The Works of Black Bird ~Ventangle二次創作~ 作:Reyo
22世紀に予見されていた大戦争と大災害は終ぞ訪れず、23世紀に起きた科学と魔法の融合という大変革は世界を一新する契機となった。その末に生まれたのは、資本に勝る超国家企業が世界を股にかけて鎬を削り合う時代だ。
しかし、その上で。
24世紀は堕落の時代であると言う。
堕落の代表は、科学と魔法にそれぞれ1つ。最先端の生命工学が作り上げた新時代の支配種、エルフ。そして情報生命体として常世に再臨し、サイバースペースを神代へと染め上げた神々。
大半のエルフはその長命に任せてありとあらゆる快楽を貪り、神々を戴いた教団たちは今日もまたありとあらゆる娯楽を祭事として捧げるべくネットワーク上で乱痴気騒ぎを起こし続けている。
社会を資本面から、あるいは情報面から支配する存在が堕落しているのだ。であれば、彼らに支配される市井の人々は言わずもがな。企業に酷使された欝憤を晴らすために、あるいは神々へ献上する儀式として、彼らもまた快に耽り続け堕落していく。
改めて言おう、24世紀は堕落の時代であると。
欲望と理不尽がひしめき合う、退廃の時代だ。
そんな時代にひとり、とある少女が生まれる。
彼女は決して特別でも何でもない。その来歴に深い謂れなど欠片も存在しない。
「ふーっ! ふーっ!」
己に襲い掛かった災難に、肩で荒い息をしながらがたがたと震えることしかできない単なる少女だ。
彼女の手に握られているのは、24世紀になっても未だに流通しているとある回転式拳銃。つい先ほど、少女に襲い掛かった災難を退けるカギとなった品だ。
災難……具体的には小太りの中年男性の姿をしたソレは無様に倒れて息を引き取っている。死因は頭部への銃撃。精々が十代半ばの、しかもある種の箱入りであった少女が、まさかここまで直接的な抵抗手段を持っているとは思っていなかったのだろう。死に顔には死ぬ寸前まで浮かべていたであろう卑しい笑みが残っていた。
「どうして、どうしてェ……!」
嗚咽。そして、しゃくりあげる合間に絞り出すような疑問の声。
何故、自分たちがこんな目に合わなければならなかったのか。
何故、小太りの襲撃者が企業の社宅として守られているはずの家へ侵入できたのか。
そして何故——自分は自慰の時とは比べ物にならない程の性的な高揚を得ているのか。
少女は片手で己の肩を抱いて震えを抑えながらも、もう片方の手は男に衣服を剥ぎ取られて露わになっていた股間を弄るのを止められないでいた。
「パパ……ママ……」
初めての殺人と、そこに感じる謎の高揚感。恐怖と肉の快楽がないまぜになって混乱した頭が、頼れる庇護者を求めて視線をさまよわせる。だが、その先にあるのは物言わぬ肉塊へと変じたかつて両親だったものだけだ。
「あ、あぁ……!!」
思い出して慟哭が漏れて、けれどもその光景を思い出して何故か股が熱くなる。
殺されたのだ。襲撃者であった男に。抗えばお前もこうなるぞ、という見せしめに。
元から狙いは少女だった、というのを匂わせる言動と共にまずは父が。次いで母が。明らかに不慣れであることを悟らせる乱射で肉袋に変えられて。
そして。
「あ、ふっ……んっ!!!」
ほんの少し前の光景を思い出して、少女は達していた。
何かあった時の為に、と父が隠し持っていた拳銃。家族の誰もがそんなことは起こらないと信じていて、けれども捨てることは出来ずに仕舞いこまれていた暴力装置。
両親を殺した男が乱暴な手付きで少女の服を破り取り、その際に勢いあまって少女を突き飛ばした先が『お守り』の在り処だったのは少女にとっての幸運。
隠し場所であるソファの下からそれを引き抜いて、咄嗟に、そして必死の思いで引き金をふり絞ること6度。
3発目までは虚空を裂き、しかし4発目と5発目が男の身体を貫き……そして最後の1発が脳天へと吸い込まれたのはまさに天運。
手に憶えた痺れる反動と、弾丸が命を喰らう瞬間。その2つが己の性を擽る極上の素材であると、少女は絶頂直後の気怠さに沈みながら確信した。
そして、ただの少女は銃を取ることを選ぶ。
家族を奪った『何者か』を見つけ出して復讐をせんがために。
あるいは、銃撃の狭間でしか得られぬ無上の快楽を手にせんがために。
それは24世紀、堕落の時代ではよくある光景。
ただの少女が、欲望に堕して理不尽に抗い生きるだけの、そんな話。