「うん?」
俺は道を見ると確かに大きなリュックが一人で歩いているように見える。
俺の乗った馬車がそのリュックを追い抜きざまにみると、カミーユに
「カミーユちょっと止まってもらえるか?」
「はい」
昨日宿屋で馬車を止めていた少年が自分の身の丈の倍以上あるリュックを背負っている。
「よう。そんな荷物持ってどこに行くんだ?」
「あっ昨日の旦那さん。エステルまで行こうと思っています」
「1人か?」
「はい」
「歩きで行ったら2、3泊は野宿だぞ?」
「乗合馬車ではこの荷物を載せてくれなかったので、歩いていくしかないんです」
「いや、流石に1人で野宿は襲われるぞ?」
「えっ!そうなんですか!?」
「盗賊だっているかもしれんぞ?」
「ええっ!!脅かさないでくださいよ」
ブリジットが降りてきて
「いや、子供がそんなに大きな荷物持って一人野宿だったら、そりゃ狙われるだろう。」
と言う。
「あわわわわわ……あれ?昨日のお姉さんとは違う素敵なお姉さんですね」
俺は昨日のことをブリジットに説明した。
「そりゃ危険ですね」
「俺たちもダラダラ進んでるが、行き先は同じエステルだから乗ってくか?」
と俺が言うと、ブリジットが小声で俺に
「大丈夫ですか?」
「子供だろう。放っておくほうがまずいだろ」
その子はどう見ても10歳くらいの見た目の男の子でちょっと小汚い。
「お前、ちょっと小汚いから綺麗にするぞ」
「クリーン」の魔法をこいつにかける。
「うわぁ、旦那さんすごいな……本当にいろんな魔法が使えるんですね」
「ああ、まぁな。見直したか?」
って聞いていないし……ブリジットの剣の方が気になっているようだ。ま、まあいい……
ベスタが屋根に大きなリュックを載せて乗車した。
「俺はミチオだ。彼女がベスタで、こっちがブリジット。馬車を運転してくれてるのがカミーユだ。君の名は?」
「ミンミンだ」
「そうかミンミンか、よろしく」
俺はミンミンを鑑定した。
ハーフリング 19歳
♀ ミンミン 陽気者
「は?ミンミン色々おかしい……」
「何がですか?」
「そもそも大人じゃん?」
「はい。みんな子供だと思うみたいですけど……立派な大人です。この容姿のおかげでイェスペル村で馬車代稼ぐのに雇ってもらえましたし、旦那さんにも馬車乗せてもらいました。へへへ………」
「しかもお前女か?」
「そうですよ。もしかして男だと思っていましたか?」
「ああちょっとな。それとハーフリングって何?」
ベスタが
「彼女はハーフリングなのですか?」
「旦那さん、そんな覗きは良くないですよ。確かに私はハーフリングです」
ベスタもブリジットも知ってはいたが見るのは初めてだったらしい。
見た目は子供で、耳がちょうどドワーフの耳とエルフの耳の中間くらいの形でやや小さい。それ以外の違いは感じない。
「珍しいのか?」
「はい。コレットの兎人族以上に珍しいです」
ドヤ顔をしているのがなんかムカつく……
「それで、どうしてそんなに珍しい種族のハーフリングがエステルを目指しているの?」
「はい」
と言って腰に大事そうにつけているバッグを開いた。
「これは…………自爆玉」
「自爆玉?!」
と言って俺たち3人はその量にビックリして引いた。
そのカバンの中に50個以上沢山入っている。
「これは人族が高いお金で買ってくれるんで………」
「まぁそうだろうな。で、それをどうしてエステルに持っていくんだ?」
「貴族様が高いお金で買ってくれるから」
「いつもそんなふうに持っていくのか?」
「いや、いつもは数個取りに来る人がいる。その人以外にうちの村では売ってない」
「君たちはそれを作ることができるのか?」
「まぁそうだね。スキルで作れるから、1日一個つくることができるね」
「今回はどうして売りに?」
「お母さんが病気で全然治んなくて……だから、お薬とか食べ物とかほしいから?うーんそれってなんかおかしいの?」
俺が矢継ぎ早にミンミンに聞いているのが、怯えているようだった。
「いやおかしくはないんだが……これってとても高額なんだ。だから君みたいな人が歩いて運ぶのは危ないから、なぜそんなに危ない事しているのか気になってね」
「そうなんだ……でもまぁいっか!もう持ってきちゃったし。薄々は気づいていたんだけどね。帝国の人が数ヶ月に一度来て、この場所を離れるときは必ず言ってくれと言われたり、この玉は皇帝以外に販売しなければ、この村は帝国が守ってやるって使者の人が言っていたな」
ブリジットが「持っていくのが帝都でなくてよかったな。帝都では持っているだけで犯罪だからな」
「そうなのか?」と俺がブリジットに聞く。
「ええそうです。帝都で持ってていいのは皇帝陛下だけです。だからわざわざハーフリングの村まで買い付けているのでしょう。でもまさか自爆玉はハーフリングが作っているとは……知りませんでした」
「ブリジットもしかしてものすごい秘密を知ってしまったのかもしれないぞ」
「えっ?はっ!!ええぇーーー!!今の話は聞いてなかったことにしてください!!」と言って慌てて御者席に戻った。
「エステル様と皇帝陛下は仲が良いと聞いております。だから問題ないかと思って……」
「うーんどうだろうな。これって俺が買ったら問題だよな……そもそも病気ってなんだよ。そんなに金かかるのか?」
「村のお医者さんでも原因わからないから、薬か町のお医者さんを連れてこようと思って。お金いるでしょ?」
元々ハーフリング族はお金の価値観についてはよくわかっていないが、外ではお金がかかる事は知識として知っているようだ。どれくらい必要なものなのか分からず、沢山売れば大丈夫だろうととても曖昧な勘定のようだ。
「ちょっと待ってくれ。心当たりに聞いてみよう」
「えっ?魔法とかで聞けるの?すごいね」
俺はマキシムにESPの魔法で問いかける。
マキシムが反応してくれた。
(マキシムさん。今、目の前にハーフリングがいるが、この子自爆玉を大量に持っているんだ、これを至急売却したいそうだが、危険性があるのかないのか分からないので連絡してみました)
(……ミチオ殿は次から次へと我が帝国の問題部分を誘因する何かを持っているのか?)
(ハーフリングの事知っているのか?)
(もちろん知っている)
(いやなんでも、彼女のお母さんが病気で町の医者を連れてくるのに金がかかると思って、自爆玉を売りたいそうだ)
(そうだな。理由は知らないが元々ハーフリングは、みんな善良だ。善良だからこそ、それを大量に安値で売られては困るんだ。狂信的なもの達がこぞってそれを使って無差別テロを起こされると立ち向かえる方法が実はまだないので、安価では流通しないように帝国が一度全部買い取っているんだ。目の前にいるハーフリングも悪そうなやつではないでしょう?見た目は子供だし、みんな面白くていいやつばかりなんですがね……今からミチオ殿は会えますか?)
(ああ大丈夫だ)
俺たちは馬車を一旦止めてロッジで待ち合わせをすると、
馬車を一度脇に止めてもらった。
俺がロッジからマキシムを連れてきた。
「あっ旦那。いつもこの方が買いに来てくれています」
とマキシムを指差す。
「お前達は……」マキシムも絶句している。
「いやいや私たちに冒険するなって方が無理ですよ旦那」
と結構前から知っているようだ。
俺はマキシムに「知り合いらしいな」
「ああ、これからちょっとハーフリングの村に行くからミチオ殿時間ありますか?」
「時間ならあるよ。急ぐ旅ではないからな」
「そうか」
どうやらハーフリングの村にこれからいくようだったので
今日はまだ陽が高いがここで野営しよう。
馬車をもう少し街道から離して、コテージと隠蔽の魔法をかける俺の一連の行動を2人はじっとみていた。
「すごいすごい。旦那さまこれなら宿に泊まらなくてもいいじゃないですか」
と拍手しながら俺に言う。
マキシムも
「このような魔法……見たことがありません」
と驚いていた。
マキシムには口止めをして、
ブリジットとカミーユの2人は待機となった。
俺とベスタ、マキシム、ミンミンでハーフリングの村にフィールドウォークで移動する。
「どこに連れて行かれると思ったら私の村じゃないか?」
マキシムはここでは有名人だからすぐみんなが寄ってきて一斉に話し始める。
「旦那もっと沢山きてくれよ」
「この間の話を聞かせてやってもいいぞ。」等々、重要な話なのかそうでないのか分からないが一斉に話し始める。
まぁ来訪者が少ないからみんなは嬉しそうだった。
俺は「まずミンミンのお母さんの病気を見せてくれ」
「ミチオの旦那は医者なのか?」
「まぁそうなるのかな」
「本当!?こっちこっち」と俺の手を急に引っ張って家に案内する
マキシムは他のハーフリングに囲まれて動けない。
「そこで待っててくれ。」と俺はマキシムに言うと
無理やりミンミンの家に連れてこられた。
ミンミンの引っ張る力は強く俺も引きずられる感じだ
ミンミンの家は可愛いサイズの家で
少し屈まないと入れない大きさだ。
ベスタは流石に入れないので外で待っててもらうことにした。
中に入るといくつもの部屋があってその奥に通される。
通された部屋も当然天井は低くベッドに一人の女性が寝ていたが、その顔色は紫がかって相当苦しそうだ。
「お母さん、お医者様連れてきたよ」
「ミンミン………」しわがれた声で答える。
「私なんでもするので観てもらっていいですか?」とミンミンは懇願した顔で俺に言う。
「ああ確かに苦しそうだな」
ジョブに医師をつけて診断すると、栄養不足、不眠症、食中毒と出てきた。
食中毒??
俺は「キュアディシーズ」を唱えると一瞬食中毒は消えたが、もう一度診察するとまた食中毒と出てくる。
この食中毒についてさらに診察すると原因が判明する。
『グール草による食中毒もしくは呪い』と書いてある。
その事を伝えると、ミンミンはかなり驚いていた。
「自分たちが食べる草によく似たグール草を食べると私たちハーフリングはグールに変化してしまう病気だ。」
「病気というか呪いなのかもしれない。グールというのは?」
「全身の毛が抜けて動物の死体や子供を食べる屍鬼、我々ハーフリングとドワーフだけがなる」
「誤って食べてしまったのかもしれないな」
「助からないのか?グールになるなら今すぐコロサ……殺さないといけない……医者じゃダメだったのか……」
「俺、呪いも解けるからやってみるよ」
「本当?!」ミンミンは俺を崇めるように祈った。
「頼む!頼むから母をグールにしないでくれ!!」
「出来るだけ頑張るからな」
「リムーブカース」「キュアディシーズ」
と続け様に唱える。
顔の紫色がなくなり白くなった。
診察すると栄養不足と睡眠不足に変化した。
「ちゃんと呪いも解けたみたいだ。これで大丈夫だと思うよ」
念のため「癒やし」を唱えておいた。
外にいるベスタにプリンを後で持ってくるようにお願いした。
「旦那さん!ありがとう!!ありがとう!!!」ミンミンは涙を流して俺にお礼を言う。
「あとは栄養のある物を食べてよく寝れば治るよ。」
俺はとりあえず、ずっと中腰でいるのが辛かったので家を出る。
ベスタと一緒にマキシムの所まで戻ってきた。
「ミチオ殿、どうであったか?」
「ああ、問題は解決したようだ」
「よかった」
「ベスタのプリンを今から取ってくるので、マキシム様はどうしますか?」
「では、もうちょっとここで待っている。今後の事も話したいので」と村の真ん中にある大テーブルに座ってハーフリングの話を聞いている。
「わかった」
と言うと俺は帝都にあるベスタの店に行きプリンをいくつか買って戻ってきた。俺はベスタが休みと聞いてお店も休みなのかと思ったら、帝都にあるほとんどの店は年中無休らしい……
ミンミンを含め大テーブルにみんなが腰掛けていて、さっきとは全然違う空気になっていた。
「どうした?」
マキシムが
「話を聞いたらグール草が原因だったらしいな」
「ああ、そうみたいだな」
「彼らにとってグール草は恐ろしい物なんだ。彼らが冒険好きで楽天的でも、グール草だけは彼らにとっては大問題なんだ」
「確かに、善良な彼らが魔物に変わってしまうと言うのは確かに脅威だな」
「そうなんだ。そこで頼みたいのだがマロル領の何処かに引っ越せないか?」
「いやいやいや、だって彼らは秘匿情報なのだろう?」
「そうなんだが、今まではエステル様に頼んでいたが、グール草が出てしまったからか彼らはやはり引越しを希望しているようだ」
「いやわかりますが……早急には無理です……いくらか目処が立ったらでもいいでしょうか?」
「いや、本当にすまない。なかなかこういった事を頼れる方がいないので………」
「ブルーノ伯爵とか沢山いるではないか?」
「ブルーノ様がそんなに面倒見がいいとは思えんし、生粋の幼女趣味をお持ちだし…………察してくれ」
俺はミンミンをみる。
確かにハーフリングは大人でも子供のようななりだからな……
「わかったわかった。引き受けるよ」
俺たちはミンミンにプリンをあげるとお母さんの無事を祈った。「場所が決まったらまた来るよ」
「うん。旦那さんありがとう」
「それとミチオ殿、この自爆玉買わないか?」
「俺が買っていいのか?」
「ああ。ここに残しておくほうが危険で、彼らはこういうのを管理するのがずさんだから。あるものは買って持って帰ったほうが良い」
「でも、今はそんなにお金持っていないぞ?」
「1個1万ナールでいいよ」
「は?」
「彼らにはそれほど重要なものではないから引き取ってくれたほうが助かる。何せ材料費はタダだから………」
「そちらがそれでいいなら……」
俺は彼女に54個あったので金貨を54枚渡した。
「このプリンという食べ物は美味いなぁ〜んん!?やったぁーこんなに?うーん、じゃあこれで美味しいもの買いに行こう」
もうプリン食っとる。さっき落ち込んでいませんでしたか?
「は?お母さんの面倒は?」
「お父さんと弟が居るから大丈夫!!私が美味しいもの買ってくる!!だからエステルまで一緒に連れてって!!」
……
え?
毎週月曜日、金曜日の21時頃に更新してます
ーーお願いーー
どれくらいの人が読んでいるのか知りたいので、高評価と読み終えたらしおりもお願いします。
沢山のお気に入り、しおりをありがとうございます