ガイウスは自分の蓄えた髭を撫でながら、一考する
エマよ、かかったな
戦闘狂のお前なら
そうくると朕も思っておったわ
ミチオ殿は不思議なスキルをたくさん持っていると聞いたが、他のパーティの実力でほぼそれを出す機会がないとブロッケンから聞いている
ミチオ殿の実力を見届けるために、エマが簡単にやられるとは思わないが如何程か?
「エマ、ミチオ殿はあのサボー・バラタムを一瞬で絶命させたそうだ。相手にとって不足はあるまい」
外野が、「あのサボーを倒したのはミチオ殿だったのか」
「それはすごい」とガヤガヤしている
「あのサボーを……相手にとって不足はありません」
ガイウスさんそんなに煽らないで
ただの練習試合でしょ?
「相手の体調が悪かったのではないでしょうか?」
「体調がわるい程度で簡単にやられる相手ではない」
すっごいガン見してくるよ…美人のガン見は怖い
ジゼルも乗り気のようだ
「エマも本気にならざるを得ませんね」
ガイウスは立ち上がり宣言する
「エマが勝った際にはクランの授与は無かったことに、エマが負けたらミチオの従者になる事とする。両者ともそれで良いか?」
「かしこまりました」
俺は短く「はい」と答えるだけだった
「それでは皆様、園庭にて御前試合をいたしますので、ご移動お願いします」貴族の一人が言う
ゾロゾロとみんなついて行く
円形の遮蔽セメントが塗られたコロシアムのようなところに案内された
「攻撃魔法は禁止です。木剣と盾を自由にお選びください。防具はご自身のものをお使いください」
「相手が降伏するか、戦意がない状態にするまでに留めてください」
と係のものに言われた
木剣と盾を選びながら考える
是非勝ってクランを手に入れたいが、その情報だけでも有益だ
まぁ命をかけるわけではないしな
多分他の方法もあるかもしれないし、気負わずに行こう
エマを鑑定すると
狼人族 エマ ♀ 20歳 剣豪Lv47
剣豪ってなんだよ
知らないジョブが出てきた
剣士の上位互換か?
中位職か?いずれにせよどんなスキルを使ってくるかわからない
しかも殺してはいけないし、剣だけの戦いか……
デュランダルも使えないか……
冒険者、勇者、英雄、騎士、ダンサーでいこう
ダンサーのスキルには、勇者のHP大上昇、腕力大上昇、敏捷性大上昇をつけておく
「はじめ」
息を呑む
相手は居合いの構えか……
彼女は盾を持っていない
ミチオとか言ったか……悪いが負けるわけにはいかない
見たところ少しできるようだが、所詮、素人の域
何年も修行して来たのだ。侍マスターになるために死ぬ思いで私は今まで経験を積んでいる
居合いは相手の距離さえ掴めれば、負けない
エマはジリジリと間を詰めてくる
俺はこのままでは動けなくなる…
ではこちらから行く
オーバーホエルミング
俺は前に出る
間を詰めると
エマが飛んできた、ロクサーヌより速い!
俺は前に転がる
私の初撃を避けた!
只者じゃない!!
振り返ってすぐさま攻撃してくる
すごい力だ
エマの身長は俺より少し高く、175くらいあるだろう
長いリーチと長い足でスピードも速いが、何よりパワーがすごい。ベスタと対等の力強さだ
何度か剣戟を受ける
「カンカン」
俺はずっとオーバーホエルミングを唱えているが、
彼女は自分の実力でこのスピードを得ている
だからスピードが落ちることはない
あのパワーで何度も攻撃してくる、相当の体力だろう
何度か、彼女の攻撃を木剣と盾で受けるが、飛ばされるほどの力だ
俺の攻撃は全てパリイされる
剣の技術は研鑽を積んでいるのだろう
「カンカン……カンカン」
緩急をつけてエマは小刻みに攻撃をしてくる
私の攻撃を何度もかわされ、いなされている
世の中は広いな。まだ知らないこんな御仁がいるとは…
だが、負けるわけにはいかない!!
上段からの大振りが来た
「来た」
俺は大振りを待っていた
「オーバードライブ」
突然一段スピードが上がった
俺は横に避けると彼女に抜き胴を入れる
「なに!?」
私の脇腹に当たったがダメージは大した事ない
一瞬消えた
ものすごい速さで私の脇を通った
他の者にはなにが起きたのかわかる者はいないだろう…
コレがガイウス様が他国に渡したくない力…
それにしても、私は手加減されているのか?
「舐めるなぁぁぁぁ!!」
またきた、大振りだ
相手を誘い、剣先の軌道を変えて振り抜かせて、素早く横に逃げ、返し胴を決める
オーバードライブがあるからこそ、冷静に考えられるが、相当のスピードとパワーだからな
エマは個人戦で負けたことはないのだろう
脇を攻撃されて片膝をつく
外野がざわめく
「全くどうなっているかわからないが、エマ殿が攻撃を受けているようだ。」
あの動きは……
私の攻撃をあっさりかわして、虚を突く
しかも同じところを2度攻撃するとは…
「其方は侍か?」
「侍ではないが、侍の技だろう」
剣道だからまちがいではないだろ?
「なるほど…合点がいった」
「今日までの人生はミチオ殿に会うためにあったのだろう
……私の負けで!!」とエマは手を挙げる
「今までの非礼はお詫びする
私を家臣にしていただけないだろうか?」
剣を両手で差し出し片膝をつく
えっ家臣?
俺はクランのことばっかり考えていたから、そんな話だったっけ?
家臣と言うのは、仲間になるってこと?
近くで見るとエマは超絶美人だよな
「おお〜」
「エマほどのものが」
「コレは致し方ないな」
エステル男爵が皇帝ガイウスに耳打ちする
「皇帝陛下、ご覧になりましたか?あれはもしかして…」
「そうだろうな。なるほど…ミチオ殿が強い理由がわかった」
「えっと、これってどうするんですか?」
ミチオはエマに聞く
小さな声で
「ぷっ」「剣を受け取り、剣先を両方の肩に当ててください」
「そうか」
言われた通りにする
「素晴らしい」
拍手喝采であった
「この勝負、ミチオ様の勝ちということになりました」
「では皆様、謁見の間にお戻りくださいませ」
帰り際、マキシムに「ミチオ殿は、今まで奴隷しかパーティに入れていない様子。色々と邪推されるため従者としてエマを頼む。エマはちょっとじゃじゃ馬だが、よくしてやってくれ。頼む」
と言われた
「えっ?」
大変な奴なの?
皆が各々元の場所へと戻った
「ミチオ殿、よくやった」
「約束通り、クランの件は引き続き執り行う事になる」
ガイウスはブルーノに指示を出した
「教皇とエレーナの神殿をここへ」
ガイウスが俺に言う
「ミチオ殿、先程のチカラ、この国のために使ってくれないか?」
ガイウスはどこまでわかってしまったのだろうか?
以前セリーが言っていた
英雄のジョブは、初代皇帝しかついてない、もし見つかったら反逆罪となるかもしれないと
シラを切れるところまで切り通す、今までの様に全てを内密にと言うわけにはいかなくなっていくのだろう
セリーの公開スキル融合から少しずつ方向転換を余儀なくされているな…まぁいざとなったら逃げるしかないな
「かしこまりました。できる限り力を尽くします」
「そしてエマ、今まで帝国の為ご苦労であった。感謝する」
「この世の中には戦争は全くない。だが、迷宮の魔物との戦いはまだまだ続く、ミチオ殿と一緒にこれからは迷宮攻略と研鑽を積むが良い」
「そしてこの世に安寧が来るよう努力してくれ」
「皇帝陛下、勝手を言って申し訳ありません。残りの人生はミチオ殿に仕え、民のため、正義のために尽力いたします」
「皇帝陛下、今までありがとうございました」
とエマは深々と頭を下げた
ジゼルは不満のようだ
「エマよだらしない。ふん」
「申し訳ありません。ミチオ殿の実力は私とはかけ離れておりました。ですが、まだまだ上があると分かりましたので、今はワクワクしております。ジゼル様…今までありがとうございました」
エマはお辞儀をするとジゼルは席を後にした
金髪で青い瞳、可愛いのにもったいない。ガイウスが甘やかしているのだろう
しばらくすると、教皇が現れた
鑑定すると
人族 48歳 男 アルフレッド・シモン・メルクリオ
教皇Lv3
教皇になってあんまり経ってないのか?
「皇帝陛下、お待たせいたしました」
「アルフレッド、急いでもらって申し訳ない」
台座が置かれて、その上に装飾された木箱が乗せられる
もしかしてあれがエレーナ神殿?
エレーナ神殿をもってこいってこんなちいさいの?
「ミチオ殿にクランの授与をしたいのだがお願いできるか?」
「えっ?クランですか?私も初めてするのですが……もちろんやり方は存じ上げてますが……」
15年してなかったんだもんな、そりゃ初めてだろう
「あーでは、ミチオ殿こちらに」
「インテリジェンスカードを見せてもらってよろしいですか?」
「もちろんです」
手の甲にインテリジェンスカードが浮かび上がる
確かに冒険者になっている
「そのまま手の甲をこちらのエレーナ神殿におつけください」
言う通りにする
教皇は呪文のようなものを唱えた
何を言っているかわからない
「お待たせしました。クランの授与は終了です」
めちゃくちゃあっさりしてるな
それにしてもこの教皇…えらく腰が低いな
「ありがとうございます」
ガイウスが皆に言う
「今日は大儀であった」
「皆も帝国の発展のため力を尽くしてくれたまえ」
でお開きとなった
帝国の皇帝というくらいだから、もっと嫌な奴かと思ったら結構いい奴なのかもしれないな
エマが近づいてくる
従者という事はうちで働く月給戦士という事なのかな?
エマは一礼する。俺は彼女に
「えーと…何とお呼びすれば?」
「エマで大丈夫です」
「私は何と呼べば?」
「ミチオでいいよ」
「はい」
「俺の家はクーラタルにあるのだが、家はどうする?帝都にあるのか?」
「はい。ございますが、大したものはないので」
「かと言って放っておくわけにはいかないだろうから」
橋を出たらパーティ登録をして、別れる
「夕方にここで待ち合わせしよう」
「了解です」
この日の高さだとまだ2,3時くらいか……
じゃあ、あそこに行こうかな
オリジナルキャラの登場です。今までのメンバーは奴隷というポジションなので、ミチオに意見を言ったり、自分の考えを持って行動するものがいなかった為、ミチオの言いなりのキャラばかりだったので、ミチオをぶん殴れるキャラがどうしても欲しいと思いましたので、創作しました
【挿絵表示】