ズタボロの服を着た人が道の端で倒れている。
ジョゼがかなり前で馬車を止めたのは、助けた時に茂みから盗賊が突然現れることがあるからだ。
だからスルーするのもありだと言う。
「じゃあそのまま待機していて、俺が見てくるよ」
「いえそんなことさせられません」とジョゼが拒否する
長い槍を持ってフル装備で向かう。俺は茂みから何か出てきたらマジックミサイルで攻撃。ソフィーは馬車を全速でかけれるようにスタンバイしている
ジョゼが槍の柄でズタボロの人をうつ伏せから仰向けにする。
ズタボロの服を着た中年のおじさんで血まみれだ。
どうやら盗賊ではないようなので水を持って近づく
「おい大丈夫か?」俺は癒しを使い回復させる。
それと同時に鑑定をかける
ガルバン38才
男 人族
冒険者 Lv38
と表示される
水を与えるとガブガブと飲み始める
「………………んんあぁぁぁぁ!!」
と大きく深呼吸すると
「た、食べ物は持ち合わせていないか?」と聞かれたので
携帯食を渡した。
男は貪りつくようにそれを両手で持って食べた
当然喉に詰まらせるのだが、そのまままた水を飲む
傷口はまだ全然治っていないが、それよりも腹が減っているらしい
「ここはどこだ?」とその男が聞くと、
「もうすぐトシュテン村です」
「!!!……そうか……」と一言言うとまた食べ始める
「何があったんだ?!」
その男は食べ終わると、話し始める
「……盗賊に襲われて、馬車から突き落とされた……」
「そうか……大変だったな」
「申し訳ないがトシュテン村まで連れていってくれないか?」
「まぁここでさようならとは言えないからな……トシュテン村までなら」
ジョゼもソフィーも仕方ないと言った表情だ
血だらけだったので『クリーン』の魔法をかけて馬車に乗り込む
「私の名前はガルバンだ、お名前をお伺いしても?」
「俺はミチオだ。こっちがジョゼでこっちがソフィー」
「そうか、ミチオ殿は馬車で移動と言うことは、商人か何かか?」
「まぁそんなところだな……」
「トシュテン村について泊まる宿はあるのか?」
と俺はトシュテン村に着いても彼の世話をしなくてはいけないのかと思い聞いた
「トシュテンには荷物をギルドに預けてあるから、金も装備も大丈夫だ。それよりも命の恩人にお礼がしたい。せめて今日の晩飯を奢らせてくれ」
「いや、そんないいよ」
「いや、是非。馴染みの店もあるから、なっ?!なっ?!」
「えー大丈夫だよ」
ガルバンは耳元で
「可愛い女の子がいるお店だから……」
と言う
「しょ、しょうがない。これはしょうがないな。ちょっとだけ、行かせてもらおうかな」
トシュテン村は比較的栄えている村で、なんとか日が暮れる前に到着した。ソフィーとジョゼは宿屋に向かうが、俺とガルバンは冒険者ギルドに
つくと、俺は併設されている飲み屋で待つことにした。ガルバンは受付の女性と話しているが、すぐさま受付の女性が隣の部屋に案内する
しばらく待つとガルバンは冒険者としては軽装な格好で戻ってきた。
「さぁ命の恩人よ。飲みに行こう!!」
と俺の肩をガッツリ掴むと連れて行かれた
ここじゃないんだ……
連れて行かれたのは、村には珍しい館のような建物で、
「ここだここだ」
ガルバンは扉を叩くと、イカつい男が出てきて、ガルバンの顔を見ると中に案内してくれた
席に着くと、店内はそんなに明るくなく薄暗いが他にも沢山お客さんはいるようなので大丈夫だろう。
ガルバンは案内してくれた男に
「何か美味しいものを持ってきてくれ!それと酒な」
と注文をすると男はコクっと頷いた
「ミチオ殿は商人でありながら魔法も使えるし、あの連れていた2人も妾だろ?!凄いなぁ」
「いやいや、ガルバン殿は何をされているので?」
「俺か?俺はまぁ冒険者ということになるのかな。まぁちょっと油断して、盗賊に拉致されてしまったがな」と楽しそうにジョーク混じりに俺に話す
「それと俺の事はガルバンでいい」
「では俺もミチオでいいですよ」
「そうかミチオ!!」
と言っていると美しく妖艶な女性が注文したお酒を持って3人が席にやってきた
L字型の席に座っていた俺とガルバンの間、そして両脇に1人ずつ座った
つまり2人とも両手に華という状況だ。
「では、ミチオに会えた事に感謝して!!」と言ってガルバンと乾杯した
真ん中に座っていた女性が俺に話しかける
「私は亭主のソーニャと申します。あっちにいる子がエリン、そちらにいるのがティナです。よろしくお願いします。」
みんなガルバンの事は知っているみたいで親しげに話している。3人はみんな綺麗で妖艶だ。着ている服もギリギリな感じでとてもいい
エリンが「ガルちゃん久しぶりじゃない?元気だった?」
「今日の昼までは死にそうだった」
「ええーー大丈夫?」
「ああ、酒が入ればもうバッチリだ」
「ガルちゃんめっちゃカッコいい若い男性を連れてくるって珍しいね」
「俺がモテなくなるからな。でもミチオは特別だ。命の恩人だからな」
ガルちゃんって呼ばれているのか
俺の隣にいるティナは
「ミチオ様はあまりお酒が得意ではないのですか?」
「ああ、まだそんなに飲めない」
「では飲みやすいのを用意しますか?」
「ああ、そうしてくれるか」
「はい」ウェイターの男性を呼ぶと、何かを注文している
「お酒って苦いのが多くないか?」
「大人になると苦さを感じなくなるそうですよ」
「ふーんなんでだろうね」
「うーん…大人になるまでに苦い経験を沢山されるから慣れてくるからですかね?」
と微笑んで冗談混じりに言う。
んなぁ訳あるかいと心では思っていたが、可愛いので許しておこう
その間に料理も出てきた
フルーツなどもあり、豪華な盛り付けだ
「ミチオ食べてくれ。ここの飯は美味い!!俺はメチャクチャ腹減っているから一緒に食べよう」
「ああ」
確かに美味しい。骨付きの鶏肉などは味付けも抜群だ
ティナが持ってきたお酒はミード酒に柑橘系のフルーツを入れて、なんとかセルツァーを混ぜたやつだった
「美味しい」
「シュワシュワするのは平気でしたか?」
「ああこれならいくらでも飲めそうだ」
「飲み過ぎには注意してくださいね」
とここまでは覚えていたのだが……
気がついたら、俺はティナの膝枕で寝ていた。
「あっ起きましたか?酔っ払って眠ってしまったみたいですよ」
「そうかすまない……」と言って起き上がるとガルバンは盛り上がっていた。
「おお!!ミチオ起きたか?!じゃ今日はこの辺で帰るとしよう!俺がミチオを宿まで送るからなっ!!」
と言うとガルバンも一緒に店を出た
ガルバンの肩を借りて
店を出ると、ジョゼが外で待っていた。
「ジョゼ」
「ご主人様大丈夫ですか?」
「ジョゼこそこんなところで1人待っていたのか?」
「はい」
「入ってくればよかったのに……」
ガルバンから俺をジョゼが引き継ぐ
「ミチオはモテるな」
「ジョゼありがとう」
次の記憶ではもうすでにベッドの上で寝転んでいるところだった。
ロクサーヌが心配そうに俺の頭を撫でる
俺はすでに寝ていると思われているのか、エマとの会話が聞こえる。
「明日の迷宮は無理だと思います」とエマにロクサーヌが言っている。
「まぁこういう日があってもいいんじゃないか?そのガルバンという人物は気になるが、今のミチオは、戦いとセックスしかしてないからね。このままいったらどこかでミチオ頭おかしくなるよ。そもそもロクサーヌの為に頑張りすぎなんだよ」
「私のため?」
「まぁ主にロクサーヌだな。期待に応えないとっていう気持ち気づいてない?」
「そんなに負担かけているとは……」
俺からは何も言えないな……
「ミチオが酒に溺れる事はないだろうから、たまには息抜きもさせてやるといいんじゃないかな」
「……」
ロクサーヌは何も応えなかった
俺もいつの間にか眠りにつき、気がつくと朝だった
頭痛と吐き気がすごい。
「痛った」
と頭を抱えるとロクサーヌが起きてくれ俺に魔法をかけてくれる。魔法はすぐに効き頭の痛みも吐き気も収まる
「ありがとう」
「大丈夫ですか?」
「ああ」
「今日はゆっくりしてください」
「迷宮は?」
「おやすみしましょう」
「そうか」
と俺が言うとロクサーヌは俺を抱きしめる
しばらくすると、トントンと扉をノックする音が聞こえる
ロクサーヌが出ると、ジョゼが
「昨日のガルバン様が来てます」
俺とロクサーヌは着替えて1階に降りる途中エマも一緒についてきた。
ガルバンは俺を見るなり
「ミチオ大丈夫か?昨日だいぶ飲んでいたみたいだけど……」
と俺の横にいたロクサーヌを見て驚く
「………………ロクサーヌ?」と小声で言う
さらに後ろにいるエマを見て
「エマ?」
とガルバンが驚いている
「エマ知っているの?」と俺はエマに聞く
「いえ、存じ上げません」
「帝都で近衛をされているエマさんですよね」とガルバン
「ああ、それならやめて今はミチオの愛人だ」
「はっ、そうだったか……ミチオ凄いな。」
「ロクサーヌも知っているの?」
「ああ、うん、お父さんを知っている」
「父を知っているのですか?」
「昔に会った。その時はこんなに小さかったから覚えていないだろう?」
「ええっ」
「ロクサーヌ殿もミチオの……?」
「はい。私はミチオ様の一番奴隷です」
「これはすごい。女傑2人を従えているとは……しかもすごい組み合わせだな……ははは」と笑っている
何がどう凄いのかはわからないが
なんだかガルバンは2人を知っていそうな雰囲気だった
「今日は?」
「一緒に釣りに行かないか?」
とガルバンは釣竿を持ってきていた。
ロクサーヌが
「ご一緒してもいいですか?」
「ここは男同士で行きたいので遠慮してもらいたい」とガルバンが答える
「では遠くから……護衛をさせてください」
「護衛でしたら昨日の彼女を。2人は狼人族、耳もいいでしょうから」
バシッと言えるガルバン凄いなと思いつつ、ロクサーヌの気持ちもわかる。恋人としていつも考えていたが、上司でもあるわけだから、言いたい事は自分もちゃんとバシッと言えるようになりたい。
「ロクサーヌもエマも今日はゆっくり過ごしな」
「そうおっしゃるなら」
俺とガルバンは釣りに行く事にした。
近くの湖での釣りだが、俺はミリアを何度も釣りに連れて行っているが釣りを習った事がない
ミリアが持っている釣竿はリールも付いているが、今日の釣りは竿に糸がついているだけだ。餌は近くの石をひっくり返してミミズやらを捕まえて始める
ガルバンは楽しそうに俺に話しかけてくる
「ミチオ、あんまりここいらでは見かけん感じのなりだが出身は?」
「ずっと遠くだな。船で旅をしていたが、難破して、マロル近辺まで船で連れてこられて、山小屋に住んでいた爺さんに剣の使い方を習った」
「ペルマスクよりも先のようだな」
「ああ、ガルバンは?」
「俺か?俺はずっと北方で冬はメチャクチャ寒い所で、村というより集落って感じだな。30人位しか住んでない場所で集落は皆極貧。毎日食う物にも困っていたよ。伝統とか文化とか言って他の奴らと交わらない偏屈な奴らばっかだったのが嫌で飛び出した感じだな」
「なるほど、なんで冒険者に?」
「そりゃ世界を救うためにだな!!」
そういう恥ずかしいことを自信満々に言えるのが俺とは大きく違うな。
「そ、そうなんだ」
「いや、でも世界を救うって言ってもやり方については自分なりにしかできないから、色々問題も発生してくるわけだよ」
「自分のできる範囲ってあるからな」
「まぁそうなるな。ミチオは?本当は冒険者だろう?」
「なんで?わかったの?」
「あの女傑2人を連れて商人ですは無理がある」
「ごめんごめん冒険者になった理由か……俺は他にできそうなものがなかったし、食べていく為にかな」
「ならもうすでに一生食べていけるお金も貯まっているだろう?でなけりゃ馬車で旅なんてできないだろうから」
「今はみんながこれからも幸せに暮らせるようにって考えているよ」
「それはミチオお前の夢じゃないし、大きな力には大きな責任が付いてくる。それはよく覚えておいてくれ」
「ああ、そうだな」
はっきりとそれは夢ではないと言われた。確かに俺はなんのために強くなっているのか?ロクサーヌ達に言われてというのを否定できない
毎日戦い。毎日セックスをする。その先は?と聞かれると答えを出せない……
元の世界に戻りたい訳ではない。迷宮を制覇したい訳ではない。お金も十分に手に入れている。住む家も手に入れている。だからこそのこの馬車の旅なのかもしれない……
何かこの旅で得られるかもしれないと思っていたのかもしれない。その一つが出会いかもしれない。
そんなにはっきり言うガルバンに憧れる
「なぁ、ミチオ……俺のパーティに入らないか?」
とガルバンは手を出す。
……
……
驚いた。まさか俺をパーティに誘う奴が現れるとは……
ロクサーヌに会う前だったら孤独に耐えきれずその手を握っていただろう。
「お前のパーティも全部俺が面倒見る」
凄い圧倒的なリーダー感
……
俺は
……
「ちょっと考えさせてくれ」
というのが精一杯だった
「そうだよな急に言われても困るよな。でもよく考えてみてくれ」
その後は釣りを楽しんだが俺の心中はそれどころではないそれが釣果に出てしまう。ガルバンは何匹も釣っているのに対して俺はボウズだった
「まぁ気を落とすな。そういう日もあるさ」
と言われたが、いやお前のせいだからな
焚き火をして、魚を焼いて塩を振って食べた。
こういうのはなるべくシンプルな味が美味しい
ジョゼにあげれないのが残念だけど、ごめんなと心の中で思った。
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