The Works of Black Bird ~Ventangle二次創作~ 作:Reyo
結局、朝方までたっぷりと風呂場で『楽しんだ』後、泥のように眠ったふたりのハンターたち。彼女らがベッドから起き上がったのは、そろそろ太陽が水平線に隠れ始めた時間であった。
先に目覚めたのはユウのほうで、気だるげに欠伸を噛み殺して自分の荷物を漁り始める。行儀悪く内腿を掻くのは渇いた体液が痒いからか。しばらくして端末を取り出すと、いくつかの作業を仕込んでキリカを起こしに向かった。
「キリカ、起きて……でないと、半日くらい寝てることになるよ」
「ん、んぅ……もうそんな時間?」
胸の重さを軽減するためか、横向きに寝ていたキリカがごろりと寝返りを打つ。どたぷん、と聞こえてきそうな揺れを起こしながら超乳が転がり、たったそれだけでベッドが軽く軋む音を上げた。
「もう18時過ぎだよ……ところで、端末と回線を借りてもいいかい?」
「ああ、調べものかい? それなら、そこの棚に依頼で使い潰すための端末が置いてあるからそれを使うといいよ」
「ありがとう、助かるよ。僕の端末だけだとちょっと時間がかかりそうでね」
眠たげな声のキリカが指差したのは作業部屋の片隅に置かれた棚である。シーカーとしての仕事道具が詰め込まれているその棚には、見るからに使い捨て用と思しき簡素な端末がいくつも押し込まれていた。
「それで、何を調べるの?」
「警備体制と、あとは探れればターゲットと用心棒の居場所かな。昨日のうちに物理的なハッキングポイントを作っておいたからさ。潰されてれば警備が厚くなってるってことだし、そのまま使えれば情報が抜き放題」
「いい手際ね。それじゃあ、私はその間にライフルの点検でも済ませようかしら……」
裸のまま、幾つかの情報端末を床に並べて作業を始めるユウ。胡坐をかいて顎を撫でながら複数の端末を同時並列して操作する姿は、操作の度に細かく震える乳房が無ければ少年と間違えてしまいそうな粗雑さだった。
キリカも数度寝返りを打つ間に目が覚めたのか、重い乳房を両腕で支えるようにしながらベッドから起き上がった。クローゼットから特注のブラを取り出して装着し、下半身は裸のままで向かうのは銃器のメンテナンス台である。
ライフルケースから取り出すのはテイクダウンされたスナイパーライフル。高倍率スコープのレンズチェックから始まるメンテナンスの手つきは、流石はハンターと言うべきか慣れたもの。
「……うわぁ」
ユウが呆れ声を漏らしたのは、キリカが昨夜の現地入りで目星を付けていた幾つかの狙撃ポイントに合わせて照準距離を弄っている最中だった。
「どうした?」
「いやぁ、アホな連中はアホな事をするもんだなって」
言いながらユウがキリカに投げ渡した端末には、監視カメラの視野内で性行為に及んでいるチンピラたちの姿。3人程のチンピラに輪姦されているのはカタギの一般女性だろうというのが服装から検討が付いた。
「わざわざ、カメラの場所だって判ってやってるみたいなんだよね、これ」
「示威行為か何かのつもり? これはいつの映像?」
「リアルタイム。警備状態をチェックするために他の時間の映像も順次抜いてるところだけど……あまりに警戒されなさすぎて、逆に罠かって思うくらい」
ユウの感想にキリカは苦笑を返す。そういう分別のつく輩であれば、周囲の恨みを買い集めた末にハンターのターゲットになるのはもう少し先だっただろう、と。
「とりあえず、頭を潰すついでにこういう映像を流してやれば多少は信用も落ちるかなって」
「そうね、オンとオフの区別がつかない連中にわざわざ仕事を頼みたがる奴はいないもの」
キリカが端末をユウへ投げ返した。
「相手の警戒度は? 今の感じだと変わりないみたいだけど」
「そうだね、僕が見てる範囲では2,3日前までとそう変わらないみたいだ……っと、これは」
いくつかの監視カメラをザッピングしていたユウが怪訝な声をあげる。メンテナンスに区切りが付いたのか、今度はキリカがユウの元へと歩みよって端末を覗き込んだ。
「……なるほど、ビンゴかな?」
「多分ね」
数日前の日付が表示された映像には、でっぷりと肥え太った中年男性の姿。その横に立つのは青肌の和装の女。中年男性に向けて何やら謝罪を繰り返しているチンピラを、青肌の女がタクトを一振りして凍結させる瞬間だった。
「尋問した時に聞き出した特徴とも一致、こいつがスノウで……この男がターゲット」
ユウが呟く間にも映像が進む。氷の彫像と化したチンピラが青肌の女……スノウの処断によりパラパラと崩れ去っていく。ターゲットの男はそれに気分を良くしたのか、満面の笑みでスノウに札束を投げ渡していた。
「本当にお金の関係ってやつみたいね。自分の組織で子飼いにしてるなら、たかだかひとりを掃除させたくらいで金を渡すなんてことはないもの」
企業から仕事を受けたことのあるキリカが、その経験に従って断言する。
そのまま暫く映像を進めると、男とスノウがそれぞれ別の部屋に向かうシーンへ。特に男の方はナイトガウンへと着替えており、就寝直前であると推測できた。
「……あれ、スノウは地下に向かってる」
監視カメラとて万全ではない。とはいえ、階段などの要所の映像を繋ぎ合わせれば建物内の何処へ移動したのかくらいは推測できなければシーカーではない。
就寝時にターゲットは建物上部の寝室へ。しかし、用心棒であるスノウは地下方向へと引っ込んでいく。護衛としてはもったいない配置だ。
「寝てる間に凍らされたら、たまらないだろうからね」
ユウの疑問にはキリカが答えた。神や魔法が身近なものになったとはいえ、そういったものを重宝しても身近に置きたがらない者は幾らでもいる、と。
「私の知っている噂だと、スノウってハンターは惚れっぽいやつでね……惚れた相手を氷の彫像にして一緒に暮らすらしい」
「ああ、そりゃあ……」
「加えて飽き性でね、凍らせてから暫くするとすぐに次の目標を探し出すんだと」
「……えぇ」
キリカの知るスノウというハンターについて聞く程に、ユウの表情が渋く歪む。
「嫌な惚れっぽさだ。凍結耐性がある奴とか、体が燃えてるイレギュラーとずっと乳繰り合ってればいいのにさ」
「だけど、そういう奴が雇われているおかげで警備には穴が出来ているんだろう?」
ユウを諭すようにキリカは肩を竦めた。
「確かに、仕事は楽になりそうだけど……」
ユウもそれは認めざるを得ない。ため息を漏らしながら監視カメラ映像を漁り終え、次いでとばかりにビルの図面情報を何処からともなく引っこ抜いて回線を切断した。
「決行は夜中。ターゲットの寝入りを狙う、でよさそうかな?」
「異論ない。私は狙撃でバックアップさせてもらうよ」
あられもない姿のまま、ハンター2人はニヤリと笑う。
段取りを仕込み終わったのならばあとは実行に移すだけ。仕事の終わりは、もう近い。