの異界に攫ったアイビー達から産まれ続け、やがてスプリングガーデンに攻め入り、花騎士達を根刮ぎ苗床にしてやろうと企て続けていた