どんなに今のままでいいと強く願っていても、次の朝が来て、次の用事がやってくる。
今日は久しぶりにロクサーヌがキスで俺を起こしてくれる。やはりロクサーヌの唇はこれ以上の無い心地よい目覚めだ。
「ご主人様おはようございます」
と昨日何があっても笑顔で俺を迎えてくれる。
俺が起きると、みんな交代で俺と朝のキスをする。ミリアなどは目をこすりながら俺にキスをする。
まぁかわいいもんだ。
俺はロクサーヌに用意を手伝ってもらいながら、ベスタの視線を感じる。
「どうした?」
「いえ、明日は私がご主人様の用意を手伝うのでよく見ておこうと思いまして」
ベスタも健気で可愛いやつだ。
エマが用意を終えて俺たちの部屋に入ってくる。
「すごい匂いだな。窓開けた方がいいぞ」
「そんなに匂う?」と俺が言うと
「メスとオスのフェロモンの匂いが充満している」
ミリアが窓を開ける。まだ太陽が出ていない朝焼けの状態だが、少し冷たい空気が入ってくる。
「すでに深夜組が帰ってきてます」
俺たちはまだこの宿の人でも厨房の人しかいない食堂に降りてきた。
慌てて宿の人がきたが、飯食いたいわけじゃないから気にしないでと話して俺たちは食堂で話をさせてもらった。
俺のジョブも確認したら俺のジョブもレベルアップしたのがわかる。昨日は性豪をつけたまま寝てしまって
18レベルまで上がっている……俺自身は戦闘中は性豪を外しているのでほとんどレベル上がらないのだが、これは気をつけないと、こういうジョブでもやはり上位職が出てきたら気になって使ってしまうからな……
言うほど俺のレベルは上がっていないところを見ると、必要経験値1/20はどうやら効果は出ていないようだ。それと「強くなった感じはしたか?」聞いてみたら俺のバフも効果ないようだ。やはりそこにいるからこそという事になるのかもしれない。
そしてヴィクトリアに新しいジョブが出ていた。
「ヴィクトリア、上位ジョブが出ているぞ、どっちにする?狂戦士と重戦士だな」
「えっえっ!!バーサーカーかヘビータンクですか?うぁー悩むなぁぁぁぁ……うーーーーん……バーサーカーでお願いします。私装備軽い方がいいので」
「ああわかった」
と言うとヴィクトリアを狂戦士にした。
「今レベル1だから気をつけろよ」
「はい」
狂戦士Lv1
効果 腕力大上昇 体力中上昇 HP中上昇
スキル トリプルスラッシュ バーサーク 突撃
俺はパーティを解散すると、新しいパーティを組む。
新しいパーティが組まれると、深夜組のパーティはこれから湖畔の館に戻って休憩する。少し疲れた風ではあったが、笑顔で充実しているようだった。
ただ深夜に迷宮に入るのは身体的にも連日は厳しいようだ。
俺たちは53階で昨日の続きを始める。
ラフシュラブを今日は7人で倒さないといけない。人数的有利がすくなくなった。
昨日いきなり呼ばれて深夜に行ったメンバーに手一杯で我々に補充はなかった。まぁ元々このメンバーでずっとやってきたわけだから問題無いですよ。はい、きっと問題はない……
7、8回戦闘を繰り返すと、ボス部屋の前までこれた。
セリーが
「53階のボスはウィップシュラブです無数の木の枝には棘もついています。それがムチのよう襲ってきます、まぁ当たらなければ同じことです」とロクサーヌを意識した物言いだったがそれがフラグだった。俺はこの時フラグを踏んだのに気が付かなかった。
ボス部屋の門が開くと、
大きな人型の灌木でどうやらバラの枝のようなものが空中に無数に浮かんでいる。最初からいるパターンだった。
「このボス部屋、異常にデカくないか?」
と俺は声を漏らすとエマが
「確かに」
これでは奥にいる魔物まで魔法が届かないかもしれない。
枝の一本が大きく後ろに振りかぶり、その枝が前に反動すると後ろからものすごい勢いでムチの先が飛んできた。ムチの先には金属の鏃が付いていて殺傷力もかなり高い。
向こうはロングレンジかよ。
飛んできた鏃をみんなが避けると、最後尾にいるルティナにかすった。
ルティナは頬から血が出る。
「野郎!俺の可愛いルティナに何しやがる!!」
ベスタが大盾を握って走って前進する。
俺もそれに続き魔法が届く距離まで間を詰めた。
ロクサーヌが「よく見てかわしてから切れば無力化できます」
そんな事できるのロクサーヌだけだよーと心で思ったが
まぁ次々にロクサーヌはムチを切り落とす。
ただ、向こうにはいくらでもあるようで壁に無数に張り付いている。したがってどこからの角度からでも攻撃が来る。
俺はブレイズストームを放つとその無数の枝に燃え移るようなので、自らが燃えている茎の部分を切り落としている。
ロクサーヌ、エマ、セリーが前線で頑張っているがセリーは何度か被弾している。エマが
「大丈夫か?」とセリーに聞くが
セリーはあんなに華奢だが打たれ強い。
肌の露出が極端にセリーは低いため、切れて血を出していると言うことはないようだが、俺は「癒し」を使ってセリーのHPを回復させる。
うん?ミリアが見えないぞ?
ミリアは奴らの後ろにいつの間にか行っている。
後ろから本体に直接攻撃しようと近づいたところ、その茎にぐるぐる巻きにされてしまった。棘のついた茎がミリアを締め上げる。
「ミリア!!」
ミリアは身代わりの術を使い、近くにいたラフシュラブを身代わりにした。ラフシュラブの茎とウィップシュラブの茎が絡まって剥がれない。
「キューちゃん」
とミリアが呼ぶと天井の方を滑空していた飼竜のキューちゃんがあたり一面にブレスを吐いた。小さい割に強烈な火のブレスであたり一面火の海にした。
鷹のように鋭い動きと、丈夫な鱗でムチ攻撃が効いていないようだ。小柄ながら逞しい。
ミリアはその火の燃え具合を見計らい本体に攻撃する。
本体へと攻撃がクリティカルで通ると
「ギギギィィィィ」と悲鳴をあげているようだ。
エマも指輪のバーンボールを使い次々と燃やしている。
ルティナもブレイズストームで茎を次々と燃やす。
だいぶ燃えてきたところで、ベスタが大盾をかまえて突撃して、両手剣をウィップシュラブに突き刺した。
すると、ミリアが
「こいつ、石化します!」
俺はロクサーヌに剣を持ち替えるように指示すると、ロクサーヌは素早く硬直のエストックに武器を持ち替えた。
ロクサーヌはもう一匹のウィップシュラブに向かう。俺はラフシュラブにデュランダルで攻撃を入れた。相手は火炎攻撃でかなり弱っているのか数発撃ち合うと倒れた。
ロクサーヌも石化をさせて戦闘は終了した。
戦闘が終わると火と共に魔物も消えた。灌木のカードが2枚も落ちていた。
そして、どこかのパーティの遺品も落ちていた。
セリーはその遺品を回収する。遺骨はないので、回収するのに剥ぎ取るような作業は必要ない。普通にまとまって落ちている。
ここまで来てやられるのだから、相当高レベルの冒険者であろう。しかも50階を超えていると言う事はもう2年以上前にここにずっと放置されて宝箱化している
どこの誰かは知らないが、俺たちも危うくこうなっていたかもしれない。それほどウィップシュラブは強かった。
俺たちは54階に足を進めた。
「54階の敵はボトルマーメードです。土魔法が弱点です」
「ああ、あの頭が変な形の……」
ラフシュラブとボトルマーメードが混成で出てきた。
ベスタを先頭に突入していく。
ルティナとセリーは弓矢で後方から攻撃する。
ベスタ、ロクサーヌ、エマ、俺で相手の懐に入ると1対1になる。俺はラフシュラブだ。デュランダルでの撃ち合いは、俺はやられても、デュランダルでHP吸収で回復していく。
知らない間にミリアが二匹倒している。
素早い行動で暗闇の中を移動している。
後ろから攻撃されるのに振り返ってもいないからだ。
3回ほど戦った後で今日の迷宮攻略を終える。
ワープで宿屋に戻る事にした。
自分の部屋で装備を取るとみんなで食事を取るため食堂に移動した。
女将さんが
「9人分でいいのかい?」
「ああそうしてくれ」
今日はカミーユとブリジットが同行してくれるらしい。
食事はやはりスープとパンだった。
今日のスープはすいとんのようなものが入った野菜スープで味は塩味だな。相変わらずパンはパサパサしているがこれが標準なのだろう。
食事が終わると、次の目的地への準備を始める。次はいよいよエステルに着くがやっぱり昼過ぎの出発なのでまぁ今日中にはつかないだろう。
俺は馬車小屋に自分で自分の馬車を取りに行く。ウィザードロックを外してマウントの呪文を使い馬を作る。
そういえば昨日の子いないな……
俺が馬に馬車をつけようとしていたら、精算を終わらせたカミーユがやってきて、「私達がこういうのはやりますのでご主人様は座って待っていてください」
と言うので、用意ができるまで近くにあった雑貨屋で買い物することにした。
当然こういう所に来たら食料や滋養丸や強壮丸をありったけ買う。多分この雑貨屋は1年の売り上げを今日1日で得られただろう。
食料と言っても小麦粉や農作物のような原材料をたくさん買ってマジックアイテムの潤沢の鞄に入れておく。
用意ができたようなので、出発するとしよう。
今日はベスタが一緒に来てくれるらしい。
「プリン屋は?」
「今日は私お休みです」
「お休みなのに俺に付き合ってもらって悪いな」
「私は他に何もすることありませんのでご主人様と一緒にいれた方が楽しいです」
「そ、そうか。じゃあ出発しよう」
出発すると早々に馬車の屋根でベスタと話す。
ベスタは生まれた時からずっと奴隷だった。
だから奴隷じゃなかったらと言うのは想像できない。龍神が初めて夢の中に出てきた時は天命なのだと疑うことなくそれに従った。
父の記憶は無いが、母の記憶は薄っすら残ってるし、名前も覚えているらしい。兄弟はいたかいなかったか覚えていないそうだ。4歳くらいで親元から離れて他の奴隷と集団で生活していたらしい。
「ベスタのような境遇の人が沢山いるのか?」
「はい。15歳になるまで私が住んでいた所には4000人くらい住んでいたと思います」
「は?それみんな奴隷?」
「はい。15歳までの子供たちだけです。大人は指導官と呼ばれてました。指導官からはブラヒム語の読み書きや簡単な計算と戦闘訓練を習います」
子供を商品として売るための施設という感じか……
「竜人族ばかりなのか?」
「いえ、いろんな種族がいましたが、各種族毎に生活してました」
「男も女も?」
「はい。生活圏では男女に分かれてましたが、訓練や勉強は一緒でした。生活圏では30人に1人指導官が一緒に生活してました」
「その指導官も奴隷なのか?」
「はい。そこにいる人は全て奴隷です」
「それがステーラなのか?」
「はい。覚えておいででしたか」
「今でもそこに行きたいと思っているか?」
「母にはもう一度会いたいとは思いますが、奴隷として戻るのは………、願いが叶うなら違うご主人様は正直嫌です。ご主人様とずっといたいです。ご主人様はお優しいですし、何より私たちのことを考えてくれています」
ベスタは昼間は戦いの中先頭に立ち、最も危険な立場に居る。空いている時間は自分の収入ではないのに金を稼ぎ、夜は夜伽もしなくてはいけないのが優しいとは、どんだけこの世界は厳しいのだろう……
俺は俺の欲望のために色々してもらっているのに感謝されている。ベスタは全く別の視点で考えている。それほどステーラでの生活は過酷だったのだろう。だが彼女たちには悲壮感がない。まぁそういう子を知らない間に選んでいたのかもしれない。
「ああ、ベスタ達にはずっといてほしいよ」
「はい。嬉しいです」と言ってベスタは俺の手を握る
しばらくはベスタのステーラでの生活や、龍神とはどんなだったのか?今まで聞けなかったことを聞いた。
ベスタは隠すことなく、それを話してくれた。
それと、湖畔の館のほとんどの者をリジェネレーションをかけてもうすぐ全員が装具を外せるそうだ。
そういえば、その件は完全に任せていたな。
街道の景色は海が見えてきた。潮風を感じる。
この海沿いをずっと行くとエステルらしい。
馬車の御者席で馬車を操舵しているカミーユが俺に言う。
「ご主人様、リュックが歩いています」
毎週月曜日、金曜日の21時頃に更新してます
ーーお願いーー
どれくらいの人が読んでいるのか知りたいので、高評価と読み終えたらしおりもお願いします。
沢山のお気に入り、しおりをありがとうございます