ハーンは大きな腕で大きな棍棒を横から払う
「うりゃーー」
「あっ」と声が出てしまったが、リナは一瞬でギリギリの所までバックステップをして避けた。すかさず棍棒を持っている脇に素早くワンパンチ入れた。
見た目にはめちゃくちゃ細い腕から繰り出すパンチは全く効いていないように見えるが……
ハーンは膝を突いた
一瞬でリナはハーンから離れるとまたあのファイティングポーズを取る
周りのドワーフも静かになったが、
「オラ!やっちまえ!!そんなへなちょこパンチどうってことないだろ!!」
ハーンも「おうよ」と立ちあがろうとするとそのまま反対側に倒れてしまった
「は?」
「ハーン何ふざけているんだ?オラ、真面目にやれ」
「うーーー」とブーイングを入れるが、
デッカーがハーンを見に行くと、ハーンは気絶しているようだ
「え?」「は?」「嘘だろ?」
「マジかよー」と目ん玉が飛び出しそうなぐらい驚いている
リナは俺の所に来た
「リナお前凄いな」
リナは俺の前に膝を突き
「ご主人様勝手な事して申し訳ありません。奴らの言動がどうしても許せなかったので」
「いつのまにあんなに強くなったんだ?」
「ご主人様に習い事を許してもらったおかげです」
いやいやそんな事であんなに強くなるか?
「そうなのか?いや、元々リナは強かったんだね」
「ありがとうございます。お姉ちゃん大丈夫。お姉ちゃんだってあんな奴一撃だよ」
「リナ、私のためにありがとう」
デッカーが俺の所に来て謝る
エマが代わりに答える。「いやいや若い男はアレくらい血気盛んな方が頼もしい」ロクサーヌが癒しをかけてダメージを回復する「大丈夫ですか?」
ハーンはちょっと顔が赤くなっている。
「アイ」と答える
エメットがハーンの頭を叩く。「アイじゃねーぞバカか」
「ごめん」
この結果にはエステルも驚いている
「あんな細っこい女の子がワンパンチ……しかも私が一番最弱って言っていたよな……」
デッカーが俺のところに来て、
「いや面目ない。いいパーティメンバーですな。では今日の夜から警戒地域まで三人はお預かりします。他にもドワーフの冒険者が地方からも集まっていますので今のところは、その辺でお願いします」
「わかった」
エステルはまぁ仕方がないと言ったところか……
セリーが「では夕方までにはこちらに準備してきます」
「ああ頼むよ」
詰所を出ると、エステルが謝ってくる
「あんなに頑固だとは思わなかったワイ」
「まぁ鍛冶師もたくさん居ますからね。色々『借り』を作りたくないのではないでしょうか?」
「まぁそんなところだろ。村がやられたらそれまでだがな……」
「まあ私達の出番がない事を祈って1の門?を守備しましょう」
俺たちはセリーの実家に行き挨拶にいく事にした
まぁ正直奴隷として売った娘がご主人様を連れて里帰り……俺はどんな顔していたらいいのだろう。
すると、セリーが
「ご主人様大変申し訳ないのですが、私とリナはご主人様の側女という事にしていただけませんか?今回のスタンピードの防衛任務に来ていて、ご厚意でこちらに私達は寄らせてもらっているという事でおねがいします」
と懇願しているが
まぁその通りなのだが、そんなのでいいのだろうか?
なんか緊張してきた
他のみんなには今日の宿を決めてもらうためにここで一旦別れた。
俺と、セリー、リナ、キーカでセリーの実家に行く事にした。まぁゾロゾロ行っても困っちゃいますよね
実家は立派な邸宅だ
「これセリーの実家?」
「はい。でも、祖父が作った物なのでかなり古いです」
扉をコンコンと叩く
すると中から返事が
扉を開けたのは、どうやらセリー似の母のようだ
「えっセリー?セリーが帰ってきた!!リナも?」と二人を抱き寄せるとめちゃくちゃ泣いている
まぁ普通そうだよな
身売りしたんだからな。帰ってくるなんて思わないよな
「お兄ちゃんは?」
「今は坑道に行ってるわよ。あなた達のおかげで確かに傷も癒えたし、なんとか食べてこれたけど……」
と母、セリーの母はセリーと見た目が変わらないくらい若く綺麗で可愛い。そうか!ドワーフ同士はわかっても多種族が見ても年齢はわからないってアランが言っていたな
「こちらは?」とやっと周りが見えたのかセリーの母が俺たちに気づく
「こちらは私とリナのご主人様で、今回のスタンピードの守護役で来てくれたの。それで特別に私の実家に挨拶にって」
ああそういう設定だったか
「え?ご主人様?」と母はいぶかしむ。
「そう。私たちミチオ様に姉妹でお仕えできて、今はとってもいい生活させてもらってる」
リナも「お姉ちゃんは沢山いるメイドさんのかなり偉い方なんだから!!」
「そうなの?よくしてもらっているの?」
「うん」「はい」
「??もしかして、リナあなた目が見えるの?」とお母さん
「うーん正確に言うと見えてないけど……」
どういう事?は?俺も知らんけど……
「わたしのお友達のキーカちゃんと習い事をご主人様にさせてもらっているんだけど、そこの先生が、目が見えないのなら、一緒に来てるキーカの目を借りると言うスキルを覚えたの。だからみんなの顔見えてるよ」
それにはセリーが一番驚いている
「え?あなた見えてるの?お姉ちゃんの顔見えてるの?」
「見えてるよ。初めて見えた時私のお姉ちゃんやっぱり可愛いって思った」
「どうして早く言わないの?」
「聞かれていないし、実際自分の目で見てるわけじゃないし、キーカちゃんが近くにいないと見えないんだよね」
俺が「だからいつもお前達一緒にいるのか?」
「えっ言わなかったっけ?逆に私は目をつぶって真っ暗らな中でも白黒で、なんとなく見えるんだよ。すごくない?」
いや正直凄い。でもそういう大事な話はもっと早く言おう感動が薄れるだろ?しかもなんだそのスキルとやらは……
「こんな立ち話もなんだから、よかったらどうぞ」
と母が家の中に案内してくれる
居間の奥にはお酒を飲んでいるセリーの父らしき人がいた
「お父さん、セリーとリナが帰ってきたわよ」
「うん?どうして帰ってきた?うちを捨てたんだろ?」
「捨てたわけじゃないよお金がなかったから。このままじゃ金貸しからみんな取られちゃうから私とリナを売ったんでしょ」
さらっと凄い話をしているな。これが異世界の常識なのか?
「ほうほうそれで賢いセリーは何のために捨てた実家に?」
「お父さん!!」と言ってお母さんがお父さんを制止する
場が凍りついているので、俺から挨拶をする
「いつも、セリーさんとリナさんにはよくしてもらっています。ミチオです。よろしくお願いします」
と言って握手を求めるが、セリーのお父さんはその手を無視した。
「オタクがうちの娘達の主人ですか?手土産の一つも持ってこないで、非常識ですな」
「はははっこれは、失礼しました。」俺はカバンからいつも常備してある。プリンを取り出して
「つまらない物ですが、今帝都で流行っているお菓子です」と言って渡した。
お母さんは「えー凄い。ありがとうございます」と言って嬉しそうに受けとったがお父さんは
「本当につまらん物ですな。お酒とか、お金の方がまだマシだな」
それにはセリーも怒り出す
「お父さん!!それは人として失礼でしょ。なんでいつもあなたって人は……」
じっと見つめていたがお父さんは何も言わずに奥の部屋に引っ込んでしまった
お母さんは「ごめんなさいね。ちょっとお父さん機嫌が悪くって……」
「お父さんはいつもああでしょ」
とセリーがお母さんに言うと、お母さんも苦笑い
「やっぱり帰ってくるべきではなかった。あの人はああやってずっと拗ねてればいいのよ」
お母さんは
「そんなこと言わないでね?ね?私はセリーが帰ってきて嬉しいわよ、ね?」
確かに、セリーの父はダメダメかもしれないが、あんまりうちの父親と変わらない。むしろいい勝負かもしれないと思った
リナはかなり落ち込んでいる。
「もっと喜んでくれると思ったのに……実際のお父さんを見て凹みます」
「ミチオさんごめんなさいね。せっかく来てもらったのに……」
「まぁうちの父親も似たような感じです」
「ところでかぁさんニコは?」
「ニコ?ニコはハンマースレールに行ってるわよ」
「えっなんで?飲み屋のハンマースレール?」
「アルバイトするんだって。お金も入れてくれるの。助かっているわ」
「えっ?ハンマースレールって……どうしてお母さんはああ天然なのかな」
と言って家を飛び出す。
今座ったばかりなのに……
俺もそのあとを追いかける。
「すみません。お母さん改めて来ます」
リナとキーカはプリンを食べ始めていたので俺だけが追いかける事に……
走って5分くらいだろうか
セリーを追いかけると飲み屋街というのだろうか?
確かにこの時間に飲み屋にバイトって……
セリーはかなりのスピードで俺を置いて走っていった。
俺が着く頃には誰かとセリーは喧嘩していたので声でどこの店かわかった
「あなたね。何してるかわかってるの?!」
「なんだよセリーか……もちろんわかっているさ、続きはお前がするか?」
「ふざけるな」
「ふざけちゃいねーよ。こいつから誘って来たんだぜ銀貨10枚でいいって言うからな。ヘッヘッヘ」
「は?!ニコどういう事?」
「そうだよこうやってお金稼いでいるんだよ。お兄ちゃんの稼ぎだけじゃみんな食べていけないし……」
「ほらな。俺はオメェでもいいぜ?そいつのお尻の穴でもいいけど、早く続きをしてーわ。萎えるだろ?セリーなら問題ないぜ」
どうやらバイトとは売春のようだ。セリーの弟は、他のドワーフとは違い、細く華奢でセリーに似ている。
後ろから見たらセリーと変わらない……
「とにかく、いいからあっち行って」とそいつを突き放してしまった。「なんだよ盛り上がってきたのに」
と捨て台詞を言うと、カウンターの方に戻っていった。
ここは朝からでも飲める場末の飲み屋のようだ。店内は薄暗く、誰がいるのか近くによらないと顔を認識できない。
「セリー大丈夫か?」
「申し訳ありません」
「ニコなんであんなことを?」
「お姉ちゃんは邪魔しないでくれよ。せっかく仲良くなれたのに」
「仲良くってあれじゃ……売春でしょ?」
「お姉ちゃん達は僕を見捨ててどこ行っていたんだよ?」
「見捨てたわけじゃない。家族が困っていたから……」
「俺のしている事とおなじだろ?」
と言われてセリーは黙ってしまった。確かに身売り先で体で奉仕している事には変わりない……
ニコは飛び出していってしまった
それを追いかける事はセリーにはできなかった
俺とセリーは歩き出した
「いろいろすみません。やっぱりうちの家族は私が身売りしてもバラバラでした……この先におじいちゃんの墓があるので墓参りに行ってもいいですか?」
「ああ、ついていこう」
「ありがとうございます、ニコは母の血を多く受け継いでいて、女の子みたいなドワーフなんです」
「お母さんもここのドワーフとはちょっと違う感じだね」
「はい。うちの母は北方のドワーフ族からの輿入れでこの村に来ました。父はああ見えても村長の息子でしたから、
お坊ちゃんですね。でもおじいちゃんが亡くなってからは没落する一方で……本当なら父が村長なんですけど……あんなですから……今は村長不在という形になっています」
河原によって、セリーは花を摘む
「何が不満なのか……私達にも話さないので、ずっとお酒を飲んでいる始末です。本当なら一番稼ぎに出ないといけないのですがお酒に入り浸っていてもう5年になります。」
「まぁ母が亡くなってからは俺の父親もあんな感じだな。何が不満なのか?俺にもわからないよ」
「そうでしたか。ご主人様も苦労なさっていたのですね」
シリアスな話が続く
「いっそ可愛いお母さんと、可愛い弟も一緒に連れて行っちゃおうか?」
と冗談で言って「はい?」と白い目でみられるかと思ったら、
「そうですね。そうしてもらえるなら、そうしてもらった方がいいかもしれませんね」
と真面目に反応されてしまった。うーんよっぽど家族の事で頭を悩ませているのだろう。
確かにリナの話が初めて出た時も、俺に土下座していたからな……家族が心配でしょうがないんだろう
一家離散しないように家族のことを思って身売りまでしたのに、結果としてはすでに一家離散寸前まで来ている。
家族の事についていろいろ話しながら墓地まで来た
セリーの案内で歩いているが
「あれ誰かいる」
セリーの祖父の墓の前で誰かが立っている。
「どちら様で?」とセリーが声をかけると、
「うん?」と振り返る
「あっバーさん」とセリーが見知った顔だったらしい
俺はどこかでみたことある顔………
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