「お前無茶苦茶か?!お母さんの看病は任せていいのか?」
「だって、みんな同じ所にいたって美味しいもの出てこないもん。だったら私が美味しいもの沢山買ってピャーと行ってピャーっと帰ってきた方が美味しい物みんなで食べれるよね?ほら、まだお礼もしてないし」
と言うとチラッとスカートを少しめくる
いやいや……それ全然興味湧かないから……
「ま、まぁいいだろう」
とマキシムに挨拶して自分の馬車の所にワープする
もう陽が翳り夕陽が海岸線を照らす
そこには20名近くの戦闘部隊のみんなとレティシア、そしてエルフの3姉妹、バルハまでいる。
「バルハ!いつ戻ったんだ?」
「今朝マロルに到着しました」
「こちらはハーフリングのミンミンだ。エステルまで旅を同行する事になった。」
「ハーフリングとはまた珍しい。ご主人様の幼女趣味でどこかの子供を捕まえてきたのかと思いました」とエマが茶化す
レティシアはいつもはドレスや礼服を着ているのに今日は鎧をつけている
「準備が整いましたので、今日の夜ラーゲル領を奪取します」
「急だなぁ」
「こういうのは勢いと吉凶があります。だからしっかり取れる時に取らないと運を逃してしまいます」
「で、なんでバルハもいるの?」
バルハが答える
「はっ。先日我ら一族に安寧な土地を与えてくれるというお話でしたが、こういうのはミチオ様の役に立って初めてもらえるものかと思います。ですので今回、我が里の70名もこの作戦に参加させていただきます」
「70人見つかったんだ?よかったね。で、ラーゲルというのはどんな奴なの?いい奴だったら後味悪いんだけど……」
「もちろんそこは調べてあります。迷宮の攻略はもちろんしておりません。民への重税や搾取、民間人を無理やり奴隷にしたり、その奴隷たちに自分の子供を孕ませております」
「えーーーっと」俺は急にばつが悪くなる
エマが笑う
「ははは。それではミチオとそんなに変わらないではないか?重税はかけてないし、子供も孕ませていないけど、毎日してるし」ルティナを指さして
「民間人を無理やり奴隷にしたり……って」
レティシアは冷静に
「まぁ大義名分は必要なのよ。実際毎日餓死者が出ているのは事実みたいだし。奴隷の子供も本人が望んでいればアリだしね。でもラーゲルは本当にクソ野郎みたいだし」
レティシアは他国から来た姫なのに、一体どこまで情報収集しているんだ?
「誰かラーゲルに会った事ある奴いるのか?」
と俺が聞くと
ルティナが手を挙げる
「私、会ったことあります。ラーゲル男爵領の城にも行った事があります」
「どんな奴だった?」
「私の事を舐め回すかのように見てました」
いやいやそれはルティナの感想でしょ?
「向こうではアネットと言う文官が案内してくれます」
「罠と言う可能性は?」
「一応、ラーゲル夫人とその子供を人質として自ら来てもらい預かっています。向こうでは多少の戦闘はあるとは思いますが、民間人に被害が及ぶような事にはなりませんので、自分とご主人様の戦闘部隊、エマ様そしてバルハ様の部隊のみで先行してラーゲルを捕らえてからのご出陣で問題ありません。我々が帰ってこなかったら罠と言う事になります」
「えー、戦闘は無いの?」とミンミンがぼやく
お前行くつもりだったんか?
馬車に見張りを立ててマロルの拠点にワープで移動する。
すでにアネットがマロルに到着している
細かい部屋の見取り図や居室など細かく説明を受ける。
ラーゲル夫人とその子供の処遇は別荘地にて安住できれば良いと言う事だった。
戦闘の指揮はエマが執るようだ。
俺は横で座って一応聞いている。ミンミンはワクワクしているようだった。
「旦那さん。そんなよく落ち着いていられますね」
「お前は目がキラキラしているぞ?!」
「とりあえず具体的な事が決まるまで、ラーゲル領の町に行ってみてくる。すぐ戻るよ。」俺はルティナとロクサーヌを連れてアネットにフィールドウォークで送ってもらい、アネットにはすぐに戻ってもらった
街は閑散としているが、食事ができる所というと、宿屋になるようだ
「いらっしゃいませ。お泊まりですか?」
宿屋に来て泊まらないのはおかしいだろうと思い
「ああ、ダブルで」
「かしこまりました。すぐ食事になさいますか?」
「ああ頼むよ」
いや3人なのにダブルって
先に前金で1泊分を払った。
「ご商売ですか?」
「ああ、そのつもりだが……」
「ここら辺は税金は高いし、上客もいないから……商売にならないと言って出ていってしまう商人も多いので……」
「そうだったか」
「食事の用意しますね」とちょっと宿屋の娘も悲壮感が漂っている。
一階の食堂には人がまばらに座っている
食事をするにはちょうどいい時間だがあんまり人がいないのは違和感がある。今までいろんな宿屋に泊まってきているが、一番客足が少ない
もちろんお酒を飲んでいる者もいるのでそこの隣に座った
食事のメニューはほとんどなく、スープとパンそれ以外をアラカルトとして頼むようだが、種類が4つしか無い。あとはお酒くらいだろうか……
「慢性的に食糧がないのだろうな」と2人に話す
ルティナは
「とても隣の国とは思えません」
配膳されたスープも具が少なくパンもいつもよりさらに硬いパンだ。
あとは頼んだソーセージとピクルスと干し肉と間違えるほどの肉が出てきた。
隣のテーブルではここの領主のことを話していた。
「とにかくあいつは何もしないんだよ。去年の洪水もそのまま。それで畑も大ダメージでもそのまま。迷宮から魔物が出てきてもそのまま。で、増税だからな。首くくった奴も居るからな。ただでさえ元々土地が痩せて収穫が少ないのに……もう終わりだよこの国も……」
「子作りだけは一生懸命みたいだな、あちこちの村から娘を集めているらしいじゃないか」
「何考えているのやら。農民は簡単にこの土地を捨てて移動できないからな」
「ところでお前聞いたか?隣のマロルは先月領主が代わってから他国からの侵略も自軍のみで解決。領民も一気に倍になって商人や漁師や農民も集まっているみたいだぞ」
「農民は移動できないだろ?」
「全部捨ててもマロルの方が良いって出て行く奴もいるらしいぞ」
「はぁー…ここはなんもないし、領主も何もしないからな」
俺たちに気がついたのか
「兄さんもこの町じゃなくてマロルに移動して商売を始めた方がいいんじゃないか?」
「今日来たので……そんなにですか?話が聞こえてしまいました。よかったらもう一杯どうですか?」
と言って追加でオーダーする
「兄さんすまねえな」
その後は色々聞かせてもらった。うーん、確かに本当に何もしないようだ。そのため領民はそれで命を落としているようだった。
しかも今年の税をそろそろ払わないといけないようだが、かなりの税率らしい
領主もそうだが、官僚達もヤバイようだ。文官のアネットは信頼できるのだろうか?
食事も終わり自分たちの部屋に戻るとそのままワープでマロルに戻る
マロルでは、すでに作戦室は退室不可になっている
もう作戦室からは誰も出られない。横にトイレも台所もある。食事が運び込まれた。みんな今回の作戦についてを話しながら食事をとる、ここにはイサキオスもいるので、戦後処理の話も出て、近隣の村や町などの支援物資の段取りまで話を詰めていく。砦や関所などの位置関係もみんなで共有する
エマが俺に声をかける。
「ラーゲルはどうでしたか?」
「まぁひどいな。何もしない領主らしい」
「まぁ大体そんなもんです。ガイウス様が少し変わっているし、ミチオはかなり変わっている」
「ほ、褒め言葉として受け取っておこう」
「それでは行ってまいります。1時間でうまくいってもいかなくても1回帰ってきます。帰ってこなかったら罠に嵌められたと思ってください」
「わかった。危なくなったらすぐ逃げろよ」
「こんなのでやられないですよ」
ミンミンはとても興奮しているようだ。
この作戦室で食事もたっぷり食べて口の周りに食べカスまでついている
「旦那さん、これめっちゃうまいぞ。食べないのか?」
「ああ、食べてきたから俺の分も食べて良いぞ」
目を輝かせ
「良いのか!!」
と言うと一目散に食事が盛られたテーブルに着席をして食べ始める
ミンミンは食べながら話してくる
「あー残念だな。私も襲撃に参加したかったのに〜」
と多分そんなことを食べながら言っているのだと思うが何言っているのかわからない
待っている1時間は結構長いが、途中ミンミンは俺に歌を歌ってくれたり楽器の演奏もしてくれた。それはどちらもとても上手で驚いた。
ロクサーヌが
「ハーフリングは元々そういう吟遊詩人的な存在で、みんなとても上手だと聴いています」
……
エマが帰ってきた
エマは真っ直ぐ俺の方に向かって歩いてきて
「ミチオ様、我らが兵も相手の兵隊もどちらも死者を出さずに終了しました。むしろ、こうなることを望んでいたようにも感じます。ラーゲルは地下牢にとらえておりますが
我々の牢屋に移動させ尋問しますか?」
「いや地下牢で良いよ。でもちょっと聞いてみたい事がある」
アネットの案内でラーゲル城にやってきた。既に城の兵隊は帯剣が許されておらず、無血開城となった
ラーゲルは自室で攫ってきた娘達を犯し手籠めにしている最中だったようだ。パンツ一枚で牢屋にいる
両手両足を拘束されている
俺が声をかけると
「若造が調子に乗りよって……」
と大層な返事だ
レティシアが
「ラーゲルよ、お前の返答次第で今すぐ処刑か放免か決まるぞ」
「うん?マロルか……お前はアネットか…貴様裏切ったな」
俺の後ろに居たアネットを見つけ悪態をついている。もちろんこの席に同席しなくても良いと言ったのだが自分から此処にいる
「裏切ったのはあなたの方でしょ?貴方は領民を裏切り数多くの餓死者を出して、去年の洪水ではあれほど治水工事をするべきと進言したのに何もせず、結果私の父や母、弟が死ぬ事になった。それでも貴方は何もせず毎日酒を飲みメイドだけでは足りず、毎日領民の女を犯していましたよね?」
「くっ…うるさい!お前に領主の大変さがわかるものか!!」
なるほど認めるんだね。
「なぜ何もしなかった?」
と俺はラーゲルに聞く
「実際金はなかったし、領民の代わりはいくらでもいるし、必要なら自分たちでやるだろ?なぜ貴族の私が負担せにゃならんのだ」
だめだこいつ……
「いずれにせよ明日から俺がこのラーゲルを統治する事になる。何か弁明を……」
「お前のような若造が?やれるもんならやってみろ」
「ああ頑張るよ。君の財産は全て没収するから。それと死刑、奴隷、軟禁どれが良い?」
「……そりゃ軟禁がいいに決まっているだろ」
「じゃあエマ頼むよ。」
「えっ?生かしておくんですか?」
「妻と子供達は?」
「もう一緒には住めない。奥さんと子供達ももう会わないことを希望している」
「そうか……」
あんだけの事をしておいて今更奥さんと子供達に会いたいとは……
話が終わると地下牢から出て政務室に向かう。
既に文官のほとんどは跪き首を垂れている。
レティシアから金庫にあるお金と帳簿を確認させる
アネットの上司もその一列に並んでいる。
アネットは
「彼らは不正をしています。税の中抜きの仕組みをいくつか作っておりました。私が進言すると、生きていたいのなら黙っていろと恫喝されてました。辞めることも考えましたが、中抜きは段々エスカレートしていたので、なんとか止めようと色々するには中にいるしかないと思って今日までここに在籍しておりました。なのでその不正の一端の罪は私にもあります」
レティシアは頷き
「わかった。貴方には色々聞きたいのでここに残って、あとの者は牢屋に。なるべくバラバラに収監してください」
レティシアの元騎士団は内務官になっている者も多く、その内務官が同行している。彼女らが帳簿と実際のお金の帳尻を合わせる。
エマが
「次は騎士団の方へ」
と言ってみんなはついていく。もちろんレティシアも付いている
城の中の広場にみんな集められている。もちろん帯剣はさせず没収されている
エマが紹介をする
「今日ラーゲル領はミチオ様のものとなり、直接ラーゲルの元領主から新しい領主に委任された。よって今からミチオ様が新しい領主となる。尚、団長は不正の疑いがあるので、不正の嫌疑がはれるまで拘束となる」
周りの騎士達がどよめく
「このラーゲル領では、かなりあちこちで不正が行われており、それを正し、領民へ還付するつもりだ。異論はないか?」
「あの……我々はどうなるのでしょうか?」
「領民を守る剣や盾となる覚悟があるものには対価である給料も出す。何か不満やミチオ様についていけないものは明日から来なくて良い。以上だ、今日はもう帰って良い」
騎士達もどよめく
俺たちは続いて城の中にある教会に足を運んだ
司祭や僧たちは特にひれ伏す感じはなく、毅然とした態度をとっているようだった。
イサキオスが説明する。
「司祭様にも不正を示す書類がありました。神に何か釈明をされますか?」
「……そういうつもりはなかったのだが……私の弱さだった」
「そうでしたか、でしたらここで得た物は残して、帝都の正教会に戻る事をお勧めします。そこで自らを見つめてください」
と言うと、司祭と僧は会釈してその場を立ち去る
めっちゃあっさりしているのね。
「元々は善人ですから」とイサキオスが言う
毎週月曜日、金曜日の21時頃に更新してます
ーーお願いーー
どれくらいの人が読んでいるのか知りたいので、高評価と読み終えたらしおりもお願いします。
沢山のお気に入り、しおりをありがとうございます